2021年9月9日木曜日

明らかな減少でも「高止まり」と書いてしまう日本経済新聞の拙さ

日本経済新聞は「高止まり」の使い方が上手くない。「高止まり」とは「相場や価格などが高値のままで下がらない状態をいう」(デジタル大辞泉)のだから「高値」と「下がらない」の2つが必要条件となる。しかし多くの記者は「下がったけれど高水準」という意味で使っている気がする。

夕暮れ時の筑後川

具体例を2つ挙げる。まずは7日の朝刊国際面に載った「タイ、観光再開を拡大~ 感染高止まり 経済と両立図る」という記事。「ワクチン接種が遅れるなか新規感染者数は高止まりしており」と書いているが、その後で「タイの1日当たりの新規感染者数は足元で1万4000人前後となり、連日2万人を超えていた8月中旬に比べて減少傾向にある」とも説明している。

減少傾向」ならば「下がらない状態」には当てはまらない。「新規感染者数は高い水準を維持しており」などとすれば問題は解消する。

次は9日朝刊総合2面に載った「総裁選が揺らす派閥政治 政策の求心力問う~資金など恩恵薄れ、縛りきかず」という記事を見ていく。そこでは以下のように記している。

派閥に入らない議員は89年には3%しかいなかった。2009年からの野党暮らしで36%まで増えた。12年末に政権復帰して派閥が盛り返したとはいえ、無派閥の割合は今も高止まりする

ちなみにこれは最終版(14版)。13版では「21年も無派閥の割合は17%程度と高止まりする」となっている。「無派閥の割合」が半減しているのに「高止まり」はどう見ても苦しいと思ったのか最終版では直近の数字を外している。

記事に付けた「自民党内の無派閥議員の割合」というグラフを見ても、明らかに「高止まり」ではない。「高値」と「下がらない」の2つが必要条件だと最初に書いたが、「無派閥の割合」に関しては条件を2つとも満たしていない。

この場合は「21年も無派閥の割合は17%程度と無視できない存在だ」などとすれば良いのではないか。

高止まり」を使うときには2つの必要条件を満たしているか必ず考えるべきだ。記者だけでなくデスクも肝に銘じてほしい。


※今回取り上げた記事

タイ、観光再開を拡大~ 感染高止まり 経済と両立図る」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210907&ng=DGKKZO75505670W1A900C2FF8000

総裁選が揺らす派閥政治 政策の求心力問う~資金など恩恵薄れ、縛りきかず」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210909&ng=DGKKZO75587880Z00C21A9EA2000


※記事の評価はいずれもD(問題あり)

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