2021年9月11日土曜日

「規制の壁打開」? 日経「ファミマ『無人店』1000店」に感じた疑問

11日の日本経済新聞朝刊1面トップを飾った「ファミマ『無人店』1000店~規制の壁打開、全国展開」という記事は興味深い話ではある。しかし色々と疑問も残った。中身を見ながら具体的に指摘したい。

夕暮れ時の桂川

【日経の記事】

ファミリーマートは無人のコンビニエンスストア店舗を2024年度末までに約1000店出す。通常店舗と同様に約3000品目の扱いが可能だ。本格的な無人店の大規模展開は日本で初めて。これまでは店舗に人の常駐を求める規制が足かせになっていたが20年にルールが緩和された。人口減少で日本の人手不足は今後深刻さを増す。デジタル技術で事業運営を効率化する動きが広がる。

日本の労働生産性は主要7カ国(G7)中最低で、経済協力開発機構(OECD)に加盟する37カ国でも21位にとどまる。なかでも改善が遅れている小売業は自動化が不可欠だが、食品を取り扱う小売店に対し食品衛生法が衛生責任者の常駐を求めるなど制約があった。小売業界団体などの強い要望を受け、20年6月に厚生労働省が規制を緩和。無人店の衛生管理は担当者による商品補充時の巡回で代替可能との見解を示した。


◎「規制の壁打開」と言える?

見出しで「規制の壁打開」と打ち出しているが、ちょっと苦しい。「規制の壁」を「ファミマ」の創意工夫で「打開」したのならば分かる。しかし「20年にルールが緩和され」て「無人店」を出せるようになったのならば「規制の壁」自体が消えたと見るべきだ。

続きを見ていこう。


【日経の記事】

利用者は専用ゲートを通じて無人店に入る。手に取った商品は天井などに設置したAI(人工知能)カメラや棚の重量センサーで店側のシステムが把握。専用の決済端末の前に立つと商品名と金額がモニターに表示され、電子マネーや現金で支払う仕組みだ。支払いが確認できなければゲートが開かず退店できない


◎一緒に出たらどうなる?

支払いが確認できなければゲートが開かず退店できない」と言うが、「支払いが確認」できた人と一緒に出ればどうなるのか。2人で入店し、1人は「支払い」をして、もう1人は未決済のまま一緒に店を出るといった盗難方法をどうやって防ぐのか気になる。「無人」の場合、犯罪者のかなり大胆なやり方にも対応する必要があるはずだ。

さらに続きを見ていく。


【日経の記事】

商品のバーコードを読み取る手間がかからないのが特徴で、事前にスマートフォンのアプリを用意したり入店時に生体認証などをしたりする必要もない。プライバシーに配慮し個人の特定につながる可能性のある顔などの画像データは取得しない


◎「顔などの画像データは取得しない」?

顔などの画像データは取得しない」というのは本当か。店で犯罪が起きても犯人の姿は「画像データ」として残っていないのか。それで犯罪を防げるのか。防犯目的での「取得」はするというのならば「顔などの画像データは取得しない」との説明は正確さに欠ける。

さらに見ていく。


【日経の記事】

通常のコンビニで取り扱う約3000品目ほぼ全ての販売が可能だという。7月には都内に売り場面積が50平方メートルと通常店の3割程度の小さい店舗を開いた。50台程度のカメラを設置し約750品目を用意。酒類を売る場合は決済端末のモニターを通じて成人かどうかを確認する。同時に入店する利用客が10人程度であれば問題なく運営できることが確認できたため大規模展開に踏み出す。


◎10人超だとどうなる?

同時に入店する利用客が10人程度であれば問題なく運営できることが確認できたため大規模展開に踏み出す」と書いているが、「10人」を超えたらどうなるのか。「店側のシステム」が対応できなくなるのならば、そこに犯罪者が付け入る隙はありそうだ。

最後に出店計画の説明について注文を付けておきたい。


【日経の記事】

ファミマは国内に約1万6千店を持ち、年間出店数は200~500程度だ。従来型の店舗の出店も続けるが、新店は無人店が軸になる。細見研介社長は日本経済新聞の取材に「採算が取れなかった地域への出店が可能になる。買い物難民など社会的課題の解消にも貢献したい」と話した。

コンビニの国内店舗数は5万店を超え、19年には初めて店舗数が減少に転じた。従来の事業モデルでは出店できる場所が限られており、新たな店舗形態の開発が急務になっている。最低賃金の上昇や働き手の減少という課題にも向き合う必要がある。


◎もう少し詳しく書けないものか

無人のコンビニエンスストア店舗を2024年度末までに約1000店出す」と冒頭で打ち出したものの、詳細はほとんど分からない。例えば今年度はどの程度の出店になるのか。

採算が取れなかった地域への出店が可能になる」という社長コメントと「新店は無人店が軸になる」という説明はあるが、どういう地域から出店していくのかも明確ではない。「200~500程度」だった「年間出店数」の上積みにつながるのかも不明。

分からないことが多いのだとは思うが、もう少し詳細な情報が欲しい。未定ならば、その点は明示してほしかった。


※今回取り上げた記事「ファミマ『無人店』1000店~規制の壁打開、全国展開」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC257OL0V20C21A8000000/


※記事の評価はC(平均的)

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