2021年5月9日日曜日

日経社説「出生急減の克服へ若者の将来不安を拭え」に見える勘違い

日本経済新聞が少子化問題を取り上げると、おかしな話になりやすい。9日の朝刊総合1面に載った「出生急減の克服へ若者の将来不安を拭え」という社説もその例に漏れない。個人的には「少子化は放置でいい」と考えているが、ここでは少子化を食い止めるべきとの前提で話を進めたい。

錦帯橋

社説の後半を見ていこう。

【日経の社説】

少子化の最大の要因は、未婚化・晩婚化だ。不安定な就労で将来不安を抱えていると、家族を持ち子どもを育てるハードルは高くなる。非正規の処遇改善や正社員への転換、実効性のある職業訓練などで安定した経済基盤を築けるよう、官民あげて後押ししたい。

働き方、暮らし方を変えていくことも、対策のカギを握る。長時間労働を見直し、働く場所や時間を柔軟にすれば、男女問わず仕事と子育てを両立しやすくなる。

これらは介護の担い手や病気を抱える人にも役立つ。企業は全社的課題として取り組んでほしい。女性に偏った育児分担を変えるうえで、男性の育児休業などの推進を大きな契機にしてほしい。

少子化対策に特効薬はない。子どもが生まれにくい要因を一つひとつ、根本から変えていく覚悟が要る。菅義偉首相は、高齢者向けに偏る社会保障を「思い切って変えなければ」と強調する。長年にわたり進まなかった課題に、いまこそ答えを出してほしい。


◎少子化の現実を直視すれば…

出生急減の克服へ若者の将来不安を拭え」という考え方がおそらく間違っている。本当に「将来不安」があるから「子どもが生まれにくい」のか。第1次ベビーブーム(1947~49年)の時は今よりずっと「将来不安」が小さかったのか。

常識的に考えれば逆だ。終戦から間もない時代にベビーブームが起きている。「将来不安」は当時に比べれば明らかに小さくなっているのに出生率は大きく下がっている。なのに「将来不安」を減らせば「子どもが生まれ」やすくなると考えるべきなのか。

国内の推移を見る限り「少子化対策」としては「昔に戻る」が有効だろう。世界的に見れば、少子化は先進国に共通の現象なので「先進国的な部分を捨てる」必要もありそうだ。その辺りを突き詰めていくと、例えば「女性の社会進出を減らして、家事・育児に専念する女性を増やすことが少子化対策として有効」といった結論になるかもしれない。

子どもが生まれにくい要因を一つひとつ、根本から変えていく覚悟が要る」と本気で考えるのならば、世の中の流れと逆行するような対策も選択肢から排除せず検討する必要がある。その覚悟があるのか。

また、社説では「少子化の最大の要因は、未婚化・晩婚化」と断定している。同意はしないが、取りあえずそうだとしよう。この対策として、個人的には重婚の解禁はありだと感じる。今風に選択的重婚制度とでも名付けよう。

どの程度の効果があるか分からないが、婚姻件数を増やす方向に力が働くはずだ。選択的夫婦別姓を「強制する訳ではない。個人の選択肢が増えるだけだ」として賛成する人なら重婚に理解を示しても良さそうな気はする。

同性婚とも話は似ている。「結婚したい相手が同性でも結婚できるようにしよう」と考える人ならば「結婚したい相手が既婚者でも結婚できるようにしよう」となるのが道理ではないか。

子どもが生まれにくい要因を一つひとつ、根本から変えていく覚悟が要る」と日経が本気で考えているのならば、選択的重婚制度の導入をぜひ社説で訴えてほしい。

無理だとは思うが…。


※今回取り上げた社説「出生急減の克服へ若者の将来不安を拭え」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210509&ng=DGKKZO71689220Y1A500C2EA1000


※社説の評価はD(問題あり)

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