2021年5月24日月曜日

台湾有事「日本は是々非々の対応を」で逃げる日経 原田亮介論説主幹に伝えたいこと

長々と記事を書いて漠然とした主張しかできないのならば何のための「論説主幹」なのかーー。24日の日本経済新聞朝刊オピニオン2面に原田亮介論説主幹が書いた「核心~老いる中国と米の包囲網 日本は是々非々の対応を」という記事を読んで、そう感じた。

河口付近の筑後川

前半では中国の人口問題に触れているが、後半との関連は薄く、行数稼ぎに見える。そこは目をつぶるとしても台湾問題に関する歯切れの悪さは引っかかる。当該部分を見ていこう。

【日経の記事】

 米政権はそこで「責任の公平な分担」という要求への答えを各国に求めるだろう。台湾海峡問題への対応もその一つだ。台湾有事への備えや、中国のミサイルに対する抑止力強化が課題になる。日本国際問題研究所の佐々江賢一郎理事長は「米政権は中国に、有事には行動するというメッセージを出した。日本はそれに巻き込まれるという議論でなく、自らどう関わるかを決めないといけない」と話す。

例えば経済安全保障にかかわるサプライチェーンについて、民生用の旧来技術の貿易を規制すべきではないが、AIなどの先端技術で競争力を高める協力は惜しんではならない。温暖化ガスの問題では中国に「途上国扱い」の返上を一緒に迫るべきだろう。

一つ一つに是々非々で答えを出す必要がある。菅政権はワクチン接種と同時に、外交でも正念場を迎える


◎で、台湾有事の際の「是々非々」とは?

民生用の旧来技術の貿易を規制すべきではないが、AIなどの先端技術で競争力を高める協力は惜しんではならない。温暖化ガスの問題では中国に『途上国扱い』の返上を一緒に迫るべきだろう」などと原田論説主幹の考えを明確にしている部分もある。しかし肝心の「台湾有事の際に日本はどう対応すべきか」という問題からは逃げている。

米政権は中国に、有事には行動するというメッセージを出した。日本はそれに巻き込まれるという議論でなく、自らどう関わるかを決めないといけない」という「日本国際問題研究所の佐々江賢一郎理事長」のコメントを紹介していることから推測すると「台湾有事の際に米国が中国と戦うならば日本も同盟国として参戦すべきだ」と原田論説主幹は思っているのではないか。日米同盟の強化(言い換えれば「米国への属国状態の強化」)を求める日経に「米国に逆らう」との選択肢があるとは考えにくい。

しかし、それを前面に出せば「台湾を守るためになぜ日本が戦争に巻き込まれなきゃいけないんだ」「日本は台湾を中国の一部と認めている。であれば中国の内戦なのに日本が武力介入するのはおかしい」といった批判を受けそうだ。

そして、原田論説主幹はこの手の批判に対する有効な答えを持っていないのだろう。だから態度を明確にせず「是々非々で答えを出す必要がある」「外交でも正念場を迎える」などと当たり障りのない結論を導いてしまう。

「台湾有事の際に米国が中国と戦っても日本は軍事面での協力は一切すべきではない」と主張するのが一番スッキリする。日米が台湾防衛のために中国と戦って自衛隊にも多数の戦死者が出る事態になった場合「台湾を守るためには仕方がない」と受け入れるのは難しい。

在日米軍基地や自衛隊基地を中心に日本が中国からの攻撃を受ける事態になれば「何のために台湾を守るのか」との疑問はさらに膨らむ。

「戦争を避けるため、日本を守るためには日米同盟が必要」と原田論説主幹は信じているだろう。しかし台湾有事の問題を掘り下げていくと、日米同盟にしがみついた結果として戦争に巻き込まれ日本が戦場となるリスクが高まる。

論説主幹という立派な肩書を付けてコラムを書くのならば、この問題に日経としての解を示すべきだ。それができないのならば後進に道を譲ってほしい。


※今回取り上げた記事「核心~老いる中国と米の包囲網 日本は是々非々の対応を」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210524&ng=DGKKZO72134850R20C21A5TCT000


※記事の評価はD(問題あり)。原田亮介論説主幹への評価はDを維持する。原田論説主幹に関しては以下の投稿も参照してほしい。


「2%達成前に緩和見直すべき?」自論見えぬ日経 原田亮介論説委員長
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_77.html

財政再建へ具体論語らぬ日経 原田亮介論説委員長「核心」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_33.html

日経 原田亮介論説委員長「核心~復活する呪術的経済」の問題点
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_20.html

日経 原田亮介論説委員長「核心~メガは哺乳類になれるか」の説明下手
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/blog-post.html

中国「中進国の罠」への「処方箋」が苦しい日経 原田亮介論説委員長
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/blog-post_57.html

「中台のハイテク分断に現実味」が苦しい日経 原田亮介論説委員長
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_29.html

「長々」と続く昔話は行数稼ぎ? 日経 原田亮介論説委員長「核心」 
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/03/blog-post_2.html

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