2020年8月20日木曜日

日経 藤本秀文記者の「ファミマTOB 気をもむ伊藤忠」に感じた疑問

20日の日本経済新聞朝刊企業1面に「ファミマTOB 気をもむ伊藤忠~ファンド、価格引き上げ迫る 24日の期限を前に攻防」という記事が載っている。本当に「伊藤忠商事がファミリーマートへのTOB(株式公開買い付け)期限を24日に控え、気をもんでいる」のか疑問に思えた。
道路が冠水した福岡県久留米市内※写真と本文は無関係

筆者の藤本秀文記者は以下のように説明している。

【日経の記事】

伊藤忠商事がファミリーマートへのTOB(株式公開買い付け)期限を24日に控え、気をもんでいる。ファミマの株価が買い付け価格前後で推移するなか、投資ファンドが同価格の引き上げを要求しているためだ。伊藤忠は要求を拒んでいるが、業績低下に歯止めがかからないファミマの先行きも絡み、気が抜けない展開になりそうだ。

19日のファミマ株は2296円で取引を終えた。7月8日に伊藤忠が発表したTOB価格は1株2300円で、前日終値(1766円)に対するプレミアムは30.24%。これを受けてファミマ株は急騰し、7月16日には2400円を突破した。その後も伊藤忠が提示した買い付け価格を上回って推移。今月18日に終値でようやく2300円を切った。

株価の推移を受けて、今月に入って声を上げ始めたのが投資ファンドだ。米RMBキャピタルが「少数株主への配慮が不十分である」として、買い付け価格を2600円に引き上げるよう要求。香港のヘッジファンドのオアシス・マネジメントも伊藤忠による買い付け価格が低すぎるとして、ファミマに対し、1株あたり最大1062円の配当実施を求めている。

こうした投資家の動きに対し、伊藤忠は5日の決算発表で「現状のTOB価格を引き上げる考えはない」とした。13日にも、米アマゾン・ドット・コムなどの台頭もあり「既存のビジネスモデルの延長線上ではファミマの急激な業績回復は見込めない」として、ファミマ株主にTOBに応じるよう訴えた。

伊藤忠は現在、ファミマの株式を50.1%保有している。TOB成立の条件として、残るファミマ株49.9%のうち、9.9%以上の株式(約5011万株)の取得をあげている

新型コロナウイルスの影響などでコンビニエンスストア各社の業績が低迷するなか、5~7月平均の既存店売上高でセブン―イレブン・ジャパンが前年同月比で96.8%、ローソンが91.7%なのに対し、ファミマは90%と回復が遅れている。中国でも合弁パートナーの食品大手、頂新グループとの係争で思うように店舗展開できていない。

そもそも今回のファミマのTOBは、売り上げ低迷に有効な打開策を見いだせないファミマが伊藤忠に要請したのがきっかけだ。伊藤忠幹部は「人工知能(AI)などの新技術を駆使し、売れ筋商品の開発や物流の効率化などを(当社と)一体となって進めることがファミマ再建の最善策だ」と話す。停滞する中国をはじめとする海外事業でも伊藤忠の経営資源を活用して、立て直しを急ぎたい考えだ。

伊藤忠は応募株式数が条件である9.9%に達しない場合、TOBを断念するとしている。同じ総合商社の傘下にあるローソンは、三菱商事や三菱食品などグループとの連携を強化して情報の共有や物流網最適化の取り組みを強化している。

「十分なデータ共有ができていない状態が続けばファミマの再建はおぼつかない」(大手証券アナリスト)。期限となる24日まで伊藤忠、ファミマとも気をもむ日が続きそうだ。



◎肝心なことが…

伊藤忠商事」が「TOB成立」に関して「気をもんでいる」としよう。「伊藤忠は応募株式数が条件である9.9%に達しない場合、TOBを断念する」のだから、焦点は「9.9%」の応募があるかどうかだ。

投資ファンド」が「買い付け価格」の「引き上げを要求している」ことが「TOB成立」への障害になると藤本記者は見ている。これは分かる。こうした「投資ファンド」が「TOB」に応じなかった場合「9.9%」の買い付けが難しくなるのかが知りたいところだ。

例えば、この手の「投資ファンド」が「ファミマ」株の40%近くを保有しているのならば「TOB成立」はかなり厳しい。一方、保有比率が合計で数%ならば大勢に影響はないだろう。その辺りがどうなっているのか藤本記者は教えてくれない。

常識的に考えれば「9.9%」の買い付けは難しくなさそうだ。本当に「期限となる24日まで伊藤忠、ファミマとも気をもむ日が続きそう」なのか。

そもそも「TOB成立」に大きな意味があるのかという疑問もある。「伊藤忠は現在、ファミマの株式を50.1%保有している」。「TOB」の結果がどうなろうと親会社としての地位は変わらない。

伊藤忠幹部は『人工知能(AI)などの新技術を駆使し、売れ筋商品の開発や物流の効率化などを(当社と)一体となって進めることがファミマ再建の最善策だ』」と語っているらしい。それは出資比率「50.1%」でも推進できる。「ファミマ」は株式の過半を握られているのだから「伊藤忠」に逆らうのは難しい。

自分が「伊藤忠幹部」だったら、「TOB」が成立するかどうかに関係なく「ファミマ再建の最善策」を進めていけばいいと考える。「TOB成立」に関しては「気をもむ」ほど重要なことかなと思える。

TOB成立」が「十分なデータ共有」を進めるための必要条件だと藤本記者が考えているのならば、なぜそうなるのかきちんと説明してほしかった。


※今回取り上げた記事「ファミマTOB 気をもむ伊藤忠~ファンド、価格引き上げ迫る 24日の期限を前に攻防
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200820&ng=DGKKZO62822570Z10C20A8TJ1000


※記事の評価はD(問題あり)。藤本秀文記者への評価も暫定でDとする。

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