2020年8月9日日曜日

毒にも薬にもならない日経 峯岸博編集委員「風見鶏~日韓外交阻む『善』と『悪』」

9日の日本経済新聞朝刊総合3面に峯岸博編集委員が書いた「風見鶏~日韓外交阻む『善』と『悪』」という記事は毒にも薬にもならない内容だと感じた。その中で、問題ありと思えた冒頭の記述をまずは見ていきたい。
大雨で増水した三隈川(筑後川)
        ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

日本と韓国の外交は底なし沼にはまってしまったかのようだ。両国の政治家のあいだでは、どう抜けだすかという解決策を飛び越して対抗策の議論がにぎやかだ。こういうときは先人に学ぼうと、英国外交官だったH・ニコルソンの名著「外交」を手に取った。

外交官の中で最悪の部類として「宣教師、狂信家そして法律家」を挙げている。ある一派の考え方を「善」、他派を「悪」とみなすことで独善などの恐ろしい危険に人々を巻き込みかねないと警告した。人権弁護士出身の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を含め、ナショナリズムを外交の場に持ち込みがちないまの日韓関係を映す鏡のようだ。


◎偏見の臭いが…


外交官の中で最悪の部類として『宣教師、狂信家そして法律家』を挙げている。ある一派の考え方を『善』、他派を『悪』とみなすことで独善などの恐ろしい危険に人々を巻き込みかねないと警告した」という記述が引っかかった。

H・ニコルソンの名著『外交』」から引用しているとはいえ、偏見とも思える見方を肯定的に取り上げるのは感心しない。「狂信家」はともかく「宣教師」や「法律家」を「ある一派の考え方を『善』、他派を『悪』とみなすことで独善などの恐ろしい危険に人々を巻き込みかねない」人物だと決め付けるような説明は避けるべきだ。

次に記事の終盤を見ていこう。

【日経の記事】

日韓両政府間では、難交渉の末にこぎ着けた慰安婦合意や請求権協定といった取り決めがないがしろにされ、信頼関係は崩れた。日韓外交は善悪二元論で解決することはできない。

では、もつれた関係をどう解きほぐすか。ニコルソンが理想とした外交の資質は、誠実、正確、平静、忍耐、よい機嫌、謙虚および忠誠だ。相手を冷静に見つめ直すところから始める必要もあるのではないか

「愛の不時着」では、けなげに生きる北朝鮮の庶民の一端に触れた韓国人に親近感が生まれた。日韓でもそれを体現している人たちがいる。相手の文化を屈託なく受け入れ、再び往来できる日を待ち望む若い世代と、長く協力関係を築いてきた企業人などだ。

「お互いにお家の事情があるのだから名分に執着せず、妥結の道を見いだし、実利を貫徹させよう」。国交正常化交渉が難航するたびにこう促したのは時の首相、佐藤栄作。安倍首相の大叔父である。朴正熙大統領も「貧困から脱する」との信念を貫いた。

日本周辺の脅威が高まり、米中の覇権争いも激烈になっている。対立のなかで共有する「実利」を見つける仕事も政治だろう


◎そんなこと言われても…

日韓外交は善悪二元論で解決することはできない。では、もつれた関係をどう解きほぐすか」と記事は核心部分に入っていく。その答えは「相手を冷静に見つめ直すところから始める必要もあるのではないか」だ。そして「対立のなかで共有する『実利』を見つける仕事も政治だろう」と記事を締めている。

「そんな漠然としたことを言われても…」というのが正直な感想だ。例えば、安倍晋三首相の言動の中から「相手を冷静に見つめ」ていないと取れるところを選び出し、どう「見つめ直す」べきか指摘するのならば、まだ分かる。

しかし、誰に向けて具体的にどうしろと言う訳でもない抽象的な話をする意義は感じない。せっかく紙面を使うのだから、主張は具体的で「毒か薬にはなる内容」にしてほしい。もちろん「薬」の方が好ましいが…。


※今回取り上げた記事「風見鶏~日韓外交阻む『善』と『悪』
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200809&ng=DGKKZO62475560Y0A800C2EA3000


※記事の評価はC(平均的)。峯岸博編集委員への評価はCで確定とする。

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