2020年8月30日日曜日

日経が好んで使う「力の空白」とは具体的にどんな状況?

日本経済新聞は「力の空白」という表現が好きなのだろう。30日の朝刊総合3面に「日米、対中『力の空白』警戒~グアムで防衛相会談 東・南シナ海 結束示す」という記事を載せている。29日の朝刊1面の記事でも「日本の政局が混乱すれば、日米同盟に隙をつくり、北東アジアに力の空白を生むことになりかねない」と吉野直也政治部長が訴えていた。しかし、どういう状況を指して「力の空白」と言っているのか分かりにくい。
筥崎宮(福岡市)※写真と本文は無関係です

30日の記事の一部を見てみる。

【日経の記事】

河野太郎防衛相は29日、米領グアムでのエスパー米国防長官との会談で、中国の活動に警戒を強めていく方針を確認した。米国は11月に大統領選を控え、日本は安倍晋三首相が辞任を表明した。日米が結束を示し「力の空白」は生じないと示す狙いがある

中略)米国は新型コロナの感染拡大が深刻で、空母内や在日米軍基地でも感染が広がった。11月に大統領選を控え、関心は内向きになっている。

日本でもトランプ米大統領と蜜月関係を築いた首相が辞任を表明した。後継となる首相が11月に選ばれる米大統領とどこまで良好な関係を構築できるかは未知数だ。

今回の日米防衛相会談を通じ、同盟の結束の強さを示して「力の空白」が生じないようにする。会談場所として南シナ海に近く、太平洋上の軍事的な要衝であるグアムを選んだところからもこうした狙いが透ける。

日米は新型コロナの感染拡大の状況下でも、相次ぎ共同訓練をした。

31日までハワイ沖で米海軍主催の「環太平洋合同演習(リムパック)」を実施する。日本から海上自衛隊の護衛艦が参加した。中国を念頭に、コロナ下でも開催するよう日本が働きかけた。



◎「力の空白」は生まれそうもないが…

記事から判断すると、「力の空白」が生じる恐れがあるのは「東シナ海や南シナ海」なのだろう。ここでは「沖縄県の尖閣諸島」だとして考えてみたい。

まず、日本には「尖閣諸島」を固有の領土として守ろうとする意思があるはずだ。「東シナ海では4~8月に、中国公船が沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域内を連続111日間航行した。2012年の尖閣国有化以降で最長となった」とすれば、中国もやる気は十分だと思える。

ここで日米が「同盟の結束の強さ」を示せず、「米国は尖閣諸島には関心がなさそうだ」と中国に悟られたとしよう。そうなると「力の空白」が生じるのか。もちろん違う。日本がいる。米国が無関心だとしても「尖閣諸島」の防衛に関して日本も無関心あるいは無力だとは考えにくい。

「全然分かってない。力の空白が生まれる懸念は大きい」と日経が信じるならば、それでいい。だったら「なるほど確かに日米同盟が揺らげば『力の空白』が生じそうだな」と納得できる説明をすべきだ。


※今回取り上げた記事「日米、対中『力の空白』警戒~グアムで防衛相会談 東・南シナ海 結束示す
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200830&ng=DGKKZO63216550Z20C20A8EA3000


※記事の評価はC(平均的)。吉野直也政治部長が書いた記事については以下の投稿を参照してほしい。

漠然とした訴えが残念な日経 吉野直也政治部長「政策遂行、切れ目なく」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/08/blog-post_29.html

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