2020年5月15日金曜日

「アクティブ投信」を薦める楽天証券経済研究所の篠田尚子氏を信じるな!

自分はインデックス投資絶対主義者ではない。だが「アクティブ投信」を前向きに紹介する記事で「なるほど」と感じた記憶がない。週刊エコノミスト5月19日号に楽天証券経済研究所ファンドアナリストの篠田尚子氏が書いた「アクティブ投信~eスポーツでコロナの影響回避 “代替資産”の金に投資も」という記事も例外ではない。
藤波ダム(福岡県うきは市)※写真と本文は無関係です

記事の一部を見てみよう。

【エコノミストの記事】

アクティブファンドの中には、むしろ、市場平均と比べてリスクを低く抑えることに重きを置いた商品も存在する。今回の波乱相場により、精神衛生上、保有する全ファンドが含み損を抱えているような状態が心もとないということであれば、低リスク型のファンドも併せて保有することをおすすめしたい

一覧にある「バランス型」の商品はいずれも、市場環境に応じて、柔軟に資産配分を調整し、リスクコントロールを図る点に最大の特徴がある。

例えば、年率4%の目標リスク水準を掲げて運用するアセットマネジメントOneの「投資のソムリエ」は、2月25日の時点でリスク性資産の配分比率を引き下げる「警戒局面」と判断し、結果的に大きな基準価額の下落を回避できた。より保守的な運用を行う商品としては、「ピクテ・マルチアセット・アロケーション・ファンド」も良いだろう。運用を担うピクテ投信投資顧問は、同ファンドを「欲張らない投資」のための商品と位置付け、インフレに負けない2〜3%程度のリターンの水準を実現してきた。



◎コストとの兼ね合いは?

篠田氏は金融業界に属しているので、投資家の利益よりも業界の利益を最大化する方向へ話を進めるのが当たり前だ。それを非難するつもりはない。ただ、騙されてはいけない。

アクティブ投信」がなぜダメなのかと言えば高コストだからだ。高コストを正当化できれば問題はない。しかし上記の説明ではそもそもコストに触れていない。

記事に付けた表によると「投資のソムリエ」の信託報酬は1.54%(税込み)。「ピクテ・マルチアセット・アロケーション・ファンド」に至っては2.0%。ゼロに近い水準まで下がってきているインデックス投信ではなく、なぜあえて高コストの「アクティブ投信」を選ぶのか。合理的に説明するのはかなり困難だ。篠田氏も分かっているのだろう。だから、あえてそこに踏み込まないのではないか。

篠田氏が「アクティブ投信」を薦めるのは以下のような理由だ。

【エコノミストの記事】

海外株式については、既に先進国株式や米国株式のインデックスファンドを保有している場合は無理に追加しなくてもよい。ただし、日本株については、TOPIXや日経平均株価のインデックスファンドを保有し続けても、長期的に大きな経済成長(≒リターン)を期待しづらいため、アクティブファンドへの投資も検討した方がよいだろう。



◎なぜ日本株を持つべき?

先進国株式や米国株式」(米国株も先進国株だが…)は「長期的に大きな経済成長(≒リターン)を期待」できるが「日本株」では「期待しづらい」としよう。単純化のため「先進国株式や米国株式」も「日本株」もリスクは同レベルとする。

この場合、何のために「日本株」を持つのかとの問題が生じる。世界の株式の中で圧倒的な存在感があるのならば、分散の観点から持たざるを得ないだろう。しかし、そういう存在ではない。

明らかに期待リターンで劣るのならば外していいのではないか。普通の個人投資家で、リスクに対して明らかに低いリターンしか期待できないものを投資対象にする必要はない。

日本株」の中でも高リターンを実現する銘柄を集めて「アクティブファンド」を作れば、「先進国株式や米国株式」に負けないと篠田氏は言いたいのだろう。

確かに可能性はある。しかし市場平均を高い確率で上回る「アクティブファンド」を事前に見つけるのは至難だ。そこに労力を割いても、ほとんどの人にとっては意味がない。それなら「日本株」を外す方が早くて確実だ。「先進国株式や米国株式」に比べて「長期的に大きな経済成長(≒リターン)を期待しづらい」と分かっているのだから(本当にそうかなとは思うが…)。



※今回取り上げた記事「アクティブ投信~eスポーツでコロナの影響回避 “代替資産”の金に投資も
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200519/se1/00m/020/004000c


※記事の評価はD(問題あり)。篠田尚子氏への評価も暫定でDとする。

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