2020年5月29日金曜日

「米国工場のライン削減」は誤報だった? 日経「日産 最終赤字6712億円」

29日の日本経済新聞朝刊1面に載った「日産最終赤字6712億円 前期、11年ぶり~構造改革費6000億円」という記事で気になることがあった。「米国で工場のラインを削減するという話はどうなったのか?」と。
練習機T-33A 若鷹(福岡県うきは市)
      ※写真と本文は無関係です

27日付の「日産、3000億円コスト削減~新型コロナ拡大で追加策」という記事では「日産は米国に完成車工場を2つ持つ。そのうち主力セダンなどを生産するミシシッピ州の工場で3つある製造ラインを1つ削減する方向で調整している」と報じており、これが「3000億円コスト削減」の柱だと示唆する内容だった。

しかし29日の記事に付けた「2023年度までの新中期計画の骨子」という表で「固定費3000億円削減(18年度比)」のところを見ると「生産能力を2割減の540万台まで引き下げ→スペイン工場の閉鎖検討」「車種数2割削減→韓国・ロシアで低価格ブランド『ダットサン』撤退」「一般管理費15%削減」となっているだけで、米国には触れていない。

日産のニュースリリースには「北米の各工場での生産車種をセグメントごとに集約し、効率を改善する」とは出てくるが「ミシシッピ州の工場で3つある製造ラインを1つ削減する」という話にはなっていない。

調整している」と逃げを打っているので誤報とは言い切れないが、何かを間違えた感じは否めない。間違い自体を責めるつもりはない。問題は2つある。

まず、待っていれば発表されるネタを事前に報道するのは原則としてやめた方がいい。これは何度も訴えていることだ。

27日の記事を読んだ人が「ミシシッピ州の工場で3つある製造ラインを1つ削減する」方向だと誤解していてもおかしくない。頑張って事前に報じると、どうしても正確さを欠いてしまう。それでも記事にする社会的な意味があるかと言えば、ほぼない。余計な混乱を招くだけだ。

どうしても報じたいのならば、間違えた時のフォローは丁寧にすべきだ。今回で言えば「ミシシッピ州の工場で3つある製造ラインを1つ削減する方向で調整している」という話はどうなったのか1面の記事に盛り込むべきだ。今回は総合2面と企業1面にも関連記事が載っている。スペースはたっぷりあるのに「ミシシッピ州の工場」のライン削減の話がどうなったか全く触れていない。

きちんとフォローするつもりがないのならば、待っていれば発表されるネタは発表を待つべきだ。それが日経のためでもあるし、読者のためでもある。


※今回取り上げた記事「日産最終赤字6712億円 前期、11年ぶり~構造改革費6000億円


※記事の評価はC(平均的)。「日産、3000億円コスト削減~新型コロナ拡大で追加策」という記事に関しては以下の投稿を参照してほしい。

雑な作りが残念な日経「日産、3000億円コスト削減」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/05/3000.html

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