2018年5月29日火曜日

米欧のROEは「15%前後」? 日経の2本の記事に矛盾

ROEに関して3月13日の記事では「米国の主要企業は約14%、欧州は約10%だ」と説明していた日本経済新聞が、5月29日の朝刊1面の記事では「15%前後ある米欧企業」と書いている。矛盾はないのか問い合わせてみた。
宇佐神宮(大分県宇佐市)※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

29日の朝刊1面に載った「連続最高益 その先へ(上) ROE、初の10%超え 『値上げ力』つかみ成長回帰」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは「ROE2桁は世界の投資家が優良企業と認める水準だ。15%前後ある米欧企業を追いかけて日本企業は新たな段階に差し掛かった」という結びの部分です。

イブニングスクープ~日本企業の稼ぐ力、世界水準に ROE初の10%超え」という御紙の記事(3月13日付)では、ROEに関して「米国の主要企業は約14%、欧州は約10%だ」と説明していました。これが正しければ、日本は欧州には追い付いています。米国が14%で欧州が10%だとすると「米欧の平均では15%前後になる」とも考えにくいところです。

ROEに関する他の資料などと併せて判断すると、3月の記事の説明が正しいと思えます。今回の「(ROEが)15%前後ある米欧企業」との記述は誤りと考えてよいのでしょうか。それとも3月の記事が間違っているのでしょうか。どちらにも問題がないとの判断であれば、その根拠も教えてください。

御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。クオリティージャーナリズムを標榜する新聞社として、掲げた旗に恥じぬ行動を心掛けてください。最近は日大アメフト部の監督・コーチによる記者会見での説明に対し、厳しい批判が浴びせられています。しかし、自社の提供する記事の欠陥を指摘されても無視で済ませてきた御社の対応に比べれば、はるかに立派だと思えます。

1面の記事について追加で指摘をしておきます。気になったのは以下のくだりです。

大阪府枚方市にあるコマツの工場はフル生産になった。米国や中国で建設機械、資源国から鉱山機械の受注が絶え間なく届き、増産できる工場を海外で探す。顧客は納期重視で中国やインドネシアなど世界で価格を引き上げた

(1)上記の書き方だと「世界で価格を引き上げた」のが「顧客」に見えます。文脈から推測すると「価格を引き上げた」のは「コマツ」のはずです。

(2)上記の書き方だと「米国や中国で」受注したと取れてしまいます(そう理解するのが正解かもしれませんが…)。常識的に考えると、「米国や中国から建設機械、資源国から鉱山機械の受注が絶え間なく届き」と「から」で合わせた方が良いでしょう。

(3)上記の書き方だと「米国や中国は資源国ではない」との印象を与えてしまいますが、一般的に言えば「資源国」でしょう。2016年の原油生産量を見ると、米国は1位で中国は8位と、いずれも上位です。ちなみに、東海東京証券の証券用語集では「資源国」の説明の中で「主に、オーストラリアや、ニュージーランド、カナダや南アフリカ、ノルウェーやアメリカなどが資源国として注目されています」と具体例にも米国を挙げています。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「連続最高益 その先へ(上) ROE、初の10%超え 『値上げ力』つかみ成長回帰
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180529&ng=DGKKZO31076980Z20C18A5MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。

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