2020年9月30日水曜日

ドコモ完全子会社化は「通信政策の転機」と解説する日経の材料不足

30日の日本経済新聞朝刊1面に載った「NTT、分離から再結集 ドコモに4.2兆円TOB~国際競争、遅れに危機感」という記事には無理を感じた。「NTT」による「NTTドコモ」の「完全子会社化」は金額こそ大きいが、66%出資の子会社を全額出資にするだけだ。「ドコモ」は非上場になるが「NTT」は上場を維持するのだから、上場企業として一般株主に報いる責任が消えるわけでもない。しかし、記事では「グループ再結集は独占企業体のNTTを分割し競争を促してきた通信政策の転機となる」とまで書いている。

豪雨被害を受けた天ケ瀬温泉(大分県日田市)
        ※写真と本文は無関係です

記事の一部を見ていこう。


【日経の記事】

NTTは29日、上場子会社のNTTドコモを完全子会社化すると正式発表した。買収総額は約4兆2500億円と国内企業へのTOB(株式公開買い付け)で過去最大となる。ドコモ分離から28年がたち携帯市場でのシェアが低下、NTTグループの地盤沈下が懸念されていた。日本の通信技術を底上げし次世代規格で世界標準を狙う。グループ再結集は独占企業体のNTTを分割し競争を促してきた通信政策の転機となる

NTTは30日からTOBを行い、他の株主から3割強の株式を取得する。ドコモ株の取得価格は1株3900円で、28日終値(2775円)に4割のプレミアム(上乗せ幅)をつける。

「研究投資が加速し、顧客サービスも向上するのなら止める理由はない」。監督官庁の総務省の幹部はNTTの再結集を支持する意向を示す。

1985年の日本電信電話公社の民営化以来、政府は巨大通信事業者のNTTに分社化を促すなど競争政策を推進してきた。その通信行政にとって、NTTによるドコモ完全子会社化は転換点となる


◎「競争を促してきた通信政策の転機となる」?

グループ再結集は独占企業体のNTTを分割し競争を促してきた通信政策の転機となる」と書いてあると、今後は「競争」を抑制する「通信政策」になると理解したくなる。しかし、記事を最後まで読んでも、具体的な話は出てこない。

研究投資が加速し、顧客サービスも向上するのなら止める理由はない」という「総務省の幹部」のコメントは出てくるが「競争を促してきた通信政策の転機となる」と納得できる情報は見当たらない。なのに再び「通信行政にとって、NTTによるドコモ完全子会社化は転換点となる」と言い切っている。

記事には「菅政権の看板政策である携帯料金の値下げ」との記述もある。これは「競争を促してきた通信政策」が続くと取れる。本当に「通信行政にとって、NTTによるドコモ完全子会社化は転換点となる」のか。


※今回取り上げた記事「NTT、分離から再結集 ドコモに4.2兆円TOB~国際競争、遅れに危機感

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200930&ng=DGKKZO64404940Q0A930C2MM8000


※記事の評価はD(問題あり)

2020年9月29日火曜日

ミス放置を続ける東洋経済の山田俊浩編集長が政権に「自浄」を求めても…

自分に甘く他者に厳しいメディアの言葉が説得力を持つだろうか。読者からの間違い指摘を無視して多くのミスを放置している週刊東洋経済の山田俊浩編集長が「菅新政権」 を「安倍政権の負の遺産に向き合うことには消極的なよう」だと指摘した上で「自浄」を求めている。悪い冗談としか思えない。

豪雨被害を受けた天ケ瀬温泉(大分県日田市)
        ※写真と本文は無関係です

10月3日号の「編集部から」の内容を見てみよう。

【東洋経済の記事】

第2特集において菅新政権の政策課題を検証しました。最大の看板は「自助」。小泉内閣を彷彿とさせるものがありますが、首相自身がたたき上げの苦労人だけに説得力があります。ただし安倍政権の負の遺産に向き合うことには消極的なようです。怪しい健康グッズで荒稼ぎしたジャパンライフ元会長が詐欺容疑で逮捕されましたが、同社元会長は「桜を見る会」に首相枠で招待されており、それが詐欺の際のハッタリに使われています。モリカケ問題の背景も「安倍首相との親しさ」です。こうした問題は、改めて検証するべきでしょう。国民に「自助」を求める政府には、何よりも「自浄」を求めたいものです


◎まず東洋経済を「検証」せよ!

週刊東洋経済では高橋由里氏、西村豪太氏が編集長として多くのミスを放置する方針を維持してきた。山田編集長が就任時に「向き合う」べきだった「負の遺産」と言える。その時にはきちんと「自浄」したのか。

似たような状況にあったライバル誌の週刊ダイヤモンドでは明らかな「自浄」が見られた。なのに東洋経済ではなぜできなかったのか。今もダイヤモンドには「訂正とお詫び」がよく載るが、東洋経済ではほとんど見ない。自分が知る以外のところでも東洋経済は多くのミスを黙殺していると推測できる。

なぜミスの放置がやめられないのか。そこを「改めて検証するべき」だ。自分たちの発行する雑誌の中のミスを指摘されても無視して放置しているメディアが、自分たちを棚に上げて政権に「自浄」を求めて恥ずかしくないのか。

負の遺産」を守る決意が固いのならば、他者の言動にあれこれ注文を付けるのは控えるべきだ。

山田編集長の言葉を借りるならば「政府に『自浄』を求める週刊東洋経済には、何よりもまず自らの『負の遺産』との決別を求めたいものです」といったところだろうか。


※山田俊浩編集長への評価はF(根本的な欠陥あり)を維持する。山田編集長に関しては以下の投稿も参照してほしい。

書き手としても適性欠く週刊東洋経済の山田俊浩編集長https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/02/blog-post_11.html

2020年9月28日月曜日

「事件爆弾」を「時限爆弾」に修正したが回答なし…相変わらずの東洋経済オンライン

記事中の間違い指摘に対する東洋経済オンラインの対応が相変わらずだ。明らかな誤りの場合、記事を修正はするが問い合わせには回答しない。今回は25日に問い合わせをして、28日に見てみると修正されていた。

三連水車(福岡県朝倉市)
     ※写真と本文は無関係です

問い合わせの内容は以下の通り。


【東洋経済への問い合わせ】

東洋経済オンライン担当者様 

25日付の「無症状感染者は素通りできる『検温』の無意味感~検温でできるのは『やってる感』の演出だけだ」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

『感染力は発症前に最大となる。ウイルスにさらされて潜伏期間が始まると、発熱などの症状が一切出ていなくても、感染力のあるウイルスを大量にまき散らして(多くの人に感染させる)スーパースプレッダーとなる場合がある』(パルティエル教授)。検温では、この『事件爆弾』を止めることはできない、とパルティエル氏は言う

事件爆弾」は聞き慣れない言葉です。文脈から考えて「時限爆弾」の誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

せっかくの機会なので、もう1つ指摘しておきます。見出しで「検温でできるのは『やってる感』の演出だけ」と断定していますが、記事の内容と整合しません。記事には以下の記述があります。

ただ、マッギン氏は検温にもメリットはあるかもしれないと話す。検温を行うこと自体が人々に感染予防の重要性を思い起こさせる強力な社会的メッセージとなるからだ。『検温が行われていれば人々はより用心するようになる。入り口に検温の担当者を配置しなければならないほど大ごとになっているのだ、自分たちもまだ安心するわけにはいかない、というように』

これを信じれば、「検温でできるのは『やってる感』の演出だけ」ではないと言えます。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。東洋経済新報社では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。誠意ある対応を心掛けてください。


◇   ◇   ◇


※今回取り上げた記事「無症状感染者は素通りできる『検温』の無意味感~検温でできるのは『やってる感』の演出だけだ

https://toyokeizai.net/articles/-/377544?page=3


※記事への評価は見送る

「目標未達」でも「第1の矢は成功」と伊藤隆敏コロンビア大学教授が日経に書いているが…

 28日の日本経済新聞朝刊経済教室面にコロンビア大学教授の伊藤隆敏氏が書いた「経済教室~アベノミクスの総括(上)デフレ脱却と経済好転 成果」という記事は説得力に欠けた。「アベノミクス」を前向きに評価するのであれば、それに足る根拠が要る。しかし記事の内容はかなり苦しい。

筑後川サイクリングロード(久留米市)
※写真と本文は無関係です

特に問題を感じたのが金融緩和に関する記述だ。そこを見ていこう。

【日経の記事】

アベノミクスの第1の矢は「大胆な金融政策」で、デフレからの脱却が最重要課題に位置付けられた。そのために13年に2%のインフレ目標政策を日銀と政府の合意文書という形でまとめ、インフレ目標政策に理解のある黒田東彦氏を日銀総裁に指名した。黒田総裁は、13年4月に市場が期待する以上の量的・質的緩和(QQE)政策を発表し、円安・株高が進行した。その後、14年10月には資産購入額を増やした。円安・株高はさらに進行した。

16年1月にはマイナス金利政策を導入したが、長期金利がマイナス圏にまで低下し、金融機関の利ざやを大きく低下させた。金融機関からの批判も出るなか、16年9月にはイールドカーブ・コントロール(YCC=長短金利操作)を導入し、長期金利の水準をほぼ0%に安定化させることとした。日銀は量的緩和(国債購入)自体は操作目標から外して、イールドカーブ全体の水準を目標とするように転換したことになる。

同時に黒田総裁は、2%達成後もすぐに引き締めに転じるわけではないとして、しばらくの間は2%を超えることを許容するという「オーバーシュート型コミットメント」を導入した。

日銀が導入した政策は先進的な内容を含んでいるオーバーシュート型コミットメントは日銀に遅れること4年、20年8月になり、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が、米国でも導入すると宣言した

しかしながら、安倍政権の下ではインフレ目標の2%は達成できなかった。目標未達の原因は、インフレ率を上回る賃金上昇が起きなかったため、消費が大きく伸びず物価上昇が起きなかったことだ。また政府・日銀が2%目標を掲げても、インフレ予想が上がらなかった。第1の矢は成功ではあるが、2%目標未達という一点の曇りが残る


◎目標達成できなくても「成功」?

まず「目標未達」なのに「第1の矢は成功」と断言するのが苦しい。それに対しては「円安・株高」という果実が得られたから「成功」と反論するのだろう。

円安」はともかく「株高」に関しては日銀がETFを買って相場を直接に下支えしている。その結果としての「株高」を「成功」と評すべきなのか。日銀のETF購入には市場での価格形成を歪めているとの批判が強い。そこまでしてもインフレ率に関して「目標未達」に終わっていることを重く見るべきだ。

2%目標未達」を「一点の曇り」としているのも解せない。「16年1月にはマイナス金利政策を導入したが、長期金利がマイナス圏にまで低下し、金融機関の利ざやを大きく低下させた」と伊藤氏も書いている。「金融機関の利ざやを大きく低下させた」ことは「曇り」には入らないのか。さらに言えば、そうした副作用を上回る効果が「マイナス金利政策」にはあったのか。なかったとすれば、それでも「第1の矢は成功」なのか。

安倍政権に関して「インフレ率は0.4%で最も高く、確かにデフレに終止符を打ったといえる」と書いているのも引っかかる。「0.4%」で「デフレに終止符」と言えるのかは、ここでは論じない。問題はアベノミクスによって「デフレに終止符を打った」のかだ。

安倍政権の下ではインフレ目標の2%は達成できなかった。目標未達の原因は、インフレ率を上回る賃金上昇が起きなかったため、消費が大きく伸びず物価上昇が起きなかったことだ。また政府・日銀が2%目標を掲げても、インフレ予想が上がらなかった」と述べている。だとすると「物価上昇」を起こす力はアベノミクスにはなかったと評価する方が自然だ。

伊藤氏が記事で論じている「98年以降」で言えば「インフレ率」は0%近辺でほぼ横ばいだ。安倍政権の「インフレ率は0.4%」もこの範囲に入っている。無茶な金融緩和をやった割に大きな変化は起きなかったと見ていい。目立った「物価上昇が起きなかったこと」は伊藤氏も認めている。なのにアベノミクスで「デフレに終止符を打った」ように書くのは頂けない。

ついでに「オーバーシュート型コミットメント」に関する記述にも注文を付けたい。

日銀が導入した政策は先進的な内容を含んでいる」と伊藤氏は前向きに評価するが「米連邦準備理事会(FRB)」が後追いしてくれたからと言って優れている訳ではない。「2%達成後」も「長期金利の水準をほぼ0%」に維持するのならば、預金金利も「ほぼ0%」だろう。この場合、実質金利のマイナスは「2%」を超えてくる。預金の実質的価値は1年で2%以上も減る。

個人的にはこれに耐えられない。インフレ税だと感じるし、そうなれば為替リスクを負ってでも外貨に資産を移したい。安倍政権下で「デフレに終止符を打った」のに、なぜ実質金利を大幅なマイナスにする必要があるのか。「FRBもそうだから」以外の説明が欲しい。


※今回取り上げた記事「経済教室~アベノミクスの総括(上)デフレ脱却と経済好転 成果」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200928&ng=DGKKZO64238120V20C20A9KE8000


※記事の評価はD(問題あり)

2020年9月27日日曜日

情緒的な主張が目立つ日経 山内菜穂子政治部次長の「風見鶏~『幸せ』視点の少子化対策」

 27日の日本経済新聞朝刊総合3面に載った「風見鶏~『幸せ』視点の少子化対策」は情緒的な主張が目立った。記事の後半部分を見てみよう。

二連水車(福岡県朝倉市)
    ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

これからの少子化対策は何を重視すべきか。駒村康平慶応大教授は「不妊治療のニーズが高まる根底には、長時間労働や不安定な労働がある」と指摘し、働き方改革を挙げる。「少子化は社会のゆがみの結果であることを直視すべきだ」

世界をみれば新しい成長のあり方を模索する動きがある。フランス政府は19年、「使命を果たす会社」という新たな会社の形態を法で規定した。仏食品大手ダノンは6月、この形態へ定款を変更した。社会や環境などで目標を設定し、第三者が進捗状況を監督する。

首相は官房長官として、男性の国家公務員に1カ月以上の育休取得を促す制度の創設を主導した。4月から6月までに子どもが生まれた男性職員の85%が、1カ月以上の育休を取得する見込みという。長時間労働は晩婚化の原因の一つとも指摘されてきた。中小企業を含めて働き方改革のレベルをもう一段上げるには、法整備などで政府の強い後押しが不可欠だ。


◎「少子化は社会のゆがみの結果」?

少子化は社会のゆがみの結果」だと「駒村康平慶応大教授」に語らせ「長時間労働」の是正を求めている。しかし、筆者の山内菜穂子政治部次長はこの政策が有効だと言えるデータを示していない。

北欧諸国は労働時間が日本より少ないが「少子化」傾向は共通して見られる。北欧レベルでもやはり「長時間労働」なのか。それとも北欧には別の「ゆがみ」があるのか。

OECD加盟国で言えば出生率の1位はイスラエルで2位がメキシコ。この2国は2019年の1人当たり年間労働時間で日本を上回る。メキシコはOECDでトップの「長時間労働」だ。こうした事実は「長時間労働」をなくしても「少子化」克服にはつながらないと示唆している。

記事の続きを見ていこう。


【日経の記事】

もう一つは子どもへの視点だ。池本美香日本総合研究所上席主任研究員は「出生数ではなくどんな家庭環境の子どもでも幸せにするという目標が要る」と語る。

中間的な所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の割合「子どもの貧困率」は18年時点で13.5%に上る。新型コロナウイルスによる危機は非正規など不安定な雇用で働く人に追い打ちをかけた。小売業など職種によっては親が在宅勤務できず、長期の休校中、子どものケアが十分にできなかった家庭も多い。

全国の児童虐待相談対応件数(速報値)は1~5月、前年比で1割増えた。切れ目なく子どもを見守るには学校や保育園といった現場のほか、厚生労働省や文部科学省、警察庁など省庁間の連携も鍵となる。コロナ禍を機に、子どもの貧困や格差の問題にもっと目を向ける必要があるだろう。

少子化は社会を映す鏡といわれる。余裕をもって子どもと向き合える働き方を目指し、親の経済状況にかかわらず子どもがチャンスをつかみ取れるように支援する――。首相には、安心して新しい家族をつくることができる社会へ政策を着実に実行してほしい。それは結果的に少子化対策となるはずだ


◎「結果的に少子化対策となるはず」?

余裕をもって子どもと向き合える働き方を目指し、親の経済状況にかかわらず子どもがチャンスをつかみ取れるように支援する」ことが重要だとの主張には同意できる。しかし「それは結果的に少子化対策となるはずだ」との見方には賛成できない。山内次長が何ら根拠を示していないからだ。「少子化対策となる」かどうかはエビデンスに基づいて議論すべきだと思えるが…。


※今回取り上げた記事「風見鶏~『幸せ』視点の少子化対策」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200927&ng=DGKKZO64237020V20C20A9EA3000


※記事の評価はD(問題あり)。山内菜穂子次長への評価は暫定C(平均的)から暫定Dへ引き下げる。山内次長に関しては以下の投稿も参照してほしい。

説得力欠く日経 山内菜穂子政治部次長の「風見鶏~少子化対策 失われた30年」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/08/30.html

2020年9月26日土曜日

日経ビジネスでのMMT否定論が支離滅裂に近い東京財団政策研究所の早川英男氏

 「現代貨幣理論(MMT)」を否定する主張で説得力があるものを見たことがない。日経ビジネス9月28日号に載った「INTERVIEW~MMTは日本を救う理論なのか」もそうだ。東京財団政策研究所上席研究員の早川英男氏の主張は、説得力を欠くと言うより支離滅裂に近い。

有明佐賀空港 空港公園のYS-11型機
      ※写真と本文は無関係です

早川氏の話をまとめて記事にした記者の責任なのかもしれないが、いずれにしても問題ありだ。一部を見てみよう。


【日経ビジネスの記事】

「インフレにならない限り、財政赤字には問題がない」「インフレになったら税金を増やせばいい」──。こうした現代貨幣理論(MMT)の主張には安易に賛成できない。物価が上昇し始めたら単純に金利を上げればいいという主張は中央銀行からすれば恐ろしい。日本の債務残高はGDPの2倍を超え、世界的に見ても相当高い水準だ。利上げした途端に支払利子が大幅に増加してしまう。財政をいくらでも出動できるという考えはマーケットを壊しかねない。


◎何を言っているのか…

インフレにならない限り、財政赤字には問題がない」「インフレになったら税金を増やせばいい」というのが「現代貨幣理論(MMT)の主張」との認識には問題を感じない。しかしなぜか「物価が上昇し始めたら単純に金利を上げればいいという主張は中央銀行からすれば恐ろしい」と展開してしまう。「物価が上昇し始めたら単純に増税すればいいという主張は~」とならないと辻褄が合わない。

また「物価が上昇し始めたら単純に金利を上げればいいという主張は中央銀行からすれば恐ろしい」という説明にも疑問が残る。「利上げした途端に支払利子が大幅に増加してしまう」のは「中央銀行」ではなく政府だ。「中央銀行が政府を心配して…」という弁明は成り立つが「中央銀行からすれば恐ろしい」と「中央銀行」に限定する理由が分からない。「政府からすれば恐ろしい」の方が自然だ。

支払利子が大幅に増加してしまう」と「マーケットを壊しかねない」と早川氏は見ているようだが、これも解せない。

日銀が長期金利をコントロールして0%近辺に張り付いている今の状況を「マーケット」が壊れていると見るのは分かる。だが、早川氏としては「インフレ→金利上昇(国債価格下落)」となると「マーケット」が壊れると訴えたいようだ。国債価格が暴落したとしても、市場関係者が自由に売買してその需給が価格に反映されるのならば市場は壊れていない(機能している)と思えるが…。

さらに言えば「財政をいくらでも出動できるという考えはマーケットを壊しかねない」という説明は「MMT」の否定になっていない。「インフレにならない限り、財政赤字には問題がない」というのが「MMT」の主張だと早川氏自身が最初に述べている。つまり「財政をいくらでも出動できるという考え」ではない。「インフレにならない限り財政をいくらでも出動できるという考え」だ。条件が付いている。

なのに「インフレ」になった時に「財政をいくらでも出動できる」と考えるのは危ないと訴えて意味があるのか。

まともな否定論を展開できないまま「もっとも、MMTにも『信用創造』に関する考え方には納得のいく部分はある」と肯定できる部分の話に移っていく。こちらには特に問題を感じない。だったら「MMT」肯定論で一貫させた方が説得力は出るだろう。


※今回取り上げた記事「INTERVIEW~MMTは日本を救う理論なのか」https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00605/?P=4


※記事の評価は見送る。「MTT」に関しては以下の投稿も参照してほしい。

岩村充 早大教授が東洋経済オンラインで展開した「MMT」否定論に疑問
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/03/mmt.html

MMTの否定に無理あり 日経 菅野幹雄氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/mmt-deep-insight.html

「MMTは呪文の類」が根拠欠く日経 上杉素直氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/mmt-deep-insight.html

2020年9月25日金曜日

「鶴田元本社社長のお別れの会」が写真付き2段見出し…自社モノを大きく扱う日経の読者軽視

日本経済新聞の自社モノの扱いが気になる。25日の朝刊社会面に載った「鶴田元本社社長のお別れの会~各界から800人が参列」という記事は写真付きの2段見出しで、そこそこ目立つ。これは日経の読者にとって適切な扱いなのか。

九州佐賀国際空港※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。


【日経の記事】

日本経済新聞社の社長・会長を務め、3月13日に死去した鶴田卓彦氏の「お別れの会」が24日午前11時から東京・帝国ホテルで開かれた。各界から約800人が参列し、故人をしのんだ。

新型コロナウイルス感染症予防のため、順次献花する形となった。マスクを着けた参列者は、鶴田氏の遺影の前に設けられた献花台に次々と白いカーネーションを供えた。

参列者は献花の後、別室に展示された写真や映像を見ながら故人のありし日を振り返った。

政界からは山東昭子参院議長や西村康稔経済財政・再生相、東京都の小池百合子知事、経済界からは元経団連会長でキヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長らが参列した。


◎死亡記事で十分では?

鶴田卓彦氏」の死亡記事を載せるなとは言わない。しかし「お別れの会」を開いたことを読者に伝える必要があるのか。「鶴田卓彦氏の『お別れの会』」は日経にとって重要かもしれないが、読者にとっての重要性は非常に低いと思える。

自社モノを大きく取り上げることを「恥ずかしい」「読者軽視」と見る社員はかなりいるだろう。しかし、編集局の判断としては写真付き2段見出しになってしまう。そこに日経の問題点が透けて見える。

自社モノに関して問題を感じた記事をもう1つ挙げておく。24日朝刊経済面に載った「R&I顧問に杉本氏~前公取委員長」というベタ記事だ。全文は以下の通り。


【日経の記事】

格付投資情報センター(R&I)は23日、公正取引委員会前委員長の杉本和行氏を20日付で顧問に迎えたと発表した。杉本氏は財務省出身。財務次官などを経て13年3月から7年半、公取委員長を務めた。


◎R&Iの「顧問」人事が要る?

格付投資情報センター(R&I)」は上場企業でもなければ、著名な企業でもない。その会社の「顧問」の人事をベタ記事とはいえ載せる意義があるのか。

R&I」が日経グループの企業だから記事にしたのだろう。あとは「杉本和行氏」への気遣いか。「財務次官などを経て13年3月から7年半、公取委員長を務めた」大物をグループ企業の「顧問」に迎えたのに記事にしないのは失礼と考えたのかもしれない。

しかし、一読者の立場から見ると、経済面でベタ記事として取り上げるべき人事情報とはとても思えない。

自社モノであっても記事は記事だ。ニュースとしての価値が低ければ、紙面化の優先順位はきちんと落としてほしい。どうしても記事として載せたい場合でも、できるだけ扱いを小さくすべきだ。そこにメディアとしての良識がにじみ出るのではないか。


※今回取り上げた記事

鶴田元本社社長のお別れの会~各界から800人が参列」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200925&ng=DGKKZO64203090U0A920C2CR8000

R&I顧問に杉本氏~前公取委員長」https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64144860T20C20A9EE8000/


※記事の評価は見送る