2018年10月8日月曜日

記事の手抜きが過ぎる週刊ダイヤモンド新井美江子記者

週刊ダイヤモンドの新井美江子記者はこんな手抜き記事を書いて、書き手としての良心が痛まないのか。10月13日号の「1両1000万円のコスト減に成功!~JR傘下で覆した電車の常識」という記事は、厳しく言えば読者への騙しだ。
九重"夢"大吊橋(大分県九重町)
       ※写真と本文は無関係です

見出しからは「電車の常識」を覆すようなコスト削減策が最近になって実現したような印象を抱くはずだ。しかし、記事の内容を見るとかなり怪しい。

記事の全文を見た上で具体的に指摘したい。

【ダイヤモンドの記事】

東日本旅客鉄道(JR東日本)100%子会社の車両メーカー、総合車両製作所(J-TREC)には今、思わず笑みがこぼれる商品がある。次世代ステンレス車両「sustina(サスティナ)」だ。

2012年9月にブランドを立ち上げて以来、JR山手線や東急田園都市線、都営浅草線などの新型車両に採用が拡大。16年度に50両超、17年度に250両超と、車両製造数を急増させているのだ。

9月4日にJR東日本が発表した横須賀・総武快速線用の745両の新造車両にも採用が見込まれており、製造数は18年度以降もしばらく順調に伸びそうである。

実はこのサスティナ、電車界の常識を打ち破る商品だ。

電車には、飛行機や自動車と違って、長らく当たり前ではなかったことがある。製造における共通プラットフォームの構築だ。電車は、各鉄道会社で差別化へのこだわりが強い。そのため、顧客ごとのニーズに細かく対応することこそ車両メーカーの使命とされ、なかなか実現に至っていなかった。

オーダーメードでも、利益さえ出れば車両メーカーとしては問題ない。しかし、電車は1モデルにつき数両の発注もあり得る典型的な多品種少量生産の製品で、もともと量産効果を出しにくい。何より、国内の車両メーカーの合計供給能力が需要の約1.5倍に上り、価格競争が激化していた。

「過当競争をどう勝ち抜くか」(宮下直人・J-TREC社長)。この状況に風穴をあけるための戦略ブランドこそサスティナなのだ。

誕生のきっかけは、J-TRECの前身である東急車輛製造のJR東日本傘下入りだ。JR東日本の在来線は、JR発足後に導入した新型車両だけで約8000両もある。この大量の車両製造を担うとともに、私鉄の車両も受注。それらに共通のプラットフォームを敷けば、部品の共通化により製造コストを大幅削減できるはず──。この思惑を形にしたわけだ。

実際にサスティナの車両は、ボディーや制御装置などを共通化することで、オーダーメード車両より1車両当たりおおむね1000万円も安く造れるというからコスト効果はばかにできない。モデルごとの差別化は、車両の“顔”と、ボディーのラッピングを変えることで対応。内装もオプションでパーツ等の変更を可能にした。

こうすることで、鉄道会社は差別化された車両を安値で調達できるし、部品メーカーは共通部品を大量納入できる。J-TRECの生産効率も著しく上がった。同型車両を造り続ければいいので工場の仕様変更の必要がない上、習熟度が上がりやすいからだ。

競合メーカーによる安値攻勢は熾烈化するばかりだが、鉄道製造に“共通化”を持ち込んだJ-TRECは一つの解を見つけたともいえる。

◇   ◇   ◇

問題点を列挙してみる。

(1)いつ「電車界の常識」を打ち破った?

記事では「実はこのサスティナ、電車界の常識を打ち破る商品だ」と書いているが、いつ「常識」を打ち破ったのか明示していない。「2012年9月にブランドを立ち上げ」た段階で「共通のプラットフォーム」を用いていたとすれば、それが「電車界の常識を打ち破る」試みであったとしても、6年も前の話だ。「1両1000万円のコスト減に成功!~JR傘下で覆した電車の常識」と今になって打ち出す意味はない。
長崎港(長崎市)※写真と本文は無関係です

「誕生のきっかけは、J-TRECの前身である東急車輛製造のJR東日本傘下入りだ」とも書いている。これも「2012年」の話なので、「1両1000万円のコスト減に成功」したのはこの頃と判断するのが自然だ。だとすれば、なぜ今頃になって記事にしたのか。

推測だが、書くことに困って苦し紛れに手抜き記事で誌面を埋めたのではないか。話が古過ぎるという後ろめたさがあるので「電車界の常識」を打ち破った時期を曖昧にしたと考えれば納得できる。

2012年に立ち上げたブランドを「次世代ステンレス車両『sustina(サスティナ)』」と書いてしまうところにも「ごまかし」を感じる。どこが「次世代」なのか。バリバリの現役世代ではないのか。


(2)「共通化」はJ-TRECの専売特許?

「実はこのサスティナ、電車界の常識を打ち破る商品だ」「競合メーカーによる安値攻勢は熾烈化するばかりだが、鉄道製造に“共通化”を持ち込んだJ-TRECは一つの解を見つけたともいえる」と書いてあると、「鉄道製造」における「共通化」は「J-TREC」だけがやっていると思ってしまう。しかし違うようだ。

7月9日付で東洋経済オンラインに大坂直樹記者が書いた「山手線の『兄弟』を続々と生むメーカーの実力 JR東日本の子会社、『通勤車両』で得意技光る」という記事では以下のように説明している。

【東洋経済オンラインの記事】

自動車業界などで見られるプラットホーム戦略とは、車体の基本部分の仕様をできるだけ共通化することによってコスト削減を図る取り組みだが、この動きが鉄道業界にも波及している。海外の大手メーカーは、独シーメンスの「デジロ」「ベクトロン」、仏アルストムの「コラディア」などのように共通プラットホームを持つ標準車両をブランド化して鉄道事業者に売り込んでいる。

J-TRECも自社の標準車両を「sustina(サスティナ)」というブランドで営業展開している。同社はステンレス製車両を得意としているため、JIS(日本工業規格)でステンレス鋼材の材料記号を意味する「SUS」と、英語で「維持しやすい」を意味する「sustainable」にちなんだという。

日立製作所や川崎重工業も自社の標準車両にブランド名をつけて、鉄道事業者に売り込んでいる。標準車両をベースに開発することにより開発費用を低減できるという点では各社共通だが、サスティナの場合は、JR東日本の車両保守のノウハウをふんだんに活用して、導入後のランニングコストも削減できるのが強みだ。

◇   ◇   ◇

この記事が大筋で正しければ、「鉄道製造」の世界で「共通化」は珍しくない。海外メーカーだけでなく「日立製作所や川崎重工業も自社の標準車両にブランド名をつけて、鉄道事業者に売り込んでいる」。

結局、「共通化」は新しいトレンドでも「J-TREC」独自の取り組みでもないのだろう。仮に「J-TREC」の「共通化」に他社にはない独自性があるのならば、そこを掘り下げるべきだ。


(3)本当に「解を見つけた」?

最後に細かい点を指摘しておきたい。「1車両当たりおおむね1000万円も安く造れるというからコスト効果はばかにできない」と新井記者は書いているが、「1車両当たり」の販売価格がどの程度か分からないと「1000万円」の評価が難しい。何%のコスト削減になるかは欲しいところだ。

記事では「鉄道会社は差別化された車両を安値で調達できる」とも書いているので、「サスティナ」は低コストだが価格も低いはずだ。「1000万円も安く造れる」としても、価格も同じように低くなるのならば「競合メーカーによる安値攻勢は熾烈化するばかりだが、鉄道製造に“共通化”を持ち込んだJ-TRECは一つの解を見つけた」とは言い難い。

コスト削減効果の方が値引き額を上回ると言えるのならば、その状況を新井記者は伝えるべきだ。そもそも「共通化」が業界共通の動きならば「競合メーカーによる安値攻勢」から逃れる「解」になるはずもないが…。


※今回取り上げた記事「1両1000万円のコスト減に成功!~JR傘下で覆した電車の常識」
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/24724


※記事の評価はD(問題あり)。新井美江子記者への評価もDを据え置く。

2018年10月7日日曜日

「都心回帰」の根拠欠く日経「スーパー、都心に重点」

7日の日本経済新聞朝刊総合4面に載った「スーパー、都心に重点 大手20社出店、2割増 駅近立地奪い合い」という記事は苦しい内容だった。「出店エリアの都心回帰」が見られるとの分析は根拠に欠ける。「都心」と「都市部」をごちゃ混ぜに論じているのも引っかかった。
龍門の滝(大分県九重町)※写真と本文は無関係

記事を見ながら、問題点を具体的に指摘してみたい。

【日経の記事】

減少が続いていたスーパー各社の出店数が増勢に転じる。大手20社の2018年度の新規出店数は113店と前年度に比べ2割増える。東京などの都心部は人口流入が続くが、スーパーが少なく買い物に困る人も出ている。各社は駅前などで店舗網を広げ、人口集積による需要を取り込む。食品に注力するドラッグストアなどとの陣取り合戦が激しくなっている。

日本経済新聞社が大手20社に調査した。17年度の調査(15社回答)では、出店数は前年度比1割減。14年度以降出店数の減少が続いていたが、18年度に店舗拡大に転じることが明らかになった。

特徴は出店エリアの都心回帰だ。今年まとめた小売業調査では、首都圏の利便性がよい場所に出店する意向の企業が全国区のスーパー(15社)で約4割、各地域の有力スーパー(33社)で約2割に上った。


◎「都心」出店数の推移なぜ見せない?

上記の説明からは「首都圏の利便性がよい場所=都心」との前提を感じる。しかし「都心」とは「大都会の中心部。特に、東京都の中心部」(デジタル大辞泉)という意味なので、「首都圏の利便性がよい場所」であっても、「都心」に当てはまらない場所はたくさんある。ゆえに「首都圏の利便性がよい場所に出店する意向」を調べても「都心回帰」の動きは分からない。

さらに言えば「全国区のスーパー(15社)で約4割、各地域の有力スーパー(33社)で約2割に上った」と書いているだけで、過去の調査との比較がない。これでは「首都圏の利便性がよい場所に出店する意向」が強まっているかどうかも判断できない。

「特徴は出店エリアの都心回帰だ」と言うならば、「都心」の定義を明確にした上で、「大手20社」の都心出店数の推移を示せば済む。しかし、今回の記事では「都心」の定義も都心出店数も不明だ。

記事の続きを見ていこう。

【日経の記事】

総務省によると東京23区への転入超過数は17年に前年比5%増えた。神奈川県や埼玉県などを含む東京圏でも大型マンションの増加などで、22年連続で転入超過が続く。都市部に人口が集中する一方、スーパーが少ないため「買い物難民」が発生している。7月に東京・飯田橋で小型店を出店した、いなげやの成瀬直人社長は「都心は日常的な買い物で不便な場所が多い」と指摘する。

西友は9月、東京都墨田区のJR錦糸町駅前の複合施設に「西友錦糸町店」を出店した。駅から徒歩1分の立地で総菜売り場を充実させ、共働き世帯や単身のビジネスパーソンを取り込む。西友は親会社の米ウォルマートが売却方針を固め、不採算店の整理を進めるが、集客の見込める駅前立地の店舗は重視する。

ライフコーポレーションは、18年度に前年度より3店多い10店を新規出店する。秋にJR田町駅など駅近くの商業施設で2店を出すほか、世田谷区でも都市型の旗艦店を出店する。

名古屋や大阪でも状況は同じだ。阪急オアシスは4月、JR大阪駅に隣接する商業ビルに、スーパーと外食を組み合わせた店舗を出店した。新業態で仕事帰りの若者ら新規の顧客を開拓する狙いだ。

一方、こうした都心部の物件は他業態との取り合いが激しい。特にドラッグストアの出店スピードはスーパーをしのぐ。

ドラッグストアの総店舗数は3月末時点で1万9534店舗(日本チェーンドラッグストア協会調べ)となり、4年間で約12%増えた。一方、スーパーは2万465店舗(業界3団体調べ)で同期間で約5%の伸びにとどまっている。ツルハホールディングスが業界で初めて2千店を突破するなど出店攻勢を強める。

ドラッグストアは生鮮品も含めた食品の取り扱いを拡充している。ホームセンターも食品の取り扱いを強化。スーパーから顧客を奪おうとする動きが鮮明になっている。

各社は都心立地により安定収益を目指すが、東京を中心に都心部では不動産価格が高止まりし、賃料や建設コストの負担も大きい。より緻密な採算管理が求められそうだ。


◎錦糸町を「都心」と言われても…

「都心」と「都市部」が混ざって出てくるので分かりにくいが、「こうした都心部の物件」という書き方から判断して「東京都墨田区のJR錦糸町駅前」や「世田谷区」も「都心部」だと筆者ら(河野祥平記者と平嶋健人記者)は認識しているのだろう。しかし、一般的には「都心」に入らないはずだ。

ついでに言うと「JR田町駅」といきなり出てくるのも引っかかる。これでは東京にある駅かどうかも分からない。「JR田町駅(東京・港)など駅近くの商業施設で2店を出す」などとすべきだ。東京で記事を書いていると、どうしても東京目線が強くなってしまう。

プロと呼ぶに値する書き手を目指すならば「首都圏以外に住んでいる読者にいきなり『JR田町駅』で伝わるかな」と考えられるようになってほしい。

付け加えると「名古屋や大阪でも状況は同じだ」と書いているのに、「名古屋」の具体例が出てこないのも感心しない。スペースの関係で入れられないのならば「大阪など他の大都市でも状況は同じだ」とすれば問題は解決する。

さらに付け加えると「ドラッグストアの出店」に触れるならば、「都心」での動向に絞るべきだ。「スーパーの都心出店」が記事のテーマなので、「ドラッグストア」全体の動向に2段落を費やすのは無駄だ。


※今回取り上げた記事「スーパー、都心に重点 大手20社出店、2割増 駅近立地奪い合い」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181007&ng=DGKKZO36227320W8A001C1EA4000


※記事の評価はD(問題あり)。河野祥平記者への評価はC(平均的)からDに引き下げる。平嶋健人記者への評価は暫定でDとする。河野記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

50代が「ゆでガエル世代」に見えない日経ビジネスの特集
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/08/50.html

やや看板倒れ 日経ビジネス特集「行きたい大学がない」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/02/blog-post_19.html

「仮想」不在の日経ビジネス「外食に仮想レストランの波」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/12/blog-post_6.html

2018年10月6日土曜日

タイトルから問題あり 日経ビジネス特集「無定年時代」

日経ビジネス10月8日号の特集「『無定年』時代~年金激減後の働き方」には色々と問題を感じた。「『無定年』時代」というネーミングは不正確だし、「年金崩壊カウントダウン」と言う割に「年金崩壊」が起きそうな話は出てこない。瑣末な間違い指摘も含めて、以下の内容で問い合わせを送った。
平和祈念像(長崎市)※写真と本文は無関係です

【日経BP社への問い合わせ】

日経ビジネス編集部 田村賢司様 武田安恵様 吉岡陽様

10月8日号の特集「『無定年』時代~年金激減後の働き方」についてお尋ねします。この中の「定年が近づく前に確認しよう あなたの老後生活 健全度チェック」という記事に以下の記述があります。

「まずは定年時点で、退職金と合わせて貯蓄が3000万円以上あるか確認したい。そして次に、年金、再雇用後の給料など、定年後の収入から支出を差し引いた不足額が100万円以内に収まっているか、チェックしよう『不足額を100万円以内に抑えられれば、貯蓄3000万円を30年かけて取り崩すことで対応できる』と馬養氏は話す。貯蓄が少ない、もしくは支出が100万円を上回る場合は、働く頻度を増やすか支出を抑える努力が求められる」

文脈から考えて「支出が100万円を上回る場合」は「不足額が100万円を上回る場合」の誤りではありませんか。「支出」を用いるならば「支出超過額」でしょうか。

付け加えると、今回の「健康度チェック」は他にも問題ありです。貯蓄1億円で定年直前の年収は1000万円、60歳定年の後は無収入、支出見込み額500万円というケースで考えましょう。

チェック1の「貯蓄額3000万円以上」で10点を得ますが、「定年後の年間収支」で「不足額が100万円超」となって2点、「定年後の仕事の報酬」が「現役時の4割程度より下」で2点に留まり、合計で14点です。4段階評価の下から2番目の「やや危険レベル」となります。「なるべく現役時の半分程度の収入は確保できるよう妻にもパート・アルバイトなどしてもらう」必要があるそうです。納得できますか。

年間500万円を5年間取り崩すとしても65歳時点で7500万円の貯蓄があります。ここでは貯蓄額を1億円としましたが、これが10億円となると「やや危険レベル」には何の説得力もありません。「貯蓄額3000万円以上」を一律に10点としては、適切な評価は困難です。

他にも、特集で引っかかった点を列挙しておきます。まずは「働きたくても働けない~介護離職者の壮絶な戦い」という記事についてです。


(1)「認知症」患者も「健やか」?

記事に出てくる「大久保礼子さん」の気持ちを「母にはいつまでも健やかであってほしい」と記述しています。しかし記事によると大久保さんの母は「認知症」で「町内を徘徊して警察に保護されることも何度もあった」そうです。

「いつまでも健やかであってほしい」というのは、現状が「健やか」な人に使う言葉ではありませんか。かなり進行した「認知症」を抱える大久保さんの母は「健やか」とは言い難いでしょう。


(2)「両立無理」なのにバイトの面接?

記事の前半で大久保さんは「(母親の介護と)仕事の両立なんて到底無理」と語っています。しかし、その後に「飲食店のアルバイト」の面接を受けて「不採用」になった話が出てきます。「両立なんて到底無理」と言っている人がアルバイトの面接に臨むのは辻褄が合いません。

大久保さんは「食品工場の深夜の出荷作業」の求人に触れて「でも、昼間は介護で、夜は仕事では『過労死』してしまう」とも述べています。これも解せません。記事によると、大久保さんの母親はデイサービスに「週3日」通っています。「短期宿泊するショートステイ」も利用しています。だとすれば「週3日」は昼間に働けます。

記事の情報から判断すると、大久保さんは「昼間に週1~3回は働けるのに働いていないだけ」だと思えます。


(3)「働き続けなければならない」=「無定年」?

特集の冒頭で「生計を立てるために働き続けなければならない現実が迫る。いわば、定年がなくなる『無定年』時代の到来だ」と記しています。

「無定年時代」と聞くと「定年がない時代」だと思ってしまいます。しかし「定年が近づく前に確認しよう あなたの老後生活 健全度チェック」という記事もそうですが、特集では「定年後に働き続ける」という前提で話が進みます。これでは「無定年」とは言えません。


(4)所得代替率36%は「年金崩壊」?

「PART 1~年金崩壊カウントダウン 2050年代に積立金は枯渇か」という見出しの「年金崩壊」は大げさだと思いませんか。「2050年代に積立金は枯渇か」となっているので、この頃に「年金崩壊」が起きると見ているのでしょう。

しかし「積立金が枯渇」した「翌52年」でも年金の「所得代替率」は「36.1%」です。「マクロ経済スライドを適切に実施」すると「所得代替率は46.8%と許容範囲内にとどまり、公的年金の機能は維持される」ようですが、10ポイントしか差がありません。

所得代替率36%は「年金崩壊」で、46%ならば「年金崩壊回避」と言えるでしょうか。恣意的に線引きしない限り、2つを「崩壊」と「崩壊回避」に分けるのは難しいでしょう。


(5)なぜ「2030年代前半」?

「PART 1~年金崩壊カウントダウン 2050年代に積立金は枯渇か」という記事に付けたグラフには「2030年代前半には枯渇の恐れが顕在化し、危機感が広がる恐れも」という説明文が付いています。

しかし、なぜ「枯渇の恐れが顕在化」する時期を「2030年代前半」と特定しているのか記事を読んでも分かりません。記事では「2050年代に積立金は枯渇か」と既に「枯渇の恐れ」を伝えているので、「2020年代前半」に「危機感」が広がってもおかしくありません。と言うより、その方が自然です。

「2030年代前半には枯渇の恐れが顕在化し、危機感が広がる恐れも」と書いてあると「2020年代には枯渇の恐れが顕在化せず、危機感も広がらない」との示唆を感じます。なぜそんな書き方をしているのか理解できませんでした。


(6)「中田大悟准教授らの試算」のはずでは?

グラフに関してもう1つ注文を付けます。「積立金」が「2050年代前半」に枯渇する推移を表す線には「中田大悟准教授らの試算」と書いてあります。しかし注記では「日本総合研究所の西沢和彦・主席研究員と創価大学の中田大悟准教授の推計を基に本誌で積立金の推移をイメージ化した。図は2人の作成ではなく、あくまで概念図」と説明しています。

これは感心しません。注記の通りならば、「中田大悟准教授らの試算」ではなく「本誌が描くイメージ(中田大悟准教授らの推計を基に作成)」とでもすべきでしょう。

読者の多くは小さな文字で書かれた注記まで目を通さないはずです。「中田大悟准教授らの試算」との説明を見れば「中田大悟准教授らの試算」をそのままグラフ化したと思うのが自然です。しかし、注記によれば、そうではありません。なぜこんな手法を選んだのですか。これでは「意図的に読者を誤解させようとしている」と思われても仕方がありません。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。

◇   ◇   ◇

回答が届けば内容を紹介したい。

追記)回答に関しては以下の投稿を参照してほしい。

日経ビジネス特集「無定年時代」への問い合わせに回答あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/blog-post_10.html



※今回取り上げた特集「『無定年』時代~年金激減後の働き方」
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/special/100201085/?ST=pc

※特集の評価はD(問題あり)。担当者らの評価は以下の通りとする(敬称略)。

田村賢司(Dを維持)
武田安恵(Dを維持)
吉岡陽(C→D)

2018年10月5日金曜日

空の「安全神話」そもそもある? 週刊ダイヤモンド「新幹線vs飛行機」

週刊ダイヤモンド10月6日号の特集「移動の覇者はどっち? 新幹線vs飛行機 十番勝負」について追加で問題点を指摘したい。取材班では「陸・空共に、安全神話が崩れつつある」と見ているようだが、そもそも「飛行機」に「安全神話」があるのか。
新地中華街(長崎市)※写真と本文は無関係です

取材班へは以下の問い合わせを送った。

【ダイヤモンドへの問い合わせ】

週刊ダイヤモンド編集部 柳澤里佳様 浅島亮子様 松野友美様 新井美江子様

10月6日号の特集「移動の覇者はどっち? 新幹線vs飛行機 十番勝負」の中の「Prologue 安全神話も4時間の壁も崩壊~新幹線vs飛行機 50年戦争の『その先』」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは「飛行機」の「安全神話」に関する以下のくだりです。

「だが最近、この最強モビリティーの様子がおかしい。陸・空共に、安全神話が崩れつつあるのだ。(中略)飛行機には災害が襲った。9月、台風21号による高潮の影響で関西国際空港が水浸しになった。関空連絡橋にタンカーが衝突し、海上空港の関空が孤立した。関空は空港民営化の先行事例だ。関空を運営する関西エアポートの初動対応が遅れたことで、8000人もの乗客が閉じ込められた。『これは天災ではなく人災だ』(航空会社幹部)という声が絶えない」

「安全神話」とは「確実な証拠や裏付けがあるわけではないが、絶対に安全だと信じられている事柄」(デジタル大辞泉)を指します。「飛行機」に関しては1985年の日航機墜落事故など数多くの死亡事故が起きていることを利用者の多くが知っています。ゆえに「安全神話」が成立する余地はありません。

また、「関空連絡橋にタンカーが衝突し、海上空港の関空が孤立した」ことは「飛行機」の「安全神話」と直接の関係がないのではありませんか。これは「飛行機」の事故とは言えません。

仮に「関空が孤立した」ことを以って「安全神話が崩れつつある」と判断するのならば、それよりはるかに重大な墜落事故が過去にあっても「安全神話」が崩れなかったことと整合しません。

「飛行機」に関して「安全神話が崩れつつある」との説明は、誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

御誌では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた特集「移動の覇者はどっち? 新幹線vs飛行機 十番勝負」
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/24659


※特集全体の評価はD(問題あり)。担当者らの評価は以下の通り(敬称略)。

柳澤里佳(暫定C→暫定D)
浅島亮子(Dを維持)
松野友美(暫定D)
新井美江子(C→D)

※今回の特集に関しては以下の投稿も参照してほしい。

大宮からUSJ「2時間」で行ける? 週刊ダイヤモンド「新幹線vs飛行機」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/usj-vs.html

「4時間の壁」崩壊に無理がある週刊ダイヤモンド「新幹線vs飛行機」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/4vs.html

マンションバブル崩壊を「最悪」と日経ビジネス奥平力記者は言うが…

良いか悪いか単純には割り切れないことが世の中にはたくさんある。「首都圏のマンションバブル」が起きたとして、その「崩壊」は「最悪のシナリオ」と言えるだろうか。ある人にとっては「最悪」でも、別の人にとっては歓迎すべき事態だ。記事を書く時はそうした点に注意を払う必要がある。
九重"夢"大吊橋(大分県九重町)
       ※写真と本文は無関係です

「増税が景気を後退させ、さらに需要が弱まるようなことになれば、首都圏のマンションバブル崩壊に至るといった最悪のシナリオも否定できない」と書いていた日経ビジネスの奥平力記者には、瑣末な間違い指摘と併せて問い合わせを送った。回答と共に内容を紹介したい。


【日経BP社への問い合わせ】

日経ビジネス編集部 奥平力様

10月1日号の「時事深層 INDUSTRY~首都圏のマンションバブル終焉か 一部で大幅値下げ、消費増税で値崩れも」という記事についてお尋ねします。記事では「学生寮」に関して「東急不動産はこの春、第1号物件を東京都豊島区にオープンさせた」「同社は来春に向けてさらに2棟を都内で開発中」と記しています。

東急不動産のホームページを見ると、豊島区の「第1号物件」の他に、キャンパスヴィレッジ赤羽志茂(東京都北区)、キャンパスヴィレッジ元住吉(神奈川県川崎市)、キャンパスヴィレッジ京都西京極(京都市)という3物件の情報が出ていて、いずれも「2019年3月オープン」となっています。

ホームページの情報が正しければ「2棟を都内で開発中」ではなく「3棟を東京、神奈川、京都で開発中」です。「都内」に限るならば「2棟」ではなく「1棟」です。記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。ホームページに都内のもう「1棟」の情報が抜けている可能性もあるとは思います。

付け加えると「学生寮」よりも「学生向けマンション」「学生向け賃貸住宅」などとした方が適切かもしれません。「学生寮」と聞くと、「学校が用意した学生用住居」をイメージしてしまいます。なので記事を最初に読んだ時は、東急不動産が寮を建設して大学などに販売するのかと思いました。

せっかくの機会なので、記事に関して他に気になった点を挙げてみます。

(1)「マンションバブル」と言える理由は?

「首都圏のマンションバブル終焉か」と見出しにも出てきますが、「バブル」状態だと言えるのでしょうか。記事では「不動産経済研究所(東京・新宿)の調査では17年の東京23区の平均販売価格は前年比6.9%増の7089万円。バブル期以来の水準で、サラリーマン世帯には手が届きにくい状況になった。郊外の物件でも、人件費など施工費用の上昇により価格が高止まりしている」と書いています。これだけでは「バブル」と言うほどでもありません。

記事に付けた「販売の鈍化傾向が顕著だ」というタイトルのグラフを見ても、2013年以降の「首都圏のマンション契約率」は高い時期でも80%をわずかに超える水準です。「どういう状況であればバブルか」に明確な基準はないのでしょうが、「投機的な動きがマンションの販売価格を持続不可能な水準へと急激に押し上げている」と実感できる材料が欲しいところです。今回の記事には、それが見当たりません。


(2)バブル崩壊は「最悪のシナリオ」ですか?

記事では「増税が景気を後退させ、さらに需要が弱まるようなことになれば、首都圏のマンションバブル崩壊に至るといった最悪のシナリオも否定できない」と説明しています。これに関しては「どの立場で記事を書いているのか」との疑問が湧きました。

マンションディベロッパーの立場で言えば「マンションバブル崩壊」は「最悪のシナリオ」でしょう。マンションのオーナーにとっても資産価値の低下につながるので嬉しい話ではないと思えます。

しかし、これからマンションを買おうと思っている人にとってはどうでしょうか。「サラリーマン世帯には手が届きにくい状況」が解消されて、買いやすくなります。多くの人にとってメリットがあるのですから、単純に「最悪のシナリオ」と書くのはお薦めしません。例えば「ディベロッパーにとって最悪のシナリオ」となっていれば納得できます。

「サラリーマン世帯には手が届きにくい状況」と言えるほどマンション価格が高くなっているならば「マンションバブル崩壊」は基本的に好ましいと個人的には思います。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。


【日経BP社の回答】

いつも弊誌「日経ビジネス」をご愛読いただき、誠にありがとうございます。10月1日号の時事深層「首都圏のマンションバブル終焉か」にお問い合わせいただいた件につきまして、回答いたします。

記事中、「同社(東急不動産)は来春に向けてさらに2棟を都内で開発中」との記述について、都内に限るなら2棟ではなく1棟ではないかとのご指摘をいただきました。取材内容を踏まえた記述でしたが、あらためて確認したところ、ご指摘の通り1棟は神奈川県内であり、「首都圏で開発中」とするのが適当なことが分かりました。10月15日号で訂正を載せる予定です。今後、編集段階でのチェックを一層強化して参りたいと考えております。

学生寮、マンションバブルなどのご指摘については今後の編集の参考にさせていただきたいと存じます。ご意見ありがとうございました。

◇   ◇   ◇

間違い自体は大したことはない。この程度で訂正を出すのは立派だと思う。間違えたのならば訂正を出すべきではあるが、奥平力記者に少し申し訳ない気もする。


※今回取り上げた記事「時事深層 INDUSTRY~首都圏のマンションバブル終焉か 一部で大幅値下げ、消費増税で値崩れも」
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/depth/092501218/?ST=pc


※間違いはあったが、適切な対応を考慮して、記事への評価はC(平均的)とする。奥平力記者への評価も暫定でCとする。

2018年10月4日木曜日

投資に関する知識不足を感じる日経 川鍋直彦記者

「投資に関する知識が不十分なまま記事を書いているのでは」と疑いたくなる記者を見つけた。日本経済新聞の川鍋直彦記者だ。なぜ疑念を抱いたかに関しては、日経に送った問い合わせの内容を見てほしい。
長崎駅(長崎市)※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 川鍋直彦様

3日夕刊マネーダイニング面の「やりくり一家のマネーダイニング~『ほったらかし』投資のメンテ法 資産配分、年1回調整を」という記事についてお尋ねします。問題としたいのはリバランスに関する以下のやり取りです。

良男 どんな方法で?

幸子 (1)比率が高まった資産を売却し、その資金で比率が下がった資産を買う(2)比率が下がった資産を買い増す――の大きく2つよ。比率が下がっているということは評価額も下がっているということだから、安値で買えるの。すると、将来の値上がり益を期待できるわね。

「比率が下がっているということは評価額も下がっているということ」でしょうか。個人向け国債1000万円、日経平均連動型投信1000万円で運用を始めるケースを考えてみましょう。日経平均株価の上昇によって投信が1500万円になり、個人向け国債に債務不履行が起きていない場合、債券の比率は50%から40%に低下します。

この場合「比率が下がっているということは評価額も下がっているということ」になりますか。個人向け国債の「評価額」は1000万円で変わっていません。「比率が下がっているということは評価額も下がっているということだから、安値で買えるの」という説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

付け加えると「すると、将来の値上がり益を期待できるわね」という説明にも問題があります。例えば、投資対象が株式投信の場合、安値で買おうと高値で買おうと「将来の値上がり益」は「期待」できます。前述の例で言えば、50%の上昇となった日経平均連動型投信は「将来の値上がり益」が「期待」できなくなった訳ではありません。

また、個人向け国債に関しては「比率が下がっている」からと言って買い増しても「将来の値上がり益」は「期待」できません。「幸子」の説明は色々な意味で問題ありです。

せっかくの機会なので、他の気になった点も挙げておきます。

まずは以下のやり取りです。

(1)答えになってますか?

満 リバランスはしないという選択肢はないの?

幸子 GPIFの17年3月末と18年3月末を比較すると国内株の比率が上がり国内債が下がっているけれど、国内債は低金利の影響で投資しづらい環境が続いているから、25%を下限とする比率を現預金などの短期資産と合算して判断することにしたわ。あと見落としがちなのは、非課税口座以外ではリバランスした際の投信の一部換金益が課税対象となるから、その分リターンが少なくなることね。


これは「リバランスはしないという選択肢はないの?」という問いの答えになっていません。「リバランスはしないという選択肢はあり」に近いのかもしれませんが微妙です。どういうやり取りにするかは筆者が自由に決められるのですから、問いと答えはきちんと合わせるべきでしょう。

次は以下のやり取りです。

(2)「バランス型投信」の「変動」とは?

良男 リバランス以外で気をつける点は?

幸子 株価指数などに連動するインデックス投信を組み合わせるのではなく、バランス型投信で運用しているなら自分が期待した利回りになっているか確認しておきたいわ。インデックス投信は指数の動きから大きく離れることはないけど、バランス型投信は変動があるのがふつうよ。

ここでは「インデックス投信は指数の動きから大きく離れることはないけど、バランス型投信は変動があるのがふつうよ」という説明が理解できませんでした。「変動」が「基準価額の変動」という意味ならば「インデックス投信」にも「変動」はあります。

「指数」からの乖離を「変動」と呼んでいるのかとも思いましたが、「バランス型投信」はそもそも特定の「指数」に連動するものではないので、乖離を考えても意味がありません。「合成ベンチマーク」との乖離を言っているのかとも思いましたが、そういう説明はしていません。ここで言う「変動」とは何を指すのでしょう。

見出しにも注文を付けておきます。

(3)矛盾していませんか?

「『ほったらかし』投資のメンテ法」には矛盾を感じます。リバランスなどで「メンテ」をするのならば、「『ほったらかし』投資」とは思えません。


(4)本文と食い違ってませんか?

「資産配分、年1回調整を」と見出しではなっています。ところが、記事を読むと「年1回は資産状況を確認したいわ」「大きく乖離していたら、元の比率に戻すことを考えたほうがいいわ」とは書いているだけです。「年1回調整を」とは言えません。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社の一員として、責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「やりくり一家のマネーダイニング~『ほったらかし』投資のメンテ法 資産配分、年1回調整を」

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181003&ng=DGKKZO36057380T01C18A0NZKP00


※記事の評価はD(問題あり)。川鍋直彦記者への評価も暫定でDとする。

2018年10月3日水曜日

「バブル崩壊後の最高値27年ぶり更新」と誤った日経 梶原誠氏

「日経平均株価が27年ぶりにバブル崩壊後の最高値を更新した」と記事の冒頭で日本経済新聞の梶原誠氏(肩書は本社コメンテーター)が書いていた。「27年ぶり高値=27年ぶりバブル崩壊後の最高値更新」ではないことを梶原氏は理解していないようだ。
震動の滝(大分県九重町)※写真と本文は無関係

あまりに初歩的な間違いであり、見ていて辛くなる。「もう記事を書かせない」でもいい。「書かせる時はしっかり補佐する」でもいい。社内の誰かが梶原氏を助けてあげてほしい。

日経に送った問い合わせの内容は以下の通り。

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 本社コメンテーター 梶原誠様

3日の朝刊オピニオン面に載った「Deep Insight~周回遅れのバブル後高値」という記事についてお尋ねします。記事の冒頭で梶原様は「日経平均株価が27年ぶりにバブル崩壊後の最高値を更新した」と書いています。

「更新した」時期を明示していませんが、常識的に考えて「直近1週間で」と仮定しましょう。記事の説明が正しければ、「27年」前(1991年)に付けた「バブル崩壊後の最高値」があって、それをこの1週間で「更新」しているはずです。

しかし、91年はまだ株式市場で「バブル崩壊」が進行している段階なので、一般的にこの時の株価を「バブル崩壊後の最高値」とは言いません。長く「バブル崩壊後の最高値」とされてきたのは96年6月の2万2666円です。

日経電子版で2017年11月8日付の「日経平均、周回遅れの高値 企業収益と国内景気にかい離」という記事を見ると「7日の日経平均株価は前日比389円高の2万2937円まで上昇し、1992年1月以来、25年10カ月ぶりの高値をつけた。96年6月につけたバブル崩壊後の高値(2万2666円)を更新した」と説明しています。

つまり、2018年時点で言う「バブル崩壊後の最高値」は17年以降に付いているはずです。この1週間で「バブル崩壊後の最高値を更新した」とすれば、それは過去1年に付けた「バブル崩壊後の最高値を更新」しているだけです。

3日の朝刊マーケット総合1面の記事では「日経平均株価は小幅ながら3日続伸した。連日で1991年11月13日以来およそ27年ぶりの高値を付けた」と書いています。2日に関して言えば「日経平均株価が27年ぶりにバブル崩壊後の最高値を更新した」のではなく「日経平均株価が連日でバブル崩壊後の最高値を更新し、27年ぶりの高値となった」のです。

梶原様の「日経平均株価が27年ぶりにバブル崩壊後の最高値を更新した」との説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

「27年ぶりにバブル崩壊後の最高値を更新した」と「バブル崩壊後の最高値を更新し、27年ぶりの高値となった」を混同してしまうとすれば、マーケット関連記事を書くに当たって初歩的な段階で躓いているはずです。今後もマーケット関連記事を書き続ける場合、しっかりした補佐役を付けて指導を仰ぐべきでしょう。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社の一員として、責任ある行動を心掛けてください。

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追記)結局、回答はなかった。



※今回取り上げた記事「Deep Insight~周回遅れのバブル後高値」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181003&ng=DGKKZO36029090S8A001C1TCR000


※記事の評価はE(大いに問題あり)。梶原誠氏への評価はDからEへ引き下げる。梶原氏については以下の投稿も参照してほしい。

日経 梶原誠編集委員に感じる限界
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_14.html

読む方も辛い 日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post.html

日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」に見えるご都合主義
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_17.html

ネタに困って自己複製に走る日経 梶原誠編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_18.html

似た中身で3回?日経 梶原誠編集委員に残る流用疑惑
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_19.html

勝者なのに「善戦」? 日経 梶原誠編集委員「内向く世界」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_26.html

国防費は「歳入」の一部? 日経 梶原誠編集委員の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_23.html

「時価総額のGDP比」巡る日経 梶原誠氏の勘違い
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/gdp.html

日経 梶原誠氏「グローバル・ファーストへ」の問題点
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/blog-post_64.html

「米国は中国を弱小国と見ていた」と日経 梶原誠氏は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_67.html

日経 梶原誠氏「ロス米商務長官の今と昔」に感じる無意味
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/04/blog-post.html

ツッコミどころ多い日経 梶原誠氏の「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/deep-insight.html

低い韓国債利回りを日経 梶原誠氏は「謎」と言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_8.html

「地域独占」の銀行がある? 日経 梶原誠氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_18.html

日経 梶原誠氏「日本はジャンク債ゼロ」と訴える意味ある?
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_25.html