2017年4月10日月曜日

庶民感覚ゼロの日経「社外取締役報酬、米の4分の1」

会社の経営内容をチェックする社外取締役を任され、会議のために年間に30~40回は出社する必要があるとしよう。この仕事で年700万円近くもらえたら「少なすぎる」と感じるだろうか。個人的には「非常においしい」と思える。しかし9日の日本経済新聞朝刊総合5面に載った「社外取締役報酬、米の4分の1  年669万円 不十分との指摘も 待遇改善、検討そろり」という記事の筆者の考えは逆のようだ。「日本の社外取締役は報酬が低すぎるかも。何とかしてあげた方がよくないか」と訴えかけるような内容になっている。

鎮西身延山 本佛寺の桜(福岡県うきは市)
        ※写真と本文は無関係です
【日経の記事】

日本の企業統治改革の中で中心的な役割を期待されている社外取締役。その報酬は米欧企業に比べて低く、平均水準は米国の約4分の1にとどまることが分かった。経営参画の度合いや責任が高まる中で十分な報酬を受け取っていないとの声も出ている。J・フロントリテイリングのように株式報酬の導入によって社外取締役の待遇改善を検討する企業も出てきた。

労務行政研究所の調査(119社の228人が対象)によると、2016年度の社外取締役の年間報酬は平均で669万円。最多は100万~499万円(38%)で、次に多いのが500万~999万円(36%)だった。企業規模が小さくなるほど報酬が低くなる傾向が強く、100万円未満の企業も5%あった。

米欧の社外取締役の平均報酬は日本よりも高い。「米国の相場は平均20万~30万ドル(2200万~3300万円)で、欧州も15万ユーロ(1770万円)程度をもらう例が多い」(経営者報酬コンサルタントの米タワーズワトソン)という。

報酬格差は社外取締役の時間的な負担の違いによる面があるようだ。

企業統治に詳しいコンサルティング会社、エゴンゼンダー(東京・千代田)の調査では、日本企業の取締役会の年間開催時間は約24時間と米国のおよそ半分だった。米欧企業では2カ月に1回の頻度で丸1日の時間をかけて議論する場合も多いが、日本企業では1回2時間弱の会議を年15回近く開く例が多いという。

ただ日本でも負担が増えつつあるのが現状だ。社外取締役が中心となってトップの人事や報酬を議論する指名・報酬委員会の設置が広がるなど一段の経営参画を求められるようになっているからだ。ある大手銀行の社外取締役は「(業務執行が適正かどうかチェックする)監査委員会が年20回近く開かれ、報酬に比べて負担が重い」と話す。

◇   ◇   ◇

欧米との比較でよく見られる傾向だが、「欧米=あるべき姿」と捉えて、日本は欧米に近付くように努力すべきだと考えやすい。この記事にもその雰囲気がある。「社外取締役報酬、米の4分の1」「待遇改善、検討そろり」という見出しからも、その傾向がうかがえる。
平尾台(北九州市)※写真と本文は無関係です

だが、「米の4分の1」だからと言って「日本は低すぎる」と決め付けるのは短絡的だ。「米国が高すぎる」という見方もできる。そもそも「適正水準があって、そこに両国が収まるべき」との前提を置く必要があるのかも疑わしい。

さらに言えば、社内取締役の報酬はどうなのか。社内取締役の報酬も米国より大幅に低いのであれば、社外取締役の報酬だけ取り出して「待遇改善」を論じる意味は乏しくなる。

さらに気になるのが筆者の「庶民感覚」のなさだ。記事では「ある大手銀行の社外取締役は『(業務執行が適正かどうかチェックする)監査委員会が年20回近く開かれ、報酬に比べて負担が重い』と話す」と書いている。この社外取締役の報酬は不明だが、仮に平均的な700万円だとしよう。それで「監査委員会が年20回近く開かれ」ると聞いたら、「報酬に比べて負担が重い」と同情してあげたくなるだろうか。

ごく普通の会社員ならば「贅沢な悩みだな」と思う人が多いのではないか。自分が株主だったら「700万円も払ってるんだから、年20回程度の会議は文句を言わずに出てくれ」と注文を付けたくなる。しかし、記事の筆者の考えは全く逆だ。

【日経の記事】

日本でも大手企業の社外取締役の報酬は米欧企業と比べてもあまり遜色がない水準に設定されており、トヨタ自動車や三菱商事などでは平均2000万円を超えている。中堅以下の企業の報酬が低めに設定され、全体の平均を押し下げている面が大きい。


流川桜並木(福岡県うきは市)
     ※写真と本文は無関係です
日本取締役協会の松本茂執務室長は「報酬が低すぎると、執行部の監督という果たすべき役割がおろそかになる恐れが出てくる。社外取締役の働きと、それに見合った報酬の双方の水準を高めなければならない」と指摘する。「適正な報酬は会社規模や業界によって異なるが、全体の平均は1000万円程度が妥当だろう」(松本氏)とみる。

◇   ◇   ◇

「700万円は低すぎるから1000万円ぐらい出してあげようよ」と言いたいのだろう。しかし、報酬700万円だと「執行部の監督という果たすべき役割がおろそかになる」社外取締役が、報酬1000万円になったら急に真面目に仕事をしてくれるようになるだろうか。700万円だと役割を果たせない社外取締役がいるならば、別の候補を検討すべきだろう。

記事では「全体の平均は1000万円程度が妥当だろう」というコメントを紹介しているが、なぜ「1000万円程度が妥当」なのか根拠は示していない。筆者には社外取締役の利益を擁護する特別なインセンティブがあるのだろうかと疑いたくなる。

記事に説得力を持たせたいならば、「社外取締役の報酬を引き上げると企業業績を上向かせる効果がある」といった研究結果でも紹介してほしかった。


※今回取り上げた記事「社外取締役報酬、米の4分の1  年669万円 不十分との指摘も 待遇改善、検討そろり」

http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170409&ng=DGKKZO15087260Y7A400C1EA5000

※記事の評価はC(平均的)。

2017年4月8日土曜日

「複利」の解説に異議あり 日経「ゼロから解説」

8日の日本経済新聞朝刊マネー&インベストメント面に載った「ゼロから解説~『複利』を投資の味方に 投信、毎月分配型は利点生かせず」という記事は疑問の残る内容だった。まずは問題のくだりを見てみよう。
猫バスと桜(福岡県うきは市 JAにじ耳納の里)
      ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

では、複利効果を生かすにはどんな方法があるのでしょうか。株式の場合、もらった配当金でその株式を買い増す「再投資」をすれば、その分だけ株数が増え、配当利回りを複利にすることができます。「米国には配当金を自動的に再投資するDRIPという制度を設ける上場会社があり、多くの個人株主が利用している」(尾藤氏)そうです。

日本では、毎月分配金が出る投資信託が売れ筋になっていますが、投資助言会社イデア・ファンド・コンサルティングの吉井崇裕社長は「運用の元本を減らしてしまう分配金は複利の天敵」と警鐘を鳴らします。元本を取り崩して分配金を出すような毎月分配型ファンドでは複利の効果が働かないからです。

複利を生かしやすいとして吉井氏が勧めるのが、株式ファンドのうち、値動きが株価指数に連動するインデックス型です。長期でみて期待利回りが高いうえ、運用期間中ずっと資産から差し引かれ続ける信託報酬という手数料が比較的安いからです。信託報酬の負担は長期になるほど、マイナスの複利効果が働いて運用の重荷になります。

◇   ◇   ◇

「株式の場合、もらった配当金でその株式を買い増す『再投資』をすれば、その分だけ株数が増え、配当利回りを複利にすることができます」と書いた後で、「元本を取り崩して分配金を出すような毎月分配型ファンドでは複利の効果が働かない」と解説している。これは無理がある。毎月分配型ファンドでも分配金を再投資に回せば、記事で言う「複利」にはなる。

「税金や売買手数料がゼロで、分配金の全額を再投資する」という条件であれば「分配金は複利の天敵」とはならない。一方、税金や手数料がかかる場合、配当も分配金も「複利」効果を得る上では邪魔だ。記事では「毎月分配型ファンド」がダメで「インデックス型」がいいように書いている。間違いとは言わないが、投信で「複利」効果を得るためには、分配金ゼロがベストで分配金が多いほどダメと解説すべきだろう(信託報酬が低い方がいいのは、記事の言う通り)。

「複利」に関しては、毎月分配型ファンドの中でも「元本を取り崩して分配金を出すような」ものが特にダメだと考える理由はない。運用から得られた利益を基に分配金を出していても、「複利」効果を減じるという意味では同じだ。課税対象にならない分だけ特別分配金(元本を取り崩して出す分配金)の方がマシとも言える。

ついでに言うとインデックス型の投信について「長期でみて期待利回りが高い」と言い切っているのが気になった。こういう書き方をするならば、何と比較して「期待利回りが高い」のかは明示してほしい。アクティブ型との比較なのか債券型との比較なのか。手数料を考慮しなければ、インデックス型とアクティブ型で期待利回りに大きな差は生じないはずだが…。


※記事の評価はD(問題あり)

2017年4月7日金曜日

炭素繊維は「日本発」? 日経ビジネス「企業研究~日本製紙」

日経ビジネス4月10日号の「企業研究~日本製紙 新素材で紙頼み脱却」という記事の出来はそれほど悪くない。ただ、炭素繊維の歴史に関して誤りと思える記述があった。日経BP社に送った問い合わせは以下の通り。
流川桜並木(福岡県うきは市)
       ※写真と本文は無関係です

【日経BP社への問い合わせ】

日経ビジネス編集部 寺岡篤志様  編集長 東昌樹様

4月10日号の「企業研究~日本製紙 新素材で紙頼み脱却」という記事についてお尋ねします。この中でCNF(セルロースナノファイバー)を「炭素繊維に続く日本発の新素材として注目が集まる」と紹介しています。問題としたいのは、炭素繊維が「日本発の新素材」かどうかです。

炭素繊維の大手である東レのホームページには「19世紀末にトーマス・エジソンとジョセフ・スワンが木綿や竹を焼いて作った炭素繊維を用いて電球を発明したことをご存知でしょうか?これが、炭素繊維のはじめです」との記述があります。次に「1957年頃」に「米・バーネビー・チェニィ社、ナショナル・カーボン社が炭素繊維を試作しています」と出てきます。「PAN系高性能炭素繊維」に関しては「日本発」かもしれませんが、炭素繊維自体は「米国発」だと思えます。

炭素繊維を「日本発」とする記事の説明は誤りだと判断してよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。御誌では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表するビジネス誌として責任ある行動を心掛けてください。

ついでで恐縮ですが、言葉の使い方についても指摘させていただきます。当該記事には何度も「製紙メーカー」という表現が出てきます。「製紙」と「メーカー」の両方に「作る」という意味が入っていてダブり感があります。記事中で一部使っている「製紙会社」の方が適切な表記でしょう。

◇   ◇   ◇

東レのホームページでは「大阪工業技術試験所 進藤昭男博士が炭素繊維を発表。これがPAN系高性能炭素繊維の始まりです(1961年)」と出てくる。日経ビジネスの寺岡記者はこれを炭素繊維の歴史の始まりと誤解したのだろう。そう考えると、記事の「炭素繊維は発明から半世紀が経過」との記述とも辻褄が合う。しかし、東レの説明が正しいのであれば、炭素繊維は「発明から1世紀以上が経過」していることになる。

記事に関してもう1つ注文を付けておきたい。

記事ではCNFについて「樹脂と混ぜて固めれば、鉄の5倍の強度、5分の1の重さの高性能プラスチックになる。強度は炭素繊維に一歩劣るが、リサイクル性では勝るといい、軽量化が進む自動車分野での採用がとりわけ期待されている」と説明している。なので最初は「自動車向けでは炭素繊維と競合するのかな」と思ってしまった。

しかし、読み進めると話が違ってくる。

【日経ビジネスの記事】

本命の自動車向けCNFは富士市の拠点で開発する。京大が開発した、樹脂と混合しながらパルプ繊維を解きほぐす製法を採用。原材料費を10分の1に引き下げられる可能性があるという。まずは射出成型品での採用を目指し、多様な自動車部品向けにCNFの可能性を探っていく。
耳納連山と桜(福岡県久留米市)
      ※写真と本文は無関係です

経産省によると、炭素繊維の主流である「PAN系」の1Kg当たりの製造コストは3000円。射出成型品として使われるガラス繊維は200~300円だ。対抗するためには、CNFも500円以下に引き下げることが求められている。

◇   ◇   ◇

ここで、CNFをどう理解すればいいのか迷いが出てきた。

CNFの競合素材は炭素繊維ではなくガラス繊維なのか。だとすると強度、軽さなどはどちらが上なのか。記事には説明がない。

記事の「強度は炭素繊維に一歩劣るが、リサイクル性では勝る」というCNFに関する説明に触れると、炭素繊維と同レベルか若干下回る程度の価格設定ができそうな気もする。だが、製造コストを「CNFも500円以下に引き下げることが求められている」のだとすれば、炭素繊維と比べ物にならないほど性能面で劣るようにも思える。これも、記事を最後まで読んでも事情が分からない。

さらに言えば「原材料費を10分の1に引き下げられる可能性があるという」とのくだりが分かりにくい。「CNFを採用した自動車メーカーの原材料費」について述べているようにも思えるし、「日本製紙にとっての原材料費」とも取れる。

自動車メーカーの「原材料費」だとすると、どの素材と置き換えた場合に「原材料費を10分の1に引き下げられる」のか謎だ。仮にガラス繊維だとすると、コスト面での優位性はなさそうなので、原材料費を引き下げる道が見えてこない。

この辺りは記事の肝とも言える部分なので、もう少し丁寧に解説してほしかった。


※結局、問い合わせへに対する回答はなかった。記事の評価はD(問題あり)。寺岡篤志記者への評価も暫定でDとする。

2017年4月6日木曜日

歌番組は消滅? 日経ビジネス「アイドル産業」特集の誤り

日経ビジネス4月3日号の特集「アイドル産業に学ぶ日本企業再生術」では、アイドル産業の手法を他の産業でも見習うべきだと提案している。だが、「なるほど」と思える中身ではない。ここでは「PART1 見よ! この変化対応力~家電業界が学ぶべき3教訓」と「PART2 これが本当の顧客管理~金融業界が知るべき3戦術」について問題点を指摘していく。
鎮西身延山 本佛寺の桜(福岡県うきは市)
        ※写真と本文は無関係です

まず「PART1」では現状認識が間違っている。齊藤美保記者はアイドル業界にとっての危機を3つ挙げており、その1つが「危機2 歌番組の消滅」だ。しかし、歌番組は地上波に限っても消滅していない。BSまで含めれば「アイドルが出演する歌番組はたくさんある」と言ってもいい状況だ。メジャーなアイドルに関しては地上波で冠番組もいくつもある。

ネットでの露出に力を入れる動きは当然にあるが「アイドル産業が見舞われた環境変化」として「商品をプロモーションする最大の機会、テレビの歌番組の消滅もその1つだ」言い切るのは誤りだ。

「危機3 技術革新」では「レコード→CD→デジタル音源」という変化を取り上げているが、「CD→デジタル音源」という説明はおかしい。CDも「デジタル音源」のはずだ。そしてアイドル産業の「デジタル化への適応」について齊藤記者は以下のように記している。

【日経ビジネスの記事】

だが、音楽産業はこの個人化・デジタル化の流れにも対応しつつある。その武器が、定額制の音楽サービスだ。

何もせず個人化・デジタル化を受け入れてしまえば「1曲当たりの聴かれる回数」は減る一方。だが、月額一定の価格で何曲でも音楽を聴けるようにすれば、好みの音楽以外でも「一度聞いてみるか」と考えるようになる。つまり業界全体として「聴かれる回数」は増える。

もちろん定額制である以上、ダイレクトに収益が上がるわけではない。だが人々の耳に触れる機会が増えれば、おのずとファンは増える。その結果、CDやコンサートの収益が増えれば、これはもうヒット曲を出すのと同じこと。これが音楽産業の基本的なスタンスだ。

実際、現在国内では「Apple Music」「LINE MUSIC」や「AWA」など、多くの音楽配信サービスが存在しており、国内外のアーティストが楽曲提供している。アイドルたちもその中核にいて、積極的に曲を配信している。

◇   ◇   ◇

これは音楽産業の「デジタル化への適応」であって、アイドル産業に限った話ではない。「アイドル産業に学ぶ」と打ち出しているのだから、そこはアイドル産業独自の「デジタル化への適応」を取り上げるべきだ。
菜の花(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です

同じことは「PART2 」で取り上げた「顧客管理能力1 真の双方向コミュニケーション」にも当てはまる。

【日経ビジネスの記事】

「今日のイベントどうだった?」
あるアイドルが生配信でこう呼びかけると、閲覧中のファンから一斉にコメントが届く。「かわいかったよ!」「新曲よかった!」「早くまた会いたい」。アイドルは、うれしそうな顔でそのコメントを一つひとつ読み上げていく。

これは、東京都渋谷区に本社を置くIT企業、ショールームが運営するライブ動画ストリーミングプラットフォーム「SHOWROOM」でのやり取りだ。

動画を通じてアイドルと双方向のコミュニケーションをとることができるサービスで、13年から事業を開始。登録者は既に120万人を超える。AKBグループから地下アイドルまで多くのアイドルがSHOWROOMを利用しており、アイドルにとって欠かせないファンとの交流手段になっている。

自社のファンを作るため、顧客との対話を重視する--。そんなモットーを掲げる一般企業は多いが、実際にはお客様相談センターへの電話すらつながりにくいのが実情だ。

◇   ◇   ◇

齊藤記者はSHOWROOMに関して「顧客心理を理解した、他産業には見られない『本当の双方向コミュニケーション』であるのも紛れもない事実だ」と書いている。そうだろうか。例えばキャバクラはどうか。キャバクラ嬢は客と「本当の双方向コミュニケーション」を取っていないのだろうか。キャバクラ嬢にはまるのも「双方向コミュニケーション」を介しているという意味で、基本的な構図はアイドルと同じだ。「他産業には見られない」アイドル産業独自のやり方とは考えにくい。
福岡県立朝倉東高校(朝倉市)※写真と本文は無関係です

アイドルやキャバクラ嬢が「商品」そのものであるのに対し、記事で比較対象としている金融業界では顧客に対応する従業員は「商品」ではない。それを同列に論じて意味があるとは思えないが、「双方向コミュニケーション」が大事と言うならば、多くの金融機関では既にできている。

齊藤記者は試しに銀行で投資信託について尋ねたり、保険ショップで保険の相談を持ち掛けたりしてみるといい。アイドルの握手会などの比ではない時間をかけて「双方向コミュニケーション」を取ってくれるはずだ。もちろん、それが顧客の利益につながるわけではないが…。

今回の特集は様々な意味で無理があった。あまりに問題が多くて、一部しか言及できなかった。だが、挑戦的な内容の記事を届けようとしたことは評価したい。齊藤記者はこれに懲りずに、十分な準備をして次の挑戦的な特集に挑んでほしい。


※今回の特集に関しては以下の投稿も参照してほしい。

熱意は買うが分析に難あり日経ビジネス「アイドル産業」特集
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/blog-post_31.html

2017年4月5日水曜日

金利ゼロ=おカネに価値なし? 東洋経済「親子で学ぶ経済入門」

週刊東洋経済4月8日号の特集「親子で学ぶ経済入門」は色々と問題が多い。ここでは平松さわみ記者が担当した「2%物価上昇はなぜ必要?」という記事を取り上げる。東洋経済に問い合わせを送ったので、その内容を見てほしい。
流川桜並木(福岡県うきは市)
       ※写真と本文は無関係です

【東洋経済への問い合わせ】

週刊東洋経済 平松さわみ様

4月8日号の特集「親子で学ぶ経済入門」の中の「2%物価上昇はなぜ必要?」という記事についてお尋ねします。

(1)記事には「金利がゼロ近傍にあるのは、おカネが潤沢にあり、その価値がゼロという意味だ」という立正大学の吉川洋教授のコメントが出てきます。しかし、「金利ゼロ=おカネの価値ゼロ」とは考えられません。例えば1億円を「ゼロ近傍」の金利で借りられるとしましょう。この時に1億円という「おカネ」の価値はゼロでしょうか、それとも1億円でしょうか。答えは明らかです。「金利ゼロ=借り入れでカネを調達する価値ゼロ」とは言えるかもしれませんが、「おカネの価値がゼロ」ではないはずです。

(2)記事では「日本では1990年代以降、20年以上にわたって物価が緩やかに下落する『デフレ』(デフレーション)が続いてきた。消費者がモノやサービスを買うときの総合的な価格水準を示す消費者物価指数は、消費増税やエネルギー価格の高騰といった特殊要因のある年を除いて低迷している」と書いています。グラフには「バブル崩壊後、デフレが続く日本」とのタイトルも付いています。

しかし「20年以上にわたって」デフレが続いているとは思えません。記事ではデフレを「物価水準が年々下落すること」と定義しています。90年代以降で消費者物価指数が初めて前年比2年連続のマイナスとなったのは2000年です。となると、デフレの起点は1999年になります。現在もデフレが続いていると仮定しても「20年」には届きません。99年からデフレに陥ったと考えると、「バブル崩壊後、デフレが続く日本」というタイトルも正確さに欠けます。

(3)記事の中で立正大学の吉川洋教授は「(石油や穀物など加工されていない)1次産品を除き、モノやサービスの価格は作るときのコストで決まる」ともコメントしています。これも正確さに欠けます。「モノやサービスの価格」は基本的に需給で決まります。コストも重要な要素ではありますが、吉川教授のコメントからは、他の要素は関係なく「コストで決まる」と解釈できます。

また、価格決定において「コスト」が重要という意味では、一次産品も他の「モノ」と同様ではありませんか。石油や穀物を生産するにはコストがかかりますし、市場価格が採算割れの水準まで落ち込むと減産へのインセンティブが働いて価格が上がりやすくなります。

以上の3点に関して、記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとの判断であれば場合は、その根拠も併せて教えてください。

御誌では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

上記の指摘に絶対の自信があるわけではないが、東洋経済からの回答は期待できないので、記事の説明は誤りと推定するほかない。これだけ問題が多いと「親子で学ぶ経済入門」としての役割を果たすのは難しい。

福岡大学(福岡市城南区)※写真と本文は無関係です

ついでにもう1つ記事の問題点を指摘したい。

記事では「デフレの何が悪いのか」というタイトルで、デフレの問題点を列挙している。その中に「名目賃金は変わらなくても、物価が下がると実質賃金は上がる→企業は雇用する労働者の数を減らそうと考えるため、失業のリスクが高まる」という説明がある。これは引っかかった。

(1)なぜ「名目賃金」は不変?

デフレになれば、名目賃金にも下落圧力が働くのが自然だ。なぜ名目賃金が不変という特殊な前提を置いて「デフレは悪い」と訴えるのか。実質賃金が上がると「企業は雇用する労働者の数を減らそうと考えるため、失業のリスクが高まる」と言うが、賃金減で対応する可能性もある。そこを無視しているのは感心しない。

(2)インフレだと「実質賃金」は上がらない?

結局、「実質賃金」が上がるから「デフレは悪い」と言いたいのだろう。だが、インフレでも実質賃金は上がり得る。物価上昇を上回る勢いで賃上げが進む場合だ。一方、デフレでも、物価下落以上に賃金の削減が進めば実質賃金は減る。

つまり、インフレでもデフレでも実質賃金は上がったり下がったりする。なのに「実質賃金が上昇する」という理由で「デフレは悪い」と決め付ける意味があるのか。


※結局、問い合わせに対する回答はなかった。記事の評価はD(問題あり)。平松さわみ記者への評価も暫定C(平均的)から暫定Dへ引き下げる。


※今回の特集に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「最大の貿易国」は米国? 東洋経済「親子で学ぶ経済入門」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/blog-post_63.html

2017年4月4日火曜日

「最大の貿易国」は米国? 東洋経済「親子で学ぶ経済入門」

週刊東洋経済4月8日の第1特集「親子で学ぶ経済入門」に出てくる「どうなる日本経済 特別講義 デフレ脱却の道筋が見えた」という記事は問題が多い。「特別講義」をしているのは学習院大学教授の伊藤元重氏だが、問題が生じている責任は「聞き手」である鈴木良英記者にあると思える。
桜(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です

まずは記事中の「最大の貿易国である米国」という説明に関して、東洋経済に送った問い合わせの内容を見てほしい。

【東洋経済への問い合わせ】

週刊東洋経済 鈴木良英様

4月8日の第1特集「親子で学ぶ経済入門」の中の「どうなる日本経済 特別講義 デフレ脱却の道筋が見えた」という記事についてお尋ねします。問題となるのは以下のくだりです。

「振り返ると、そもそも日本がTPP参加を真剣に考えざるをえなかったのは、米国が参加すると言い出したからです。当時、米国は日本との2国間協定に関心を示していませんでした。それが今回はトランプ大統領のほうが日本との2国間協定に前向きです。もちろん交渉は非常に厳しいものになると思いますが、最大の貿易国である米国と協議しないという手はないでしょう」

記事では、学習院大学教授の伊藤元重氏が「最大の貿易国である米国」と言い切っています。文脈から判断して「日本にとっての最大の貿易相手である米国」という意味でしょう。しかし、財務省貿易統計によると、2016年の日本との貿易額(輸出入総額)で1位なのは中国(29兆3804億円)です。米国(21兆4650億円)は2位でした。日本からの輸出額で見ると米国が1位ですが、記事では「最大の貿易国」としているので輸入を除いているとは考えられません。

やや無理のある解釈ですが、「日本にとっての最大の貿易相手である米国」という意味ではなく、「国別の貿易額(輸出入総額)で見て世界最大である米国」と言いたかったのだとの可能性も考慮しました。しかし、少なくとも2015年では輸出入総額で中国が米国を上回っているようです。

記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その理由も併せて教えてください。御誌では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

国別の輸出入総額で16年に米国が中国を逆転している可能性はある。それ以外は記事の説明が正しいという道筋が思い付かなかった。回答は期待できないので、記事の説明は誤りと推定するしかない。

※追記:「世界貿易機関(WTO)は12日、米国のモノの貿易額が2016年に中国を上回り、首位となったと発表した」(日経)ようだ。しかし、発表は4月12日なので、記事執筆の段階では「米国首位」は明らかになっていないかった。
ベルギーのアントワープ ※写真と本文は無関係です

これ以外にも記事には問題がある。特に引っかかったのが以下のくだりだ。

【東洋経済の記事】

アベノミクスは成功か失敗か

この4年間で大きな成果が二つあります。一つは企業の内部留保が増えたことです。今後、その資金が投資や配当などの株主還元、そして従業員の賃金上昇へ使われるという期待感があります。

もう一つは雇用の需要が増大し、労働市場が引き締まったことです。正社員はもちろんですが、パートや派遣社員の不足が深刻になっています。こちらも賃金上昇につながる動きでしょう。デフレから脱するには賃金アップが欠かせません。

賃金が上がれば消費が増えます。また、物価も上がりやすくなります。それがさらに賃金上昇を呼び込み、また物価が上がる……こういうスパイラルになれば、デフレ脱却の道が見えてきます。賃金上昇による効果はほかにもあります。人件費が上がればその分、企業は労働生産性を高める必要があります。価格やサービスなどのビジネスモデルの見直しやITの活用などが進むでしょう。バブル期が話題になっています。金利が低いのでバブル期のような現象がおきやすいのは事実です。でも当時とは違いますね。銀行から借金をして資産を買っていましたが、いまは企業はむしろおカネを貯め込んでいるわけですから。

◇   ◇   ◇

問題点を列挙してみたい。

(1)「アベノミクスは成功か失敗か」の答えは?

「アベノミクスは成功か失敗か」というテーマなのに、その問いに答えていない。「成果」にしか触れていないので「成功」と示唆しているようではあるが、これでは困る。「親子で学ぶ経済入門」という特集の性格から言っても、成功か失敗かきちんと答えを出すべきだ。

伊藤氏には「アベノミクスを擁護したいけど、成功と言い切るには根拠が乏しいし…」といった思いがあるのだろう。だったら、聞き手である鈴木記者が突っ込んで「成功ですか失敗ですか」と迫るべきだ。それでも答えが曖昧ならば、「アベノミクスは成功か失敗か」とのテーマを諦めるしかない。今回の伊藤氏の解説内容でも、問いが「アベノミクスに成果はないのか」ならば成立する。


(2)「デフレ脱却の道筋が見えた」に無理あり

千仏鍾乳洞(北九州市)※写真と本文は無関係です
記事では「デフレ脱却の道筋が見えた」と見出しで打ち出しているが、最後まで読んでも「道筋」は見えてこない。

「賃金が上がれば消費が増えます。また、物価も上がりやすくなります。それがさらに賃金上昇を呼び込み、また物価が上がる……こういうスパイラルになれば、デフレ脱却の道が見えてきます」

おそらく上記のくだりから「デフレ脱却の道筋が見えた」と見出しを付けたのだろう。だが、ここは「これからこんな展開になればデフレ脱却の道が見えてきます」と言っているだけだ。「輸出が急増して国内需要も大きく伸びれば、景気回復の道筋も見えてきます」と言われて「景気回復の道筋が見えた」と判断するようなものだ。


(3)「内部留保」はなぜ使われない?

内部留保が増えたことを「成果」とする見解を取りあえず受け入れてみよう。だが「今後、その資金が投資や配当などの株主還元、そして従業員の賃金上昇へ使われるという期待感があります」という説明は物足りない。

現状では「投資や配当などの株主還元、そして従業員の賃金上昇へ」十分に回っていないのだろう。それがなぜなのか、記事では教えてくれない。今後は「使われる」と期待できるのならば、その根拠にも触れてほしい。これまでダメだったのに、まともな説明もなく今後に期待する気にはなれない。

ついでに言うと、「内部留保」の説明も引っかかる。記事の書き方だと「内部留保=投資に回っていない資金」との印象を受ける。しかし、内部留保は設備投資に回っている部分もある。よく誤解されるが、内部留保は「企業がため込んだ現預金」とは限らない。

さらに言えば「投資や配当などの株主還元」とすると「投資」が「株主還元」の一部に見えてしまう。「投資や、配当などの株主還元、そして従業員の賃金上昇へ」と読点を入れれば問題は解消する。


(4)労働市場の需給は締まったが…

「労働市場」に関する説明にも「内部留保」と同様の問題がある。労働市場で需給が締まったのに、賃金増→消費増→物価上昇という循環は生じていない。実質賃金は2015年まで4年連続の減少。16年にプラスに転じたのは、物価が下落に転じた影響が大きい。

労働市場での需給が締まったのに「賃金が上がれば消費が増えます。また、物価も上がりやすくなります。それがさらに賃金上昇を呼び込み、また物価が上がる……」という「スパイラル」はなぜ起きなかったのか。そこは解説すべきだ。今後は違う展開になると予想するのならば、その根拠も述べてほしい。


※結局、問い合わせに対する回答はなかった。記事の評価はD(問題あり)。鈴木良英記者への評価はC(平均的)からDへ引き下げる。

2017年4月3日月曜日

「優待」批判に説得力がない日経「株主優待バブル過熱」

2日の日本経済新聞朝刊1面に載った「株主優待バブル過熱  株価、特典で高止まり/機関投資家『配当軽視』」というトップ記事は苦しい内容だった。株主優待の問題点を一生懸命に訴えているが、多くは説得力に欠ける。結論ありきで記事を作り過ぎているのではないか。
水上スキー(福岡県久留米市の筑後川)
         ※写真と本文は無関係です

具体的に見ていこう。

【日経の記事】

株主優待を企業が導入するのは、長野県の主婦のように株を長期に持ってくれる株主を増やしたいからだ。そんな企業側の意図をよそに、優待の無料獲得を狙った短期の株取引が流行している。

先週、株式市場は3月期決算企業の株主の権利が確定する最終売買日を迎えた。その1日だけ現物株を買うと同時に信用取引で同じ株に売りを出す「優待クロス取引」が盛り上がる。株価変動リスクを避けながら、優待をタダで手に入れるのを狙う株取引の裏技だ。

都内在住の50歳の男性は「家族サービスのため今年はオリエンタルランドや日本航空など66銘柄で実施した」と明かす。問題は同じ銘柄に大人数が群がると、信用取引の売り注文に必要な貸株が品薄になり、株のレンタル料が高騰する点だ。

アミューズメント施設のアドアーズは提携先の高級リラクセーションサロンの利用券を提供するが、4万4000円相当の利用券を得るための費用が8万4000円に跳ね上がった。株主優待マニアとして有名な棋士の桐谷広人さんが愛用するとテレビ番組で紹介され、人気に火が付いた。

こんな優待バブルはそこかしこで起きている。ファミリーレストランのココスジャパンは、1000円相当の食事券と5%割引カードの獲得費用が1万560円に上昇。中央魚類が提供する3500円相当の水産物セットを得るには2万3400円の費用がかかった。


◎「優待をタダで手に入れる」?

「優待クロス取引」について「株価変動リスクを避けながら、優待をタダで手に入れるのを狙う株取引の裏技」と紹介している。しかし、優待をタダで手に入れられる可能性はゼロだろう。売買手数料がかかる。
ブリュッセル(ベルギー)の聖ミッシェル大聖堂
        ※写真と本文は無関係です

それに、記事で言うように「株のレンタル料が高騰」しているのであれば、うま味は乏しい。「4万4000円相当の利用券を得るための費用が8万4000円に跳ね上がった」場合、ほとんどの投資家はこうした銘柄で「優待クロス取引」をしようとは思わないだろう。仮にいたとしても、市場に大きな悪影響を与えるとも思えない。筆者(川路洋助記者、野口和弘記者)はこうした取引で「優待バブル」が起きると何が問題だと思っているのだろうか。

優待のせいで「株価が下がりにくくなっている」とも記事では指摘しているが、これこそ大した問題はない。

【日経の記事】

人気の優待を出す企業の株価が、企業価値に比べて高止まりしているとの指摘も出ている。例えば日本マクドナルドホールディングスは食事券の優待目的で株を持ち続ける個人が多く、株価が下がりにくくなっている。

米マクドナルドは保有する日本マクドナルド株の一部売却を模索しているが、買い手がなかなか現れない。「実力とかけ離れている今の株価ではとても買えない」。買収を一時検討した外資系ファンドの幹部は明かす。



◎「株価高止まり」は困る?

「優待目的で株を持ち続ける個人が多く、株価が下がりにくくなっている」として、誰が困るのか。株主はもちろん困らない。「安く買いたい」という投資家は多少困るかもしれないが、「高すぎる」と思えば手は出さないのだから少なくとも損はしない。

米マクドナルドが日本マクドナルド株を手放そうとしても買い手が現れないのは「株価が、企業価値に比べて高止まりしている」ためならば、ディスカウントして売却すればいい。市場で売り出すのも手だ。「企業価値」に比べて高く売れるので、米マクドナルドに損はない。買い手は価格に納得して買うのだから、これも問題はない。

優待目的の買いで株価が急騰しているのならばまだ分かるが、「下がりにくくなっている」ぐらいならば、気にする必要はないと思える。

優待で「金券やギフト券の増加」が見られることも大きな問題とは思えない。

【日経の記事】

優待ブームの過熱は、優待品の中身の変質にも表れている。その象徴がクオカードなど金券やギフト券の増加だ。今年は27%を占め、食品を抜いて初の首位となった。
平尾台(北九州市)※写真と本文は無関係です

「個人を金券で呼び寄せるなど最近は安易に使われすぎだ」。優待ブームの火付け役であるカゴメ。制度の育て親だった同社OBの長井進・三菱UFJ信託銀行顧問は警鐘を鳴らす。行き過ぎた優待ブームは市場のゆがみを生み、それはいずれ企業自身にも跳ね返る。


◎配当は良くて「金券」はダメ?

配当を出すのはよくて「金券やギフト券」は好ましくないという理屈がよく分からない。「株数にきちんと連動していない」と言うのは分かるが、それは連動させれば済む話だ。株数に連動して配られるとの前提で考えると、「配当」と「金券やギフト券」に決定的な差はない。「個人を金券で呼び寄せる」のがダメならば、配当金の高さで個人を呼び寄せるのもダメだろう。

記事では「行き過ぎた優待ブームは市場のゆがみを生み、それはいずれ企業自身にも跳ね返る」と結んでいる。だが、どんなふうに「跳ね返る」のか謎だし、跳ね返りが起きそうな感じもない。

最後に「機関投資家『配当軽視』」という見出しに注文を付けておきたい。記事を最後まで読んでも、機関投資家が「配当軽視」と言っているくだりが出てこない。「配当を重視する機関投資家は不満を強めており、行き過ぎの弊害を指摘する声も増えてきた」「配当と違って機関投資家には不平等な制度とみられている」とは書いている。だが、ここから機関投資家が「配当軽視」と訴えていると解釈するのは、かなり強引だ。


※今回取り上げた記事「株主優待バブル過熱  株価、特典で高止まり/機関投資家『配当軽視』」
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170402&ng=DGKKZO14811370S7A400C1MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。川路洋助への評価は暫定でDとする。野口和弘への評価はDを据え置く。