2021年8月26日木曜日

大沢真知子 日本女子大名誉教授の「偏見」が見える日経「Nextストーリー」

女性問題を扱った記事で「無意識の偏見」という言葉が出てきたら要注意と訴えてきた。25日の日本経済新聞朝刊ビジネス2面に載った 「〈Nextストーリー〉思い上がれない女性たち(上)自信そぎ活躍阻む偏見~私は『詐欺師症候群』経営者も自己否定」という記事もそうだ。一部を見ていこう。

ビューホテル平成

【日経の記事】

国立女性教育会館が15年の新入社員約2100人を対象に実施した調査では、管理職を目指さない理由について「自分には能力がないから」としたのは入社1年目で男性が26.1%なのに対し、女性は38%に達した。

聖心女子大学の教授らが07~10年に各国で実施した調査では「管理職をめざしたい」という質問に「とてもそう思う」「まあそう思う」とした日本の女性はわずか26%。60~70%台だった他国と比べて著しく低かった。

「人生のあらゆる場面で女性は自分の力を疑ってしまう」。日本女子大学の大沢真知子名誉教授は、社会の「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」が自信を奪う一因だと指摘する


◎それこそ「偏見」では?

人生のあらゆる場面で女性は自分の力を疑ってしまう」と「日本女子大学の大沢真知子名誉教授」は信じているようだ。「人生のあらゆる場面で(全ての)女性は(必ず)自分の力を疑ってしまう」という意味なら、これこそ「偏見」だ。「管理職をめざしたい」かどうかを問う質問にも「26%」が前向きだ。

人生のあらゆる場面で(一部の)女性は(時に)自分の力を疑ってしまう」という意味なら、その通りだろう。だが、これは男性にも当てはまる。「女性」を特別視する理由はない。

記事の続きを見ていこう。


【日経の記事】

家庭や学校で、女の子は男の子に比べて聞き分けのある「良い子」であることを求められがちだ。その半面、間違えることを過度に避け、失敗すれば自分の能力や努力不足と落ち込む。CMやドラマでは女性が男性を補佐するシーンが頻繁に流れ「社会のあり方」としてすり込まれる。


◎根拠は?

家庭や学校で、女の子は男の子に比べて聞き分けのある『良い子』であることを求められがちだ」と書いているが根拠は示していない。これでは何とも言えない。個人的には「間違えることを過度に避け」る傾向があるのは「男の子」のような気もする。

「男は働いて収入を得なければならない」という社会的圧力が強いからだ。結婚相手に経済力を求める傾向は女性に顕著なので、男性は進路選択などでリスクを冒しにくい。

人生に「失敗」して無差別殺人に走ったりするのも、ほとんどが男性だ。自殺者数も男性の方が圧倒的に多い。男性が「間違えることを過度に避け」たくなる気持ちは分かる。

いずれにせよ、何らかのデータがないと「間違えることを過度に避け、失敗すれば自分の能力や努力不足と落ち込む」傾向が強いは女性と言えるのか判断できない。

CMやドラマでは女性が男性を補佐するシーンが頻繁に流れ『社会のあり方』としてすり込まれる」という説明も納得できない。今は逆のパターンも当たり前にある。例えば10年ほど前のテレビドラマ「BOSS」では、主演の天海祐希が警察で「ボス」を演じていて、部下には何人もの男性刑事がいた。当時から何の違和感もなかった。さらに時が流れているのに「女性が男性を補佐する」ものだと「すり込まれ」ていると心配する必要があるのか。

さらに見ていこう。


【日経の記事】

社会人のキャリア初期には「女性の昇進を阻む『ガラスの天井』ならぬ『くっつく床』が待ち構える」(大沢さん)。キャリア発展に見込みのない仕事が振られたり、「女性には大変だ」との不要な配慮から負担の多い仕事が男性に回されたりする。失敗が回避される代わりに自信が身につかず、会議での発言や昇進を控えたりと「身の丈にあった」行動を自らとるようになってしまう。


◎これまた根拠が…

社会人のキャリア初期」には「『くっつく床』が待ち構える」という「大沢真知子名誉教授」のコメントを使っているが、やはり根拠は示していない。「キャリア発展に見込みのない仕事が振られ」ることは男性にもある。「女性」の方が圧倒的に多いと見ているのならば、それを裏付けるデータが欲しい。根拠がないとしたら、筆者は自らの「無意識の偏見」を疑うべきだ。

不要な配慮から負担の多い仕事が男性に回されたりする」というくだりも根拠は見当たらないが、とりあえず受け入れてみよう。しかし後に続く「失敗が回避される代わりに自信が身につかず」という説明は謎だ。

「負担の少ない仕事ばかりで失敗しないので女性は自信を付けやすい」という可能性も十分に考えられる。男性にしてみれば「負担の多い仕事を回されるために失敗する確率が高く自信を失いやすい」かもしれない。

ご都合主義的にストーリーを組み立てていないか。

そもそも「管理職をめざしたい」と思わない女性を「自信を持てない女性」と捉える必要があるのか。「国立女性教育会館が15年の新入社員約2100人を対象に実施した調査では、管理職を目指さない理由について『自分には能力がないから』としたのは入社1年目で男性が26.1%なのに対し、女性は38%に達した」と記事でも書いている。

男性が26.1%」で「女性は38%」ならば大して差はないし、「管理職を目指さない」女性に限っても過半は「自分には能力がないから」とは回答していない。わずかな差を大げさに考えている気がする。


※今回取り上げた記事 「〈Nextストーリー〉思い上がれない女性たち(上)自信そぎ活躍阻む偏見~私は『詐欺師症候群』経営者も自己否定」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210825&ng=DGKKZO75094300U1A820C2TB2000


記事の評価はD(問題あり)

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