2020年12月19日土曜日

「悩み解決法」の説明が意味不明な日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」

日本経済新聞の中村直文編集委員は説明が上手くないのだろう。18日の朝刊企業3面に載った「ヒットのクスリ~『オールインワン』商品台頭 本や服、何度も役立つ」という記事は理解に苦しんだ。「精神科医が教える ストレスフリー超大全」という本について記事では以下のように説明している。

耳納連山に沈む夕陽

【日経の記事】

今年の「ヒットのクスリ」は今回で最後。新型コロナウイルスの感染拡大で大きく変わった消費の姿を伝えてきた。1つの特徴が1粒で2度、あるいは3度おいしい「オールインワン型」商品の台頭だ。

ダイヤモンド社の書籍「精神科医が教える ストレスフリー超大全」は販売部数が15万を突破した。ストレスをきちんと夜にリセットし、ため込まない方法を指南する。新型コロナで悩む人は多かっただろうが、この本の何がそんなに刺さったのか。

著者で精神科医の樺沢紫苑(しおん)氏はユーチューブで悩み相談を受けていた。相談件数が2500に達するなかで気づきが生まれたという。「90%は過去の質問と同じで、おおむね複数のパターンに大別できる。すでに答えも出ている。実行するかどうかだけ」

同書では「人間関係」「プライベート」「仕事」「健康」「メンタル」の5つのテーマを設定、さらにそれぞれを複数の論点に切り分けている。「個別の悩みを解決法としての『to do』に置き換えている。ストレス本の決定版」と樺沢氏は自負する。1冊に全て入っているから、どんな悩みが生じても当てはまるというわけだ。

例えば「人間関係」では「人から嫌われたくない」という悩みがある。これに関する事実関係として「好意の1対2対7」の法則を示す。自分を嫌う人が1割、好きが2割、中立が7割という意味だ。そして「to do」として3割のキーマンに7割のエネルギーをそそぐことをあげる。

自分を嫌いなのは1割しかいないのだから、おおむね気にする必要がないということだ。樺沢氏は「不調の兆しが出たら、睡眠、朝散歩、運動を徹底するだけ。仮に人間関係が改善できなくても身体を整えれば、メンタルも整う」という。


◎答えになってる?

人から嫌われたくない」という「悩みがある」としょう。「自分を嫌う人が1割、好きが2割、中立が7割」という「『好意の1対2対7』の法則」も受け入れよう。

悩める人に対して「3割のキーマンに7割のエネルギーをそそぐこと」を勧めるらしい。それで「人から嫌われ」ないようになるのならば立派な助言だ。しかし記事は「自分を嫌いなのは1割しかいないのだから、おおむね気にする必要がないということだ」と続く。

嫌われ」ずに済むのではなく「おおむね気にする必要がない」という話になってしまう。さらに言えば「おおむね気にする必要がない」のに、なぜ「3割のキーマン(『嫌う』と『好き』の合計だと仮定)に7割のエネルギーをそそぐ」べきなのか。「自分を嫌う」人にも2割超の「エネルギーをそそぐ」計算になる。「おおむね気にする必要がない」のならば「自分を嫌っていない9割」にほぼ100%のエネルギーを注ぐべきではないか。

そもそも「気にする必要がない」を答えとしていいのか。これで良ければ多くの問題は確かに解決する。「上司とそりが合わない」「ネットで叩かれて傷付いてしまう」「部活でレギュラーになれない」といった「悩み」には「気にする必要がない」で対応できる。「どんな悩みが生じても当てはまる」に近付けるが、そこに価値は感じない。

本の中で「精神科医の樺沢紫苑氏」はもっときちんと説明しているのかもしれない。内容がおかしいと感じたならば中村編集委員も取り上げないだろう。せっかく取り上げるのならば、ちゃんとした「著者」だと伝わるように書いてほしい。今回の内容だと「樺沢紫苑氏」が愚か者に見えてしまう。

今年の『ヒットのクスリ』は今回で最後」という書き方から判断すると、このコラムは来年も続くのだろう。であれば、記事を担当するデスクなど周りがしっかり中村編集委員を支えてあげるべきだ。今回のような記事を世に送り出してしまうのは今年で終わりにしたい。


※今回取り上げた記事「ヒットのクスリ~『オールインワン』商品台頭 本や服、何度も役立つ

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201218&ng=DGKKZO67441890X11C20A2TJ3000


※記事の評価はD(問題あり)。中村直文編集委員への評価はDを維持する。中村編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。


無理を重ねすぎ? 日経 中村直文編集委員「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/11/blog-post_93.html

「七顧の礼」と言える? 日経 中村直文編集委員に感じる不安
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_30.html

スタートトゥデイの分析が雑な日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_26.html

「吉野家カフェ」の分析が甘い日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_27.html

日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」が苦しすぎる
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_3.html

「真央ちゃん企業」の括りが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_33.html

キリンの「破壊」が見えない日経 中村直文編集委員「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_31.html

分析力の低さ感じる日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_18.html

「逃げ」が残念な日経 中村直文編集委員「コンビニ、脱24時間の幸運」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/24.html

「ヒットのクスリ」単純ミスへの対応を日経 中村直文編集委員に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_27.html

日経 中村直文編集委員は「絶対破れない靴下」があると信じた?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_18.html

「絶対破れない靴下」と誤解した日経 中村直文編集委員を使うなら…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_21.html

「KPI」は説明不要?日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」の問題点
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/kpi.html

日経 中村直文編集委員「50代のアイコン」の説明が違うような…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/50.html

「セブンの鈴木名誉顧問」への肩入れが残念な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/blog-post_15.html

「江別の蔦屋書店」ヨイショが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_2.html

渋野選手は全英女子まで「無名」? 日経 中村直文編集委員に異議あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_23.html

早くも「東京大氾濫」を持ち出す日経「春秋」の東京目線
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_29.html

日経 中村直文編集委員「業界なんていらない」ならば新聞業界は?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_5.html

「高島屋は地方店を閉める」と誤解した日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_23.html

野球の例えが上手くない日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/blog-post_15.html

「コンビニ 飽和にあらず」に説得力欠く日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/01/blog-post_23.html

平成は「三十数年」続いた? 日経 中村直文編集委員「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/02/deep-insight.html

拙さ目立つ日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ~アネロ、原宿進出のなぜ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/02/blog-post_28.html

「コロナ不況」勝ち組は「外資系企業ばかり」と日経 中村直文編集委員は言うが…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/06/blog-post.html

データでの裏付けを放棄した日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/07/blog-post_17.html

「バンクシー作品は描いた場所でしか鑑賞できない」と誤解した日経 中村直文編集委員https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/09/blog-post_11.html

「新型・胃袋争奪戦が勃発」に無理がある日経 中村直文編集委員「経営の視点」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post_26.html

2020年12月18日金曜日

女性だけ「念入り」にすべき? 日経社説「コロナで困窮する女性への支援念入りに」

女性に限定して問題を論じる意味があるのか。18日の日本経済新聞朝刊総合1面に載った「コロナで困窮する女性への支援念入りに」という社説を材料にこの問題を考えてみたい。社説の全文は以下の通り。

JR久留米駅に停車中の無限列車

【日経の社説】

新型コロナウイルスの感染拡大が、労働市場を直撃している。とりわけ女性は非正規で働いている人が多く、雇用が不安定だ。コロナによる影響も、女性の多いサービス業などで強く出ている。

女性の収入減や失職は、その家族をふくめ大きなダメージとなる。育児など家庭内での負担も増えるなか、新たに仕事を探すのも簡単ではない。ひとりで抱え込み、精神的に追い込まれることがあってはならない。暮らしを安定させられるよう、政府や自治体はあらゆる策を動員してほしい。

大事なのは、必要な支援が必要な人にしっかり届くことだ

野村総合研究所が10月に実施した調査では、休業を余儀なくされているパート・アルバイトの女性で、休業手当を受け取っていない人は7割にのぼった。卸・小売り、宿泊、飲食などの業種でその割合が高い。外出自粛や営業時間短縮の影響が表れている。

企業が従業員に休業手当を支払う場合、政府は雇用調整助成金を出してバックアップしている。先行きへの不安を広げぬよう、経営者はできる限り休業手当を支払う努力をすべきだ。ほかの業務に配置転換するなど、従業員を休ませずに済む方法はないか探る努力も尽くしてほしい。

政府は休業手当を受け取っていない中小企業の従業員を対象に、休業前の賃金の8割を休んだ日数に応じて支給する「休業支援金・給付金」制度も設けている。本人が直接、申請できる。こうした制度を政府はもっと周知すべきだ。

感染の収束が見通せないため、休業中の従業員がもとの職場に復帰できなくなる心配もある。非正規の契約が更新されない「雇い止め」が増えることも懸念される。

介護サービスなど人材の需要が旺盛な分野は少なくないが、女性一人ひとりの事情に応じてきめ細かく対応することが大切だ。国のハローワークの機能を、民間ノウハウを取り入れて強める必要がある。新しい仕事に移るための能力開発の支援もより重要になる。

コロナによる暮らしへの影響は多岐にわたる。就労支援と福祉が連携することも一層、大切になる。一定の条件のもと収入が減った人らに家賃を補助する制度は、支給期間の延長が決まった。自治体のなかには、生活困窮者への相談窓口を年末年始も開くところもある。悩みをしっかり受け止められるよう、柔軟に対応してほしい。


◎男女を区別する意味ある?

女性は非正規で働いている人が多く、雇用が不安定だ。コロナによる影響も、女性の多いサービス業などで強く出ている」というのが事実だとして「女性への支援」を男性に比べて「念入りに」する必要があるだろうか。

非正規で働いている」男性も当然にいるし、正規雇用での職を失う男性もいる。「女性の多いサービス業など」でも男性は働いているはずだ。仮に「支援」が必要な人の8割が「女性」だとして、人数が多いから男性よりも「女性」を「念入りに」支えていくべきだろうか。基本的には男性差別だ。男女の別なく「必要な支援が必要な人にしっかり届く」ようにすべきだ。

例えば「女性」は家計の主な担い手になるケースが圧倒的なので、補助的な役割の男性よりも「念入りに」支えるべきとの主張であれば、まだ理解できる。しかし常識的に考えれば、この根拠で「念入り」な「支援」を正当化できるのは男性の方だろう。

女性の収入減や失職は、その家族をふくめ大きなダメージとなる」と社説では書いている。「男性の収入減や失職は、その家族をふくめ大きなダメージとはならない」と言えるのならば「女性」に限定して「支援」の必要性を訴えていくのも分かる。しかし現実と合致しないのは明らかだ。

男性には既に「念入り」な「支援」があるのに「女性」にはないといった場合も「女性への支援念入りに」と訴える意味は出てくる。しかし社説にそうした記述はない。

必要な支援が必要な女性にしっかり届くこと」は「必要な支援が必要な人にしっかり届くこと」と同義ではない。社説を書いた論説委員も分かっているはずだが…。


※今回取り上げた社説「コロナで困窮する女性への支援念入りに

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201218&ng=DGKKZO67447410Y0A211C2EA1000


※社説の評価はD(問題あり)

2020年12月17日木曜日

過去との比較が抜けた日経「東芝、5年で1兆円投資~再生エネ買収など検討」

17日の日本経済新聞朝刊1面に載った 「東芝、5年で1兆円投資~再生エネ買収など検討」という記事は完成度が低かった。全文を見た上で具体的に指摘したい。

耳納連山に沈む夕陽

【日経の記事】

東芝は今後5年間で1兆円を投資する。風力発電事業への参入などM&A(合併・買収)にも資金を投じる。これまで不採算事業の売却など財務改善を優先してきた。業績が回復してきたことで、借入金も活用しつつ攻めの経営に転じる。

風力発電では関連技術などの買収や協業を検討し、火力や原子力発電で培った発電ノウハウと組み合わせて事業を拡大する。また発電所などのインフラ向けサービスの売上高営業利益率は9%と高く、成長が見込める。蒸気タービンの部品メーカーなどを買収し、他社製タービンの更新需要を取り込む。

M&Aは1件あたり数百億円規模までを想定する。過去の大型買収の失敗を踏まえ、リスクを分散させつつ、稼ぐ力を示す投下資本利益率(ROIC)や投資効率を表す内部収益率(IRR)などを使って管理する。

資金は借り入れや、半導体メモリーのキオクシアホールディングス株の売却で賄う。有利子負債は9月末の約6000億円から、2000億円程度増える見通し。自己資本に占める純有利子負債の比率を30%程度に抑えて健全性を保つ。

中期経営計画では最終年度の2026年3月期に営業利益で4000億円と、今期予想(1100億円)の約3.6倍を目指す。投資を積極化し、達成につなげる。


◇   ◇   ◇


気になった点を列挙してみる。

(1)暦年での話?

12月中旬に出た記事で「今後5年間で1兆円を投資する」と書いてあれば「来年(2021年1月)からの5年間)と取るのが自然だ。しかし決算期が3月なので「2021年4月からの5年間」のような気もする。記事でも「中期経営計画では最終年度の2026年3月期に~」と書いている。暦年かどうかは明示した方がいい。


(2)過去との比較は?

今後5年間で1兆円を投資する」と書いているだけで過去との比較はない。「攻めの経営に転じる」と言うのだから「投資」を増やすのだろう。これまでの「5年間」と比べてどのくらいの増加になるのかは必須の情報だ。


(3)「自己資本に占める純有利子負債の比率」?

自己資本に占める純有利子負債の比率」という記述は厳しく言えば誤り。「純有利子負債」は「自己資本」の一部ではない。「自己資本に対する純有利子負債の比率」などとすべきだ。



※今回取り上げた記事「東芝、5年で1兆円投資~再生エネ買収など検討

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201217&ng=DGKKZO67401420X11C20A2MM8000


※記事の評価はE(大いに問題あり)

2020年12月16日水曜日

「携帯値下げ」の恩恵は40代まで? 日経「看板政策、20~40代に照準」の無理筋

16日の日本経済新聞朝刊政治面に載った「看板政策、20~40代に照準~携帯値下げ・不妊治療・高齢者医療費増 コロナと経済の両立に腐心」という記事はツッコミどころが多かった。まず「看板政策、20~40代に照準」と言えるのか。冒頭では以下のように書いている。

夕暮れ時の筑後川

【日経の記事】

16日に政権発足3カ月を迎えた菅義偉首相は携帯電話料金の値下げなど20~40歳代の現役世代に照準を定める政策で実績を上げつつある。独自の支持層をつかむ狙いが透ける。新型コロナウイルス対応は観光需要喚起策「Go To トラベル」の扱いなど感染拡大防止と経済の両立に腐心する。


◎「携帯値下げ」で「20~40代に照準」?

携帯値下げ」の恩恵は50代以上にも及ぶはずだ。なぜ「20~40代に照準」なのか最後まで読んでも説明はない。記事では「首相が掲げる看板政策の状況」という表で「脱炭素」と「行政のデジタル化」にも触れている。これらも「20~40代に照準」とは考えにくい。

独自の支持層をつかむ狙いが透ける」という説明も謎だ。「20~40代」は「独自の支持層」になるのか。安倍政権は若者の支持率が高いと言われていた。「20~40代」とはかなり重なる。「独自の支持層」とは安倍政権との比較ではないということか。

さらに記事では「若年層の不安要因を取り除く首相の姿勢は一定の評価を得る」とも書いている。「日本経済新聞の11月の世論調査は年代別でもっとも高い年代層の支持率が30代の64%だった。40代も61%と高く、60代の54%を大幅に上回る」と続けているので「20~40代」を「若年層」と捉えているのだろう。

若年層」を辞書で調べると「年齢の若い人々の集団。統計では、15~24歳または15~34歳程度とすることが多い」(デジタル大辞泉)と出てくる。「40代」を「若年層」とするのは無理がありそうだ。


※今回取り上げた記事「看板政策、20~40代に照準~携帯値下げ・不妊治療・高齢者医療費増 コロナと経済の両立に腐心

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201216&ng=DGKKZO67361350V11C20A2PP8000


※記事の評価はD(問題あり)

2020年12月15日火曜日

「利他的」な人だけワクチンを接種? 小田嶋隆氏の衰えが気になる日経ビジネスのコラム

日経ビジネスでは小田嶋隆氏のコラムを楽しみにしている。だが最近は同氏の衰えを感じる記述も多い。12月14日号に載った「小田嶋隆の『pie in the sky』絵に描いた餅べーション~GoToとワクチンの不穏な関係」という記事もそうだ。

日田市の三隈川(筑後川)

記事の終盤を見ていこう。

【日経ビジネスの記事】

ワクチンは社会の一定数以上の人が接種しないと、集団免疫が得られない。成功させるには、政府の政策への信頼が共有されていることが前提になる。逆に言えば、政治不信やシニシズムが横行している社会では、こうした共同体的な(あるいは「利他的な」)行動は無視される。GoToトラベルは「利己」だけでドライブできるが、ワクチンは自己利益一辺倒の人間にはアピールしない

してみると、来年以降の景気回復は、われわれがどれほど利他的な人間であるかにかかっているということになる。

うむ。自信は持てない。


◎「ワクチンは自己利益一辺倒の人間にはアピールしない」?

ワクチン」であれば感染予防の効果があるはずだ。副反応のリスクよりも予防のメリットが上回るのであれば、接種は「自己利益」を増やす上で有効だ。

しかし小田嶋氏は違う考えのようだ。「自己利益」は増えないが「利他的」ではあるという意味で、「ワクチン」接種を無償での臓器提供のようなものだと見なしているのだろう。だが副反応なしに予防を実現できれば「ワクチン」接種が「自己利益」の拡大につながるのは明らかだ。

とあるテレビ番組を見ていたら「自分は基礎疾患もあるからワクチンができたら10万円出してでも打ちたい」と高齢男性がインタビューに答えていた。この人は「利他的な人間」だから10万円を払ってでもワクチンを接種するのだろうか。

少し考えれば小田嶋氏も分かるはずだ。そこが分からなくなっているとすれば、コラムニストとして引退を考えるべき時期かもしれない。


※今回取り上げた記事「小田嶋隆の『pie in the sky』絵に描いた餅べーション~GoToとワクチンの不穏な関係

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00106/00094/


※記事の評価はD(問題あり)

2020年12月14日月曜日

先輩ヨイショの「From Editors」が残念な週刊ダイヤモンド山口圭介編集長

編集後記で内輪の話を書くなとは言わない。むしろ書いてほしい。しかし読者に向けた内容にはすべきだ。週刊ダイヤモンド12月19日号の「From Editors」で山口圭介編集長は以下のように記している。

夕暮れ時の筑後川

【ダイヤモンドの記事】

今週号の第1特集を企画した編集委員の田中久夫さんは、これが定年前の最後の特集です。長い間、本当にお疲れ様でした。数々のヒット作を生み出した名物編集長として鳴らし、今回も読者ニーズを巧みにくみ取ったさすがの仕上がりです

直接指導を受ける機会はそれほどありませんでしたが、独自ランキングや読者目線の企画構成など、誌面を通じて多くを学ばせてもらいました。昨年、編集部が新体制に移行して厳しい部数が続いていたとき、反転攻勢のきっかけは久夫さんの特集でした。あれがなければ、私は辞表を出していたかもしれません。

定年後もぜひとも編集部に関わってもらいたいと思っているので、引き続きよろしくお願いします!


◎社内報に書いた方が…

社内の先輩である「田中久夫さん」に向けたメッセージになっている。それを読者に発信する気が知れない。社内報にでも書くべき内容だ。しかも「今回も読者ニーズを巧みにくみ取ったさすがの仕上がりです」と遠回しな自画自賛の内容になっている。やるなら編集部内でやってほしい。「読者ニーズを巧みにくみ取ったさすがの仕上がり」だと思わない読者もいるはずだ。なのに山口編集長は自ら「読者ニーズを巧みにくみ取ったさすがの仕上がり」だと断定してしまう。

From Editors」の中身は「From Editors to readers」であるべきだ。

ちなみに今回の「From Editors」では「田中久夫さん」自身も記事を書いている。その一部を見ておこう。


【ダイヤモンドの記事】

今週、定年で退職します。この場を借りてごあいさつ。お世話になった取材先の皆さま、誠にありがとうございました。定年まで持たないと思っていた会社を支えてくれた社内の人たち、わがままな私に付き合ってくれた職場の同僚、本当に感謝です。まだ恨んでいる方、どうか忘れてください。


◎読者への感謝がないが…

編集後記で定年退職の「あいさつ」をするならば、自分だったらまず読者への感謝を伝える。しかし「田中久夫さん」は違う。「取材先の皆さま」「会社を支えてくれた社内の人たち」「職場の同僚」限定だ。「社内の人たち」と「職場の同僚」は重なっている部分も多いので「社内の人たち」に「本当に感謝」なのだろう。

会社を支えてくれた社内の人たち」から「社内の」を抜けば、そこに読者も入っているという解釈もできる。しかし「田中久夫さん」はきちんと「社内」に限定し、社外の読者は除いている。

田中久夫さん」が読者に感謝していないのはよく分かった。「定年で退職」するのだからもういい。問題は山口編集長だ。今回の「From Editors」をもう一度読み返してほしい。その上で、読者の方を向いて誌面作りをしているのか、改めて自問してほしい。


※今回取り上げた記事「From Editors


※記事の評価はD(問題あり)。山口圭介編集長への評価はB(優れている)を据え置くが弱含みとする。山口編集長に関しては以下の投稿も参照してほしい。


ミス3連発が怖い週刊ダイヤモンドの特集「株・為替の新格言」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/blog-post_28.html

ミス放置「改革」できる? 週刊ダイヤモンド山口圭介編集長に贈る言葉
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_95.html

「ミス放置」方針を転換した週刊ダイヤモンドの「革命」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_12.html

週刊ダイヤモンド ようやく「訂正」は出たが内容が…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_15.html

山口圭介編集長を高く評価したくなる週刊ダイヤモンドの訂正
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/04/blog-post_26.html

山口圭介編集長率いる週刊ダイヤモンドの「不都合な記事」に期待
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/06/blog-post_2.html

2020年12月13日日曜日

高い配当利回りは「魅力的」と週刊ダイヤモンド篭島裕亮記者は言うが…

株式投資で配当に着目する意味はほぼない。しかし、なぜか「配当利回り」に目が行くようだ。週刊ダイヤモンド12月19日号の特集「高利回り商品 総点検」でも「安心して持てる高配当株 5つのチェック項目を伝授」という記事で「高配当株」を取り上げている。そして「預金金利がほぼゼロの状態が続き『高利回り』に対する需要は強い」「超低金利は今後も継続する可能性が高く、高い(配当)利回りは魅力的なのも事実」などと書いている。

コスモスパーク北野(久留米市)

配当利回りに関して記事を書く場合には以下のことを考えてほしい。

(1)預金金利との比較は不適切

配当利回り」と「預金金利」を比べる意味はない。100円の預金に10%の金利が付くと110円になる。しかし100円の株で10%の配当をすると90円の株と10円の現金が残る(税金などは考慮しない)。合計は100円で変わっていない。

配当利回り50%は預金金利の10%より魅力的と言えるだろうか。100円の株だと配当後は50円の株と50円の現金(合計100円)にしかならない。配当がいくらだろうと株主に損得はない(税金などを考慮すれば別)。預金は違う。預金金利10%と50%ならば50%の方が預金者の利益は大きくなる。

株の場合、配当以外の要因でも価格が変動するので「配当すると株式価値が減る」というイメージを持ちにくい。だから多くの書き手が「配当利回り」と「預金金利」を比べてしまうのだろう。


(2)インカムゲインを切り離すな

(1)とも関連するが、株式投資の場合はインカムゲインとキャピタルゲインがある。インカムゲインを切り離して考えることに意味はない。トータルリターンのみを考えればいい。ダイヤモンドの記事でも「『配当利回り』だけで選ぶのはNG」という説明を「2019年初の配当利回り上位30社の株価騰落率」という表に付けている。

『配当利回り』だけで選ぶのはNG」というのは間違いではない。だが「配当利回り」も重要な指標だと誤解させているところに罪を感じる。「『配当利回り』は見ないでトータルの利回りで考えろ」などと助言すべきだ。

記事では「高すぎる配当性向は減配リスクが高いことの裏返しだ」とも書いている。業績悪化に伴い「減配」となる状況は株主にとって歓迎すべき事態ではない。だが「減配」ではなく業績悪化が問題なだけだ。

業績好調の中での「減配」であれば気にする必要はない。その分は株価が高くなる。自分が成長株に投資するならば無配の方がいい。配当よりも成長投資に資金をつぎ込んで株式価値を高めてくれることを願う。

企業に余剰資金が生まれた時に配当として株主に還元することを否定はしない。しかし配当が増えたからと言って株主として喜ぶ気にはなれない。その分は株式価値が低下しているからだ。

配当利回りに着目しても意味がない--。投資に関する書き手にはこの認識を持ってほしい。


※今回取り上げた記事「安心して持てる高配当株 5つのチェック項目を伝授」https://diamond.jp/articles/-/255410


※記事の評価はD(問題あり)。篭島裕亮記者への評価も暫定でDとする。