2021年11月21日日曜日

小田嶋隆氏は「全面的に支持」の意味を理解してない?日経ビジネス「pie in the sky」

日経ビジネス11月22日号にコラムニストの小田嶋隆氏が書いた「pie in the sky 絵に描いた餅ベーション~小遣いに図書券をくれる人」という記事は苦しい内容だった。「自民・公明両党が、このほど18歳以下の国民に10万円相当の給付を実施することで合意したのだそうだ。全面的に支持する」と小田嶋氏は言う。本当に「全面的に支持」しているだろうか。「いくつかモヤモヤする点がある。以下、列挙してみる」と述べた上で以下の3つの注文を付けている。

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1・国策に関わる重大な決定を、国会にはかることなく、どうして与党だけで決めてしまうのか。

2・シンプルに現金10万円を配らずに半額の5万円を「費消先を限定したクーポン」にするのはなぜか。

3・この期に及んで所得制限を検討しているのはなぜか。


そして結論に至る。「というわけで、1・国会の決議を経た上で、2・10万円の全額を現金で、3・即座に、全世帯に配布するのが望ましい支給方法だと私は考えている」と小田嶋氏は言う。

・「半額の5万円」を「クーポン」にするのは反対。「10万円の全額を現金」にするのが望ましい。

・「18歳以下の国民」に限定したり「所得制限」を付けたりするのには反対。「全世帯に配布」するのが望ましい。

これが小田嶋氏の主張だ。「自民・公明両党」の案とはかなり異なる。なのに「全面的に支持」なのか。「全面的に支持」の意味を小田嶋氏は理解しているのか。「大筋で支持」ぐらいの意味で「全面的に支持」と書いている気がする。

記事の終盤にもツッコミどころがある。そこを見ていこう。


【日経ビジネスの記事】

子どもだったころを思い出してみると、小遣いを貰う立場の者としてなによりうれしかったのは現金だ。図書券とか書籍とか知育玩具とかをよこす大人には、むしろ敵意を持ったものだ。なぜなら「君にはこれがふさわしい」という押し付けは、当方の自己決定権を踏みにじる抑圧だからだ。


◎「書籍とか知育玩具」は「小遣い」?

小遣いを貰う立場の者としてなによりうれしかったのは現金だ。図書券とか書籍とか知育玩具とかをよこす大人には、むしろ敵意を持ったものだ」と小田嶋氏は言う。「図書券」は微妙だが「書籍とか知育玩具」は「小遣い」ではない。

大人」から「書籍とか知育玩具」をもらった時に「小遣い」をもらったと小田嶋氏が認識していたのであれば、「小遣い」の意味を理解していなかったと見るべきだろう。

小遣い」に関して日本大百科全書(ニッポニカ)は「小遣い銭の略で、ここでは、自分の意志により自由に使うことが許されている、子供のもつ金銭のことをいう」と解説している。「図書券」でさえ「小遣い」に含めるのは苦しい。

付け加えると「『君にはこれがふさわしい』という押し付けは、当方の自己決定権を踏みにじる抑圧」だとも思えない。例えば「書籍」を与えられて強制的に読書をさせられたのならば「自己決定権を踏みにじる抑圧」との見方に納得できる。

「いい本だからお薦めだよ。興味がなかったらゴミ箱に捨てといて」と言って「書籍」を渡された場合、読む気にならなければ勝手に処分すればいいだけの話だ。どこに「自己決定権を踏みにじる抑圧」があるのか。

結びのくだりも見ておこう。


【日経ビジネスの記事】

「でも、現金だとバカな使い方をするからなあ」と思っている人は、ぜひ胸に手を当てて自分の子ども時代を思い出してほしい。「バカな使いみちにつぎこんだお金」が、現在のあなたをつくっているのではないか?

私はそうだ。バカだったからこそ、いまこうして暮らしていられる。


◎それだけじゃないような…

『バカな使いみちにつぎこんだお金』が、現在のあなたをつくっているのではないか」と小田嶋氏は問いかける。これに対する答えは「『バカな使いみちにつぎこんだお金』も『書籍とか知育玩具』も、現在の自分を形作る要素になっている」といったところか。

子供の頃、自分の部屋には世界地図と日本地図が貼ってあった。親が勝手に貼ったものだ。特に何を学べとも言われた記憶はないが、これらの地図で都道府県名や国名をいつの間にか覚えてしまっていた。

現金」はくれずに「君にはこれがふさわしい」という親の思い込みで地図は購入され、部屋に貼られたのだろう。だが、これが日本や世界に関心を持つきっかけになった。「バカな使いみちにつぎこんだお金」だけが「現在のあなたをつくっている」訳ではない。

世の中はそんなに単純ではない。そのことを「バカだったからこそ、いまこうして暮らしていられる」小田嶋氏には分かってほしい。


※今回取り上げた記事「pie in the sky 絵に描いた餅ベーション~小遣いに図書券をくれる人

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00106/00139/


※記事の評価はD(問題あり)。小田嶋隆氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

試合時間が長いと番狂わせが起きやすい? 小田嶋隆氏のサッカー論に見える誤解https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/10/blog-post_24.html

コロナ楽観論者が医療システムに「テロ行為」? 小田嶋隆氏の衰えが辛いhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2021/09/blog-post_4.html

どうした小田嶋隆氏? 日経ビジネス「盛るのは土くらいに」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/09/blog-post_25.html

山口敬之氏の問題「テレビ各局がほぼ黙殺」は言い過ぎ
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/06/blog-post_10.html

小田嶋隆氏の「大手商業メディア」批判に感じる矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_12.html

杉田議員LGBT問題で「生産性」を誤解した小田嶋隆氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/lgbt.html

「ちょうどいいブスのススメ」は本ならOKに説得力欠く小田嶋隆氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/ok.html

リツイート訴訟「逃げ」が残念な日経ビジネス「小田嶋隆のpie in the sky」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/pie-in-sky.html

「退出」すべきは小田嶋隆氏の方では…と感じた日経ビジネスの記事https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_16.html

「政治家にとってトリアージは禁句」と日経ビジネスで訴える小田嶋隆氏に異議ありhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2020/12/blog-post_10.html

「利他的」な人だけワクチンを接種? 小田嶋隆氏の衰えが気になる日経ビジネスのコラムhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2020/12/blog-post_15.html

根拠示さず小林よしのり氏を否定する小田嶋隆氏の「律義な対応」を検証https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/12/blog-post_28.html

小田嶋隆氏が日経ビジネスで展開した「コロナ楽観論批判」への「反論」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/12/blog-post_29.html

「女性限定の反撃」は「罪」? 小田嶋隆氏が日経ビジネスで展開した無理筋https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/01/blog-post_25.html

「女性側に原因がないこともない」を「失言」と見なす小田嶋隆氏に異議https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/02/blog-post_27.html

「彼女が中止のホイッスルを吹く日」に期待する小田嶋隆氏の矛盾https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/04/blog-post_16.html

日経ビジネスでの橋下徹氏批判に見える小田嶋隆氏の「あまりにも粗雑な詭弁」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/08/blog-post.html

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