2019年12月5日木曜日

予想通りに苦しい日経1面連載「データの世紀~理解者はキカイ」

日本経済新聞の朝刊1面連載「データの世紀~理解者はキカイ」が予想通りに苦しい展開となっている。 5日の「(3)買いたたかれるベテラン~情報の山、鉱脈かノイズか」という記事もツッコミどころが多い。記事を見ながら具体的に指摘していく。
のこのしまアイランドパークのコスモス
        ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

2019年初め。ネット上では、米大リーグのダラス・カイケル投手(31)へ激励のつぶやきが相次いだ。「ヤンキースはすぐに契約すべきだ」「15年の最優秀投手なのに

アストロズの主軸として長年活躍した。18年末に自由契約になったが、交渉はことごとく決裂する。「もう、そんなことは関係なくなったみたいだよ」。ファンの声にカイケル投手は諦めるように応じた。

あらゆる価値をデータで測る「新しき理解者」は恣意性も誤りもないはずだ。そんなデータ至上主義の高まりが、経済や社会の仕組みを大きく変え始めた。

「ベテラン1人より、若手数人に投資する方が合理的という経営が広がっている」。著名代理人の団野村氏は大リーグで進む「データ野球」を解説する。重視するのは「勝利貢献度」「成長曲線」「球の回転数」といった新たな尺度だ。


◎「データ」との関連が…

米大リーグのダラス・カイケル投手」の話が「データ」とどう関連するのか記事からは判断できない。引く手あまたであるべき選手が「あらゆる価値をデータで測る『新しき理解者』」によって排除された事例のつもりなのだろう。

しかし「カイケル投手」の成績に関しては「アストロズの主軸として長年活躍した」「15年の最優秀投手」といった情報しかない。「15年」に大活躍しても、その後に成績が振るわなければ契約に至らないのは当然だ。しかし肝心の「18年」シーズンの成績に触れていない。これは苦しい。

付け加えると、なぜ「ヤンキース」なのか説明せずに「ヤンキースはすぐに契約すべきだ」という声を入れているのも感心しない。また、野球で「主軸」と言う場合、打者を指すのが一般的だ。「投手」に使うのは間違いとは言わないが、お薦めしない。

さらに言えば「重視するのは『勝利貢献度』『成長曲線』『球の回転数』といった新たな尺度だ」との説明も納得できない。「球の回転数」は「新たな尺度」かもしれないが、「勝利貢献度」と「成長曲線」は以前から「重視」されていた気がする。

次の事例には「予測」の「精度」に関する問題がある。「凄いことが可能になった」と取材班は訴えたいのだろうが同意できない。

【日経の記事】

データ活用は日常の隅々にまで広がる。それは人が大事にしてきた文化や価値観をも揺さぶっている。

今夏、北欧ヘルシンキ。「この人は5年以内に心臓病を患って亡くなる」。医療技術企業、ナイチンゲールヘルスのティーム・スナさんは身震いした。

血液成分から被験者の5年後、10年後の死亡確率を8割の精度で予測できる。4万人の血液と病歴を解析した。スナさんは「多くの人を救いたい」と検査アプリへ応用を急ぐが、社内外で慎重論は絶えない。

自分が数年以内に死ぬと分かれば、人は絶望するだけではないか」。「死期予測」機能を搭載するか、一朝一夕に結論は出ない。

技術の進化は個人の潜在能力や寿命すら把握できてしまうところまで来た。だがその根拠となるデータは常に正しいとは限らない。


◎「8割の精度」は凄い?

まず「5年後、10年後の死亡確率を8割の精度で予測できる」との説明がよく分からない。例えば「5年後の死亡確率は50%」と「予測」したとしよう。そして5年以内に死亡した場合、「予測」は当たったのか。それとも外れたのか。

この人は5年以内に心臓病を患って亡くなる」という記述から判断して、「予測」するのは「死亡確率」ではなく「死亡しているかどうか」だと仮定しよう。これを「8割の精度で予測できる」という話ならば分かる。

ただ、この場合「8割の精度」が凄いかどうかは微妙だ。「被験者」の選び方さえ任せてくれたら、自分でも9割以上の「精度」を実現できるだろう。

例えば、大学生100人を集めて全員を「5年後も10年後も生きている」と「予測」する。あるいは、80代の末期がん患者100人全員を「10年以内に死亡」と「予測」する。これで9割以上の「精度」を達成したとしたら、取材班のメンバーは「ほとんどデータに頼らず『寿命すら把握できてしまう』なんて凄い」と驚いてくれるだろうか。

この人は5年以内に心臓病を患って亡くなる」という記述から判断すると、「ナイチンゲールヘルス」では死因も含めて「8割の精度で予測できる」とも取れるが、これも記事では明示していない。

総合すると、何となく「大した話ではないのだろう」とは感じる。しかし記事では「自分が数年以内に死ぬと分かれば、人は絶望するだけではないか」「技術の進化は個人の潜在能力や寿命すら把握できてしまうところまで来た」などと煽ってくる。

その強引さは「技術の進化」を取り上げる時の日経1面連載の宿命なのかもしれないが…。


※今回取り上げた記事「データの世紀~理解者はキカイ(3)買いたたかれるベテラン 情報の山、鉱脈かノイズか
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191205&ng=DGKKZO52735280Y9A121C1MM8000


※記事の評価はD(問題あり)

2019年12月4日水曜日

週刊ダイヤモンドが日経ビジネスに圧勝 「東芝の親子上場解消」巡る記事

東芝が親子上場解消の対象から東芝テックだけを外した件に関しては、週刊ダイヤモンド(筆者は千本木啓文記者)の記事の出来が日経ビジネス(筆者は佐伯真也記者と竹居智久記者)を大きく上回っていた。
のこのしまアイランドパーク(福岡市)
          ※写真と本文は無関係です

日経ビジネス11月25日号に載った「時事深層 COMPANY~東芝、上場子会社再編で東芝テック対象外のなぜ」という記事では、「同社(=東芝テック)株は年初から7割ほど上昇しており、単純に『高値づかみ』を避けたかったのかもしれない」と書いた程度で「東芝テック対象外のなぜ」にまともに迫っていない。

一方のダイヤモンド12月7日号の「Close Up~世界首位レジ子会社の売却も検討 東芝が親子上場『完全解消』見送り」という記事は及第点だ。その一部を見ていこう。


【ダイヤモンドの記事】

そんな優良子会社を、あえて上場企業のまま放置するのはなぜなのか──。

その理由は、「完全子会社化しても他の3社のようにEPSを20%以上改善することはできない」(東芝幹部)からなのだが、その要因は三つある。

一つ目は、海外のPOSレジ事業の大部分が米IBMから買収した資産であるため、「統合後のシナジーを読みにくい」(同)ことだ。他の上場子会社3社の源流が東芝で、社内事情が分かるため統合効果を出しやすいのとは対照的だ。

二つ目の要因として、購買データを活用したビジネスは現状の資本関係(9月30日現在、東芝テック株式の東芝の持ち分比率は52.4%)でも東芝主導で拡大できることがある。

東芝幹部は「他社製のレジでの買い物でも、スマートフォンのアプリを活用すれば購買データは集められる。東芝テックは購買データのビジネスにとって重要なパートナーだが絶対的に不可欠な存在ではない」と言い切る。

最後の三つ目が一番重要なのだが、東芝がそもそも東芝テックの成長性を疑問視していることだ。

東芝テックの営業利益率は19年3月期で3.8%、23年3月期の目標は同6.0%で、東芝全体の利益目標と比べて見劣りする。

しかも、キャッシュレスなどの決済の多様化やセルフレジの普及というハードウエア拡販のための「追い風」が吹いているのに、東芝テックは中期経営計画で、現在の売上高4800億円について22年3月期までほぼ横ばいを見込む。


POSレジなど東芝テックの製品はコモディティ化しつつある上に、データビジネスで中計期間中に「大化け」させられるかどうか、同社自身が半信半疑なのである。

しかも、東芝テックには長年、モノ言う株主から指摘されてきた「突っ込みどころ」がある。

実は、オフィス用のプリンターなどを扱うプリンティング事業を持っており、その成長が期待できないのだ。

東芝の株主である米ファンドのキング・ストリート・キャピタル・マネジメントは18年、東芝テックのプリンティング事業について「売却を含めたあらゆるオプションの検証」を東芝に求めた。

同ファンドは要求の根拠として、プリンティング事業の市場が年間2%ずつ縮小するとみられることや、プリンターやファクスなどの機能を持つ複合機が市場シェア11位にとどまること、そして「POSレジ事業とのシナジー効果が欠如している」ことを挙げた。

実際に、プリンティング事業は競合他社との価格競争や米中市場の減速が直撃し、19年4~9月期の営業利益率は1.9%まで下がっている。プリンティング事業を売却するにも、キヤノンなどの競合他社も市場の縮小に苦しむ中で前向きなM&A(企業の合併・買収)が成立しにくいのが現状だ。


◎「納得できた」とは言わないが…

海外のPOSレジ事業の大部分が米IBMから買収した資産であるため、『統合後のシナジーを読みにくい』」といった説明には「本当にそうかな」と思わないでもないが良しとしよう。
筑後川橋(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です

大事なのは「そんな優良子会社を、あえて上場企業のまま放置するのはなぜなのか」との疑問に対して、答えをきちんと探ろうとしたかどうかだ。日経ビジネスの記事と比べるとダイヤモンドの方が明らかに頑張りを感じる。「東芝幹部」に独自取材した形跡も見える。発表から時間を置いて記事にするのだから、日経ビジネスのようなあっさりとした分析では取り上げる意味が乏しい。

ただ、ダイヤモンドの記事では「親子上場は解消すべきだという政府の方針がある」との説明が引っかかった。これに関しては、編集部への問い合わせと、それに対する回答を見てほしい。

【ダイヤモンドへの問い合わせ】


週刊ダイヤモンド編集部 千本木啓文様

2019年12月7日号「Close Up~世界首位レジ子会社の売却も検討 東芝が親子上場『完全解消』見送り」という記事についてお尋ねします。記事では東芝テックに関して「親子上場は解消すべきだという政府の方針がある以上、完全子会社化しないなら、売却を検討せざるを得ない」と記しています。しかし「親子上場は解消すべきだという政府の方針がある」とは思えません。

今年6月21日に公表された政府の「成長戦略実行計画」では「親子上場」について以下のように述べています。

支配的な親会社が存在する上場子会社のガバナンスについては、投資家から見て、手つかずのまま残されているとの批判があり、日本市場の信頼性が損なわれるおそれがある。
このため、新たに指針を策定し、親会社に説明責任を求めるとともに、子会社側には、支配株主から独立性がある社外取締役の比率を高めるといった対応を促す。また、東証の基準等についても見直しを図る

親会社に説明責任を求める」「子会社側には、支配株主から独立性がある社外取締役の比率を高めるといった対応を促す」とは書いてあります。しかし「成長戦略実行計画」の内容からは「親子上場は解消すべきだ」との「政府の方針」はないと解釈するのが自然です。

親子上場は解消すべきだという政府の方針がある」との説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、何を根拠に「親子上場は解消すべきだという政府の方針がある」と記事で断言したのか教えてください。


【ダイヤモンドの回答】

いつもご購読ありがとうございます。お問い合わせいただいた件について以下、回答申し上げます。

当該の記事で、「親子上場は解消すべきだという政府の方針がある」と書いたのは以下の2つの理由からです。

(1)当該の記事の取材の過程で、「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」を策定した経済産業省の産業組織課に対して、上場子会社を残す場合に親会社に求める「説明責任」の意味合いについて聞いたところ、同課担当者から「親子上場を解消するまでの過渡的措置である」と説明を受けました。このことから、政府は原則的に「 親子上場は解消すべき」という考えであると理解しました。

(2)東芝や日立製作所への企業幹部に対する取材により、「政府が将来的に親子上場を解消する方針である」 との前提に立ち企業戦略を練っているとの言質を得ております。実際に、東芝の平田政善CFO(最高財務責任者)は親子上場解消を発表した当日の会見で、「(親子上場は解消すべきという)政府方針があるので、どこかで最終判断をする」と明言しています。

以上、ご確認よろしくお願いいたします。

◇   ◇   ◇

※今回取り上げた記事「Close Up~世界首位レジ子会社の売却も検討 東芝が親子上場『完全解消』見送り
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/28184


※記事の評価はC(平均的)。千本木啓文記者への評価はE(大いに問題あり)からC(平均的)に引き上げる。千本木記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「不祥事頻発」の分析が怪しい週刊ダイヤモンドの自衛隊特集
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/08/blog-post_69.html

間違い目立つ週刊ダイヤモンド「ハイブリッド戦争」特集
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_10.html

東芝メモリ買い手を「強盗と詐欺師」に見せる週刊ダイヤモンド
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/10/blog-post_2.html

東芝メモリ売却の「教訓」に説得力がない週刊ダイヤモンド
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/10/blog-post_69.html


※日経ビジネスの「時事深層 COMPANY~東芝、上場子会社再編で東芝テック対象外のなぜ」という記事に関しては以下の投稿を参照してほしい。

取材不足では? 日経ビジネス「上場子会社再編で東芝テック対象外のなぜ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/blog-post_23.html


※「親子上場」に関しては以下の投稿も参照してほしい。

親子上場ってそんなに問題? 日経「株式公開 緩むルール」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/03/blog-post_19.html

KNTの「親子上場」を批判するFACTAに異議あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/kntfacta.html

「親子上場」否定論に説得力欠く日経「大機小機」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_77.html

ヤフーとアスクルの件で「親子上場の問題点浮き彫り」という日経に異議
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/blog-post_24.html

ヤフー・アスクルの件を「親子上場」の問題と捉える日経の無理筋
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post.html

「弊害」多いのに「親子上場の禁止」は求めない日経社説の謎
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_5.html

日経記者に読んでほしい藤田勉・一橋大学特任教授の「親子上場肯定論」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_29.html

「親子上場」だと「資本効率が下がる」? 日経 佐藤亜美記者の誤解
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/blog-post_27.html

2019年12月3日火曜日

「あなたの活躍、8割的中」は本当に凄い? 日経1面連載「データの世紀」

日本経済新聞の朝刊1面で苦しそうな連載が始まった。技術革新が世界を大きく変えると訴える企画記事が日経は大好きだが、成功確率は低い。3日の「データの世紀 理解者はキカイ(1)あなたの活躍、8割的中 AI上司は知っている『見える化』の代償も」という記事にも説得力は感じられなかった。

フラワーのこ(福岡市の姪浜渡船場で)
      ※写真と本文は無関係です

まずは最初の事例を見ていこう。

【日経の記事】

悩みを聞いてもらう相手は家族や友人、職場の先輩というのは過去の話になるかもしれない。表情や声などから、個人の内面すら読み取るデータ技術が登場する。あなたのことをあなた以上に知り、会社では生産性の向上、私生活では人生相談に一役買う。「理解者はキカイ」になる時、私たちは何を見るのか。

今成勉さん(64)は8月、部下の男性社員の「人物診断書」に目を疑った。成績優秀。人当たりも良い。あいさつを欠かさず、変わった様子はないはずだ。「明るいあいつがなぜ……」

今成さんが勤める京浜商事(横浜市)は、各社員の内面を「見える化」する独特の人材評価システムを使う。アルゴリズムで顔を解析し「行動力」「責任感」「安定性」など12項目を評価する。欠点がなさそうに見えた部下の男性だが「自信」が極度に低かった

今成さんは元警察官で、人を見る目には自信がある。最初は診断結果を疑ったが、念のため男性社員に話を聞くと、子育てや親戚付き合いで悩みを抱えていた

「やっと言えてほっとしました」。面談後の表情は見違えるようだった。「キカイの方が人を見る目があったとは」。今成さんは幹部候補選びでも活用を検討する。

テクノロジーで働く人を感情面から支援する「トランステック(総合2面きょうのことば)」に注目が集まる。外見から分からない心の動きをデータで示し、社内の交流や仕事の効率化を促す。膨大なデータを駆使する21世紀だからこそ可能になった「新しき理解者」だ


◎「キカイの方が人を見る目があった」?

上記の事例から「キカイの方が人を見る目があった」と言えるだろうか。「キカイ」が判断したのは「『自信』が極度に低かった」ことだ。そして「面談」で「子育てや親戚付き合いで悩みを抱えていた」と分かったらしい。

キカイ」が「男性社員」について「子育てや親戚付き合いで悩みを抱えていた」と見抜いたのなら分かる。しかし教えてくれたのは「自信」のなさだけだ。「悩み」と関連があるかどうかも微妙だ。

自信」のなさが「子育てや親戚付き合い」の「悩み」から来ているとは限らない。元々が「自信」に欠けるのかもしれない。「面談」で分かったことと「キカイ」の判断を強引に結び付けている可能性はかなりある。

次の事例はさらに無理がある。

【日経の記事】

米調査会社トラクティカによると、感情分析の市場規模は2025年に4100億円と18年の20倍に膨らむ見通し。あらゆる職場でキカイの理解者が活躍し始めたが、同時に私たち人間にも大きな変化を迫る。

ネット広告のセプテーニ・ホールディングスは、採用活動で人工知能(AI)の判断を重視する。学生の考え方や経験を聞くアンケート、初期選考の結果など約100項目から入社後の「活躍可能性」が算出される。

10年分の人事評価データに基づく予測の的中率は8割。新卒採用の100人中、2割はネット面接のみで合否が決まり、4月の入社式で初めて会社に来る人もいる。

経験や勘に基づいた人の判断は曖昧だ。そんな不満が、データ分析で個々の未来を予測する技術を発展させた。担当の江崎修平さんは「AIに任せる仕事が増えた分、人に求められる能力もどんどん変わっている」と気を引き締める。



◎「的中率8割」の中身が…

あなたの活躍、8割的中」と見出しにも使っているが、「予測の的中率は8割」に関する説明は引っかかる。「セプテーニ・ホールディングス」の使う「AI」が具体的にどういう「予測」をしているか分からないからだ。

イメージしやすいように、プロ野球選手で考えてみよう。「A選手は入団1年目からレギュラーに定着し、入団から10年続けて打率3割以上、本塁打20本以上を記録する」と「AI」が「予測」して「的中」させたら、凄いと思える。

これが「A選手は引退するまでに1本以上の本塁打を打つ」との「予測」だったらどうか。このレベルの「予測」で「的中率は8割」だとしても驚くには値しない。

AIなどの進歩を取り上げた企画記事では「こんなに凄いことが起きている」と訴えないと話が成り立ちにくい。しかし、取材班が望むような大きな変化は簡単には起きてくれない。それが記事で紹介した事例から透けて見えるのは皮肉だ。


※今回取り上げた記事「データの世紀 理解者はキカイ(1)あなたの活躍、8割的中 AI上司は知っている『見える化』の代償も
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191203&ng=DGKKZO52568640V21C19A1MM8000


※記事の評価はD(問題あり)

2019年12月2日月曜日

「収益力」との関連付けに無理がある日経「SDGs経営調査」

調査にカネをかけた以上、何か意義ある結果が見つからなければ困るのは分かる。しかし、強引に意義付けすると調査そのものへの信頼性が低下してしまう。2日の日本経済新聞朝刊1面トップを飾った「『課題解決力』収益けん引 本社SDGs調査~環境・社会問題への対応『経営計画反映』6割」という記事を読むと、日経が「SDGs」と「収益力」で無理のある関連付けをしているのが分かる。
筑後川橋(福岡県久留米市)と夕陽
      ※写真と本文は無関係です

当該部分を見ていこう。

【日経の記事】

日本経済新聞社は上場企業など国内637社について、国連の「持続可能な開発目標(SDGs=総合・経済面きょうのことば)」にどう取り組んでいるかの視点で格付けした「SDGs経営調査」をまとめた。環境や社会など「非財務」の成果を投資判断に加える動きが広がるなか、上位34社で後続グループよりも自己資本利益率(ROE)などの指標が高い傾向がみられた。新規事業の開発や経営計画にSDGsを取り入れ、課題解決の力を成長につなげる機運が高まっている。

中略)偏差値65以上は34社。このグループの売上高営業利益率とROE(16~18年度平均の中央値)は、それぞれ8.2%、11%だった。偏差値60以上65未満だと、7.8%、10.1%。55以上60未満では6.7%、8.2%と下がっている。SDGsを経営に生かしている企業ほど、収益力が高い傾向が鮮明となった



◎「業績」を評価に加えたからでは?


SDGs経営調査」では企業を「『SDGs戦略・経済価値』『環境価値』『社会価値』『ガバナンス』の4つの視点で評価した」という。特集面に載った「評価の方法」でさらに詳しく見ると「SDGs戦略・経済価値」は「方針、報告とコミュニケーション、推進体制・社内浸透、ビジネスでの貢献、業績の5指標」となっている。

業績」も含めて評価すれば、「業績」の良い企業が「上位」に来るのは当然だ。なのに「上位34社で後続グループよりも自己資本利益率(ROE)などの指標が高い傾向がみられた」「SDGsを経営に生かしている企業ほど、収益力が高い傾向が鮮明となった」などと訴えて意味があるのか。

SDGs経営調査は今回、初めて実施した」らしい。この種のごまかしに手を染めなければ記事として成り立たないのならば、調査は今回を最後にした方がいい。


※今回取り上げた記事「『課題解決力』収益けん引 本社SDGs調査
環境・社会問題への対応『経営計画反映』6割
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191202&ng=DGKKZO52834640R01C19A2MM8000


※記事の評価はD(問題あり)

2019年12月1日日曜日

「初期費用回収」の計算が雑な日経ビジネス池松由香ニューヨーク支局長

日経ビジネスの池松由香ニューヨーク支局長はやはり書き手として評価できない。12月2日号の「時事深層 FRONTLINE ニューヨーク~テスラの『自動運転タクシー構想』、始動か」という記事も分析が雑だ。「米テスラの低価格EV(電気自動車)『モデル3』」に触れて「1年強の期間、クルマに『働いて』もらえば、初期費用が回収できる計算になる」と池松支局長は言うが、そういう「計算」にはなりそうもない。
のこのしまアイランドパーク(福岡市)
        ※写真と本文は無関係です

当該部分を見ていこう。

【日経ビジネスの記事】

テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)によれば、モデル3は従来のEVと異なり、圧倒的に投資対効果を高めた車両だ。車両価格は3万5000ドル(約380万円)からと安い。さらにマスクCEOはモデル3の高い耐久性とランニングコストの低さをアピールしており、イエローキャブがどんどん「テスラ化」する可能性は十分にある。

日本の自動車メーカーにとって脅威になり得るが、これはその「序章」にすぎない。その理由は、テスラが今年4月に発表した「テスラネットワーク」計画にある。自動運転車両を使ってライドシェアサービスを提供するというもの。ウーバーテクノロジーズなどライドシェア大手のサービスを、運転手なしで実現するというわけだ。

このネットワークは主に同社が所有するクルマで構成するが、個人所有のテスラ車も参加できる点が構想の目玉だ。タクシー会社がこのネットワークを運営するパートナーとなる可能性はあるが、構想が実現すればタクシー会社はパイを奪われるだろう。

だが、オセロのコマがひっくり返る可能性があるのは個人所有の市場も同じだと考えられる。前述の通り、個人所有のテスラ車もネットワークに参加できるからだ。未使用の間、車両が勝手に「出勤」して移動サービスを顧客に届けることができる。同社の試算では、1日16時間稼働させれば年間最大3万ドルの収益がオーナーの手に入るという。1年強の期間、クルマに「働いて」もらえば、初期費用が回収できる計算になる。これは所有者にとって魅力的だ。


◎そんなに単純な話?

モデル3」の「車両価格は3万5000ドル(約380万円)からと安い」。「自動運転車両」を使った「ライドシェアサービス」には「個人所有のテスラ車もネットワークに参加できる」。そして「1日16時間稼働させれば年間最大3万ドルの収益がオーナーの手に入る」。だから「1年強の期間、クルマに『働いて』もらえば、初期費用が回収できる計算になる」--。池松支局長はそう考えたようだ。納得できただろうか。

ライドシェアサービス」に使う「自動運転車両」は今の「モデル3」と同じ価格になるとの前提を感じるが、そうなのか。タクシーとして使える運転者不要の「自動運転車両」であれば、発売当初はかなりの高価格になりそうな気がする。

では、同程度の価格であれば「1年強」で「初期費用が回収できる」だろうか。ここで言う「年間最大3万ドルの収益」とは「年間最大3万ドルの『収入』」との前提で考えたい。

車は購入すれば後は費用ゼロで動いてくれる訳ではない。「電気自動車」であれば電気代はかかるだろう。修理や保険にも費用が発生する。これらを含めて「初期費用が回収できる」かどうかを検討すべきだ。

百歩譲って費用は「3万5000ドル」のみとしよう。しかし、「3万ドルの収益」とはあくまで「最大」のケースだ。「3万5000ドル」を払ってEVを買えば、例えば5年間は何もしなくても毎年「3万ドル」が入ってくるとしよう。こんな旨い話はあまりないので、多くの人が市場に参入しそうだ。そうなれば得られる「収益」は大幅に低下する。そして「3万ドルの収益」を得られる人はほとんどいなくなるはずだが…。

こうした様々な壁を乗り越えて、それでも「1年強の期間、クルマに『働いて』もらえば、初期費用が回収できる計算になる」と池松支局長は思えるだろうか。よく考えてみてほしい。


※今回取り上げた記事「時事深層 FRONTLINE ニューヨーク~テスラの『自動運転タクシー構想』、始動か
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00424/


※記事の評価はD(問題あり)。池松由香支局長への評価もDを据え置く。池松支局長に関しては以下の投稿も参照してほしい。

 日経ビジネス池松由香記者の理解不能な「トヨタ人事」解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/12/blog-post_9.html

大げさ過ぎる? 日経ビジネス特集「中国発 EVバブル崩壊」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/ev.html

手抜きが過ぎる日経ビジネス池松由香ニューヨーク支局長の記事
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_19.html

2019年11月30日土曜日

井上智洋 駒沢大准教授による日経ビジネス「気鋭の経済論点」の問題点

日経ビジネス11月18日号の「気鋭の経済論点~世界の天才集める中国 国力を決める『頭脳資本主義』」という記事はツッコミどころの多い内容だった。筆者である駒沢大学経済学部准教授の井上智洋氏に問題があるのだとは思うが、構成を担当した中山玲子記者の責任も重い。
のこのしまアイランドパーク(福岡市)
       ※写真と本文は無関係です

問い合わせから11日が経ってようやく回答が届いた。質問も含む形となっている回答の内容を紹介したい。


<日経ビジネス編集部の回答>

いつも日経ビジネスをご愛読いただき、誠にありがとうございます。11月18日号の「気鋭の経済論点~世界の天才集める中国 国力決める『頭脳資本主義』」について、お寄せ頂いたご質問につき、以下、回答させていただきます。

(1)「ユニコーン」の定義について

【ご質問】

記事では中国企業に関して「時価総額が1000億円以上の未上場企業であるユニコーンが次々と生まれた」と記しています。「ユニコーン」と見なす基準は一般的には「時価総額が10億円ドル以上」です。御誌の9月16日号にも「未上場ながら企業価値が10億ドルを上回る『ユニコーン』」との記述が見られます。「時価総額が1000億円」では今の為替相場で計算すると「10億ドル」に届きません。

「ユニコーン」を「時価総額が1000億円以上の未上場企業」とするのは誤りではありませんか。あるいは9月16日号の説明が間違っているのでしょうか。

【ご回答します】

読者が理解しやすいように、日本円で表記いたしました。また、金額の数字についても、
読者の理解しやすさなどを総合的に判断し、「1000億円」と表現いたしました。
頂戴したご指摘は今後、参考にさせていただきます。ありがとうございます。


(2)1860~1914年の「覇権国家」について

【ご質問】

記事に付けた表によると「1860~1914年」の「第2次産業革命」で言えば「そのときの覇権国家」は「米国(ドイツ)」です。常識的には、第1次世界大戦を契機として英国から米国への「覇権」交代が起きたのではありませんか。世界システム論で知られる米国の社会学者イマニュエル・ウォーラーステイン氏などもこの立場です。

 「そのときの覇権国家」に明確な基準はないとは思いますが、一般的な認識とかけ離れていませんか。「1860~1914年」の「覇権国家」を「米国(ドイツ)」と理解して大丈夫ですか。記事のような説明が幅広く受け入れられているのならば、自分の歴史認識の方を改めなくてはと思っています。

【ご回答します】

表の「1860~1914年」というのは、覇権国家の時期ではなく、第2次産業革命の時期を表しています。また、「米国(ドイツ)」というのは、第2次産業革命をきっかけに覇権を握った国という意味になります。なお、(ドイツ)とありますのは、覇権を握ろうとしてドイツが失敗したということを表しております。表には「時期」と表示しましたが、もう少し詳しく書いた方が理解しやすかったかもしれません。ご指摘ありがとうございます。


(3)「デフレマインドが浸透」した時期について

 【ご質問】

記事には「インターネット元年といわれた1995年ごろ、日本はバブルが崩壊した後で、デフレマインドが浸透し、企業は守りに入ってしまったのだ」との記述があります。これを信じれば「1995年ごろ」には既に「デフレマインドが浸透」していたはずです。

日本で「持続的な物価下落という意味でのデフレ状況」にあると月例経済報告に記載されたのは2001年です。「1995年ごろ」にも「デフレ」的な傾向はあったでしょうが、日本全体に「デフレマインドが浸透」するのは「デフレ」に陥ってしばらく経ってからのはずです。

「デフレマインドが浸透」した時期を明確に判断するのは難しいでしょうが、「1995年ごろ」に「デフレマインドが浸透」していたと見なすのは無理がありませんか。

【ご回答します】

一般的にはデフレ開始年は1998年とされていますが、ディスインフレ(低いインフレ率の状態)も広い意味ではデフレ的状態であると捉えました。とはいえ、「インターネット元年といわれた1995年ごろ」は、「インターネット元年といわれた1995年以降」とした方が、誤解がなかったかもしれません。ご指摘、誠にありがとうございます。


(4)「スマイルカーブ理論」について

【ご質問】

2013年1月21日付の「日経ものづくり」の記事によると「スマイルカーブ理論」とは
「バリューチェーンの上流工程(商品企画や部品製造)と下流工程(流通・サービス・保守)の付加価値が高く、中間工程(組立・製造工程)の付加価値は低いという考え方を示している」はずです。他の用語解説を見ても、似たような内容になっています。

しかし、今回の記事は違います。「上流、下流に位置する研究開発や設計デザイン、マーケティングは付加価値が高いのに対し、中流にある組み立てや部品、小売りは低くなるというものだ」となっています。

日経ものづくりを信じれば「小売り=流通」は「付加価値が高く」なりますが、御誌の記事では逆です。御誌では「部品」も「付加価値」が低いとの位置づけです。一方、日経ものづくりでは「部品製造」を「付加価値が高く」なる「上流工程」としています。

常識的に考えると「流通・サービス・保守」を「下流工程」とする日経ものづくりの説明の方が正しそうです。今回の「スマイルカーブ理論」に関する説明は誤りではありませんか。いずれの記事にも問題がないのならば、2つの記事の食い違いをどう理解すればよいのか教えてください。

【ご回答します】

スマイルカーブでの各ビジネスの配置について、「組み立て」や「部品」、「研究開発」を、掲載させていただいたグラフのように位置付けたため、記事中にあるような表現になりました。

いただいたご指摘は、今後の参考にさせていただきます。ありがとうございます。


 (5)「頭脳資本主義」について

【ご質問】

「AIの普及によって、労働者の頭数ではなく労働者の知的レベルが、一国のGDP(国内総生産)や企業の売り上げ・利益を決定づける『頭脳資本主義』の時代が到来しつつある」との記述から判断すると、これまでは「労働者の頭数」で「一国のGDP(国内総生産)や企業の売り上げ・利益」が決まっていたと井上様は考えているのでしょう。

これは解せません。「GDP」で考えてみましょう。「労働者の頭数」で決まるとするならば、米国と中国ではどちらの「GDP」が多くなるでしょうか。もちろん中国です。そうなっていますか。

日本とインドではどうでしょう。「労働者の頭数」ではインドが上回りますが「GDP」
でも日本を凌駕していますか。「労働者の知的レベル」なども含めて「GDP」が決まっていく時代を「『頭脳資本主義』の時代」と呼ぶならば、ずっと前からそうだったのではありませんか。

【ご回答します】

今後は、人口が少ない国でも多い国のGDPを上回るということが、顕著な形で現れるというのが、「頭脳資本主義」の持つ意味になります。これまでも、労働者の知的レベルがGDPなどに影響する傾向はありましたが、今後はさらにこうした傾向が強まってくるといったことを記事では説明をしております。


いつも弊誌をお読みいただき、感謝申し上げます。頂戴したご質問は、今後の参考にさせていただきます。引き続き、日経ビジネスをどうぞよろしくお願い申し上げます。


◇   ◇   ◇

回答内容そのものはかなり苦しい。「『米国(ドイツ)』というのは、第2次産業革命をきっかけに覇権を握った国という意味になります」と言うが、表のタイトルには「そのときの覇権国家」と明記している。また「スマイルカーブ理論」については質問に答えているとは言い難い。

しかし、それはそれでいい。「外部ライターの記事もしっかりチェックしなければ…」と中山記者が教訓を得てくれることを願う。


※今回取り上げた記事「気鋭の経済論点~世界の天才集める中国 国力を決める『頭脳資本主義』
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00123/00032/


※記事の評価はD(問題あり)。井上智洋・駒沢大学経済学部准教授への評価は見送る。中山玲子記者への評価はDで確定とする。中山記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「パナソニックの祖業=自転車」が苦しい日経ビジネス中山玲子記者
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_25.html

2019年11月29日金曜日

「ドイツでは可能な理由」を分析しない日経 武智幸徳編集委員の不思議

「何のために最初にフランクフルトの話を持ってきたのか?」--。日本経済新聞の武智幸徳編集委員が29日の朝刊スポーツ面に書いた「アナザービュー~『緩衝地帯』は必要ですか」という記事を読んで、そう思わずにはいられなかった。
姪浜渡船場(福岡市)※写真と本文は無関係

記事の全文を見た上で、なぜそう感じたのか説明したい。


【日経の記事】

11月23日、ドイツでブンデスリーガの試合を見た。ホームのフランクフルトは長谷部誠がフル出場し、鎌田大地も後半から登場。5万700人の観客で大盛況だった。

フランクフルトのスタジアムは2006年ワールドカップ(W杯)で5試合に使われ、入場者は常に4万8000人と発表された。W杯はすべてのチケットが指定席として売られ、世界中のVIP、取材・放送関係者の席も確保しなければならない。当時はそれがファンに用意できる最大限だったのだろう。

フランクフルトの試合では自軍ゴール裏の椅子を取り外し、立ち見にできる(欧州連盟管轄の試合は除く)。実際、そこはクラブカラーの黒で塗りつぶされていた。

残り2節となった今季のJリーグ。12月7日の最終節、横浜MとFC東京の直接対決に優勝決定が持ち越されたら、日産スタジアムはどんなことになるのか。今から楽しみでしかたない。

同スタジアムの最多入場者記録は02年W杯日韓大会決勝の6万9029人(ブラジル対ドイツ)だった。それを11月2日のラグビーW杯決勝が7万103人(イングランド対南アフリカ)で更新したばかり。どちらにしても代表戦が1位、2位を占めている。それをJリーグが塗り替えたら、これは結構愉快だろう。

代表は誰にとっても「マイチーム」かもしれない。それとは別に「マイクラブ」を持つ幸せを創設から26年間、ずっとJリーグは唱えてきた。記録更新はそれを象徴する話に思えるから――。

なんて、独りで力が入っていたが、どうやら記録更新は難しいらしい。座席の数だけ売れない事情がもろもろあるようなのだ。サポーター同士の国境紛争を避けるため、アウェー側に設ける空席の緩衝地帯もその一つ。席数でざっと1500くらいになるというから大きなマイナス材料だ。

W杯は高額なチケットにカネを払えるいちげんさんが増え、民度の高まり? とともに呉越同舟にしても騒動は起きにくくなった。が、クラブ同士の戦いは依然として可燃性は高く、衝突を避けるために緩衝地帯は必要と言われたら従うしかない。見たいサポーターはいるのに、サポーターの安全のために売れない席がある。空席は何の代償なのか、釈然としない気持ちを抱えながら


◎せっかくドイツに行ったのならば…

フランクフルトのスタジアムは2006年ワールドカップ(W杯)で5試合に使われ、入場者は常に4万8000人」。そして「11月23日」の「ブンデスリーガの試合」では「5万700人」と「W杯」を上回っている。

一方、「日産スタジアム」はサッカーでは「02年W杯日韓大会決勝の6万9029人」が最多で、「Jリーグ」の試合がどんなに人気でも「記録更新は難しいらしい」。それは「アウェー側に設ける空席の緩衝地帯」が理由の1つだと武智編集委員は教えてくれる。

ここまではいい。しかし「なぜドイツではできて日本では無理なのか」を武智編集委員は分析してくれない。

クラブ同士の戦い」は「可燃性」が高いと言うが、それは「ブンデスリーガ」も同じではないか。イメージ的には「ブンデスリーガ」の方が危なそうな気がする。

実際には「ブンデスリーガ」の「可燃性」が低いのか。「可燃性」が高くても気にせず観客を詰め込んでいるのか。「緩衝地帯」以外の対策で「可燃性」の高さに対応しているのか。

あるいは「緩衝地帯」を設けながらも何らかの方法で観客席を増やしているのか。「自軍ゴール裏の椅子を取り外し、立ち見にできる」ことが影響しているのかもしれないが、どの程度の効果があるのかは書いていない。「Jリーグ」では「立ち見」への対応がどうなのかも触れていない。

結局、「ブンデスリーガ」ではできて「Jリーグ」ではできない理由は分からないままだ。その分析をサボって何のための編集委員なのか。「空席は何の代償なのか、釈然としない気持ちを抱え」ているのならば、なおさらしっかり考えてほしかった。



※今回取り上げた記事「アナザービュー~『緩衝地帯』は必要ですか
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191129&ng=DGKKZO52751540Y9A121C1UU8000


※記事の評価はD(問題あり)。武智幸徳編集委員への評価もDを維持する。武智編集委員については以下の投稿も参照してほしい。

日経 武智幸徳編集委員はスポーツが分かってない?(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_21.html

日経 武智幸徳編集委員はスポーツが分かってない?(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_43.html

日経 武智幸徳編集委員は日米のプレーオフを理解してない?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_76.html

「骨太の育成策」を求める日経 武智幸徳編集委員の策は?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/02/blog-post_87.html

「絶望には早過ぎる」は誰を想定? 日経 武智幸徳編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_4.html

日経 武智幸徳編集委員はサッカーと他競技の違いに驚くが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/blog-post_2.html

日経 武智幸徳編集委員は「フィジカルトレーニング」を誤解?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_14.html

W杯最終予選の解説記事で日経 武智幸徳編集委員に注文
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post.html

「シュート選ぶな 反則もらえ」と日経 武智幸徳編集委員は言うが…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/12/blog-post_30.html