2022年7月21日木曜日

「洋上風車の工場建設中止」という記事の訂正から見える日経の不誠実

20日の日本経済新聞朝刊総合2面に載った訂正に関しては色々と問題を感じた。まずは訂正記事から見ておこう。

大バエ灯台

【日経の訂正記事】

<訂正> 16日付「欧州大手、洋上風車の工場建設中止」の見出しと記事中、「建設中止し、日本参入を見直す」とあったのは「建設保留」、「公募ルール変更」とあったのは「納入先の公募落選で」の誤りでした。


◎1面での間違いは1面に訂正を!

相変わらず日経は1面に訂正を載せたがらない。16日朝刊1面に載せた記事の訂正なのだから、きちんと1面に訂正を載せてほしい。余計なプライドは捨てるべきだ。

今回の訂正は「欧州大手」からの抗議を受けて日経が渋々ながら訂正を出したと推測している。そのせいか、訂正された記事を読んでみると奇妙な中身になっている。

ここからは「洋上風車の工場建設保留 欧州大手、長崎で 納入先の公募落選で」という見出しの付いた記事(電子版)を見ていこう。紙の新聞(12版)の見出しは「洋上風車の工場建設中止 欧州大手、長崎で 公募ルール変更」となっている。

全文は以下の通り。


【日経の記事】

洋上風力発電に使う風車の世界大手が日本への参入を見直す。デンマークのベスタスは日本で補助金を使った工場建設をやめ、独シーメンスグループも日本向け製品の供給を絞る。政府が洋上風力発電の事業者を公募するルールを見直しており、開発規模が小さくなって採算が取れない。脱炭素の有力な選択肢だが、欧州勢が日本市場を敬遠することで再生エネルギー普及の壁になる可能性がある。(関連記事ビジネス面に)

ベスタスは長崎県内に計画していた風車の関連工場の建設を保留にした。経済産業省の補助金を建設費の一部に充てる予定だったが、補助金の申請を取り下げた。スペインのシーメンスガメサ・リニューアブル・エナジーも発電事業者などに日本での洋上風車の供給を見送る方針を伝えた。

日本での事業を縮小するのは公募ルールの見直しで開発規模が小さくなり、収益が確保しづらくなっているからだ。2021年12月に実施された初の大規模な公募では、秋田県沖など3海域すべてで三菱商事を中心とする企業連合が選ばれた。他社より大幅に安い価格が評価されたが大手企業の独占が続くと新規参入が増えないなどと一部から懸念の声も出た。

そのため政府は6月に中堅企業なども参入しやすくなるよう公募ルールの新たな案をまとめた。1つの企業連合につき100万キロワットを上限とすることを検討する。特定の企業連合が開発権を独占するのを防ぐ仕組みだ。

発電設備をつくるメーカーは発電事業者から大規模な受注が出来なくなる。生産面でも国内に工場を設けるよりも、輸入した方がコストが安く済む。ベスタスはこれまで日本を有望な市場とみていたが、戦略を見直す。


◇   ◇   ◇


疑問点を列挙してみる。


(1)そんな文ある?

訂正記事からは「建設中止し、日本参入を見直す」という記述が本文にあると取れる。しかし、12版の記事にそうした記述はない。「洋上風力発電に使う風車の世界大手が日本への参入を見直す。デンマークのベスタスは日本で補助金を使った工場建設をやめ」とは書いている。このくだりは訂正が反映された記事でもそのままだ。

ベスタスは長崎県内に計画していた風車の関連工場の建設を取りやめた」との記述は「建設を保留にした」に修正してある。「建設を取りやめた」を「建設を保留にした」に訂正する必要があると判断したのならば、その前の「工場建設をやめ」もダメだろう。

訂正を読むと「日本参入を見直す」との説明は誤りだったと感じる。しかし本文で「日本への参入を見直す」との記述はしっかり残っている。日経が訂正を出すのを嫌がったから、こうしたおかしな記事になっているのだろう。

訂正を出すなら、そこは潔く全面的に修正するしかない。プライドが邪魔するのは分かるが…。

同様の問題は「公募ルール変更」に関する訂正にも見える。


(2)「公募ルール変更」はなぜ訂正?

『公募ルール変更』とあったのは『納入先の公募落選で」の誤り」と訂正記事にはある。最初は「公募ルール変更」自体がなかったのだと感じた。しかし、どうも違うようだ。

見出しを「公募ルール変更」から「納入先の公募落選で」に変えたのは「洋上風車の工場建設保留」の理由が間違っていたからだろう。

であれば本文にも修正があるはずだ。だが見当たらない。

政府が洋上風力発電の事業者を公募するルールを見直しており、開発規模が小さくなって採算が取れない」というくだりは「ベスタス」「シーメンスグループ」両社に共通する事情だと思われる。だとすると「洋上風車の工場建設保留」の理由はやはり「公募ルール変更」であり、見出しを直す必要はないことになる。

ここでもプライドが邪魔して修正が中途半端になったのだろう。


(3)なぜカラ見出し?

訂正後に「納入先の公募落選で」という見出しが付いたが、これに関する記述は本文にない。いわゆるカラ見出しだ。訂正を出して、それを電子版の記事に反映させるなら、もう少ししっかり修正してほしい。

この辺りにも日経の不誠実さが出ている。


※今回取り上げた記事「洋上風車の工場建設保留 欧州大手、長崎で 納入先の公募落選で」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220716&ng=DGKKZO62682600W2A710C2MM8000


※記事の評価はE(大いに問題あり)

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