2018年7月26日木曜日

「飛行機600人乗り」の予測は的中? 日経 鬼頭めぐみ記者に問う

日本で「飛行機600人乗り」は実現しているのだろうか。日本経済新聞の鬼頭めぐみ記者はそう認識しているようだ。「絶対ない」と言い切る自信はないが、どうもなさそうな気がする。日経には以下の内容で問い合わせを送ってみた。
有明海(佐賀県太良町)※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 鬼頭めぐみ様

26日の朝刊未来学面に載った「ポスト平成の未来学 第9部 老いも悪くない 『もっと生きたい』~現実味増す人生100年時代」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

1920年(大正9年)に雑誌『日本及日本人』が増刊号で特集した『百年後の日本』。各界の識者が『2020年に日本がどんな国になっているのか』を描いている。『女子の大臣、大学学長』『飛行機600人乗り』などは当たり、『地球と火星との交通』『文字はローマ字になる』などは外れた

この中の「飛行機600人乗り」は当たっているのでしょうか。ANAは2019年春に東京―ホノルル路線でエアバスの超大型機A380を導入すると発表しています。世界最大の旅客機と言われるA380でも座席数は520で「600人乗り」とは言えません。調べた範囲では、外国の航空会社を含めても日本で「600人乗り」が実現した(あるいは2020年までに実現する)事例は見当たりませんでした。

そもそも「百年後の日本」では「飛行機600人乗り」と予想しているのでしょうか。「2020年の日本、100年前にここまで見通した男」(2018年1月9日付)という読売新聞の記事では「敷津の予想は、航空機1機当たりの旅客数にまで及んでいた。敷津はそれを『200人乗りから600人乗りになる』と見込んだ」と記しています。こちらが正しければ「飛行機600人乗り」ではなく「飛行機200~600人乗り」とすべきです。予想も「当たり」が妥当です。

せっかくの機会なので、気になった点をいくつか記しておきます。まず「人生100年時代」についてです。鬼頭様は「平均寿命が延び続ければ『人生100年時代』は将来、現実のものとなる」と解説し、見出しでも「現実味増す人生100年時代」と打ち出しています。しかし、どういう状況になれば「人生100年時代」と呼べるのかは不明です。

とりあえず、平均寿命が男女ともに100歳を超えたら「人生100年時代」に突入すると仮定します。「国立社会保障・人口問題研究所は、65年には女性が91.35歳、男性が84.95歳まで延びると推計している」ようですが、これでは「人生90年時代」が到来するかどうかも微妙です。

鬼頭様はこうも書いています。「例えば、17年生まれの人が将来にがん、心臓病、脳卒中のいずれかで死亡する確率は50%前後。しかし、これらの病気で亡くなる人がいなくなると仮定すると、平均寿命は6歳前後延びると推計されている

それでも65年時点では女性97歳、男性92歳といった程度で「人生100年時代」とはなりません。しかも「がん、心臓病、脳卒中のいずれか」で「亡くなる人がいなくなる」というのは、かなり非現実的な前提です。

最後に残るのが以下の話です。

米未来学者のレイ・カーツワイル氏は『寿命脱却速度』という概念を唱える。人工知能(AI)の急速な進化を健康や医療に応用すれば、あと10年程度で老化の速度を超える速度で寿命がかなり延びる可能性があるという

これはかなり漠然としています。「寿命がかなり延びる」と言うものの、具体的な数値は示していません。しかも「可能性がある(可能性はゼロではない)」といった程度の話です。「人工知能(AI)の急速な進化を健康や医療に応用」する具体策も出てきません。つまり現実性に欠けます。

結局、記事では「現実味増す人生100年時代」と納得できるだけの根拠を示していません。もちろん、定義を変えれば別です。例えば「100歳以上の人口が日本で10万人を超えたら人生100年時代に突入」とすれば「現実味増す人生100年時代」と言えます。しかし、そうは書いていません。

日経だけでなく他のメディアでも「人生100年時代」という言葉をかなり安易に使っています。用いるのならば、定義を明確にした上でしっかりと根拠を示してほしいものです。

付け加えると、今回の記事では隣のページが野村証券の全面広告になっていて「人生100年時代を、ともに歩めるパートナーでありたい」との文言が目に入ってきます。偶然かもしれませんが、広告と記事内容が連動しているように見えます。そういう意図がないのであれば、こうした組み合わせを避けるようにしっかりチェックしてください。あえて連動させたのであれば、その点は読者に明示すべきです。

問い合わせは以上です。「飛行機600人乗り」に関しては回答をお願いします。

記事によると鬼頭様は24歳なので、まだ知らないかもしれませんが、日経では読者からの間違い指摘を当たり前のように握り潰してきました。長く続く悪しき伝統であり、今もしっかりと受け継がれています。鬼頭様が今、「そんなのおかしい」と声を上げても、組織にしっかりと根を張ったこの伝統が簡単に消えることはないでしょう。

記事の中で鬼頭様は「私が100歳になるまであと76年もある」と書いていました。65歳まで日経で働く場合、「あと40年」も悪しき伝統とともに歩み続けるかもしれません。だからこそ考えてほしいのです。「このままで良いのか」と。記事の言葉を借りて言えば「課題は(日経社内の)一人ひとりに突きつけられている」のです。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「ポスト平成の未来学 第9部 老いも悪くない 『もっと生きたい』~現実味増す人生100年時代
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180726&ng=DGKKZO33384920V20C18A7TCP000


※記事の評価はD(問題あり)。鬼頭めぐみ記者への評価も暫定でDとする。

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