キリンビール福岡工場(朝倉市)のコスモス ※写真と本文は無関係です |
「サービスを受ける側だけでなく、提供する人も自分のスキルといった『一芸』がビジネスになって、新たな生きがいも手に入れられるかもしれない。経済は縮むかもしれないが、高価で手に入らなかったモノや場所をシェアすることで、個人の生活はより豊かになるだろう。『君のモノは僕のモノ』。シェアの広がりは経済社会を変革する大きな契機になる」といった話は日経で繰り返し訴えてきたはずだ。一読者としては食傷気味でもある。なのに、似たようなコンセプトで記事を作る工夫のなさが残念だ。
記事には他にも気になる点があった。記事の最後に「ご意見や情報をmiraigaku@nex.nikkei.co.jpにお寄せください」と出ていたので、意見を送ってみた。内容は以下の通り。
【日経へ送った意見】
大林広樹様 清水孝輔様
9日の日本経済新聞朝刊未来学面に載った「ポスト平成の未来学~第1部 若者たちの新地平~広がり無限、シェア経済 持たない豊かさ満喫 」という記事について意見を述べさせていただきます。まず気になったのが以下のくだりです。
桜滝(大分県日田市)※写真と本文は無関係です |
「費用を節約するため、格安航空会社(LCC)で東京から佐賀へ。宿泊先も民泊仲介サイトのエアビーアンドビーで探し、5千円ですませた。目的地までは15分206円のカーシェアで向かった」
ここで「シェア経済」とは無関係のLCCに触れる必要があるでしょうか。記事では「体験プラン仲介の『タビカ』」の利用料4000円と合わせて「1泊2日で3万円ちょっとで済んだ」と安さを強調しています。「上手にシェアすればコストも少なくて済む」との印象を与えようとしているのでしょうが、「民泊」の「5千円」はビジネスホテルと大差ありません。安さの多くを「シェア」とは関係ないLCCに頼っているのが引っかかります。
筆者は「『高価なブランド品』や『駐車場代や保険がかかるマイカー』」と言いたいのでしょう。しかし、最初は「『高価なブランド品や駐車場代や保険』がかかるマイカー」と読み取りそうになり、少し混乱しました。「や」を続ける書き方は基本的にお薦めしませんが、今回の場合「高価なブランド品や、駐車場代や保険がかかるマイカー」と読点を入れるだけでも、かなり改善できます。
続いて気になったのが以下の記述です。
「しかし、シェアリングサービスが広がれば駐車場がないために車を買えなかった人がドライブできるようになるかもしれない」
「駐車場がないために車を買えなかった人」は現状ではドライブができないのならば、この書き方でもよいでしょう。しかし、レンタカーは全国の様々な場所で容易に利用できます。ライドシェアやカーシェアなしでも、「駐車場がないために車を買えなかった人」が簡単にドライブできる社会は既に実現できています。
「私有の概念、問い直す」という関連記事にも触れておきます。
「情報通信総合研究所(東京・中央)の試算では昨年国内のシェアサービス提供者が得た収入は約1兆1800億円。2兆6300億円に拡大するとみる」と書いていますが、「拡大する」のがいつか不明です。これでは情報としての価値があまりありません。例えば「来年に2兆6300億円」と「2050年に2兆6300億円」では、話が全く変わってきます。
高崎山自然動物園(大分市)※写真と本文は無関係です |
最後に「若者」の範囲について個人的な意見を述べさせていただきます。今回の記事では「若者たちの新地平」というタイトルを付け「1980年以降に生まれ、2000年代に社会に出た20~30代半ば」のミレニアル世代に焦点を当てているので、「1980年生まれは若者」との前提があるのでしょう。
しかし、37歳を「若者」と捉えるのには抵抗があります。最近では30代を「若者」に含める場合が多いのは知っていますが、違和感が拭えません。今回の記事でも35歳の「僕」の旅を「若者の旅」としては受け止められませんでした。「若者たちの新地平」を描いていくのであれば、「ほとんどの読者が若者と認識するであろう世代」に対象を絞っていただければ幸いです。
意見は以上です。次回作に期待しています。
◇ ◇ ◇
※今回取り上げた記事
「ポスト平成の未来学~第1部 若者たちの新地平~広がり無限、シェア経済 持たない豊かさ満喫 」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171109&ng=DGKKZO23173680W7A101C1TCP000
「私有の概念、問い直す」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171109&ng=DGKKZO23253900Y7A101C1TCP000
※記事の評価はC(平均的)。大林広樹記者と清水孝輔記者への評価も暫定でCとする。
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