夜明大橋(大分県日田市) ※写真と本文は無関係です |
記事には他にも色々と問題を感じた。順に見ていこう。
【日経の記事】
伊藤忠商事は日本製品を中国人向けの電子商取引(EC)サイトで販売する越境EC事業に本格参入する。サイトを運営するスタートアップ、インアゴーラ(東京・港)にKDDI、SBIホールディングスとの3社で合計約76億円出資。伊藤忠グループで取り扱う商品の供給や物流で組む。伊藤忠は資本提携している中国中信集団(CITIC)との協業を視野に、中国での消費者向け事業拡大の足がかりとする。
今回のインアゴーラに対する3社合計の出資額のうち伊藤忠は約40億円を出した。伊藤忠は過去に出資した分(約1億円)を含めインアゴーラの株式の約2割を保有することになる。伊藤忠は中国人創業者の翁永飆(おう・えいひょう)社長に次ぐ2番目の大株主になったもようだ。
◎何を以って「本格参入」?
百歩譲って「インアゴーラ」への出資が「本格参入」に当たるとしよう。ならば、「越境EC事業に本格参入する」ではなく「本格参入した」と過去形にすべきではないか。追加出資は既に終えているはずだ。「追加出資をしただけでは『本格参入』にはならない」と考えるのならば、何を以って「本格参入」と書いているのか疑問が残る。
うきはアリーナ(福岡県うきは市)※写真と本文は無関係です |
付け加えると「スタートアップ」という言葉を説明なしに使うのは感心しない。社名のようにも見える。記事には「インアゴーラは翁社長が2014年に創業」という記述もあるので「スタートアップ」とわざわざ入れる必要も乏しい。
続きを見ていこう。
【日経の記事】
インアゴーラは翁社長が2014年に創業し、現在では300万人の利用者がいる越境ECサイト「豌豆公主(ワンドウ)」を運営する。味の素やサマンサタバサ、トリンプといった食料品や化粧品、衣料品を中心に約4万品目を取り扱う。
◎「サマンサタバサ」は化粧品メーカー?
上記の書き方だと「サマンサタバサ=化粧品」だと受け取りたくなる。だが、バッグのイメージが強い。調べてみても「化粧品」を手掛けているとは確認できなかった。
この記事では伊藤忠の戦略にも疑問が残った。
【日経の記事】
伊藤忠は15年に資本業務提携をしたCITICと17年春に富裕層をターゲットとした越境ECサイトを開設した。ただ、今後、アリババなど大手が寡占状態になっている中国のEC市場に食い込んでいくには、消費者の好みに応じたきめ細かいマーケティングが不可欠だと判断。日本製品の魅力を消費者に伝える動画コンテンツの作成に強みを持つインアゴーラとも組むことを決めた。
◎見えない伊藤忠の戦略
今回の記事には「アリババなど巨人に挑む」という関連記事が付いている。これを併せて読んでも、伊藤忠の戦略がよく分からない。「インアゴーラ」と組んで伊藤忠の「富裕層をターゲットとした越境ECサイト」での販売を伸ばすつもりなのか。それとも「インアゴーラ」を支援して育てることに軸足を置くのか。
九州大学 伊都キャンパスの椎木講堂(福岡市西区) ※写真と本文は無関係です |
「日本製品の魅力を消費者に伝える動画コンテンツの作成に強みを持つインアゴーラとも組むことを決めた」との記述からは前者のようでもある。「インアゴーラは18年に台湾やマレーシアなどに事業領域を広げる計画があり、伊藤忠はアジア各地にある拠点から現地の物流や販促面で支援する考えだ」とも書いているので、後者の可能性もある。両方を同じように育てる考えかもしれない。だが、記事中に答えは見当たらない。
最後にもう1つ注文を付けたい。
【日経の記事】
伊藤忠はグループの食品卸、日本アクセスやジーンズ国内最大手のエドウインなどを通じて、インアゴーラの商品の調達を支援する。ファミリーマートと取引のある地方の名産品をサイトで取り扱うことも検討する。
◎伊藤忠との関係は?
上記の書き方だと、「日本アクセス」は伊藤忠グループだと分かるが「エドウイン」と「ファミリーマート」がはっきりしない。3社とも伊藤忠グループだと分かる書き方をすべきだ。
※今回取り上げた記事「伊藤忠、日中越境通販に本格参入 サイトに出資、CITIC協業に応用 動画で魅力訴え販促」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171122&ng=DGKKZO23751200R21C17A1FFE000
※記事の評価はD(問題あり)。安西明秀記者への評価は暫定でDとする。松田直樹記者への評価はDで確定させる。
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