2016年6月12日日曜日

日経ビジネス田村賢司主任編集委員 相変わらずの苦しさ

日経ビジネスの田村賢司主任編集委員が書く記事は相変わらず苦しい。問題がありすぎて、何から指摘すべきか迷うほどだ。なぜ「主任編集委員」という「編集委員」よりも一段上に見えるような肩書を与えてコラムを書かせているのか、編集部の意図が理解できない。今回は6月13日号の「時事深層~1バレル50ドル、強気相場のわけ」という記事を取り上げる。
柳川の川下り(福岡県柳川市)※写真と本文は無関係です

【日経ビジネスの記事】

ところがそれでも、上昇トレンドは崩れなかった。需給引き締めにつながる材料には反応し、緩む材料にはあまり反応しないのはなぜか。

背景にあるのは、一段と短期化する市場の見方。5月初めに発生したカナダ・アルバータ州の大規模な山火事の終息や、核開発疑惑による経済制裁を1月に解除されたイランの今後の増産。夏の発電需要期に例年生産量を増やすサウジの動向…。一見、近い将来の原油増産をもたらして価格を急落させそうに思えるこれらの出来事も市場は、今すぐ材料視しようとはしない

「イランは長い制裁で、原油生産設備が古くなっており、短い間に大量の増産をするのは難しい。サウジもこれまでの増産で、さらに増やす余地は小さくなっている。カナダの生産はすぐに元に戻るわけではない」(あるヘッジファンド)。短期的に巨大な売り圧力が増えるわけではないというわけだ。

もっとも1バレル50ドルを超えてさらに上昇が続くかどうかは不透明だ。米シェールオイルは、「1バレル50ドルを超えると、採算の合う業者が増え始め、増産しやすくなる」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至・主任研究員)と言われる。

2月頃から先物買いを増やしていた投機筋の買い越しは「6億バレル相当になった」(商品市場に詳しい住商グローバルリサーチの高井裕之社長)。しかし期先物の値段が上がりづらくなっており、気迷い感もうかがえる。

「一寸先は闇」。そんな声が市場に広がっている。

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田村編集委員は「需給引き締めにつながる材料には反応し、緩む材料にはあまり反応しないのはなぜか」と問いかけ、「背景にあるのは、一段と短期化する市場の見方」と続ける。他に理由はないので「強材料に偏って反応するのは、市場の見方が短期化しているからだ」との前提で考えてみる。これにはいくつかの疑問が湧く。

本当かどうか知らないが、市場の見方はどんどん短期化していると仮定しよう。それが強材料に偏って反応する傾向を強めるのであれば、今年2月までの相場下落はなぜ起きたのか。まさか短期化は今年2月以降の話とは言わないだろう。

そもそも「市場の見方が短期化している」のであれば、強材料にも弱材料にも同じように影響しそうだが、なぜか「需給引き締めにつながる材料には反応し、緩む材料にはあまり反応しない」らしい。「最近の市場では強材料は短期のものが多く、弱材料は中長期的なものが目立つ」と田村編集委員は言いたいのかもしれない。だとしたら、市場が強材料に敏感に反応するのは自然だ。一般的にNY原油相場として語られるのは期近物だから、短期的な材料により敏感に反応しない方がおかしい。

核開発疑惑による経済制裁を1月に解除されたイランの今後の増産」に関して「一見、近い将来の原油増産をもたらして価格を急落させそうに思えるこれらの出来事も市場は、今すぐ材料視しようとはしない」と書いているのも引っかかる。イランに対する制裁解除は原油相場が年明け後に下げ足を速める過程で材料視されたはずだ。1月18日の日経の記事では以下のように書いている。

【日経の記事】

【ニューヨーク=山下晃】17日のニューヨーク市場で原油先物相場が続落した。指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート、期近物)は時間外取引で一時1バレル28.36ドルをつけ、およそ12年ぶりの安値を更新した。イランの核開発問題を巡る最終合意の履行が正式に宣言され、石油輸出国機構(OPEC)の協調減産が見込みにくいなかで、改めてイラン産原油の増加が需給の緩みにつながると懸念されている。

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この記事からも分かるように、「イランの増産」についてはNY原油市場で十分に材料視されてきたと考えるべきだ。ここに来て「短い間に大量の増産をするのは難しい」との見方が主流になってきているのかもしれないが、「今すぐ材料視しようとはしない」と解釈するのは違うだろう。

今回の田村編集委員の記事に関しては素人臭さも目に付く。市場関連記事を書き慣れた記者ならば「期先物の値段が上がりづらくなっており」との表現は使わない気がする。プロっぽく書くならば「期先の上値が重くなっており」だろうか。「値段」でも間違いではないが…。

2月頃から先物買いを増やしていた投機筋の買い越しは『6億バレル相当になった』(商品市場に詳しい住商グローバルリサーチの高井裕之社長)」との記述にも、田村編集委員の不慣れな感じが出ている。投機筋のポジションは米商品先物取引委員会(CFTC)が発表しているので、わざわざ市場関係者に買い越し幅だけを語らせる必要はない。しかも「6億バレル相当になった」と発言させておきながら、「6億ドル」にどんな意味があるのかは教えてくれない。

そして記事の最後を「『一寸先は闇』。そんな声が市場に広がっている」と締めており、安易さが際立つ。市場価格の先行きが読めないのは原油に限らず当たり前だ。こんな結論を導くために紙幅を費やしてきたのかと思うと情けなくなる。これが「主任編集委員」の肩書を付けて、わざわざ読者に伝えるべきことなのか。

※記事の評価はD(問題あり)。田村賢司主任編集委員への評価もDを据え置く。同編集委員については「間違い続出? 日経ビジネス 田村賢司編集委員の記事」「日経ビジネス『村上氏、強制調査』田村賢司編集委員の浅さ」「日経ビジネス田村賢司編集委員『地政学リスク』を誤解?」も参照してほしい。

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