2022年3月11日金曜日

最初は威勢が良かったが… ロシア経済制裁巡る日経社説の早すぎる変節

新聞社に「社論を変えるな」とは言わない。しかし、大きな情勢変化もないのに短期間で主張が変わってしまうと、信用はなくなる。11日の日本経済新聞朝刊総合1面に載った「エネ制裁は供給安定を前提で」という社説はまさにそうだ。まずはロシアによるウクライナ侵攻が始まった直後の2月25日の「世界はロシアの暴挙を許さない」という社説を振り返ろう。

夕暮れ時の大刀洗町

【日経の社説(2月25日)】

世界はいま、冷戦後最大の危機の淵に立たされていると認識すべきだ。国連を含め国際社会はロシアを止めるため団結するときだ。

その意味で米国、欧州、日本など主要国が機密情報を共有し、制裁強化で足並みをそろえているのは心強い。

日本の役割は重大だ。日本は北方領土問題を解決し、平和条約を締結すべくロシアと長年にわたって交渉を続けてきた。他国の主権を侵害するような国と交渉を進める環境ではなくなった。いまは米欧と結束して、ロシアに部隊撤収を迫る強い姿勢を示していくことこそが、国益にかなう道だ

ロシアは天然ガス、石油などの輸出大国であり、制裁する側も大きな影響を受ける。とはいえ、ためらっている猶予はない。多くの国が制裁の輪に加わるよう主要国は努力してほしい。


◎わずか半月で勢いが…

米国、欧州、日本など主要国が機密情報を共有し、制裁強化で足並みをそろえているのは心強い」「米欧と結束して、ロシアに部隊撤収を迫る強い姿勢を示していくことこそが、国益にかなう道だ」「ロシアは天然ガス、石油などの輸出大国であり、制裁する側も大きな影響を受ける。とはいえ、ためらっている猶予はない。多くの国が制裁の輪に加わるよう主要国は努力してほしい」とかなり強く経済制裁を求めている。日本経済への悪影響も覚悟している。しかし半月経つとすっかり勢いがなくなってしまう。


【日経の社説(3月11日)】

米国がロシア産の石油や天然ガスの輸入を禁じた。英国も年末までに原油の輸入をやめる。

ロシアからのエネルギー供給が滞れば、需給逼迫や価格高騰などの影響が世界に及ぶ。しかし、エネルギー産業はプーチン大統領の力の源泉である。ウクライナで続く暴虐に圧力をかけるにはそこに切り込むことがやむを得ない。

ただし、ロシアへの依存度を考えると、簡単に同調できない国も少なくない。日本もその一つだ。供給の安定を最優先としながら、連携を探るべきだ


◎変わり過ぎでは?

制裁強化で足並みをそろえているのは心強い」「米欧と結束して、ロシアに部隊撤収を迫る強い姿勢を示していくことこそが、国益にかなう道だ」と訴えていたのに早くも「簡単に同調できない国も少なくない。日本もその一つだ」となってしまう。

米国がロシア産の石油や天然ガスの輸入を禁じた。英国も年末までに原油の輸入をやめる」のならば、日本も同調して「強い姿勢を示していくことこそが、国益にかなう」のではないのか。「制裁する側も大きな影響を受ける」と覚悟していたのではないのか。

米国が「一緒に禁輸しなくてもいいよ」と理解を示してくれると日経も一気に腰が引けたということか。

供給の安定を最優先」と考えるのならば「ためらっている猶予はない。多くの国が制裁の輪に加わるよう主要国は努力してほしい」などと訴えたのが間違いだった。

弱気に転じた日経の主張をもう少し見ていこう。


【日経の社説(3月11日)】

日本は原油の約4%、液化天然ガス(LNG)の約8%をロシアから輸入する。重要なのはロシアの収入に打撃を与えることだ。自らの経済を混乱させては元も子もない。ロシアとの原油・LNG取引を精査したうえで、減らせるところは協力を考えるべきだ。


◎意味不明では?

重要なのはロシアの収入に打撃を与えることだ。自らの経済を混乱させては元も子もない」という説明は、厳しく言えば意味不明だ。日本経済が「混乱」すると「ロシアの収入に打撃を与えること」ができないという関係が成り立つならば分かる。しかし、そうではない。日本経済の「混乱」と引き換えに「ロシアの収入に打撃を与える」可能性も十分にある。「多くの国が制裁の輪に加わる」場合は、可能性がさらに高まる。

だからこそ「ためらっている猶予はない。多くの国が制裁の輪に加わるよう主要国は努力してほしい」と2月24日の社説では訴えたはずだ。

半月が経過して「ためらっている猶予」ができたのか。違うはずだ。早すぎる変節は読者の信頼を損ねる。弱気に出るなら、最初から弱気でいてほしい。


※今回取り上げた社説「エネ制裁は供給安定を前提で

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220311&ng=DGKKZO58988420R10C22A3EA1000


※社説の評価はD(問題あり)

2022年3月9日水曜日

ロシア軍が「スロバキア、ハンガリー、ルーマニア北部」に? 東洋経済へ問い合わせ

久しぶりに週刊東洋経済の記事中の誤りを指摘してみた。問い合わせの内容は以下の通り。

床島用水路

【東洋経済への問い合わせ】

週刊東洋経済 編集長 西村豪太様

3月12日号の「Inside USA/FROM The New York Times~ロシアのウクライナ侵攻で問われるNATOの存在意義」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

ロシアがウクライナの占領、およびベラルーシの基地を維持することに成功した場合、ロシア軍はバルト海とポーランドの国境からスロバキア、ハンガリー、ルーマニア北部まで広がり、NATOにとって東側の国境防御が著しく困難になる

記事の説明を信じれば「ウクライナの占領、およびベラルーシの基地を維持することに成功した場合」には「スロバキア、ハンガリー、ルーマニア北部」にも「ロシア軍」が駐留するはずです。しかし3カ国はNATO加盟国です。「ウクライナ」と「ベラルーシ」が「ロシア軍」の勢力下に入ったとしても、同時に隣国の3カ国まで「ロシア軍」が「広が」るとは思えません。

The New York Times」の説明が間違っている可能性もありますが、誤訳ではないかと見ています。「バルト海とポーランドの国境」という表現も「バルト海とポーランド」の間に「国境」がある訳ではないので、やや意味不明です。その辺りも含めて、筆者が何を言いたいか推測してみました。

ロシア軍はバルト3国から、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニアまで、これらの国の目前に広がり、NATOにとって東側の国境防御が著しく困難になる

この説明ならば腑に落ちます。「スロバキア、ハンガリー、ルーマニア」にも「ロシア軍」が広がると取れる記述は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も教えてください。

同じ号の「編集部から」で「フェイク情報が横行する時代に『合理的な思惟』を支えるための報道の重要さを肝に銘じています」と西村様は記しています。

しかし御誌では、読者からの間違い指摘を無視して記事中のミスを放置する対応が常態化しています。それは「フェイク情報が横行する時代」に「フェイク情報」を放置する行為です。「合理的な思惟」に頼れば、編集長として何をなすべきか見えてくるはずです。

まず基礎を固めましょう。今回の問い合わせに回答することから始めてみませんか。「報道の重要さ肝に銘じ」るのは、それからで十分です。


◇   ◇   ◇


※今回取り上げた記事「Inside USA/FROM The New York Times~ロシアのウクライナ侵攻で問われるNATOの存在意義

https://toyokeizai.net/articles/-/515033


※記事の評価はD(問題あり)

2022年3月8日火曜日

「男女の賃金格差」が「経済成長阻む」と強引に見せる日経朝刊1面の記事

8日の日本経済新聞朝刊1面に載った「男女の賃金格差、解消遅れ 日本女性、男性の74%~経済成長阻む一因に」という記事には色々と問題を感じた。筆者ら(天野由輝子記者と北爪匡記者)は「男女の賃金格差」を「解消」すべきものと信じており、その根拠として「経済成長阻む」と訴えたいようだ。しかし説得力はない。中身を見ながら具体的に指摘したい。

福岡県小郡市

【日経の記事】

男女の賃金格差が埋まらない。とりわけ日本は欧米に比べ格差が大きく、1年間で女性は男性の74%しか稼げていない。管理職や高収入の専門職に女性が少ないことが主因だ。8日は女性の社会進出のため国連が定める国際女性デー。危機感を抱く日本企業では格差を調べたり昇級の差をなくしたりする動きもある。

2020年にフルタイムで働いた日本の労働者の所定内給与は男性が33万8800円だったのに対し、女性は25万1800円にとどまった。

男性の1年分の収入を得るために女性がどれだけ追加で働く必要があるかを示す指標「イコール・ペイ・デイ」(18~19年)を計算すると、フルタイムで1月1日から働き始めた場合、男性の12月末の賃金に追いつくために日本の女性はさらに112日働かなければならない。格差が小さいノルウェーは17日だ。


◎国際比較が漠然としてるが…

とりわけ日本は欧米に比べ格差が大きく」と書いているが、世界全体で見ても「格差」が大きいのかどうかは教えてくれない。記事に付けたグラフを見ると韓国は「イコール・ペイ・デイ」で150日を超えており、日本の「112日」を大きく上回る。となると「とりわけ日本は欧米に比べ格差が大きく」と見るのは苦しい。「とりわけ韓国は欧米に比べ格差が大きく」ならば、まだ分かる。

続きを見ていく。


【日経の記事】

格差の要因は複雑に絡み合う。「管理職のほか、医師や弁護士など高収入の専門職に女性が少ないことが響いている」(米シカゴ大学の山口一男教授)。例えば、医師の女性割合は21%と、経済協力開発機構(OECD)諸国で最低レベルだ。保育士など女性が9割以上を占める多くの職業は年収が全平均(487万円)を下回る。

さらに、女性の就業率は7割に達したものの、不安定で低賃金になりがちな非正規の比率が54%と男性の22%に比べ高く、格差を一段と広げる。


◎問題ないのでは?

そもそも「男女の賃金格差」はなくすべきなのか。女性が「高収入の専門職」を目指す上で差別があるのならば取り除くべきだ。差別がない前提で言えば「女性割合」は高くても低くてもいい。男性は「保育士」よりも「医師や弁護士」を目指したがり、女性は逆ならば、それはそれで問題ない。例えば「弁護士」を目指す割合が男女同数だとしても、司法試験などで成績上位者の男性比率が高いのならば、「女性割合」が低くなるのが道理だ。

自由に選択できて平等な条件で競えることが重要だ。その結果としての「男女の賃金格差」は放置でいい。

こうした考えに反論するために筆者らは「経済成長」との関連付けを考えたのではないか。「男女の賃金格差」を放置していたら「経済成長」できなくなると訴えて「賃金格差」解消へと向かいたいのだろう。そこも見ていく。


【日経の記事】

男女の賃金格差が大きい国ほど労働生産性も低い。女性が能力開発できず、格差が生じる環境を放置することが経済成長を損ねる恐れがある

米スタンフォード大学の研究者らの分析では、米国の1960~2010年の国内総生産(GDP)成長のうち20~40%は優秀な女性や黒人が労働市場に加わったことが寄与した。職業選択が自由にできなかった層の活躍が成長を押し上げた。


◎色々と問題が…

まず「男女の賃金格差が大きい国ほど労働生産性も低い」と言えるのか。記事中に根拠は見当たらない。「男女の賃金格差が大きい国は生産性が低い」とタイトルを付けたグラフでは、米国とイタリアを除けば相関関係があるように見える。しかし13カ国の比較では苦しい。

OECDのデータから算出」と言うが加盟38カ国の中から、なぜこの13カ国を選んだのか。「時間当たりの労働生産性」を2020年のデータで見ると、コロンビア、メキシコ、コスタリカ、チリ、ギリシャが加盟国の下位5カ国だ。しかし、これらの国はグラフに出てこない。

できれば世界全体で見て相関関係を確認したい。OECD加盟国に限るとしても13カ国だけを選ぶのは不自然だ。相関関係があるように見える国を恣意的に選んだのではないか。

百歩譲って「男女の賃金格差が大きい国ほど労働生産性も低い」としよう。だからと言って因果関係があるとは限らない。因果関係があるとしても「労働生産性」が「低い」と「男女の賃金格差」が大きくなるという方向での因果関係かもしれない。そこも譲って「男女の賃金格差」が大きいと「労働生産性」が低下するという因果関係が成立するとしよう。しかし、「労働生産性」が低下すると「経済成長を損ねる」とは限らない。

グラフでは「時間あたりの労働生産性」で見ている。「時間あたりの労働生産性」が低下しても、労働時間が増えれば1人当たりの「労働生産性」は向上できる。

格差が生じる環境を放置することが経済成長を損ねる恐れがある」と筆者らが思うのならば、実質経済成長率と「男女の賃金格差」の関係を見る方が早い。なのに、なぜ「時間あたりの労働生産性」を選んだのか。経済成長率との比較では、筆者らにとって好ましい相関関係を見つけられなかったのではないか。

成長率の高い新興国で「男女の賃金格差」が日本と変わらないかそれ以上という状況は当たり前にありそうな気がする。

米国の1960~2010年の国内総生産(GDP)成長のうち20~40%は優秀な女性や黒人が労働市場に加わったことが寄与した」という説明も苦しい。「優秀」かどうか、どうやって判断したのかとも思うが「米スタンフォード大学の研究者らの分析」は正しいとしよう。しかし、これは「優秀な女性や黒人が労働市場に加わった」話であり「男女の賃金格差」を縮小させた話ではない。

なのに、このデータを記事に差し込んだのは、筆者らにとって都合のいい「分析」が見当たらなかったからだと考えると腑に落ちる。

男女の賃金格差」と経済成長にあまり関係がなさそうなのは、経験的にも分かるはずだ。高度経済成長期という時代が日本にあったのは筆者らも知っているだろう。この時期に「男女の賃金格差」は小さかったのか。「賃金格差」が拡大するにつれて成長率が落ちていったのか。

その関係をぜひ調べてほしい。「男女の賃金格差」が「経済成長」を「阻む」ものなのか。答えが見えてくるはずだ。


※今回取り上げた記事「男女の賃金格差、解消遅れ 日本女性、男性の74%~経済成長阻む一因に

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220308&ng=DGKKZO58875800Y2A300C2MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。天野由輝子記者への評価はDを維持する。北爪匡記者への評価はDで確定とする。両記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「育児男女差→出生率低下に影響」が苦しい日経1面「チャートは語る」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/10/1.html


※天野記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

女性議員を増やしたいと願う日経 天野由輝子記者に考えてほしい3つのことhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2021/11/blog-post_8.html

2022年3月7日月曜日

昔話の長さに芹川洋一論説フェローの限界が透ける日経「核心~令和臨調、3度目の挑戦」

延々と昔話を続けて、最後に少しだけ現状にコメントして記事を締める。日本経済新聞のベテランの書き手にありがちなパターンだ。7日の朝刊オピニオン面に論説フェローの芹川洋一氏が書いた「核心~令和臨調、3度目の挑戦 なるか衰退日本の立て直し」という記事もそうだ。約3分の2を昔話に充てている。

両筑橋架け替え工事現場

昔話の後の結論部分を見ていこう。

【日経の記事】

令和臨調がめざす第1は、政党や国会のあり方など90年代以降の改革のバージョンアップにあたる「統治構造改革2.0」だ。

次に国内総生産(GDP)の2倍超にのぼる債務残高をかかえる財政・社会保障制度の改革である。3つ目は人口減少と超高齢化を直視した国土構想の戦略だ。

それぞれ部会をつくり各界の識者に参加を求め、3年がかりで提言をまとめていく。

民間政治臨調からずっと事務局を担当してきた日本生産性本部の前田和敬理事長は次のように語る。

「平成デモクラシーの制度を検証し、運用がおかしくなっているところはあらため、担い手の政党と政治家のあり方もただしていくことで、日本を立て直していくきっかけをつかみたい」

制度、運用と来て、こんどは担い手を組み込んだ政治改革の総仕上げができるかどうか。そう平たんな道行きでないのは過去の経験が物語るとおりだが、手をこまぬいていたらこの国がもっと沈んでいくことだけはまちがいない


◎これだけ?

令和臨調」に関する簡単な説明をした後で「制度、運用と来て、こんどは担い手を組み込んだ政治改革の総仕上げができるかどうか。そう平たんな道行きでないのは過去の経験が物語るとおりだが、手をこまぬいていたらこの国がもっと沈んでいくことだけはまちがいない」と書いて記事は終わりだ。

何のための「論説フェロー」なのか。「令和臨調」の内情に鋭く切り込む分析を見せてもいい。「令和臨調」が進めようとする「担い手を組み込んだ政治改革の総仕上げ」に関して独自の視点で助言してもいい。そこに紙面を割くべきだ。

しかし「手をこまぬいていたらこの国がもっと沈んでいくことだけはまちがいない」と毒にも薬にもならない話で記事を締めてしまう。具体的に訴えたいことはないので、昔話で行数を稼いで何とかコラムをまとめたのだと思える。

訴えたいこともなく独自の分析も難しいのならば、そろそろ後進に道を譲ってはどうか。論説委員長、論説主幹、論説フェローと肩書を変えてコラムを書き続けているが、余人をもって代えがたい書き手とも思えない。そろそろ引退の時期だ。


※今回取り上げた記事「核心~令和臨調、3度目の挑戦 なるか衰退日本の立て直し

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220307&ng=DGKKZO58784270U2A300C2TCT000


※記事の評価はD(問題あり)。芹川洋一氏への評価はE(大いに問題あり)を据え置く。芹川氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経 芹川洋一論説委員長 「言論の自由」を尊重?(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_50.html

日経 芹川洋一論説委員長 「言論の自由」を尊重?(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_98.html

日経 芹川洋一論説委員長 「言論の自由」を尊重?(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_51.html

日経の芹川洋一論説委員長は「裸の王様」? (1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_15.html

日経の芹川洋一論説委員長は「裸の王様」? (2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_16.html

「株価連動政権」? 日経 芹川洋一論説委員長の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_31.html

日経 芹川洋一論説委員長 「災後」記事の苦しい中身(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_12.html

日経 芹川洋一論説委員長 「災後」記事の苦しい中身(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_13.html

日経 芹川洋一論説主幹 「新聞礼讃」に見える驕り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/04/blog-post_33.html

「若者ほど保守志向」と日経 芹川洋一論説主幹は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_39.html

ソ連参戦は「8月15日」? 日経 芹川洋一論説主幹に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/815.html

日経1面の解説記事をいつまで芹川洋一論説主幹に…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/blog-post_29.html

「回転ドアで政治家の質向上」? 日経 芹川洋一論説主幹に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_21.html

「改憲は急がば回れ」に根拠が乏しい日経 芹川洋一論説主幹
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_29.html

論説フェローになっても苦しい日経 芹川洋一氏の「核心」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/04/blog-post_24.html

データ分析が苦手過ぎる日経 芹川洋一論説フェロー
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_77.html

「政権の求心力維持」が最重要? 日経 芹川洋一論説フェローに問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/blog-post_79.html

「野党侮れず」が強引な日経 芹川洋一 論説フェローの「核心」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/blog-post_18.html

「スペイン風邪」の話が生きてない日経 芹川洋一論説フェロー「核心」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/04/blog-post_27.html

日経 芹川洋一論説フェローが森喜朗氏に甘いのは過去の「貸し借り」ゆえ?https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/02/blog-post_11.html

日本の首相に任期あり? 菅首相は安倍政権ナンバー2? 日経 芹川洋一論説フェローに問うhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2021/09/2.html

2022年3月5日土曜日

男性のみ兵役義務がある韓国を「男性優位社会」と断定する日経の記事に思うこと

4日の日本経済新聞朝刊国際面に載った「〈格差と葛藤 韓国大統領選〉(上)かすむ20代女性『イデニョ』 若い男性層、強まる影響力~野党・尹氏は『女性家族省廃止』」には引っかかるものを感じた。どこに焦点を当てどの側に立つかは筆者の勝手ではある。だが差別に苦しんでいる側を軽く扱う姿勢は支持できない。

両筑橋

記事の前半を見ていく。

【日経の記事】

2月26日、ソウルきっての若者の街、弘大(ホンデ)。保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補の遊説では、熱心に声援を送る若い男性の姿が目立った。

「文在寅(ムン・ジェイン)政権は公正を叫びながら自分の利益を追求し、社会を分断させた。尹氏なら公正と常識を取り戻してくれる。友達もほとんどが尹氏支持だ」。演説を聞きにきた大学生の男性は語る。

韓国で近年、政治勢力として急速に台頭するのが「イデナム」(20代男性を指す略語)だ。韓国はなお男性優位社会だが、男女平等の教育を受けて育った若い男性の認識は異なる。男性だけの兵役義務や一定以上の女性比率を義務付けるクオータ制などで、男性が逆差別を受けているとの不満が爆発している


◎韓国は「男性優位社会」?

韓国はなお男性優位社会」だと記事では断言しているが、根拠は示していない。何を基準にするかで「男性優位社会」かどうかは変わってくるはずだ。「男性だけの兵役義務」という強烈な性差別があるのだから、それを打ち消して余りある男性優遇がない限り「男性優位社会」だとは思えない。さらに国会議員の比例代表に関して「一定以上の女性比率を義務付けるクオータ制」まで導入しているのならば「女性優位社会」と見るのが自然だ。

男女平等の教育を受けて育った」人ならば「不満が爆発」するのは当然だろう。「逆差別」というより単なる性差別だ。女性も「男女平等の教育を受けて育った」はずなのに「男性だけの兵役義務」はおかしいと声を上げないのか。

記事の続きを見ていこう。


【日経の記事】

こうした声をすくい上げているのが尹氏だ。一時は著名フェミニストを要職に迎え女性票を狙ったが、20代男性のアイコンである李俊錫(イ・ジュンソク)党代表と選挙協力で合意してからはイデナムに焦点を絞った。

「女性家族省廃止」――。尹氏は1月7日、自身のフェイスブックにたった7文字のメッセージを載せた。同省は若い男性から文政権の女性優遇政策の象徴と受け止められている省庁だ。

韓国メディアによると、尹氏は遊説で男女が平等に恩恵を享受する「ジェンダー予算」に30兆ウォン(約2兆9000万円)が使われていると指摘。その一部を回すだけで北朝鮮の核の脅威を食い止められると発言した。女性団体からは猛抗議を受けたが、イデナム結集には一役買った。

一方、与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補は歯切れが悪い。2月25日の韓国ギャラップの世論調査では20代男性の与党支持が15%にとどまる一方、「イデニョ」(20代女性を指す略語)は29%だ。李在明氏の潜在的支持層といえるが、ジェンダー政策を強調すればイデナムの支持を失いかねないジレンマがある。

民主党は3人の自治体首長がセクハラ事件を起こしたが、被害者でなく身内をかばい猛批判された苦い記憶がある。「女性の味方」を名乗りにくい事情もある。

イデナムの影響力が強まるなか、イデニョはいま、何を思うのか。ソウルの学生街で話を聞いてみると、考え方も意中の候補もさまざまだった。

イデナムと呼ばれる人びとが女性の人権をおとしめることに熱を上げているようで残念」。大学生の金施演(キム・シヨン)さん(20)は語る。「尹候補は女性家族省の廃止を掲げるが、廃止ではなく改革を主張する候補もいるし、ジェンダー平等を掲げる候補もいる。公約をみて選びたい」


◎徴兵での性差別をどう思うか聞いてほしい

イデナムと呼ばれる人びとが女性の人権をおとしめることに熱を上げているようで残念」という「金施演(キム・シヨン)さん」のコメントを今回のような形で使うのは感心しない。このコメントを入れたいならば「イデナムと呼ばれる人びとが女性の人権をおとしめることに熱を上げている」と取れる具体例が欲しい。

それより知りたいのが「イデニョ」である「金施演(キム・シヨン)さん」が「男性だけの兵役義務」をはじめとする性差別制度をどう見ているのかだ。「ジェンダー平等を掲げる候補」を好意的に見ているのならば「男性だけの兵役義務」はおかしいと感じるのが当然だと思えるが…。

記事に出てくるもう1人の「イデニョ」の発言も見てみよう。


【日経の記事】

大学院生の李銀美(イ・ウンミ)さん(26)は「主要4候補のうち、女性や障がい者など疎外された側に配慮する候補に投票したい」という。イデニョの意見を総合すると、人物よりも公約重視、尹氏には批判的で、まだ候補を決めていない人もいた。


◎どこが「疎外」?

李銀美(イ・ウンミ)さん」のコメントも、このまま使うのは頂けない。「女性」を「疎外された側」と断定しているものの、その根拠は見当たらない。「男性だけの兵役義務」があり、国会議員に関しても「一定以上の女性比率を義務付けるクオータ制」を導入済み。しかも「若い男性から文政権の女性優遇政策の象徴と受け止められている省庁」である「女性家族省」まであるらしい。なのになぜ「女性」は「疎外された側」と言えるのか。「優遇」されている側と見るのが自然だ。

筆者は韓国の「女性優遇政策」を支持したい気持ちがあるのだろう。それはそれで尊重したい。しかし根拠も示さず「韓国はなお男性優位社会」と断定した上で、女性側の根拠薄弱なコメントをそのまま使うのは好ましくない。

男性だけの兵役義務」が明らかな性差別なのは筆者にも分かるはずだ。韓国ではそれを上回る圧倒的な女性差別制度があるのならば記事の中で説明してほしい。「そんな強烈な女性差別はない」と思えるのならば、あからさまな性差別に苦しむ韓国の男性にもっと寄り添ってはどうか。

今の韓国に「男性だけの兵役義務」などの性差別制度は必要なのか。それを改めて考えてほしい。


※今回取り上げた記事「〈格差と葛藤 韓国大統領選〉(上)かすむ20代女性『イデニョ』 若い男性層、強まる影響力~野党・尹氏は『女性家族省廃止』

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220304&ng=DGKKZO58767720T00C22A3FF8000


※記事の評価はD(問題あり)

2022年3月3日木曜日

「オミクロン株の致死率『インフルよりも高い』」と分析したアドバイザリーボード有志の怪しさ

厚生労働省に新型コロナウイルス感染症対策について助言する専門家組織『アドバイザリーボード(AB)』の有志」がまとめたという「新型コロナのオミクロン株と季節性インフルエンザの病気の重さを比較した分析結果」には怪しさを感じた。2日付の「オミクロン株の致死率『インフルよりも高い』~専門家組織が見解」という毎日新聞の記事を基に問題点を指摘したい。

夕暮れ時の筑後川

専門家有志」は「現時点の致死率は『オミクロン株が、季節性インフルエンザよりも高いと考えられる』とした」らしい。一方で「専門家有志は分析の前提として、二つの感染症は感染者数の数え方や死亡者の定義が異なることなどから、『比較するのは困難』」とも述べているらしい。「比較するのは困難」なものを「比較」して「現時点の致死率は『オミクロン株が、季節性インフルエンザよりも高いと考えられる』」と結論付けるのは適切なのか。

正確な「比較」は難しいが「致死率」で圧倒的な差があるからと言うなら、まだ分かる。しかし「季節性インフルは複数の方法で致死率を推計したところ、0・006~0・09%だった。一方、今年1月以降の累積死亡者数と累積陽性者数から計算したオミクロン株の致死率は2月21日時点で、0・13%と推定された」らしい。

0・09%」も「0・13%」も大差ない。ほぼ0.1%だ。「オミクロン株の重症度がこれまでの株に比べて低いことなどから、一部の専門家から季節性インフルと同程度との意見が出ていた」ために、これに反論しようと「専門家有志」は頑張ったのだろう。だが数値だけを見れば「季節性インフルと同程度」のリスクとの見方で問題ないと裏付けている。

比較するのは困難」という点を重視するならば「現時点の致死率」について「オミクロン株」と「季節性インフルエンザ」のどちらが高いとも言えないとなるはずだ。

仮に「季節性インフルエンザ」の「致死率」が低い方の「0・006%」で、「オミクロン株」が「0・13%」だとしよう。いずれにしても「どちらもそれほど恐れる必要のないウイルス」との判断でいい。

こういう「分析結果」を出してくるということは「『アドバイザリーボード(AB)』の有志」には新型コロナウイルスが「季節性インフルエンザ」と同程度に見られては困る事情があるのではと疑いたくなる。


※今回取り上げた記事「オミクロン株の致死率『インフルよりも高い』~専門家組織が見解

https://mainichi.jp/articles/20220302/k00/00m/040/321000c


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2022年3月2日水曜日

ワクチン推しゆえか「高齢者3回目接種、6割止まり」の理由に触れない日経の罪

5w1Hをしっかり伝えることがニュース記事では重要だとされる。2日の日本経済新聞朝刊 経済・政策面に載った「高齢者3回目接種、6割止まり~『2月完了』想定より遅れ 小児向けは本格化へ」という記事で「WHY」に当たるのは「高齢者3回目接種」がなぜ「6割止まり」なのかだ。そこを日経はきちんと伝えているだろうか。前半部分を見ていこう。

耳納連山

【日経の記事】

新型コロナウイルスワクチンの高齢者への3回目接種が予定通りに進んでいない。2月末までに打ち終えたのは約1848万人で、接種対象の約6割にとどまる。総務省が1月下旬に公表した調査では、自治体の97%が2月末までに希望する対象者への接種を「終了見込み」と回答していた

専門家は国内の新規感染は2月上旬がピークだったとみる。ただ減少ペースは鈍く重症者数も高止まりしており、接種による予防効果の引き上げが急務となっている

2回の接種を終えた高齢者は約3300万人だ。このうち2893万人が2月末までに3回目接種の対象となった。3月にはさらに349万人が接種時期を迎える。後藤茂之厚生労働相は1日の参院予算委員会で今後の目標について問われ「できる限り早く進めていく」と述べるにとどめた。

政府は1日100万回の接種目標を掲げている。国のワクチン接種記録システム(VRS)の3月1日公表時点の集計によると、報告日ベースでは200万回を超える日もあったが、接種日別では2月18日の95万回が最多だった。


◎ワクチン推しだとしても…

接種による予防効果の引き上げが急務となっている」と書いているので日経のワクチン推しは続いているのだろう。自分と意見は異なるが、それはそれでいい。ただ「新型コロナウイルスワクチンの高齢者への3回目接種が予定通りに進んでいない」理由の分析は客観的にすべきだ。なのに記事には「接種対象の約6割にとどまる」理由が見当たらない。

総務省が1月下旬に公表した調査では、自治体の97%が2月末までに希望する対象者への接種を『終了見込み』と回答していた」とも書いているが、実際にどの程度の「自治体」が「希望する対象者への接種を『終了』」させたのかは教えてくれない。

とりあえず「希望する対象者への接種」はほとんどの「自治体」で終わっているとの前提で考えよう。この場合「高齢者への3回目接種」が「接種対象の約6割にとどまる」のは4割近い「高齢者」が「3回目接種」を「希望」しなかったからだろう。

重要な話だ。だがワクチン推しの日経にとっては都合が悪い。だから言及を避けたのか。だとしたら報道機関としては失格だ。うっかり言及するのを忘れたのだとしたら実力不足が過ぎる。いずれにしても問題ありだ。

そして記事は「接種スピード」の「地域差」へと話を移してしまう。


【日経の記事】

接種スピードは地域差が大きい。高齢者も含めた自治体の人口に対する接種率は政令市で15ポイント以上の差がある。岡山市は4人に1人以上が接種を終えたが、政令市で最も低い横浜市は11.8%だ。

「人口の多い横浜市でも接種加速への協力をお願いしたい」。2月半ばに山中竹春市長とオンラインで意見交換した堀内詔子ワクチン相はこう要請した。横浜市は一般高齢者への接種を始めたのが1月末と遅かった影響が続く

接種率が14.8%と都道府県で最も低かったのは秋田県だった。担当者は降雪の影響で転倒や落雪のリスクが高く、高齢者が外出しづらいのではないかとみている

接種率が高い地域は準備をいち早く進めてきた。例えば20%超の群馬県は1月中旬に大規模会場2カ所を相次ぎ開設。県内すべての市町村に接種券の早期発送を求めるなど、地域全体で取り組んだ。


◎悪い意味で上手い

高齢者も含めた自治体の人口に対する接種率」をベースに話を「地域差」に移してしまう。その中に「横浜市は一般高齢者への接種を始めたのが1月末と遅かった影響が続く」「(秋田県の)担当者は降雪の影響で転倒や落雪のリスクが高く、高齢者が外出しづらいのではないかとみている」といった話を組み込み、「高齢者への3回目接種」が進まないのは「自治体」の対応の遅れや「降雪の影響」であるかのように書いている。

接種を済ませていない「高齢者」も「接種」を希望しているとの前提は崩したくないのだろう。しかし、それを前面に出すと、さすがに無理が出る。そこで、こういう書き方にしたのか。だとしたら悪い意味で上手い。

新型コロナウイルスワクチンに関して「副反応がきつい割に大した効果はない」と多くの人が気付いている。日経がワクチン推しを続けるのは勝手だ。ただ「これ以上の接種を望まない人も多い」という現実は受け入れないと、今後も無理のある記事を量産することになるだろう。


※今回取り上げた記事「高齢者3回目接種、6割止まり~『2月完了』想定より遅れ 小児向けは本格化へ

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220302&ng=DGKKZO58688640R00C22A3EP0000


※記事の評価はD(問題あり)