2023年10月31日火曜日

何とか紙面を埋めただけの日経 小平龍四郎編集委員「一目均衡~『北欧』が問うESGの真価」

日本経済新聞の小平龍四郎編集委員が苦しい。31日の朝刊投資情報2面に載った「一目均衡~『北欧』が問うESGの真価」 という記事の中身を見ながら問題点を指摘していく。

宮島連絡船


【日経の記事】

スウェーデンを足場に米欧アジアに投資をしてきたプライベートエクイティ(PE=未公開株)ファンド、EQTが日本で本格的に活動を始める。2021年に日本拠点を設置。22年にベアリング・プライベート・エクイティ・アジアと業務を統合し、パイオニアなどへの投資を引き継いだ。このほど首脳陣が来日し、日本の経済や産業を自らの目で確かめた。

1994年設立、資産規模2200億ユーロ(約35兆円)の北欧ファンドは、投資先の選定や価値向上において、ESG(環境・社会・企業統治)の要素を重視することで知られる。いわばPE版のESG投資家だ。

日本の証券会社の間で「ESGブームもそろそろ冷めようか」というこの時期、なぜ日本に来たのか。コニ・ヨンソン会長とマルクス・ワレンバーグ副会長に聞いてみた。

「地域社会や従業員への目配りを抜きに、投資のリターンは見込めない」(ヨンソン会長)「北欧では持続可能性を抜きに何ごとも成し遂げられない」(ワレンバーグ副会長)――。口ぶりににじむ確信は、スウェーデンの歴史にも裏づけられる。


◎答えになってる?

来日した「EQT」首脳に取材できることになったので「これで『一目均衡』を書けばいいや」と小平編集委員は思ったのだろう。それ自体は悪くない。しかし「上手く記事を作れそうにない」と感じたら潔く撤退してほしい。

『ESGブームもそろそろ冷めようか』というこの時期、なぜ日本に来たのか」を問うのは分かる。だが答えが辛い。「地域社会や従業員への目配りを抜きに、投資のリターンは見込めない」も「北欧では持続可能性を抜きに何ごとも成し遂げられない」も「この時期、なぜ日本に来たのか」の答えにはなっていない。取材時に「この時期、なぜ日本に来たのか」に関して明確な答えを引き出すことを小平編集委員が諦めたのならば「この時期、なぜ日本に来たのか」という問題提起も諦めるべきだ。

続きを見ていこう。


【日経の記事】

EQTはスウェーデンの名門ワレンバーグ家から派生したファンドだ。家電のエレクトロラックスや通信のエリクソン、防衛のサーブなどスウェーデンを代表する多国籍企業を支えた同家の投資哲学を引き継いでいる。

通底するのは地政学的な緊張に向き合いつつ、決して大きくない母国市場を地盤にグローバル化を進めるしたたかさだ。ステークホルダー(利害関係者)への全方位の配慮は欠かせず、それを具現する手段がESGという位置づけだ。美辞麗句ではないし、金融商品のセールストークではありえない


◎なぜ「美辞麗句ではない」?

美辞麗句ではないし、金融商品のセールストークではありえない」と「EQT」を持ち上げているものの理由が分かりにくい。「地域社会や従業員への目配りを抜きに、投資のリターンは見込めない」「北欧では持続可能性を抜きに何ごとも成し遂げられない」という発言を受けた説明だろうが「美辞麗句」とも「金融商品のセールストーク」とも取れる。

EQT」に「地政学的な緊張に向き合いつつ、決して大きくない母国市場を地盤にグローバル化を進めるしたたかさ」があるのなら、事業拡大のために「美辞麗句」も「金融商品のセールストーク」も口から出てくる「したたかさ」はありそう。ただ今回の会長・副会長コメントは「当り障りのない内容」としか感じられない。

さらに続きを見ていく。


【日経の記事】

そう考えると、北欧のESGプレーヤーが今の日本で活動を始めることには象徴的な意味を見いだせる

経済規模でドイツに抜かれる見通しとなり、新興国が追ってくる日本にあって、企業は自国に閉じこもってばかりでは生き延びられない。外に目を向ければロシア・ウクライナや、イスラエル・ハマスの紛争など、いたるところで地政学リスクが顕在化する。平和を前提にしたグローバル戦略はもはや成り立たず、それは数々の戦争や動乱に向き合ってきたかつての北欧の状況に重なる


◎「象徴的な意味を見いだせる」?

「取材で面白い話は聞けなかったが記事にはしなければならない」と突っ走ってしまうと強引なこじつけに頼りがちだ。小平編集委員も「北欧のESGプレーヤーが今の日本で活動を始めることには象徴的な意味を見いだせる」と打ち出してしまった。だが説得力はない。

企業は自国に閉じこもってばかりでは生き延びられない」と言うが、日本企業が「自国に閉じこもってばかり」ではないのは自明。グローバルに事業を展開する企業も多数ある。そんなことは小平編集委員も分かっているだろう。しかし、こじつけのためには今まで日本企業が「自国に閉じこもってばかり」いたかように書くしかない。

平和を前提にしたグローバル戦略はもはや成り立たず、それは数々の戦争や動乱に向き合ってきたかつての北欧の状況に重なる」という話も同様だ。「地政学リスクが顕在化する」のは今に始まったことではない。「数々の戦争や動乱に向き合ってきた」歴史は日本も嫌と言うほど持っている。

北欧のESGプレーヤーが今の日本で活動を始めること」に特に「象徴的な意味」は感じられない。そもそも「ESG」はどうなったのか。

終盤になると話はさらに漠然としてくる。


【日経の記事】

企業に環境や社会への配慮、人材の多様性が求められるのは、不確実性に満ちた世界を進むための感度を高め、持続力を高める必要があるからだ。欧州の投資家と話すと強く感じることだ。

反ESGの風が強まる米国も、企業の意識は鈍っていない。ナスダックの調べでは主要3000社の約8割が、23年第1四半期の決算説明でESG関連テーマを取り上げた。気候変動などのほか、サイバーセキュリティーや倫理といった項目もある。

米企業も持続可能性を求めるグローバル市場の圧力を強く受けている。政治的な思惑や流行は無関係だ


◎結局、何が言いたい?

記事はこれで全て。なぜか「米企業も持続可能性を求めるグローバル市場の圧力を強く受けている。政治的な思惑や流行は無関係だ」という米国の話が結論になってしまった。「結局、何が言いたいの?」と聞きたくなるような脱線した展開だ。小平編集委員としては「特に言いたいことなんてない。何とか話をまとめようとしてあれこれ書いただけだよ」といったところだろう。

基本的には手抜きの結果と見ているが、一生懸命に書いてこの出来ならば書き手としての引退を考えた方がいい。


※今回取り上げた記事「一目均衡~『北欧』が問うESGの真価」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231031&ng=DGKKZO75723980Q3A031C2DTC000


※記事の評価はD(問題あり)。小平龍四郎編集委員への評価はC(平均的)からDに引き下げる。小平編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「危機は常に『未踏』の場所から」が苦しすぎる日経 小平龍四郎編集委員https://kagehidehiko.blogspot.com/2022/08/blog-post.html

「近づく百貨店終焉の足音」を描けていない日経 小平龍四郎編集委員の記事https://kagehidehiko.blogspot.com/2022/02/blog-post_7.html

日経 小平龍四郎編集委員  「一目均衡」に見える苦しさ
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_15.html

基礎知識が欠如? 日経 小平龍四郎編集委員への疑念(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_11.html

基礎知識が欠如? 日経 小平龍四郎編集委員への疑念(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_73.html

日経 小平龍四郎編集委員の奇妙な「英CEO報酬」解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/07/blog-post_19.html

工夫がなさすぎる日経 小平龍四郎編集委員の「羅針盤」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/10/blog-post_3.html

やはり工夫に欠ける日経 小平龍四郎編集委員「一目均衡」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/10/blog-post_11.html

ネタが枯れた?日経 小平龍四郎編集委員「けいざい解読」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_20.html

山一破綻「本当に悪かったのは誰」の答えは?日経 小平龍四郎編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/10/blog-post_10.html

日経「一目均衡」に見える小平龍四郎編集委員の限界
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_14.html

相変わらず問題多い日経 小平龍四郎編集委員「一目均衡」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/blog-post_53.html

 何のためのインド出張? 日経 小平龍四郎編集委員「一目均衡」https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post.html

1 件のコメント:

  1. ファンドのことをそもそも知らないと見受けた。そして、世の中のほとんどの人もファンドを知らないと思い込み、記事を書いてしまった。それが記事といて印刷されてしまったのは、日経新聞の社員は、みなそうなのだろう。ファンドなんか仕事していれば、常日頃接する機会はあります。井の中の蛙は、可哀想。

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