2023年5月13日土曜日

民間の医療保険へと読者を誘導する日経 土井誠司記者の罪

民間の医療保険は「愚か者向けの保険」と言っても過言ではない。しかし日本経済新聞の土井誠司記者が13日の朝刊マネーの学び面に書いた「働く女性、がん治療費に備え~まず50万円超、生活費も貯蓄」という記事では民間の医療保険を前向きに取り上げていた。この記事を参考にして無駄な保険に入ってしまう読者がいるかもと考えると罪深い。

錦帯橋

医療費の負担を抑える健康保険の高額療養費制度を利用できれば、入院・入院外合わせても10万円未満で収まるケースもありそうだ」と「高額療養費制度」について触れてはいる。この制度があれば追加で民間の医療保険に入る必要はない。しかし「治療にかかる費用は病院に払う医療費だけではない」などと言って民間の医療保険に誘導していく。そこを見ていこう。


【日経の記事】

こうした制度を知ったうえで蓄えが足りなかったり、治療が長引くのが不安だったりするなら民間の保険が選択肢になる。若い女性では預貯金が十分でないとか、貯金があっても教育費や住宅ローンの返済などで使い道が決まっている場合があり、保険の必要性が高そうだ。


◎「保険の必要性が高そう」?

若い女性では預貯金が十分でないとか、貯金があっても教育費や住宅ローンの返済などで使い道が決まっている場合があり、保険の必要性が高そうだ」という説明が謎。「預貯金が十分でないとか、貯金があっても教育費や住宅ローンの返済などで使い道が決まっている場合」は若くない女性でも男性でも当たり前にある。

若い女性」はがんなどになるリスクが「若くない女性」よりも小さい。なので公的保険に民間の医療保険を上乗せする理由は「若くない女性」以上になくなる。「預貯金が十分でない」なら余計な保険に加入せず「預貯金」を増やす方が得策だ。「3割負担の現役世代なら窓口で払うのは、乳がんが約18万円と約1万8000円、子宮がんは約19万円と約1万円」と土井記者も書いている。支払い額20万円程度のリスクに保険で備える必要はない。

差額ベッド代」などがかかると心配するなら「預貯金」を増やして対応すればいい。その前にがんになったら個室を諦めれば済む。必要な医療が受けられなくなる訳ではない。

記事の続きを見ていこう。


【日経の記事】

女性向け医療保険は、女性特有や女性に多い病気に対する保障を厚くした商品だ。通常の医療保険に女性向けの特約を付加するものもある。乳房や子宮、卵巣の疾病や、妊娠・出産に関する症状などの入院・手術の費用をカバーする。がんは乳がんや子宮がんに限らず、大腸がんや胃がんなど他の部位も対象になる。

「キュア・レディ・ネクスト」はオリックス生命保険の女性向け医療保険。1日当たりの入院日額を通常の医療保険に5000円上乗せし「個室に入りたい女性のニーズにも応えられる」と説明する。上乗せ分を合わせた日額1万円の一般的なプラン(1入院の支払限度日数60日)だと保険料(月額、終身払い)は30歳で2145円、40歳は2410円。がんと診断されたときなどに一時金(50万円)が出る特約を付けると2940円、3435円になる。

三井住友海上あいおい生命保険は医療保険「&LIFE 医療保険A(エース)セレクト」に「女性疾病給付特約」を加えると入院給付金が2倍になる。入院10日目まで一律10万円出るプラン(同60日)は月額の保険料(終身)が30歳が2560円で40歳は2675円。50万円の一時金が出る「ガン診断給付特約」を付けると3147円、3461円になる。

女性向けの医療保険は保障が厚い分、通常の医療保険より保険料は高めだ。加入は30~40代が中心。がんだけでなく、妊娠・出産のリスクや他の病気に備えたいという女性も多いようだ。


◎なぜ特定の保険を紹介?

土井記者はなぜ「キュア・レディ・ネクスト」と「&LIFE 医療保険A(エース)セレクト」を記事で取り上げたのか。「保険料」と「保障」内容を見て、この2つの保険が優れていると見たのなら、まだ分かる。しかし記事にそうした説明はない。結局、特定の保険に誘導する実質的な“広告”になっている。そこが残念。


※今回取り上げた記事「働く女性、がん治療費に備え~まず50万円超、生活費も貯蓄

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230513&ng=DGKKZO70928890S3A510C2PPK000


※記事の評価はD(問題あり)。土井誠司記者への評価もDとする。

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