2021年12月31日金曜日

現代ビジネス「都会人が言う『もう経済成長はいらない』は正しいか」に欠けている視点

30日付で現代ビジネスに御田寺圭氏が書いた「夕張の苦境に想う…都会人が言う『もう経済成長はいらない』は正しいか~無自覚に行われる『地方搾取』について」という記事には色々と問題を感じた。自分は田舎に住んでいるので「都会人」ではないが「経済成長はいらない」派だ。今回の記事を読んでも変化はない。その理由を記事を見ながら述べてみたい。

生月大橋

【現代ビジネスの記事】

私が見た一群の「街歩き系」動画では、いずれも夕張の中心部を散策していた。ホテルなどのレジャー施設は経営破綻してそのまま建物が放置されているのはもちろん、街の中心部にある市役所すらも修繕のための費用が捻出できず、役所として機能しながら廃墟化が進んでいる有様で、まさしく圧巻の一言である。

全盛期には10万人を超えていた人口も、現在では7000人近くにまで落ち込んでいるという。夕張市の高齢化率は最新の2021年統計で53%を超えている。*1 現在では市内の小中学校は2校で十分に収まるほどしか子どもがいない。よほどのことがないかぎり加速度的な人口減少に歯止めをかけることはできないだろう。

しかしながらこれは、夕張市だけが陥った特異的な状況というわけではない。全国各地の小規模な自治体では、同時多発的かつ緩やかに起こっていることだ。夕張市は日本の地方社会の各所で生じるであろう「未来の姿」を、それこそ10年20年のスケールで先取りしているにすぎない。日本の多くの自治体は夕張市と同じベクトルの未来に向かって進んでいる。歩みの速度がそれぞれ異なっているだけだ。


◎それでいいのでは?

「夕張市」の寂れた様子を見て「経済成長はいらない」という考えは間違いだと御田寺氏は感じたようだ。これがよく分からない。まず人口増加と「経済成長」は分けて考える必要がある。

個人的には「人口減少は放置でいい。日本の人口は1000万人もいれば十分」という立場だ。なので、「夕張市」の「人口減少に歯止めをかける」必要はないと感じる。仮に自分が住む自治体の人口がドンドン減って最終的にはゼロになっても何の問題もない。むしろ好ましい。最終的には、関東と関西を除くとほとんど人が住んでいないような国になるのが落ち着きどころかと思っている。

この前提で「経済成長」を実現しようと思うと1人当たりGDPをひたすら拡大していく必要がある。それは難しいし、やる必要もない。その意味で「経済成長はいらない」と訴えている。

自分は少数派かもしれない。ただ「都会人」でなくても「経済成長はいらない」と感じている人が存在することを御田寺氏には知ってほしい。

記事の続きを見ていこう。


【現代ビジネスの記事】

全国の自治体のなかで、東京圏だけが若者の人口流入を達成しており、次点で近畿圏がギリギリのところで踏みとどまっている。*2 他の地域は軒並みこの二大都市圏に若者を吸い取られ、若年人口減少に歯止めがかからない。経済的にも人口的にも衰退する自治体にとどまっていては、ろくな進学先や働き口がない若者は、当人の意思にかかわらず、結果的に「都会に出る」ことを選ばざるを得ない。

「地元で生活するための基盤をつくれないがゆえに、都会に出ざるを得ない若者」が増えていけばいくほど地元の生産人口は減少する。生産人口の減少にともない地域経済がシュリンクし、さらに若者が生活のために都会に出ていくことを余儀なくされる――この悪循環から抜け出す画期的な方法は、まだどの自治体も見出せていない。


◎やはり良いことでは?

「全国の自治体のなかで、東京圏だけが若者の人口流入を達成しており、次点で近畿圏がギリギリのところで踏みとどまっている。他の地域は軒並みこの二大都市圏に若者を吸い取られ、若年人口減少に歯止めがかからない」らしい。これは好ましい。

既に述べたように、関東と関西に人口が集中して、他はほとんど人が住んでいない日本の未来を望ましいと考えている。国民の自由な選択に任せている状況下で、それに似た傾向が強まっているのならば歓迎したい。

「生産人口の減少にともない地域経済がシュリンクし、さらに若者が生活のために都会に出ていくことを余儀なくされる」ことを「悪循環」と御田寺氏は言うが、自分に言わせれば「好循環」だ。「今の日本の人口は多すぎる」との立場からは、好ましい変化が起きていることになる。

さらに続きを見ていこう。


【現代ビジネスの記事】

昨今「経済成長よりも持続可能性を優先すべきだ」「これ以上の豊かさはいらない」といった論調を盛んに見聞きするが、夕張の《いま》こそが、こうした「脱成長論」的な思想が本当に達成されたときに、全国各地で見ることになる町々の光景である。

私個人はもともと都会の生まれなので、YouTubeで自分の故郷の街歩き動画を見ても、(たしかに昔より商店街にシャッターは増えたように見えるが)明白には衰退の色はまだ見えてこない。その点においてはやはり恵まれているといえよう。自分の故郷が夕張ほどではないにしても、しかし夕張と同じ未来に向かって着実に突き進んでいるという人は、いま全国には大勢いるはずだ。


◎悪い未来ではないような…

「脱成長論」者であっても「自分の故郷」が「夕張と同じ未来に向かって着実に突き進んで」は困ると思うはずだとの思い込みが御田寺氏にはあるのだろう。1人の「脱成長論」者として言わせてもらえば「自分の故郷」が「夕張と同じ未来に向かって」いても何の問題もない。人口がドンドン増えていく「未来」よりはるかに好ましい。

日本は人口が2億人になっても3億人になっても余裕でやっていける国なのか。地球は200億人でも300億人でも人類を養っていける惑星なのか。そうではないとしたら適正人口はどの辺りなのか。

まずは、そこを考えるべきだ。「経済成長」が必要かどうかは、適正人口をどう見るかで違ってくる。御田寺氏には、その視点が欠けているのではないか。


※今回取り上げた記事「夕張の苦境に想う…都会人が言う『もう経済成長はいらない』は正しいか~無自覚に行われる『地方搾取』について」https://gendai.ismedia.jp/articles/-/90908?imp=0


※記事の評価はD(問題あり)

2021年12月30日木曜日

数字の見せ方が下手な日経 新田裕一記者「ミャンマー、続く衝突」

30日の日本経済新聞 朝刊国際面に新田裕一記者が書いた「ミャンマー、続く衝突~犠牲者1300人超、縮む経済」という記事は数字の見せ方が下手だ。記事の終盤を見ながら具体的に指摘したい。

大バエ灯台

【日経の記事】

国連開発計画(UNDP)の推計によると、自営業者の収入が50%、給与所得者や農家の収入は25%落ち込んでいる。貧困率が約15年前と同水準の46%に高まると予測する。


◎いつとの比較?

「自営業者の収入が50%、給与所得者や農家の収入は25%落ち込んでいる」という説明は、どの期間で比較しているのか不明。これは困る。

「貧困率が約15年前と同水準の46%に高まる」との「予測」に関しても、いつ「高まる」のかは必ず入れるべきだ。どの程度「高まる」のかも欲しい。さらに言えば、どういう基準で「貧困率」を算出しているのかも入れたい。

続きも見ておこう。


【日経の記事】

国際通貨基金(IMF)の推計によると、ミャンマーの21年の国内総生産(GDP)は前年比で18%減少する。

16~19年の成長率は平均で6.3%あったが、今後は2.5%前後にとどまると予測する。民政移管後の発展の成果が失われ、好転の兆しはみえない。


◎「好転の兆しはみえない」?

「21年の国内総生産(GDP)は前年比で18%減少」で「今後は2.5%前後」の成長率になるとしよう。この前提で言えば、来年はプラス成長に転換する。「好転の兆しはみえない」と言うが、見えているのではないか。


※今回取り上げた記事「ミャンマー、続く衝突~犠牲者1300人超、縮む経済」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211230&ng=DGKKZO78874970Z21C21A2FF8000


※記事の評価はD(問題あり)。新田裕一記者への評価も暫定でDとする。

2021年12月29日水曜日

人々は「物価の上昇を予想」してない? 日経コラム「大機小機」に見える誤解

物価に関する記事で「日本ではデフレ期待が強い」といった解説をよく目にする。誤解だと思えるが、なぜか多くの書き手がそう信じているようだ。

田主丸駅

29日の日本経済新聞朝刊マーケット総合面に載った「大機小機~物価上昇の足音が聞こえる」という記事で筆者の隅田川氏は以下のように記している。

【日経の記事】

物価上昇要因は目白押しだが、その実現を阻んでいる唯一の要因が、物価上昇期待が弱いということである。人々が物価の上昇を予想するようになると、この唯一の物価抑制要因は消える。筆者の耳には物価上昇の足音が聞こえ始めている。

◎「物価の上昇を予想」済みでは?

「人々が物価の上昇を予想するようになると、この唯一の物価抑制要因は消える」と書いているので、まだ「人々」は「物価の上昇を予想」していないと隅田川氏は見ているのだろう。しかし、何を根拠にそう判断したのかには触れていない。

この問題を考える上で個人的には日銀の「生活意識に関するアンケート調査」を参考にしている。2021年9月調査で「1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うか」との問いに対して平均値は4.3%、中央値は3.0%で、いずれも「消費者物価上昇率2%というデフレ脱却の目標」数値を上回っている。

3月と6月の調査では中央値が2.0%だったので、9月の段階で「人々」はさらに強く「物価の上昇を予想」してきたと判断すべきだ。なのに「物価上昇期待が弱い」のか。隅田氏がそう思い込んでいるだけではないか。先入観を排してよく考えてほしい。


※今回取り上げた記事「大機小機~物価上昇の足音が聞こえる」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211229&ng=DGKKZO78866310Y1A221C2EN8000


※記事の評価はD(問題あり)

2021年12月28日火曜日

東洋経済オンライン「『追加接種』ファイザーとモデルナどちらが正解?」に感じた問題点

ナビタスクリニック内科医師の久住英二氏が28日付で東洋経済オンラインに書いた「『追加接種』ファイザーとモデルナどちらが正解?~各社が開発急ぐ『オミクロンワクチン』の是非」という記事には色々と疑問を感じた。「ファイザーとモデルナどちらが正解」か考える前に3つの問題を考える必要がある。

雪の日の河童像

(1)そもそも2回接種は感染抑制に効果があったのか?

(2)リスクを勘案しても「追加接種」すべきなのか?

(3)「追加接種」は4回目、5回目と続いていくのか?

久住氏はこの3点に言及していない。なのに「追加接種」する前提で話を進めているのが引っかかる。記事の一部を見ていこう。


【東洋経済オンラインの記事】

南アフリカ共和国から広がった「オミクロン株」が、新型コロナウイルス変異株の勢力地図を塗り替えようとしている。日本国内でも市中感染が報告され始めた。

一番の気がかりは、ワクチンの効果の低下や、接種を完了していても防ぎきれない「ブレイクスルー感染」だ。

現時点での最善策は「追加接種」――というのが世界の共通認識だ。イスラエルは世界に先駆け、4カ月間隔で4回目接種の実施を発表した(12月22日AFP通信)。

「同じようなワクチンを繰り返し打つだけで意味があるの?」と思う人もいるかもしれない。しかし最新研究を見る限り、ファイザー製もモデルナ製も、3回接種を受ければオミクロン株にもギリギリ対抗できそうだ。

ファイザーについては12月14日、イスラエルの共同研究の成果が示された(査読前論文「medRxiv」)。ファイザー2回目接種から5~6カ月経った人の血液では、オミクロン株に対する十分な「中和抗体価」(無力化し予防する能力)は確認できなかった。

それが3回目接種で100倍に回復。デルタ株への効果に比べれば4分の1にとどまるが、それでも十分との見方だ。

モデルナ製についても12月15日、研究結果が公表された(査読前論文「medRxiv」)。やはり2回接種者の血液では、オミクロン株の中和能力は従来株と比べて1/84~1/49と、大幅に減少した。

3回目接種後はワクチン半量だったが、従来株比1/6.5~1/4.2で踏ん張り、減少スピードも緩やかで、十分と判断された。

つまりモデルナの3回目接種では、ワクチンの量が半分で済む。同社ワクチンは「モデルナアーム」(2週間後に接種部位に現れる局所的な炎症。T細胞の反応とされる)が起きやすいことも指摘されてきた。半量だとこうした副反応もマイルドになると期待できる。


◎「3回接種を受ければオミクロン株にもギリギリ対抗」?

「ファイザー製もモデルナ製も、3回接種を受ければオミクロン株にもギリギリ対抗できそうだ」と久住氏は言う。裏返せば「3回接種」なしでは「オミクロン株」に「対抗」できないということか。「オミクロン株」は「従来株と比べて」重症化リスクが低いと言われている。新型コロナウイルスは以前から無症状者や軽症者が多いとされてきた。その傾向がさらに強まっているのだから、ほとんどの人は「3回接種」なしで「オミクロン株」に「対抗」できると見るのが自然ではないか。

しかも「3回接種」でも「ギリギリ対抗できそう」という頼りないレベルだ。「副反応」の問題を考慮して「3回接種」の利益がリスクを上回ると判断できる根拠があるのか。それを示さずに「追加接種」へ誘導する書き方は問題ありだ。

この記事では以下の説明も引っかかった。


【東洋経済オンラインの記事】

そもそも新型コロナワクチン2回接種を完了すれば、私たちは晴れて“自由の身”になれるはずだった。

日本国内ではファイザーもしくはモデルナのワクチン接種を2回完了した人が、約8割に到達しようとしている(12月22日時点)。スマホでのワクチンパスポート「新型コロナワクチン接種証明アプリ」の運用も開始された。

そこへオミクロン株の登場である。番狂わせもいいところだが、仕方ない。従来ワクチンの効果を揺るがす変異株の出現は、科学者たちが当初から予想していたことだ。


◎オミクロンがなければ2回接種で“自由の身”?

「新型コロナワクチン2回接種を完了すれば、私たちは晴れて“自由の身”になれるはずだった」「そこへオミクロン株の登場である。番狂わせもいいところだが、仕方ない」と書くと、ワクチンの効果は十分で「2回接種」によって「“自由の身”になれるはず」が「オミクロン株の登場」で計画が狂ったと取れる。しかし明らかに違う。

海外では「オミクロン株の登場」前から「3回接種」が進んでいたし、日本でも「オミクロン株の登場」によって「3回接種」へと動いた訳ではない。そこは久住氏も分かっているはずだ。なのに、なぜこんな書き方をしたのか。医師としてのモラルが問われる。

しかも「番狂わせもいいところ」と言いながら「従来ワクチンの効果を揺るがす変異株の出現は、科学者たちが当初から予想していたこと」と矛盾する説明をしてしまう。「出現」が当然視されていたのならば「番狂わせ」ではない。

そもそも「変異株の出現」が続くのならば、「“自由の身”」になる日は訪れない。「ワクチン2回接種で得た新型コロナへの抗体の効力は、オミクロン株でなくても半年で大幅に減ることが世界中から報告されている」のだから、今後は「半年」に1回以上のペースで「接種」を続けるのだろう。それは本当に必要なことなのか。健康な人にとってもリスクより利益が上回る選択なのか。

そこを久住氏には考えてほしい。


※今回取り上げた記事「『追加接種』ファイザーとモデルナどちらが正解?~各社が開発急ぐ『オミクロンワクチン』の是非」

https://toyokeizai.net/articles/-/479780


※記事の評価はD(問題あり)

2021年12月27日月曜日

女性社外取締役の「お飾り」度の高さを裏付け? 日経 砂山絵理子記者の記事

27日の日本経済新聞朝刊女性面に載った「社外取締役、お飾りじゃない~女性目線や多様な経験生かす」という記事を読むと、筆者の砂山絵理子記者の狙いとは逆に「女性の社外取締役はやはりお飾りでは」と思えてくる。

雪の田主丸駅

「お飾りじゃない」と訴えるために、砂山記者は3人の女性社外取締役を取り上げている。「お飾りじゃない」ことを体現している人物をわざわざ選んでいるはずだが、そう感じられる話は出てこない。まずは「パーソルホールディングスとイオンモールの社外取締役を務める榎本知佐さん」に関する記述から見ていこう。

【日経の記事】

現在務める2社の取締役会はそれぞれ年間13回と16回だが、議題などを個別にレクチャーされる事前説明会が取締役会前に1~3時間ある。また指名・報酬委員会、監査等委員会などにも委員として年10回以上参加。経営会議への参加を求められるケースもある。

会議資料に目を通したり、質問ができるように不明点を詰めたりする時間も必要だ。企業から送付される日報メールや株価週報、メディア掲載記事などに目を通すことも日課としており、毎日両社の仕事に何かしら関わっている。

それでも榎本さんは「経験や知見を生かして企業にアドバイスできることに喜びを感じる」と社外取締役の魅力を語る。企業統治やSDGs(持続可能な開発目標)など様々な企業の事例を読み解くことで、自らの成長も感じるという。

女性ならではの視点も生きる。役員を担うイオンモールの顧客は女性が多いが、管理職は男性中心。店舗に視察に赴き、店舗作りやサービス開発に女性目線が必要であることや、女性が議論に加わることの必要性を訴えている。「社外役員の意見だから、と真剣に耳を傾けてくれる雰囲気もある」。あえて社外取締役という立場で参加するメリットを感じている。


◎いかにも「お飾り」的な臭いが…

「日報メールや株価週報、メディア掲載記事などに目を通すことも日課としており、毎日両社の仕事に何かしら関わっている」と熱心な仕事ぶりをアピールしているが、これは「お飾り」を否定する材料にはならない。

例えば「買収案件で資産査定の不備を指摘して交渉を振り出しに戻させた」などと書いてあれば「お飾りではないかも」と感じられる。しかし、そういった話は出てこない。

「榎本知佐さん」は「経験や知見を生かして企業にアドバイスできることに喜びを感じる」らしいが、取締役会で具体的にどんな「アドバイス」をしているかは不明。

「店舗に視察」に行った時には「店舗作りやサービス開発に女性目線が必要であることや、女性が議論に加わることの必要性を訴えている」ようだが、レベルが低すぎる。

「店舗作りやサービス開発に女性目線が必要であること」は「イオンモール」の男性管理職も当たり前に理解しているだろう。小売業に関わった経験のない自分でも分かる。それをわざわざ従業員に説くのか。

「社外役員の意見だから、と真剣に耳を傾けてくれる雰囲気もある」と感じて気分良く店舗視察を終えているとすれば、まさに役立たずの「お飾り」だ。

2人目に移ろう。


【日経の記事】

医療コンサルティング企業メディヴァの創業者、大石佳能子さんも「上場企業のガバナンスやコンプライアンスに触れられることは、企業経営者として非常に勉強になる」と、社外取締役のやりがいを語る。

これまでアステラス製薬や江崎グリコ、スルガ銀行、アスクル、資生堂など複数社の社外取締役を務めてきた。他業界の企業も少なくないが「例えば化粧品業界なら、健康意識の高まりやドクターズコスメの流行など、自分が関わる医療業界と重なる部分があり、知見が役に立つ」と話す。


◎これだけ?

「大石佳能子さん」に関する記述はこれだけだ。「やりがい」はあるようだが「お飾りじゃない」と見なすべき材料は見当たらない。

3人目も見ておこう。


【日経の記事】

需要の高まりを受け、自ら社外取締役に手を挙げる女性も出てきている。昨年12月、社外役員の候補者を企業に紹介するサービスを始めたビザスクには、役員経験者、定年退職したキャリア女性のほか、30~40代の起業経験者などが役員候補として登録してくる。

その1人、斉木愛子さんは大学卒業後、大和証券SMBC(当時)やUBS銀行などでキャリアを積んだ。19年に独立し、ベンチャー企業の取締役を務める傍ら、この秋にベンチャーのSDGs/ESG(環境・社会・企業統治)経営を支援する会社を起業した。

「取締役や起業、海外での勤務経験、育児と仕事の両立などの経験を生かせたら」と斉木さん。金融、テクノロジーなどの分野に強みがあることを示す「スキルマップ」などを作成し、社外取締役を探す企業に積極的にアピールする。


◎結局「お飾り」しかいない?

「斉木愛子さん」に関しては「社外取締役」としての何をしてきたのか説明がない。さらに苦しくなっている。

女性の「社外取締役」は「お飾りじゃない」と訴えようとした砂山記者が探し出した人物の中で、最も「お飾り」度が低いと見えたのが、最初に出てきた「榎本知佐さん」なのだろう。しかし既に述べたように、それでも「お飾り」に見える。残りの2人は論外だ。

実際は3人とも「お飾りじゃない」のかもしれないが、少なくとも記事からはそう感じられない。

「お飾りじゃない」ことを一生懸命に訴えようと記者が頑張っても「お飾りじゃない」という明確な根拠は示せない。その事実が女性社外取締役の全体としての「お飾り」度の高さを裏付けているのではないか。


※今回取り上げた記事「社外取締役、お飾りじゃない~女性目線や多様な経験生かす」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211227&ng=DGKKZO78757040U1A221C2TY5000


※記事の評価はD(問題あり)。砂山絵理子記者への評価も暫定でDとする。

2021年12月24日金曜日

「日米同盟」に関する思考停止が透けて見える日経の社説

日本経済新聞は安全保障問題で一貫して「日米同盟の強化」を訴えてきた。しかし台湾有事が現実となれば、日本が攻撃を受けていないのに日米同盟の存在ゆえに中国との戦争に巻き込まれる恐れが強い。そこで「中国との戦争をためらうな」とも「米国との協力には一線を引くべき」とも言えず思考停止に陥っているのが、今の日経だと思える。24日の朝刊総合1面に載った「駐留費負担増は国民の理解を」という社説にも、その傾向が見える。

有明海

社説を見ながら気になった点を指摘したい。

【日経の社説】

日米両政府が2022年度から5年間の在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を、総額1兆551億円とする措置で合意した。年度平均は現行水準より100億円近く増え、約2110億円にのぼる。これを日米同盟の深化に生かしてほしい。

駐留経費は日本に支払う義務がないが、1978年度から一部を肩代わりしている。米国の政権交代を受け、今後5年間の水準を決める交渉を持ち越していた。

新合意は、負担への批判が強い基地の光熱水費を最終的に4割強減らす。代わりに、日本は新たに米軍と自衛隊の訓練で共同使用できる仮想戦闘の最新システムなどの「訓練資機材調達費」を負担し、5年間の総額で最大200億円を計上する。

政府は中国の台頭を前に在日米軍の即応性を高め、同盟の抑止力や対処力を強化する「同盟強靱(きょうじん)化予算」と銘打つ。日本の防衛に役立つ分野を手厚くした試みは妥当といえる。

米政権は世界の駐留米軍の戦力配置で対中シフトを鮮明にしており、日本の役割が増えるのはやむを得ない部分がある。


◎「在日米軍駐留」は誰のため

日経に考えてほしいのは「在日米軍駐留」を望んでいるのは日米どちらなのかという問題だ。両方だとすれば、より強く望んでいるのはどちらなのか。

「米政権は世界の駐留米軍の戦力配置で対中シフトを鮮明にして」いると日経自身が書いている。つまり米国は戦略上「在日米軍」を手放せない。ならば日本が「駐留経費」を負担する必要はない。基地を置かせてあげているのだから賃料を取ってもいいぐらいだ。

なのに、なぜ「駐留経費」を負担するのか。日本側が「駐留」を望んでいるとしても「経費を負担しないなら日本から出ていくぞ」と米国が言い出すとは考えにくい。しかし日経は「日本の役割が増えるのはやむを得ない部分がある」などと負担増加に理解を示している。ここが解せない。

そもそも米国が「戦力配置で対中シフトを鮮明にして」いるのならば「日本の役割」は減るのが自然だ。「対中シフトを鮮明」にするのだから米国の軍事費も「対中」分野に手厚くなるのだろう。だったら「駐留経費」はそこで何とかしてもらえばいい。

米国がアジア軽視になり日本から出ていきたがっている状況で引き留めを狙うならば「日本の役割が増えるのはやむを得ない部分がある」。しかし状況は逆だ。

米国は「在日米軍」を必要としているし、日本は日米同盟の存在ゆえに対中戦争のリスクが増す状況にある。なのに「駐留経費」の負担を増やす意味が分からない。日経には分かると言うのなら、そこを説明してほしい。

しかし、日経の姿勢はかなり漠然としている。社説の後半も見ていこう。


【日経の社説】

一方、防衛省の試算によると、日本側の負担割合は2015年度に86%に達し、韓国やドイツなど他の駐留国に比べて突出している。この点は折に触れて米国に理解を求め、思いやり予算が一方的に膨らまぬようにすべきだ。

日本では安全保障関連法を通じて米艦防護など自衛隊の任務や活動が広がり、防衛装備品の購入も積み増している。米軍にとっても前方展開の重要な拠点である日本の適正な負担水準は同盟の全体像の中で議論する必要がある。

米軍三沢基地所属のF16戦闘機が飛行中に燃料タンク2個を投棄し、住宅地の近くなどに落ちたのは記憶に新しい。沖縄では米軍基地内からの新型コロナウイルス感染拡大への懸念も深まっている。

同盟の重要性が高まっているだけに、政府は米軍にきちんと主張し国民の支持を得てもらいたい。


◎結局は政府任せ?

「負担割合」が「他の駐留国に比べて突出している」のならば、少なくとも「他の駐留国」並みには引き下げていい。しかし日経はそこさえも主張せず「米国に理解を求め、思いやり予算が一方的に膨らまぬようにすべきだ」と書くにとどめている。なぜそんなに遠慮するのか。何か弱みでも握られているのか。

そして「日本の適正な負担水準は同盟の全体像の中で議論する必要がある」と自らが考える「適正な負担水準」を示すことから逃げてしまう。日経が社説で多用する「しっかり議論を」型の展開だ。

そして「同盟の重要性が高まっているだけに、政府は米軍にきちんと主張し国民の支持を得てもらいたい」と最後は「政府がしっかりやってね」とお願いする形で締めている。

「同盟の重要性が高まっている」と考えるのならば、自らがベストだと考える案を示して政府に採用を迫るべきだ。あるべき安全保障政策の実現を目指して自らの考えを示す場を有している新聞社が、なぜそこを有効活用せず「しっかり議論を」型の社説で逃げるのか。

その思考停止的な姿勢が残念だ。


※今回取り上げた社説「駐留費負担増は国民の理解を」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211224&ng=DGKKZO78726000T21C21A2EA1000


※社説の評価はD(問題あり)

2021年12月23日木曜日

「パッシブ型ファンドは個別株投資より手数料が低い」と日経は言うが…

23日の日本経済新聞朝刊グローバル市場面に載った「Review2021(1)投資信託 『指数連動』けん引 流入最高~4.8倍160兆円、緩和マネー追い風 株価形成ゆがめる懸念」という記事に首を傾げたくなる記述があった。そこを見ていこう。

有明海のカモメ

【日経の記事】

パッシブはアクティブや個別株投資に比べ手数料が低く、管理の手間もかからないため、パッシブ株式ファンドを初めて購入した個人も多かったとみられる。


◎個別株より手数料が低い?

「パッシブ」型ファンドは「個別株投資に比べ手数料が低く」なると書いているが、そうだろうか。売買手数料は微妙だが「個別株」は信託報酬などが不要なので「手数料」の面では「パッシブ」より有利ではないのか。

「パッシブ」は「アクティブや個別株投資に比べ」て「管理の手間もかからない」とも思えない。買ってそのまま保有し続ける前提で言えば「パッシブ」でも「アクティブ」でも「個別株」でも「手間」はほとんど変わらないはずだ。

日経は「パッシブ」運用に言及する場合「個別企業の分析を通じた適正な株価が形成されにくくなる懸念がある」と解説する傾向がある。今回もそうだ。この件についても少し考えてみたい。


【日経の記事】

ただ、年々パッシブ株式ファンドへ投資が偏る中、個別企業の分析を通じて適正な株価をつける市場機能がゆがむ懸念が強まっている。通常、経営が優れた企業の株価は高く、不振であれば安く評価されるが、パッシブ株式ファンドを買えば、指数対象の銘柄すべてを買うことになる。株価下落を見込んで不振企業の株を空売りしてもパッシブ買いで株価が下がりにくくなるなど、市場での収益機会が減る恐れもある。


◎「収益機会」はむしろ増えるのでは?

「パッシブ株式ファンドへ投資が偏る」と「適正な株価をつける市場機能がゆがむ」としよう。それは「アクティブ」投資家にとってチャンスだ。「パッシブ株式ファンド」による機械的な売買によって株価は適正水準から上にも下にも動きやすくなる。下に行ったら買いを入れればいいし、上に行ったら「空売り」する手もある。

記事で言うように、業績悪化局面なのに「パッシブ買いで株価が下がりにくくなる」こともあるだろう。だが逆も期待できる。「空売り」対象企業の業績が予想したほど悪化しなかったのに「パッシブ」の売りが出て株価が意味もなく下がるかもしれない。

あまり材料がないのに株価が上下するのならば裁定機会は増えると見るべきだ。自分が「アクティブ」運用の投資家ならば「市場での収益機会が減る恐れ」は抱かないが…。


※今回取り上げた記事「Review2021(1)投資信託 『指数連動』けん引 流入最高~4.8倍160兆円、緩和マネー追い風 株価形成ゆがめる懸念」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211223&ng=DGKKZO78678590S1A221C2ENG000


※記事の評価はD(問題あり)