2019年11月28日木曜日

「イスラム教の元王朝」と言える?日経 秋田浩之氏「Deep Insight」

本社コメンテーターの肩書で記事を書いている日本経済新聞の秋田浩之氏によると「13世紀にはイスラム教の元王朝が生まれた」らしい。しかし「元王朝」が「イスラム教」の「王朝」だったイメージはない。記事の説明で正しいのか以下の内容で問い合わせてみた。
のこのしまアイランドパークのコスモス
       ※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 秋田浩之様

28日の朝刊オピニオン面に載った「Deep Insight~中国接近、教皇への期待」という記事についてお尋ねします。記事には「7世紀に始まる中国への(キリスト教の)伝道の歴史で、危険が伴わなかったことなどない。13世紀にはイスラム教の元王朝、1949年には共産党政権が生まれた」との記述があります。

問題としたいのは「イスラム教の元王朝」という説明です。一般的に「元王朝」はチベット仏教との関係が深いとされています。ニコニコ大百科では「元王朝」について「フビライがチベット仏教の僧パスパを重く用いて以来、代々の皇帝はチベット仏教や中国仏教(禅宗)のため、莫大な国費を使っていた」と記しています。

パスパ」は「チベット仏教(ラマ教)サキャ派の祖師。初めて中国、元(げん)の帝師となった」(日本大百科全書)人物です。「元王朝」は「イスラム教」など他の宗教に寛容だったようですが、「イスラム教の元王朝」と言えるほど「イスラム教」が力を持っていたとは思えません。

13世紀にはイスラム教の元王朝が生まれた」との説明は誤りではありませんか。一般的に知られている歴史的事実と乖離しています。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界最強のビジネスメディア」であろうとする新聞社の一員として責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「Deep Insight~中国接近、教皇への期待
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191128&ng=DGKKZO52675730X21C19A1TCT000


※記事の評価はD(問題あり)。秋田浩之氏への評価はE(大いに問題あり)を維持する。秋田氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経 秋田浩之編集委員 「違憲ではない」の苦しい説明
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_20.html

「トランプ氏に物申せるのは安倍氏だけ」? 日経 秋田浩之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/02/blog-post_77.html

「国粋の枢軸」に問題多し 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/deep-insight.html

「政治家の資質」の分析が雑すぎる日経 秋田浩之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_11.html

話の繋がりに難あり 日経 秋田浩之氏「北朝鮮 封じ込めの盲点」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/blog-post_5.html

ネタに困って書いた? 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/deep-insight.html

中印関係の説明に難あり 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/11/deep-insight.html

「万里の長城」は中国拡大主義の象徴? 日経 秋田浩之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/02/blog-post_54.html

「誰も切望せぬ北朝鮮消滅」に根拠が乏しい日経 秋田浩之氏
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_23.html

日経 秋田浩之氏「中ロの枢軸に急所あり」に問題あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_30.html

偵察衛星あっても米軍は「目隠し同然」と誤解した日経 秋田浩之氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/blog-post_0.html

問題山積の日経 秋田浩之氏「Deep Insight~米豪分断に動く中国」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/deep-insight.html

「対症療法」の意味を理解してない? 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/deep-insight.html

2019年11月27日水曜日

「親子上場」だと「資本効率が下がる」? 日経 佐藤亜美記者の誤解

日本経済新聞の佐藤亜美記者は「親子上場」への誤解があるようだ。27日の朝刊マーケット総合1面に載った「スクランブル~親子上場解消に期待感 日立再編、資本効率向上に関心」という記事を読むと、それがよく分かる。
能古渡船場(福岡市)※写真と本文は無関係

最初の段落から誤解が見える。

【日経の記事】

日本株市場の特有の課題である「親子上場」への関心が高まっている。日立製作所や三菱ケミカルホールディングスなど大手企業が、中核子会社の売却や完全子会社化に動いたためだ。企業の多くは2019年度の下半期以降に業績の「V字回復」を目指しているが、世界景気には不透明感が募る。おのずと資本効率を高める取り組みが注目を集めやすい。


◎「日本株市場の特有の課題」?

親子上場」は「日本株市場の特有の課題」なのか。一橋大学特任教授の藤田勉氏によると「日本ほど活発でないが、親子上場は大陸欧州や南米を中心に海外でも広く存在する」(週刊エコノミスト2019年11月5日号)。

ビール世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)のアジア子会社は30日、香港取引所に株式上場した」と日経も9月30日付で報じている。こうした点を考慮すると「日本株市場の特有の課題」と言い切るのは無理がある。

今回の記事で最も引っかかったのが以下のくだりだ。

【日経の記事】

少数株主の意見が軽んじられるとみられがちで、親会社の株主にとっては利益が外部に流出して資本効率が下がる親子上場は、投資家の評価が低い。


◎必ず「資本効率が下がる」?

親会社の株主にとっては利益が外部に流出して資本効率が下がる親子上場」と佐藤記者は言い切っている。本当に「資本効率が下がる」だろうか。

毎年10億円の利益を生むA社の全株式を1000億円でB社が買い取ったとしよう。投資額に対する年間リターンは1%。これで「資本効率」を測ると仮定する(他の測り方ももちろんある)。

買収後に「親子上場」に踏み切って半分の株式を市場に出した場合どうなるか(単純化のため税金などは考慮しない。株式の価値も不変とする)。B社に帰属する利益は半分の5億円になるので年間リターンが0.5%になり「資本効率が下がる」と佐藤記者は見ているのではないか。

しかしA社の上場によってB社には500億円の資金が入ってくる。これを高いリターンが見込める分野に投資すれば「資本効率」は逆に良くなる。例えば500億円で新たにC社を設立して、年間10億円の利益を生み出すようになったらどうか。

1000億円の投資額に対して年間15億円の利益が得られるのでリターンは年1.5%だ。「親子上場」によって「親会社の株主にとって」も歓迎すべき結果となった。

もちろんC社の事業が失敗に終わる可能性もある。なので「資本効率が下がる」こともある。とは言え、「親子上場」だから「利益が外部に流出して資本効率が下がる」と単純に判断するのは間違っている。

付け加えると、「親子上場」が抱える問題点は親会社の「資本効率」を高める方向に働くのではないか。「親子上場」の場合、上場子会社の「少数株主の意見が軽んじられる」リスクは確かに高い。裏返せば、支配株主である親会社に有利に働きやすいとも言える。

先述した例で考えてみよう。親会社のB社がA社との取引条件などを自社有利に変更してA社の利益をゼロにする。そうなると、A社の10億円の利益は実質的にB社に移し替えられる。さらに自由に使える500億円の資金が手に入る。「親子上場」を悪用すれば、親会社の「資本効率」を高めて「親会社の株主に」有利に持っていける。

それでも「親子上場」を「親会社の株主にとっては利益が外部に流出して資本効率が下がる」と断定すべきだろうか。


※今回取り上げた記事「スクランブル~親子上場解消に期待感 日立再編、資本効率向上に関心
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191127&ng=DGKKZO52630250W9A121C1EN1000


※記事の評価はD(問題あり)。佐藤亜美記者への評価も暫定でDとする。「親子上場」に関しては以下の投稿も参照してほしい。

親子上場ってそんなに問題? 日経「株式公開 緩むルール」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/03/blog-post_19.html

KNTの「親子上場」を批判するFACTAに異議あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/kntfacta.html

「親子上場」否定論に説得力欠く日経「大機小機」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_77.html

ヤフーとアスクルの件で「親子上場の問題点浮き彫り」という日経に異議
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/blog-post_24.html

ヤフー・アスクルの件を「親子上場」の問題と捉える日経の無理筋
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post.html

「弊害」多いのに「親子上場の禁止」は求めない日経社説の謎
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_5.html

日経記者に読んでほしい藤田勉・一橋大学特任教授の「親子上場肯定論」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_29.html

2019年11月26日火曜日

東洋経済 長瀧菜摘記者とダイヤモンド大矢博之記者 しっかり書けているのは…

週刊東洋経済の長瀧菜摘記者と週刊ダイヤモンドの大矢博之記者。記事の書き手としての技術が上なのはどちらかと聞かれたら、大矢記者だと答える。ヤフー・LINEの経営統合に関する記事をそれぞれの11月30日号に書いたのが、この2人だ。
のこのしまアイランドパークのコスモス
        ※写真と本文は無関係です

まずは長瀧記者が書いた「深層リポート01~ヤフー・LINEが統合 国内ガリバー飛躍の条件」という記事の一部を見ていく。

【東洋経済の記事】

11月18日、ヤフーを傘下に持つZホールディングス(HD)とLINEは経営統合を発表。来年10月をメドにLINEはZHDの傘下に入る。現在のZHDとLINEの親会社であるソフトバンク、韓国NAVERとともに、さまざまな分野での協業を進める。



◎誤解を招く書き方

ヤフーを傘下に持つZホールディングス(HD)とLINE」と書くと「Zホールディングス(HD)とLINE」の「傘下」に「ヤフー」がいるとも取れる。もちろん「LINE」は「ヤフーを傘下」に持っていない。

さらに問題なのが「現在のZHDとLINEの親会社であるソフトバンク、韓国NAVER」というくだりだ。「ZHD」の「親会社」が「ソフトバンク」で「INE」の「親会社」が「韓国NAVER」なのだが、そのことを知らずに読んだ場合、解読にかなり迷うはずだ。

自分ならば「現在の『ZHDとLINE』の親会社であるソフトバンク」&「韓国NAVER」と理解してしまう気がする。「LINEの親会社であるソフトバンク」と明確に書いているので、「LINEの親会社」が「韓国NAVER」である可能性は考慮しないだろう。

では週刊ダイヤモンドの大矢記者はどう書いているのか。「Close Up~『対等の精神』強調もサービス整理は必至 ヤフー、LINE経営統合」という記事では以下のようになっている。

【ダイヤモンドの記事】

ソフトバンクグループでZHD傘下のヤフーと、メッセージアプリ大手のLINEが経営統合することで基本合意した。ZHDの親会社のソフトバンクと、LINEの親会社である韓国ネイバーが50%ずつ出資して合弁会社を設立。傘下にZHDを置き、ヤフーとLINEを子会社にする。2020年10月の統合完了を目指す。



◎こちらは問題なし

何の問題もない。「ソフトバンクグループでZHD傘下のヤフーと、メッセージアプリ大手のLINE」のくだりで「ヤフーと、」と読点を打っている辺りに「誤解を与えない書き方をしなくては」という配慮も見える。長瀧記者との差は明らかだ(記事をチェックした人間の差かもしれないが…)。

長瀧記者にはぜひライバル誌の記事と自分の書いた記事を読み比べてほしい。そして「どちらが読みやすいか。どちらが誤解を招きにくいか」を考えてみることだ。「文章を扱うプロ」と呼べるレベルの書き手を目指すのならば、そこは避けて通れない。


※今回取り上げた記事

深層リポート01~ヤフー・LINEが統合 国内ガリバー飛躍の条件
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/22216

Close Up~『対等の精神』強調もサービス整理は必至 ヤフー、LINE経営統合
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/28125



※東洋経済の記事の評価はD(問題あり)。ダイヤモンドの記事の評価はC(平均的)。長瀧菜摘記者への評価は暫定Cから暫定Dへ引き下げる。大矢博之記者への評価はCを据え置く。

2019年11月25日月曜日

日経 大林尚上級論説委員の「核心~桜を見る会と規制改革」に見える問題

日本経済新聞の大林尚上級論説委員は問題の多い書き手だ。25日の朝刊オピニオン面に載った「核心~桜を見る会と規制改革の妙」という記事でも、その評価は変わらない。訴えたいことがないのに出番が回ってきたので、あれこれ書いて紙面を埋めただけにしか見えない。
鎮西身延山本佛寺(福岡県うきは市)
       ※写真と本文は無関係です

まず「桜を見る会と規制改革」を上手く結び付けられていない。そして、昔話などを交えつつ「それはそうでしょうね」的な結論へと導いていく。

長くなるが、記事を見ながら問題点を指摘していきたい。

【日経の記事】

4週間前がずっと昔のようだ。安倍晋三首相の信任厚い経済産業省の幹部と80年代アイドル菊池桃子さん結婚の報に、これで10月の2閣僚辞任による政権への風当たりが弱まると期待をふくらませたのは、ぬか喜びだったか


◎そんな効果ある?

経済産業省の幹部と80年代アイドル菊池桃子さん」の「結婚」で「政権への風当たりが弱まる」効果が「期待」できるのか。「閣僚」の結婚ならまだ分かるが…。

期待をふくらませた」のが誰か明示していないのも引っかかる。大林上級論説委員が「期待をふくらませた」とも取れる書き方だ。

記事の続きを見ていく。

【日経の記事】

世論は熱しやすく冷めやすい。間髪を置かず表面化した桜を見る会をめぐる騒動に、ニコポン宰相の異名をとった桂太郎を抜いて在任期間首位に立った首相の心中いかばかりか。山口県から参加した政治家の多くが、見る会の様子をつづったブログやツイッターの写真を消したが、その必要があったとも思えない。

春爛漫(らんまん)の空の下、芸能人やアスリートも駆けつける首相主催の会に招かれれば、誰だって写真をアップしたくなる。いまさら隠すこともあるまい。主催者側からみれば、見る会は支持者へのサービスに打ってつけの舞台であった。

10月、首相の諮問機関である規制改革推進会議が発足した。裏方を担当する内閣府は会議の形式と運営に3つの変更をくわえた。(1)旧会議は3年の設置期限があったが常設にした(2)3年だった委員の任期を2年に縮めた(3)15人以内だった委員の定員を20人以内に増やした――である。これらを盛り込んだ政令の閣議決定を経て、同31日に首相官邸で顔合わせがあった。

それがお開きになり、首相と官房長官は委員と握手してまわった。委員のなかには初めて官邸に足を踏み入れた人がいた。内閣改造のときに首相と閣僚らが記念撮影をする階段やホワイエを背に、スマホで自撮りするつわものもいたと聞く。さすがにアップは自重しただろうが。

見る会の地元ゲストの立場にどこか似てはいないだろうか。政権にしてみれば、委員への任命はシンパを増やすチャンスになりうる。定員増と任期短縮がその機会に接する人を増やすというのは、うがった見方かもしれないが。

官邸の意向がどうであれ、委員への就任を断った人がいた。「取締役としての本業と老親の介護が多忙につき」が理由だが、規制の厚い岩盤を穿(うが)つ改革に期間を区切ってきちんと結果を出せるのか、一抹の不安があったという。会議が19人で船出したのはこのハプニングゆえだ。

規制改革の源流をたどると細川護熙氏にゆき着く。熊本県知事だったときにバス停を10メートル動かすのに運輸省のハンコがいることに驚き、改革に発奮するようになった。93年に首相の座に就くと、平岩外四経団連会長に構造改革の方針をまとめるよう諮問する。



◎話のつながりが…

上記のくだりは話のつながりがあまりない。

桜を見る会」と「規制改革推進会議」は「シンパを増やすチャンスになりうる」という点で似ていると2つを関連付けてはいる。そこまではいい。そこからどう展開するかだ。

しかし「委員への就任を断った人がいた」という話に移ってしまう。この件は記事の中で完全に浮いている。無駄な段落と言ってもいい。

そして「規制改革の源流をたどると細川護熙氏にゆき着く」と昔話が始まる。もう「桜を見る会」と絡める気はないようだ。

昔話の続きを一気に見ていこう。

【日経の記事】

こうして公表された平岩リポートをもとに、総理府が行政改革委員会をつくったのが94年。その翌年、椎名武雄日本IBM会長を座長に規制緩和小委員会が発足した。

改革に脂が乗った時期は、宮内義彦オリックス会長(現シニア・チェアマン)が椎名氏の後を襲った96年からの10年あまりだ。その後半は構造改革を旗印にかかげた小泉政権と重なった幸運もあった。

金融や通信など経済規制のみならず、医療や教育を含めた社会規制にも矛を向け、規制の根拠や改革を担当官庁に突きつめる。時に官の荒唐無稽をあぶり出するやり方を定着させた。

保育所に調理場の併設義務があるのは「子供がちゃんとした大人になるため」という迷答を厚生労働官僚から引き出したことがある。「岩盤規制」は宮内氏の造語だった。議長のバトンはその後、草刈隆郎日本郵船会長、岡素之住友商事相談役、大田弘子政策研究大学院大教授――に継がれてきた(肩書は当時)。

この間、ほぼ共通していたのは、少なからぬ委員の人選に議長の意を映すしくみがあった点だ。裏方を担う内閣府の事務局に目端が利く民間人材を送り込む議長もいた。

改革の成否は時の政権の本気度にも左右されるため、それぞれに濃淡ある。なにしろ会議が攻め込むべき本丸は、野党よりも与党の族議員である。首相や担当相が族の意向をおもんぱかれば、会議の勢いはそがれる。

幾多の苦難があった。11分野・計1797項目におよぶ改革を実行しようとした椎名氏は、規制に守られた業界と族議員の抵抗に体調を崩すことがあった。宮内氏は議長降ろしのための怪文書をまかれたり、本人のあずかり知らぬところで「辞めるハラを固めたようです」などと担当相が首相に耳打ちしたりされた。

族議員などのこうした横やりは、会議委員に結束を固める副次効果をもたらしたが。


◎行数稼ぎはできているが…

自分の知っている昔話で行数を稼いで何とか終わりに近付いてきた。しかし訴えたいことはまだ見えてこない。「桜を見る会と規制改革の妙」を上手く読者に見せられるだろうか。記事の終盤を見ていこう。

能古島(福岡市)から見た博多湾
      ※写真と本文は無関係です
【日経の記事】

新しい会議の議長、小林喜光三菱ケミカルホールディングス会長は経済同友会代表幹事を退いて間もない改革派の経済人だ。官邸会議の常連でもある。ただし、ほかの政府審議会と色合いがいくぶん違う点には注意がいるだろう。

多様な意見を反映させるために、多くの審議会の人選は事務局官僚がバランスのとれた差配をするのが通例だ。一方、規制改革はすべての委員が同じ一点を見据えて岩盤を砕かなければ、はかばかしい成果はあげられない。

加計(かけ)学園の問題でつまずいた国家戦略特区にみられるように、改革をつぶしにかかる勢力は顕在だ。これに対する陣形は、ビジネスの現場を知り尽くす経済人が先陣、法と経済学を駆使する学識者と改革派官僚が参謀、議長は大将といったところだ。

桜を見る会と違って求められるのは改革の成果だけだ。四半世紀近く規制改革を取材してきて、心からそう思う



◎それはそうでしょうが…

桜を見る会」と絡めなくてはいけないのに、ほとんどできていないという意識はあるのだろう。最後に取って付けたように「桜を見る会と違って」と入れている。

これで「桜を見る会と規制改革の妙」という見出しを付けて恥ずかしくないのだろうか。自分が筆者だったら、穴があったら入りたい気分になる。

四半世紀近く規制改革を取材」してきたのに「求められるのは改革の成果だけだ」という結論を導いているのも辛い。

まず当たり前すぎる。そこを許すとしても「桜を見る会」を持ち出さなくても導ける結論だ。「桜を見る会」と絡めるならば、絡めたからこそ導ける結論が欲しい。

読者は長いコラムを読んで最後に「桜を見る会と違って求められるのは改革の成果だけだ。四半世紀近く規制改革を取材してきて、心からそう思う」という結論に触れる。個人的には「訴えたいことがないんだな」としか思えない。

ついでに言うと「規制改革」で「議長は大将」というのも解せない。「大将」の役割を果たすべきなのは「首相」ではないのか。


※今回取り上げた記事「核心~桜を見る会と規制改革の妙
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191125&ng=DGKKZO52504670S9A121C1TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。大林尚上級論説委員への評価はF(根本的な欠陥あり)を維持する。大林氏については以下の投稿も参照してほしい。

日経 大林尚編集委員への疑問(1) 「核心」について
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_72.html

日経 大林尚編集委員への疑問(2) 「核心」について
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_53.html

日経 大林尚編集委員への疑問(3) 「景気指標」について
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post.html

なぜ大林尚編集委員? 日経「試練のユーロ、もがく欧州」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_8.html

単なる出張報告? 日経 大林尚編集委員「核心」への失望
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_13.html

日経 大林尚編集委員へ助言 「カルテル捨てたOPEC」(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_16.html

日経 大林尚編集委員へ助言 「カルテル捨てたOPEC」(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_17.html

日経 大林尚編集委員へ助言 「カルテル捨てたOPEC」(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_33.html

まさに紙面の無駄遣い 日経 大林尚欧州総局長の「核心」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/04/blog-post_18.html

「英EU離脱」で日経 大林尚欧州総局長が見せた事実誤認
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_25.html

「英米」に関する日経 大林尚欧州総局長の不可解な説明
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/blog-post_60.html

過去は変更可能? 日経 大林尚上級論説委員の奇妙な解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_14.html

年金に関する誤解が見える日経 大林尚上級論説委員「核心」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/11/blog-post_6.html

今回も問題あり 日経 大林尚論説委員「核心~高リターンは高リスク」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_28.html

日経 大林尚論説委員の説明下手が目立つ「核心~大戦100年、欧州の復元力は」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/100.html

株安でも「根拠なき楽観」? 日経 大林尚上級論説委員「核心」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_20.html

2019年11月23日土曜日

取材不足では? 日経ビジネス「上場子会社再編で東芝テック対象外のなぜ」

日経ビジネス11月25日号に載った「時事深層 COMPANY~東芝、上場子会社再編で東芝テック対象外のなぜ」という記事には期待してしまった。このニュースを聞いた時に自分も同じく「なぜ」と思ったからだ。しかし、この記事が期待に応えてくれたとは言い難い。
のこのしまアイランドパーク(福岡市)のコスモス
            ※写真と本文は無関係です

東芝は11月13日、上場子会社3社を総額2000億円で完全子会社化すると発表した」ものの「東芝テックは対象外」。確かに「不可解」だ。佐伯真也記者と竹居智久記者はこの謎にどう迫ったのだろうか。記事の一部を見ていこう。

【日経ビジネスの記事】

「資本政策についてはコメントできないが、取り込まなくてもテックの重要性は変わらない」。TOB発表翌日に開いたIR(投資家向け広報)説明会。東芝でCDO(最高デジタル責任者)を務める島田太郎執行役常務は東芝テックについて歯切れが悪かった。

◇   ◇   ◇

東芝」の「IR説明会」ではまともな説明がなかった。それは分かった。

さらに当該部分を見ていこう。

【日経ビジネスの記事】

東芝の車谷会長は東芝テックについて「持続的な企業価値の向上施策について日々話し合いをしているが、現時点で持ち分の変動は考えていない」と話す。同社株は年初から7割ほど上昇しており、単純に「高値づかみ」を避けたかったのかもしれない。


◎謎が残るにしても…

なぜ」に関するヒントらしきものは、上記のくだりだけだ。結局、記事を最後まで読んでも「『高値づかみ』を避けたかったのかもしれない」という推測しか出てこない。

きちんと答えを出せとは言わない。謎が残ったままでも仕方がない。だが、やはり頑張って謎に迫ってほしい。

今回の記事で残念なのが、東芝関係者に独自取材しようとした形跡がうかがえないことだ。「車谷会長」のコメントも記者会見でのものだと思われる。

結局は何も教えてくれないとしても、聞き出そうとする努力は欲しい。やったけれどダメだったのならば、それを記事に盛り込んでほしい。

記事には「『経営戦略との整合性が感じられない』。複数のアナリストは、東芝が発表した資本政策に疑問の声を上げる」とのくだりもある。東芝の関係者に当たって成果がなければ「複数のアナリスト」に「東芝テックだけ例外なのはなぜだと思いますか」と聞いてみる手もある。

そこでダメならば、佐伯記者と竹居記者であれこれ知恵を絞ってみてもいい。「全部やった。それでも『高値づかみを避けたかったのかも』しか出てこなかった」と言うのだろうか。だとしたら記事にするのは諦めた方がいい。


※今回取り上げた記事「時事深層 COMPANY~東芝、上場子会社再編で東芝テック対象外のなぜ
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00417/


※記事の評価はD(問題あり)。竹居智久記者への評価は暫定でDとする。佐伯真也記者への評価はDを据え置く。佐伯記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経ビジネス「見えてきたクルマの未来」で見えなかったこと
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_10.html

33%出資の三菱製紙は「連結対象外」? 日経ビジネスに問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/33.html

「33%出資は連結対象外」に関する日経ビジネスの回答
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/33_21.html

日経ビジネスに問う「知的障害者は家庭では必要とされない?」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/02/blog-post_17.html

「知的障害者は家庭では必要とされない?」に日経ビジネスが回答
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/02/blog-post_21.html

「みんなのタクシー」は本当に「順調」? 日経ビジネス佐伯真也記者に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/blog-post_17.html

2019年11月22日金曜日

FACTA「孫正義『1兆円追貸し』視界ゼロ」大西康之氏の理解力に疑問

ジャーナリストの大西康之氏に関しては「取り上げた問題についてちゃんと理解しているのか」との疑念が拭えない。FACTA12月号の記事でも、やはりおかしな説明をしている。FACTAには以下の内容で問い合わせを送った。
のこのしまアイランドパークのコスモス
        ※写真と本文は無関係です

【FACTAへの問い合わせ】

大西康之様 FACTA 主筆 阿部重夫様  発行人 宮嶋巌様  編集長 宮﨑知己様

12月号の「孫正義『1兆円追貸し』視界ゼロ」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

『投資会社』を謳うソフトバンクグループ(SBG)が投資で躓いた。孫正義社長が10兆円の大風呂敷を広げたソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)は、米シェアオフィス大手、ウィーワークの株式評価損などが響き2019年7月~9月期、5726億円の赤字に転落

上記の説明は3つの意味で誤りではないかと考えています。

(1)SVFだけの「赤字」ですか?

SBG」の第2四半期決算短信を見ると「ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびデルタ・ファンドからの営業損失が5,726 億円」と出てきます。記事で言う「5726億円の赤字」とはこれを指すと思われます。ただ「SVF」と「デルタ・ファンド」の合計です。

SVF」だけで「5726億円の赤字」とする説明は誤りではありませんか。


(2)SVF全体の「赤字」ですか?

記事の説明を信じれば「SVF」全体で「5726億円の赤字」になったはずです。しかし決算短信を見ると「SBG」に与えた損失が「5726億円」だと取れます。

短信によると、「SVF」への出資コミットメントは「SBG」が331億米ドルで、外部投資家が655億米ドルとなっています。「SVF」全体の「赤字」額を決めるためには外部投資家の出資分についても見る必要があるはずです。

5726億円」を「SVF」全体の赤字額とする説明は誤りではありませんか。


(3)「7月~9月期」の赤字ですか?

まず「7月~9月期」は「7~9月期」とした方が良いでしょう。

短信によると「ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびデルタ・ファンドからの営業損失が 5,726 億円」と言うのは「9月30日に終了した6カ月間」の数値です。しかし大西様は「2019年7月~9月期、5726億円の赤字に転落」と書いています。

記事には「18年上期、6324億円の営業利益を稼いだSVFが、今年の上期は一転、5726億円の赤字に転落した」と「5726億円の赤字」を「今年の上期」の数値とする説明も出てきており、矛盾が生じています。

7月~9月期」に「5726億円の赤字」との説明は誤りではありませんか。

せっかくの機会なので、最後の段落にも注文を付けておきます。

世界のマネー市場は金融緩和の大雨で水が溢れている。どこで堤防が崩れてもおかしくない状況下、主要都市の不動産相場を支えるウィーワークは、地域を水害から守る『遊水池』さながらだ。ここが決壊したら世界中が水浸しになる。孫社長は1兆円を追い貸しして、ウィーワークを支えるしかない。進むも地獄、退くも地獄だ

この例えは理解に苦しみました。「マネー市場」が具体的に何を指すのか明確ではありませんが、ここで言う「」とは「マネー」のことでしょう。「金融緩和の大雨で水が溢れている」のに「マネー」は「堤防」に守られて「マネー市場」に留まっているのですか。ちょっと考えにくい気はします。

とりあえず、「堤防」が機能して「マネー市場」以外では「水が溢れて」いないと仮定しましょう。「ウィーワーク」が「決壊したら世界中が水浸しになる」のならば、これまで「マネー市場」にしか「溢れて」いなかった「マネー」が広く「マネー市場」の外に流れていくので「金融緩和」の効果が高まるはずです。「進むも地獄、退くも地獄」とは感じられません。

ただ、「ここが決壊したら世界中が水浸しになる」という因果関係が成立するとは思えません。「ウィーワーク」が破綻すると「マネー」が「マネー市場」以外にも流れるでしょうか。「ウィーワーク」が世界経済を動かす程の巨額の「マネー」を貯め込んでいるのならば別ですが、資金繰りに苦しむ経営難の1企業に過ぎません。

大西様としては、「ウィーワーク」が破綻したら「世界中」の経済に大きな悪影響が出ると訴えたかったのでしょう。しかし、例えに問題があるために、かえって分かりにくくなっていませんか。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。御誌では読者からの間違い指摘を無視して記事中のミスを放置する対応が常態化しています。読者から購読料を得ているメディアとして責任ある行動を心掛けてください。


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追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「孫正義『1兆円追貸し』視界ゼロ
https://facta.co.jp/article/201912010.html


※記事の評価はE(大いに問題あり)。大西康之氏への評価はF(根本的な欠陥あり)を維持する。大西氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経ビジネス 大西康之編集委員 F評価の理由
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_49.html

大西康之編集委員が誤解する「ホンダの英語公用化」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_71.html

東芝批判の資格ある? 日経ビジネス 大西康之編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_74.html

日経ビジネス大西康之編集委員「ニュースを突く」に見える矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/01/blog-post_31.html

 FACTAに問う「ミス放置」元日経編集委員 大西康之氏起用
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/facta_28.html

文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」が空疎すぎる大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_10.html

文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」 大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_12.html

文藝春秋「東芝 倒産までのシナリオ」に見える大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/blog-post_74.html

大西康之氏の分析力に難あり FACTA「時間切れ 東芝倒産」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/facta.html

文藝春秋「深層レポート」に見える大西康之氏の理解不足
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_8.html

文藝春秋「産業革新機構がJDIを壊滅させた」 大西康之氏への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_10.html

「東芝に庇護なし」はどうなった? 大西康之氏 FACTA記事に矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/facta.html

「最後の砦はパナとソニー」の説明が苦しい大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/12/blog-post_11.html

経団連会長は時価総額で決めるべき? 大西康之氏の奇妙な主張
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/01/blog-post_22.html

大西康之氏 FACTAのソフトバンク関連記事にも問題山積
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/facta.html

「経団連」への誤解を基にFACTAで記事を書く大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/facta.html

「東芝問題」で自らの不明を総括しない大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_24.html

大西康之氏の問題目立つFACTA「盗人に追い銭 産業革新機構」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/09/facta.html

FACTA「デサント牛耳る番頭4人組」でも問題目立つ大西康之氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/facta4.html

大西康之氏に「JIC騒動の真相」を書かせるFACTAの無謀
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/jicfacta.html

FACTAと大西康之氏に問う「 JIC問題、過去の記事と辻褄合う?」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/02/facta-jic.html

「JDIに注がれた血税が消える」?FACTAで大西康之氏が奇妙な解説
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/jdifacta.html

FACTA「アップルがJDIにお香典」で大西康之氏の説明に矛盾
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/factajdi.html

FACTA「中国に買われたパソコン3社の幸せ」に見える大西康之氏の問題
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/facta3.html

2019年11月21日木曜日

日経「フィデリティ証券、投信販売手数料を撤廃」に感じる怪しさ

21日の日本経済新聞朝刊 金融経済面に載った「フィデリティ証券、投信販売手数料を撤廃~来月から 助言手数料新設へ 長期投資促す」という記事は怪しい臭いがする。「長期投資促す」などと日経は持ち上げているが、投資家にとっては筋の悪い話だと考える方が自然だ。
のこのしまアイランドパーク(福岡市)
           ※写真と本文は無関係です

記事を見ながら疑問点を述べてみたい。

【日経の記事】

外資系のフィデリティ証券は投資信託を販売する際の手数料を12月から撤廃する。取り扱う45の運用会社による656の投信すべてが対象。販売手数料を収益源としていると、顧客に不要な売買を促すインセンティブが働き、長期投資を阻害するとの指摘がある。フィデリティは将来的に「運用助言手数料」を新たに設け、手数料の面からも長期投資を促す体制に切り替えていく

投信の販売手数料は商品性の説明などの手間に対する対価との位置づけ。対面での営業をしないネット証券では同手数料がゼロの「ノーロード」型投信が増えてはいる。ただ、一時的なキャンペーンなどではなく、販売手数料を恒久的・全面的に無料にするのは主要ネット証券でも例がない

フィデリティではインターネットで取引し、運用報告書などを電子交付にすることを条件に全投信の販売手数料を無料にする。公的年金だけでは豊かな老後が送れないとされた「2000万円問題」をきっかけに、若年層などでは資産運用に対する関心が高まっており、今回の判断を受けて他の金融機関から顧客が大きく動く可能性もある


◎随分と好意的だが…

手数料の面からも長期投資を促す体制に切り替えていく」「販売手数料を恒久的・全面的に無料にするのは主要ネット証券でも例がない」「今回の判断を受けて他の金融機関から顧客が大きく動く可能性もある」--。ものすごく革新的で素晴らしい判断を「フィデリティ証券」がしたような書き方だ。実際にそうならば問題はない。だが、記事を読み進めると徐々に怪しくなってくる。

【日経の記事】

運用手数料にあたる「信託報酬」も現金を含む資産残高が3000万円超なら割り引く。これに該当する顧客に対しては、専門チームが投資相談に応じる新しいサービスも立ち上げる。

その一方で、投資や運用のアドバイスの対価として「運用助言手数料」を新たに得るようにし、中長期的には収益の柱に育てる方針。金融庁の認可を得て、早ければ来年中にも「投資助言代理業」の登録をめざす。

一人ひとりの顧客に対応するには大量の担当者が必要になるが、現在フィデリティグループが米国や欧州で提供しているロボットアドバイザー機能を国内にも持ち込み、コストは最小限に抑えることを検討する。

助言手数料の詳細は今後詰めるが、信託報酬と同様、顧客が投信を保有している間、資産残高に応じた額を受け取るのが一般的。このため、「長期でどう資産を増やしていくか」という顧客目線に沿ったインセンティブが運用会社にも働きやすくなる効果がある。


◎結局、微妙では?

結局、「販売手数料」を廃止する代わりに「助言手数料」を導入するという話だ。例えば、これまでは「販売手数料」が購入時2%、今後は代わりに「助言手数料」が毎年0.001%となるのならば投資家としては歓迎できる。しかし「助言手数料の詳細は今後詰める」ので、投資家にとって歓迎すべき話なのかどうかは判断できない。

『信託報酬』も現金を含む資産残高が3000万円超なら割り引く」とも書いているが、これもどの程度を「割り引く」のか触れていない。

助言手数料の詳細」も含めて具体的な手数料率が出てこないのは、大したことのない話だとバレるのが嫌だからではないかと勘繰りたくなる。

さらに記事の続きを見ていこう。

【日経の記事】

顧客が売買する度に生じる販売手数料を撤廃すれば、長期的な運用パフォーマンスの低下につながりやすい「頻繁な乗り換え」を促す動機もなくなる。この結果、フィデリティの手数料体系は「長期投資」と相性がよくなり、ビジネスモデルは独立系アドバイザー(IFA)が中核を担う米国や英国の個人向け金融に近づく。


◎手数料率次第では?

フィデリティの手数料体系」が「『長期投資』と相性がよく」なるかどうかは手数料率次第だ。「販売手数料を撤廃」したとしても「信託報酬」と「助言手数料」を合わせて年1%、2%と取るのならば「長期投資」であれ短期投資であれ投資家は「フィデリティ」と関わるべきではない。

今回の記事は日経の記者が「フィデリティ」の宣伝戦略に上手く取り込まれてしまった印象が強い。


※今回取り上げた記事「フィデリティ証券、投信販売手数料を撤廃 来月から~助言手数料新設へ 長期投資促す
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191121&ng=DGKKZO52412520Q9A121C1EE9000


※記事の評価はD(問題あり)