2018年7月10日火曜日

間違い目立つ週刊ダイヤモンド「ハイブリッド戦争」特集

週刊ダイヤモンド7月14日号の特集3「西側の同盟揺るがす『ハイブリッド戦争』 欧州・ロシアの新冷戦」の中の地図に明らかな誤りがあった。ダイヤモンド編集部には以下の内容で問い合わせを送っている。訂正などの対応を注視したい。
佐世保港(長崎県佐世保市)※写真と本文は無関係です


【ダイヤモンドへの問い合わせ】

週刊ダイヤモンド 編集長 深澤献様   千本木啓文様

7月14日号の特集3「西側の同盟揺るがす『ハイブリッド戦争』  欧州・ロシアの新冷戦」の最初に出てくる「ロシア侵略に身構えるバルト3国~NATO常駐も拭えぬ不安」という記事について、問題点を指摘させていただきます。

(1)モンテネグロについて

記事に付けた地図ではモンテネグロが「NATO加盟国」に入っていません。同国は2017年にNATOに加盟しているはずです。

(2)グリーンランドについて

地図ではデンマークを「NATO加盟国」としているのに、同国の領土であるグリーンランドを非加盟国と同じ色にしています。

(3)カザフスタンとアルメニアについて

地図ではベラルーシのみを「ロシアの同盟国」に色分けしています。しかし、カザフスタンとアルメニアも「ロシアの同盟国」だと思えます。「CSTO」という「旧ソ連構成諸国による安全保障・領土保全を目的とする条約機構」(デジタル大辞泉)があり、両国は加盟国となっています。なので、両国を「ロシアとの同盟国ではない」と見なすのは無理があります。

(4)リトアニアについて

記事ではリトアニアに関して以下のように記しています。

だが、こうした対策でも克服し難い弱点が同国にはある。ロシアの飛び地、カリーニングラードとロシアの同盟国、ベラルーシに挟まれた南部の国境だ。100キロに満たないこの国境を占領されればリトアニアは孤立し、NATOは戦力を陸送するのが難しくなる

国境を占領されれば」はやや不自然な表現ですが、ここでは「国境沿いの地域を占領されれば」という意味だと理解して話を進めます。「南部の国境」を占領されても、「北部の国境」が残っています。北側の隣国はラトビアで、リトアニアと同じ「NATO加盟国」です。

記事では「NATOも手をこまねいているわけではない。17年にはバルト3国に約3000人の多国籍部隊を配置」とも書いています。であれば、「南部の国境」を経由しなくても「NATOは戦力を陸送」できるので、「リトアニアは孤立」しないでしょう。

また、「ロシアの飛び地、カリーニングラードとロシアの同盟国、ベラルーシに挟まれた南部の国境」と書くと、「南部の国境」では他の国と隣り合っていないように思えますが、NATO加盟国であるポーランドともリトアニアは国境を接しています。

千本木様はポーランドとリトアニアの国境地帯もロシア・ベラルーシ連合に占領されるとの前提で記事を書いているのでしょうか。だとしたら、その点を明示すべきです。

余談ですが、「孤立」という点では「ロシアの飛び地、カリーニングラード」の方が深刻です。リトアニアかポーランドを経由しない限り「戦力を陸送」できません。

さらに付け加えると「ロシアの飛び地、カリーニングラードとロシアの同盟国、ベラルーシ」と表記すると、読点の影響で「ロシアの飛び地」「カリーニングラードとロシアの同盟国」「ベラルーシ」の3つに分かれて見えるので、読みづらさを感じます。「ロシアの飛び地カリーニングラードと、ロシアの同盟国ベラルーシ」とした方が良いでしょう。

ここまで4つに分けて記事の問題点を見てきました。これらについては記事に誤りがあると考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

(1)(2)は明らかな誤りだと見ています。次号での訂正記事の掲載を求めます。(3)も誤りの可能性が高いでしょう。(4)は訂正を出すほどの話だとは思いませんが、説明に無理があります。

問い合わせは以上です。御誌では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

※今回取り上げた記事「ロシア侵略に身構えるバルト3国~NATO常駐も拭えぬ不安
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/23971


※深澤献編集長と千本木啓文記者への評価は、次号での訂正の有無などを見てから決めたい。

追記)モンテネグロに関しては、2週間後の7月28日号に訂正が出た。グリーンランドなどの訂正はなく、問い合わせへの回答も届いていない。これを踏まえて特集の評価はE(大いに問題あり)とする。また、深澤献編集長への評価はEを維持する。千本木啓文記者への評価はEで確定とする。

「日本はHFTほとんどない」? 日経 松崎雄典編集委員に問う

10日の日本経済新聞朝刊に載った記事で、松崎雄典編集委員が「日本はHFTもほとんどない」と断言していて驚いた。日本でも「HFT」は珍しくない。日経には以下の内容で問い合わせを送った。
「ゆめタウン久留米」周辺で起きた冠水
(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 編集委員 松崎雄典様

10日の朝刊投資情報面に載った「一目均衡~投資文化、まずは人材から」という記事についてお尋ねします。記事中で松崎様は「日本はテクノロジーを駆使するトレードで海外に遅れ、HFTもほとんどない」 と言い切っています。しかし、「HFT(超高速取引)」に関する2月3日付の用語解説記事で御紙は以下のように説明しています。

「(HFTは)米国発だが日本株市場でもここ数年で存在感を高めている。サーバーを物理的に取引所の売買システムに近い距離に設置して注文を出す『コロケーション』という仕組みを用いる。東証では注文全体の約7割がコロケーション経由とされる

東証では注文全体の約7割がコロケーション経由」であれば「日本はHFTもほとんどない」とは言えません。「一目均衡 」での説明は誤りではありませんか。それとも2月3日付の記事が間違っているのですか。どちらにも問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社として、責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

回答はないだろうが、あるとすれば「日本はHFTもほとんどない=日本の投資家はHFTをほとんど手掛けていない(日本でのHFTのほとんどは外国人投資家によるもの)」との趣旨だと言ってきそうな気がする。だが「日本はHFTもほとんどない」と書いてあれば、「日本市場ではHFTがほとんど見られない」と解釈するのが自然だ。

追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「一目均衡~投資文化、まずは人材から
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180710&ng=DGKKZO32789090Z00C18A7DTA000


※記事の評価はD(問題あり)。松崎雄典編集委員への評価はDを維持する。松崎編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経 松崎雄典記者へ問う 「0.07ポイント差は有意?」 
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/08/007.html

書かせすぎでは? 日経証券部 松崎雄典記者「一目均衡」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/10/blog-post_58.html

円はドルより「安全」?日経 松崎雄典記者の1面解説記事
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/01/blog-post_17.html

2018年7月9日月曜日

子会社化は「企業価値向上」に不可欠と日経 田中博人記者は言うが…

日本経済新聞の電子版に載った「記者の目~伊藤忠、ユニファミマ株高騰でもTOBに強気な理由」という記事(7月9日付)は疑問の残る内容だった。伊藤忠商事によるユニー・ファミリーマートホールディングスの子会社化を「両社の一段の企業価値向上に欠かせないステップ」としている点が引っかかる。田中博人記者は以下のように解説している。
冠水した「ゆめタウン久留米」周辺(福岡県久留米市)
             ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

そもそも、すでに4割以上を持つ伊藤忠があえてユニファミマを子会社化するのは、両社の一段の企業価値向上に欠かせないステップだからだ。子会社化という事実によって「現場での営業や調達、サービスの企画立案など様々な面で広く深く他社と協力でき事業活動に大きなプラスになる」(伊藤忠幹部)。物流網を一段と効率化できるほか、ファミマのTポイントとは別の新たなポイントや電子マネーの開発も進めやすくなる。もし子会社化できなければ、こうした相乗効果が薄れ、企業価値を最大化できない恐れがある



◎そんなに違いある?

子会社化できれば「物流網を一段と効率化できるほか、ファミマのTポイントとは別の新たなポイントや電子マネーの開発も進めやすくなる」が、「もし子会社化できなければ、こうした相乗効果が薄れ、企業価値を最大化できない恐れがある」と田中記者は言う。だが、そんなに違いがあるだろうか。

伊藤忠は既に「ユニファミマ」株の「4割以上を持つ」。その上に「ユニファミマの取締役13人中、社長を含めた6人が伊藤忠出身」で「監査法人関係者からは『ユニファミマへの出資比率が過半に満たなくても子会社と認識される可能性がある』との見方が出ている」という。つまり実質的に「ユニファミマ」を支配している。ならば、形式的に子会社と認められるかどうかで協力関係に変化が起きるとは考えにくい。

だからこそ市場価格がTOB価格を上回って推移しているのに「伊藤忠は8月ごろにTOBを開始する予定で、今の価格を維持するとみられる」のではないのか。「子会社化はできた方がスッキリして好ましいが、資金を積み増ししてやるほどの意味はない」というのが伊藤忠の考えだと思える。なのになぜ「子会社化」を「一段の企業価値向上に欠かせないステップ」と見てしまったのか。そこが解せない。


※今回取り上げた記事「記者の目~伊藤忠、ユニファミマ株高騰でもTOBに強気な理由
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32711060W8A700C1000000/


※記事の評価はC(平均的)。田中博人記者への評価はCで確定とする。田中記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

東芝「メモリー売却必要」に説得力がない日経 田中博人記者
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/03/blog-post_7.html

2018年7月8日日曜日

カナダが「欧州」に見える日経「米欧、軍事費でも摩擦」

8日の日本経済新聞朝刊総合3面に載った「米欧、軍事費でも摩擦 米、GDP比2%『達成を』 欧州は駐留撤退示唆に不信感」という記事では、まずカナダの扱いが気になった。記事の序盤は以下のようになっている。
大雨で増水した筑後川(福岡県久留米市)
        ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】 

【ワシントン=中村亮、ブリュッセル=森本学】北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が11~12日、ベルギーの首都ブリュッセルで開かれる。トランプ米大統領はドイツ、カナダなど加盟国の多くが、NATOの国防費の目標である国内総生産(GDP)比2%を達成せず、共同防衛に十分な責務を果たしていないと批判している。通商政策に続き、米欧の安全保障をめぐる摩擦が深まる可能性がある

トランプ氏が欧州主要国の首脳と顔を合わせるのは6月上旬のカナダでの主要7カ国(G7)首脳会議以来。G7では米国の鉄鋼・アルミへの追加関税などで議論が紛糾した。通商分野で米欧の亀裂が鮮明になる中、米欧が結束を示せるかが最大の焦点になる。ただ、そのハードルは低くはない。


◎カナダも含めて記事を書くならば…

上記の書き方だと「カナダ」が欧州に見えてしまう。どうしても「米欧の安全保障をめぐる摩擦」と書きたいのならば、「カナダ」は外した方がいい。「カナダ」を入れたいと考えるのならば「通商政策に続き、米国と欧州・カナダの安全保障をめぐる摩擦が深まる可能性がある」「通商分野で米欧加の亀裂が鮮明になる中、米欧加が結束を示せるかが最大の焦点になる」などとすべきだ。

ついでに言うと、ロシアの扱いも気になる。基本的に「ロシア=欧州ではない」との前提で日経は記事を作っている。今回もそうだ。最後の段落を見ていこう。

【日経の記事】

トランプ氏は16日にロシアのプーチン大統領との首脳会談に臨む。米欧の亀裂が明らかになれば米欧分断を模索するロシアの狙いどおりの展開になる可能性もある。欧州はNATO首脳会議で米欧の結束をアピールして、対立するロシアに圧力をかけたい意向だが、トランプ氏がこれに応じるかは不透明だ。


◎ロシアも欧州に属するような…

個人的には「ロシアは欧州に属する」と思っている。外務省のホームページにある「地域別インデックス」で「欧州」を見ると、ロシアも入っている。ロシアを欧州から外す分類を間違いだとは言わないが、しっくりは来ない。

また、「欧州はNATO首脳会議で米欧の結束をアピールして、対立するロシアに圧力をかけたい意向」と書いてあると「欧州に属する国は全てNATO加盟国」と理解したくなる。しかしフィンランドやスウェーデンなどNATO非加盟国は少なくない。自分だったら「欧州の加盟国は~」とでも書くだろう。


※今回取り上げた記事「米欧、軍事費でも摩擦 米、GDP比2%『達成を』 欧州は駐留撤退示唆に不信感
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180708&ng=DGKKZO32740120X00C18A7EA3000


※記事の評価はC(平均的)。中村亮記者への評価は暫定D(問題あり)から暫定Cへ引き上げる。森本学記者への評価もDからCへ見直す。


※中村記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

メキシコは「低税率国」? 日経1面「税収 世界で奪い合い」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/09/blog-post_3.html


※森本記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

格差“遺伝”は米英伊がトップ3? 日経 森本学記者の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/11/blog-post_21.html

武藤はCFとして海外で勝負できてない? 日経 岸名章友記者に問う

日本経済新聞のサッカー担当記者で誰を最も評価するかと問われれば、迷わず岸名章友記者と答える。日経全体を見渡しても、岸名記者以上の評価を与えられる書き手はあまり思い付かない。ただ、7日の朝刊スポーツ1面に載った「検証西野J 見えたか8強(下)いでよ おっさん超す力 ボランチ、GK…中軸育つか」という記事には少しツッコミを入れたくなった。
大雨で冠水した「洋服の青山久留米合川店」周辺
         ※写真と本文は無関係です

まずは以下のくだりだ。

【日経の記事】

ロシア大会は2010年南アフリカ大会組、08年北京五輪世代らベテランの「定年延長」で乗り切った大会でもあった

長友が31歳らしからぬ走力で奔走し、香川(29)は往時の輝きを放ち、本田(32)も短い出場時間ながらも決定的な仕事をした。長谷部(34)のポジショニングとプレーの読みは年の功といいたくなるほど。4年前の悔しさを知り、海外のクラブで日々海外勢と戦いながら積んだ経験はダテではないと思わせるだけのものがあり、代表に安定感をもたらした。



◎代表は28歳で「定年」?

香川(29)」も「定年延長」の対象者に入っているので、岸名記者にとってサッカー日本代表の「定年」は28歳以下なのだろう。少し若過ぎないか。例えば、ポルトガルのスーパースターであるクリスティアーノ・ロナウドは33歳だが、疑う余地なくバリバリの主力だ。岸名記者から見ると、ロナウドも「定年延長」組なのか。「定年」と言うぐらいだから、その線引きは実力ではなく年齢で決まるはずだ。

記事の書き方だと「長谷部(34)」が「北京五輪世代」に見えてしまうのも気になる。「北京五輪世代ら」と書いているのでそれ以外の「世代」も含んでいるとの弁明は可能だ。しかし、記事を読んだ多くの人はアテネ世代の「長谷部(34)」を「北京五輪世代」だと思ってしまうだろう。

話を次に移そう。

【日経の記事】

欧州組が当たり前になったとはいえ、多くはサイドのMFやSB。CF、ボランチ、CB、GKなど中軸たるセンターラインのポジションで海外でも勝負できているのは大迫、吉田くらいだ。8強の大望を実現するなら、幹となるそれらのポジションで世界水準の「個」が出てきてほしい。



◎武藤は海外で勝負できてない?

引っかかったのは「CF、ボランチ、CB、GKなど中軸たるセンターラインのポジションで海外でも勝負できているのは大迫、吉田くらいだ」との記述だ。W杯メンバーの武藤嘉紀はセンターフォワード(CF)として「海外でも勝負できている」と思えたからだ。

スポニチの6月18日の記事では武藤を「確固たるセンターFWとしてマインツを2年連続で1部残留に導いた男」と評している。だとしたら「海外でも勝負できている」と考えるべきだろう。
大雨で水位が増した筑後川(福岡県久留米市)
            ※写真と本文は無関係です

柴崎岳も「ボランチ」として「海外でも勝負できている」と言えるのではないか。スペインのチームでは十分な出場機会が得られていない時期もあったようだが「勝負できていない」と断じるのは酷な気がする。

こんな感じでツッコミは入れてみたが、岸名記者への信頼は揺らいでいない。サッカー愛にあふれる熱い記事を、今後も高い完成度で届けてほしい。


※今回取り上げた記事「検証西野J 見えたか8強(下)いでよ おっさん超す力 ボランチ、GK…中軸育つか


※記事の評価はC(平均的)。過去の記事も考慮に入れて岸名章友記者への評価をB(優れている)とする。

2018年7月7日土曜日

問題多い大江英樹オフィス・リベルタス代表の投資関連記事

投資に関心がある人は、オフィス・リベルタス代表の大江英樹氏を信用しない方がいい。同氏が書いた記事は不正確だし、主張にも根拠が乏しい。東洋経済オンラインの「投資信託を買うより割の良い投資方法はあるか 高配当株を馬鹿にしては絶対にいけない」という記事に関して、問題点を指摘してみたい。
横浜ランドマークタワーと帆船日本丸(横浜市)
        ※写真と本文は無関係です

東洋経済オンラインには以下の内容で問い合わせを送った。オフィス・リベルタスにもほぼ同じ内容で問い合わせしている。

【東洋経済オンラインへの問い合わせ】

オフィス・リベルタス代表 大江英樹様  東洋経済オンライン 担当者様

東洋経済オンライン(7月3日付)の「投資信託を買うより割の良い投資方法はあるか 高配当株を馬鹿にしては絶対にいけない」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

企業が活動によって得た利益をどうやって使うかは3つの方法しかありません。①新たな事業へ投資する、②株主に利益を還元する、そして③現金として内部にためる、の3つです

3つの方法しかありません」と大江様は断定していますが、本当でしょうか。「企業が活動によって得た利益」は「新たな事業」ではなく既存事業への投資に使っても何の問題もないはずです。賃上げの原資とする選択もあります。また「現金として内部にためる」のではなく、国債などで運用して「ためる」方法もあります。

3つの方法しかありません」という記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。東洋経済新報社では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。

せっかくの機会なので、追加で2点を指摘させていただきます。

投資信託を買うより割の良い投資方法はあるか」というタイトルが付いているのに、これに対する大江様の見解を記事中で示していません。今回のテーマは「高配当株」なので、「高配当株投資は投資信託を買うより割がいいのか」に関して、答えを出すべきです。

長期投資は何も投資信託だけの専売特許ではないことがわかります。好配当を享受しながら企業の成長を楽しみに長期的に保有するというのも資産運用の醍醐味の1つと言えるのではないでしょうか」などと書いて答えを出さないやり方は頂けません。

ダウ工業株30種平均を構成する30銘柄の中から、年末時点で単純に配当利回りの高い銘柄上位10銘柄だけを購入、1年経った翌年末にまたその時点での新たな高利回り銘柄10銘柄に買い替える」だけの「ダウの犬」という投資戦略に関する説明にも問題があります。大江様はこの戦略について「これだけ単純なのに、年によってはダウ平均をかなり上回る成績を上げることもあるようです」と説明しています。

まず、断定せずに「あるようです」と逃げているのが気になります。データを確認していないのですか。それに「年によってはダウ平均をかなり上回る成績を上げることもある」のは当然でしょう。「30銘柄の中から」適当に10銘柄を選んでも「年によってはダウ平均をかなり上回る成績を上げる」はずです。

問題はその確率です。「過去100年のうち99年はダウ平均を上回る成績を上げた」と書いてあれば、「ひょっとすると有効な投資戦略かも」と思えます。しかし、記事中にそうした記述はありません。これでは参考にすべき情報とは言えません。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。

◇   ◇   ◇

上記の問い合わせに対し東洋経済は相変わらずの無視だが、オフィス・リベルタスのホームページを通じた問い合わせには回答があった。と言っても事実上のゼロ回答だ。

内容は以下の通り。

【オフィス・リベルタスからの回答】

お問い合わせありがとうございました。オフィス・リベルタスの大江でございます。

 記事の内容につきましてのお問い合わせ等につきましては個別の回答を控えさせていただいておりますが、頂戴いたしましたご指摘は、貴重なご意見として、今後の執筆等の参考にさせていただきたく存じます。貴重なご意見、大変ありがとうございました。

◇   ◇   ◇

※今回取り上げた記事「投資信託を買うより割の良い投資方法はあるか 高配当株を馬鹿にしては絶対にいけない
https://toyokeizai.net/articles/-/227364


※記事の評価はD(問題あり)。大江英樹氏への評価もDで確定とする。大江氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

現状維持バイアスを「独自に解釈」 週刊エコノミストの回答
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/08/blog-post_24.html

2018年7月6日金曜日

日経 秋田浩之氏「中ロの枢軸に急所あり」に問題あり

日本経済新聞の秋田浩之氏(肩書は本社コメンテーター)が国際情勢を解説すると、なぜか腑に落ちない内容になる。6日朝刊オピニオン面に載った「Deep Insight~中ロの枢軸に急所あり」という記事もそうだ。まずは日経に送った問い合わせの内容を見てほしい。
観世音寺(福岡県太宰府市)※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 秋田浩之様

6日朝刊オピニオン面の「Deep Insight~中ロの枢軸に急所あり」という記事についてお尋ねします。記事では中国の「氷上のシルクロード」構想に触れた上で「オホーツク海はロシアにとり、安全保障上、決して他国に触られたくない聖域だ。国防の命綱ともいえる戦略核ミサイル搭載の原子力潜水艦が、この海には配備されている」と解説しています。この説明は正しいのでしょうか。

オホーツク海」とは「シベリア・カムチャツカ半島・千島列島・北海道・サハリンによって囲まれた海域」(大辞林)です。ここを「他国」に触らせないようにするためには北海道を押さえる必要があります。しかし、ロシアは北海道の領有権を主張してはいません。オホーツク海では海上自衛隊もP3C哨戒機などを使って活動しています。

オホーツク海がロシアにとって「決して他国に触られたくない聖域」であれば、自衛隊への攻撃が起きても不思議ではありません。少なくとも激しい抗議があるはずです。なのに、そうした事態には至っていないようです。

オホーツク海はロシアにとり、安全保障上、決して他国に触られたくない聖域」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

今回の記事に関して、もう1つ指摘しておきます。気になったのは以下のくだりです。

中ロの協調を優先し、プーチン政権は表向き、北極開発でも連携する意向を示してはいる。しかし、内部に通じた外交筋は『氷上シルクロード構想をきっかけに、ロシア軍内で一帯一路への脅威感が高まっている』という

この説明を信じれば「氷上シルクロード構想」が出てくるまでは「一帯一路」への「脅威感」は高くなかったはずです。これは解せません。「一帯一路」のシルクロード経済帯はロシアの首都モスクワを含んでいます。百歩譲ってオホーツク海がロシアにとっての「決して他国に触られたくない聖域」だとしても、モスクワ以上の重要性があるとは思えません。

一帯一路」のシルクロード経済帯にモスクワが入っていても気にならないのに、「氷上シルクロード構想」がオホーツク海を含むことに「脅威感」を抱くのは不自然です。「内部に通じた外交筋」の「氷上シルクロード構想をきっかけに、ロシア軍内で一帯一路への脅威感が高まっている」という発言に触れて、秋田様は何の疑問も抱かなかったのですか。

問い合わせは以上です。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社として、責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

オホーツク海はロシアにとり、安全保障上、絶対に優位を保ちたい海域だ」などと書けば問題はないのに「決して他国に触られたくない聖域」などと書いてしまうから、おかしな話になる。説明下手なのか地理的な関係がよく分かっていないのかは分からないが…。

ついでに、記事の終盤にもツッコミを入れておきたい。

【日経の記事】

日米欧はこうした中ロの急所を突き、枢軸の勢いに歯止めをかけるべきだ。それが、自由で開かれた現秩序を守ることにつながる。では、どうすればよいか

いちばん単純な策は中ロへの外交圧力を強め、枢軸の機能を弱めるというものだ。だが、両大国を封じ込めるのは事実上、無理であり、逆に結束を強めてしまう危険もある。

だとすれば、もうひとつの選択肢は中ロの亀裂を利用し、いずれかをこちら側に引き寄せるという策だ。現実には、強大な巨象である中国より、その中国に不安を抱くロシアの方が誘導しやすいだろう

その意味で、安倍晋三首相が21回の会談を重ね、プーチン氏と関係を保とうとしたり、トランプ米大統領が今月16日、プーチン氏と初の本格会談を開いたりするのは、必ずしも誤りではない。

ただ、心配なのはロシアをこちら側に引き込むどころか、こちらがロシア側に歩み寄ってしまう危険だ。クリミア併合や米欧への選挙介入をうやむやにしたままロシアと和解したら、大きな禍根を残してしまう

そうなれば、世界各地で強権勢力の台頭が加速しかねない。特に、米ロ修復を急ぐトランプ氏には、そんな不安を禁じ得ない。


◎「ロシアの方が誘導しやすい」?

では、どうすればよいか」に対する秋田氏の答えは、ロシアを「こちら側に引き寄せる」だ。しかし「クリミア併合や米欧への選挙介入をうやむやにしたままロシアと和解したら、大きな禍根を残してしまう」という。ならば「クリミア併合や米欧への選挙介入」の問題を解決した上で、ロシアを「こちら側に引き寄せる」ことになる。
宇佐神宮(大分県宇佐市)※写真と本文は無関係です

クリミア併合」については、ウクライナにクリミアを返還させてからロシアを「こちら側に引き寄せる」のか。非常に難しそうだ。それこそ、実現のためには「どうすればよいか」と秋田氏に問いたくなる。

現実には、強大な巨象である中国より、その中国に不安を抱くロシアの方が誘導しやすいだろう」と秋田氏は言うが、「クリミア併合」問題の解決を前提とするならば、ロシアよりも「強大な巨象である中国」の方がまだ「誘導しやすい」と思える。

繰り返しになるが、「オホーツク海はロシアにとり、安全保障上、決して他国に触られたくない聖域」と秋田氏は書いていた。「クリミア」の重要性は「オホーツク海」より低いと見ているのだろうか。

結局、秋田氏の分析は参考にすべきでないと言うほかない。

追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「Deep Insight~中ロの枢軸に急所あり
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180706&ng=DGKKZO32661660V00C18A7TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。秋田浩之氏への評価はDを維持する。秋田氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経 秋田浩之編集委員 「違憲ではない」の苦しい説明
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_20.html

「トランプ氏に物申せるのは安倍氏だけ」? 日経 秋田浩之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/02/blog-post_77.html

「国粋の枢軸」に問題多し 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/deep-insight.html

「政治家の資質」の分析が雑すぎる日経 秋田浩之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_11.html

話の繋がりに難あり 日経 秋田浩之氏「北朝鮮 封じ込めの盲点」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/blog-post_5.html

ネタに困って書いた? 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/deep-insight.html

中印関係の説明に難あり 日経 秋田浩之氏「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/11/deep-insight.html

「万里の長城」は中国拡大主義の象徴? 日経 秋田浩之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/02/blog-post_54.html

「誰も切望せぬ北朝鮮消滅」に根拠が乏しい日経 秋田浩之氏
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_23.html