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【日経の社説】
排ガス試験の不正問題に揺れるドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が、2015年7~9月期決算を発表した。不正があった車の回収と無償修理の費用を引き当てたため、最終損益は前年同期の29億ユーロ(3800億円)の黒字から17億ユーロ(2300億円)の赤字に転落した。
今後の最大の焦点は事態を収拾する費用がどこまで膨らむかだ。VWは回収・修理のほか、米当局の制裁や世界各地での損害賠償に備えなければならない。不正の代償といえる様々な費用は、最終的に自己資本の3分の1弱にあたる300億ユーロ(約4兆円)に膨らむとの指摘がある。
経営環境にも不透明感が強い。VWの1~9月の世界販売は前年同期の実績を下回った。成長を支えてきた中国など新興国の景気減速が影響している。10月以降は不正のためにブランド力が低下した影響も本格的に出てきそうだ。
乗用車部門の投資抑制を表明するなど、VWは世界景気の減速や業績悪化に手を打ちつつある。販売がさらに落ち込み、キャッシュフロー(現金収支)に影響が出るようなら、減産や人員削減に踏み込む必要も浮上するだろう。
一般にドイツの企業では、従業員の代表が経営に強い発言力を持つ。VWの場合も、従業員と協議しながら合理化を断行するという難しいかじ取りを、株主から求められる可能性がある。
もちろん、不正問題の真相解明と責任追及を徹底し再発防止に万全を尽くすことが、ブランド力と信頼の回復に欠かせない。
開催中の東京モーターショーでは、問題が起きたディーゼル車の先行きを心配する声も聞かれた。車の技術に関する不正は業界の信頼に影を落としかねない。
VWと取引する日本の部品メーカーには業績の悪化懸念が浮上している。日本勢は欧州最大の自動車メーカーの不祥事から無縁ではない。少なからぬ影響を受けると判断すれば、消費者や株主に迅速に情報を開示すべきだ。
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決算の内容を紹介した後で「今後の最大の焦点は事態を収拾する費用がどこまで膨らむかだ」「経営環境にも不透明感が強い」などと新味のない話を続けている。最終的に日経としての主張をきちんと打ち出すのならば、まだ受け入れられる。しかし、社説を最後まで読んでも、この問題に関して日経が何を訴えたいのか見えてこない。
「不正問題の真相解明と責任追及を徹底し再発防止に万全を尽くすことが、ブランド力と信頼の回復に欠かせない」のは誰でも分かる。そのためにVWはどういう策を打つべきなのか。そこを経済紙である日経として、独自の視点を提供する形で訴えてほしかった。
記事からは「社説なんて、どうせあんまり読まれてないんだから、無難に書いておけばいいだろ」という論説委員会の空気が伝わってくるようだ。しかし、「おさらい」でお茶を濁すような社説を読者が支持するとは思えない。惰性に流されていないか、論説委員会全体で考えるべきだ。今回のようなレベルの社説しか生み出せないのならば、わざわざ紙面を割いて社説を載せ続ける意味はない。
※記事の評価はD(問題あり)。