経済記事ではデータによる裏付けが大切だ。しかし17日の日本経済新聞朝刊企業1面に中村直文編集委員が書いた「
ヒットのクスリ~マジックインキのふりかけ 大阪、笑いでブランド再生」という記事では、データが全く出てこない。これでは「
ヒット」しているのかも「
笑いでブランド再生」ができているのもか判断できない。
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大雨で浸水被害を受けた福岡県久留米市
※写真と本文は無関係です |
記事の一部を見てみよう。
【日経の記事】
「マジックインキ」の形をしたふりかけは「マジックふりかけ」、調味料は「マジックインキッチン」が商品名。輪ゴムで有名な「オーバンド」のキャンディーは、商品名の下にローマ字で「輪ゴムちゃうで!あめちゃんやで!」と関西弁の突っ込みがある。
以前から気になっていた。大阪の土産はなぜパロディーが多いのかと。そもそも他の観光都市と違い、代表的な土産を持っていないからだ。このため「笑いの文化とお客様が一目で喜ぶ商品を重視している」(ジェイアール西日本デイリーサービスネット)。
だがマジックインキッチンなどを企画するヘソプロダクション(大阪市)の稲本ミノル社長に話を聞くと、ただのウケ狙いではなかった。「バカバカしいことを本気でやる」「感動的なモノづくり」などを掲げ、物語を追求していた。
マジックインキの場合、ふりかけの商品企画を頼まれたのがきっかけ。例えば京都の銘菓「八つ橋」をふりかけにするレベルでは感動が湧いてこない。あれこれ考えていると、「どんなものにも書けるマジック」と銘打った事務用品のカタログが目に留まった。
「かける」「マジック」(魔法)の言葉を気に入った稲本氏はマジックインキ製造の寺西化学工業と商標を持つ内田洋行に企画を持ち込んだ。マジックインキは油性マーカーの代名詞だったが、ゼブラの「マッキー」にお株を奪われていた。
「寺西化学のように実力はあるけど埋もれた大阪の企業は多い。ブランドを再生することで大阪の役にも立つ」(稲本氏)。大阪には「フエキ糊」「パインアメ」など一世を風靡した商品がたくさんある。ヘソプロは野村克也監督のように「再生工場」を自任する。
懐かしさに新しい価値を加え、SNS(交流サイト)で話題を呼んで人気土産になった。同社には「医学会に行ってきました KOBE SWEETS」という土産菓子もある。有名な観光地へ「行ってきました」のパロディーだが、学会という狭い概念に絞り込んで希少性がアップ。神戸の価値の再発見にもつながり、物語が成立する。
◎「再生工場」になってる?
「
マジックふりかけ」などの「
パロディー」商品で「
マジックインキ」の「
ブランドを再生」したと中村編集委員は認識しているのだろう。だが、何のデータもない。
まず「
パロディー」商品が「
ヒット」しているかどうかが分からない。こうした商品が「
ヒット」して、その波及効果で「
マジックインキ」の販売が大幅に伸びたといったデータがあれば「
笑いでブランド再生」という話に説得力が出てくる。そこを省いて「
ヘソプロは野村克也監督のように『再生工場』を自任する」と言われても困る。
ついでに言うと、既に亡くなっている「
野村克也」氏に関して、いきなり「
野村克也監督」と書くのも感心しない。どこの「
監督」だったのかも説明していない。
「
ただのウケ狙いではなかった」「
物語を追求していた」と言っていた割に、どういう「
物語」なのか分かりにくいのも気になった。「
マジックインキ」の「
ブランドを再生」させるという「
物語」なのか。だとしたら「
物語」が成立したかどうかはデータで裏付けて読者に示すべきだ。
「
物語」に関しては「
『医学会に行ってきました KOBE SWEETS』という土産菓子」の話がさらに理解に苦しんだ。記事の説明では、どんな「
物語」があるのか読み取れない。「
神戸の価値の再発見にもつながり」というくだりも、よく分からない。「
医学会」と言えば「
神戸」なのか。そこに「
神戸の価値」があるのか。事情に疎い読者にも分かるように書いてほしい。
※今回取り上げた記事「
ヒットのクスリ~マジックインキのふりかけ 大阪、笑いでブランド再生」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200717&ng=DGKKZO61499900U0A710C2TJ1000
※記事の評価はD(問題あり)。中村直文編集委員への評価はDを維持する。中村編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
無理を重ねすぎ? 日経 中村直文編集委員「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/11/blog-post_93.html
「七顧の礼」と言える? 日経 中村直文編集委員に感じる不安
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_30.html
スタートトゥデイの分析が雑な日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_26.html
「吉野家カフェ」の分析が甘い日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_27.html
日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」が苦しすぎる
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_3.html
「真央ちゃん企業」の括りが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_33.html
キリンの「破壊」が見えない日経 中村直文編集委員「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_31.html
分析力の低さ感じる日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_18.html
「逃げ」が残念な日経 中村直文編集委員「コンビニ、脱24時間の幸運」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/24.html
「ヒットのクスリ」単純ミスへの対応を日経 中村直文編集委員に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_27.html
日経 中村直文編集委員は「絶対破れない靴下」があると信じた?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_18.html
「絶対破れない靴下」と誤解した日経 中村直文編集委員を使うなら…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_21.html
「KPI」は説明不要?日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」の問題点
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/kpi.html
日経 中村直文編集委員「50代のアイコン」の説明が違うような…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/50.html
「セブンの鈴木名誉顧問」への肩入れが残念な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/blog-post_15.html
「江別の蔦屋書店」ヨイショが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_2.html
渋野選手は全英女子まで「無名」? 日経 中村直文編集委員に異議あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_23.html
早くも「東京大氾濫」を持ち出す日経「春秋」の東京目線
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_29.html
日経 中村直文編集委員「業界なんていらない」ならば新聞業界は?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_5.html
「高島屋は地方店を閉める」と誤解した日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_23.html
野球の例えが上手くない日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/blog-post_15.html
「コンビニ 飽和にあらず」に説得力欠く日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/01/blog-post_23.html
平成は「三十数年」続いた? 日経 中村直文編集委員「Deep Insight」
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拙さ目立つ日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ~アネロ、原宿進出のなぜ」
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「コロナ不況」勝ち組は「外資系企業ばかり」と日経 中村直文編集委員は言うが…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/06/blog-post.html