2020年7月2日木曜日

「コメの需要」に関する分析が一面的な日経 北川開記者

2日の日本経済新聞朝刊マーケット商品面に載った「20年産米、6年ぶり下落も~作付け減でも需給緩和 コロナで外食需要激減」という記事は分析の甘さが気になった。北川開記者は以下のように解説している。
田主丸大塚古墳(福岡県久留米市)
      ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

コメ市場で2020年産米の需給が緩むとの見方が広がっている。コメの生産調整(減反)廃止後も産地は増産に慎重だ。にもかかわらず、過去の新米卸値の上昇に伴うコメ離れと新型コロナウイルスに伴う中食・外食需要の激減で供給が需要を上回る見通しだ。6年ぶりに新米卸値が下落する可能性もありそうだ。

中略)コメの需要量が食の多様化や小売価格の上昇で年間10万トンずつ落ちるなか、需要増の「頼みの綱」(農水省関係者)は外食向けだった。米穀安定供給確保支援機構(東京・中央)によれば、1人が中食・外食で1カ月に消費する精米の量は19年度が1.5キロと5年前より13%増えた。家庭内が3.1キロと3%減ったのとは対照的だ。

だが、新型コロナウイルスの感染拡大で中食・外食需要が急減。緊急事態宣言解除後もまだ回復は鈍く「19年産の販売が遅れて余れば、20年産価格に響く」(全国農業協同組合連合会幹部)。


◎一方にだけ目を向けても…

新型コロナウイルスに伴う中食・外食需要の激減」を「需給が緩む」要因と見るのは分かる。しかし、その「需要」のかなりの部分は「家庭内」での消費に回るはずだ。

新型コロナウイルス」の問題が起きたからと言って、人々が食事の量を減らすわけではない。全体的な「需要」がほぼ同じだとすれば、どこかが「激減」すれば、どこかが増える。「コメの需要量」も全体を見て考える必要がある。

例えば「コメ」を「家庭内」で食べる人がほとんどいないという状況ならば、「中食・外食需要の激減」はそのまま「コメの需要量」の「激減」につながりそうだ。

しかし「1人が中食・外食で1カ月に消費する精米の量は19年度が1.5キロ」なのに対して「家庭内が3.1キロ」と「家庭内」の方が多い。ならば、「中食・外食需要の激減」を「家庭内」の消費増加で相殺してもおかしくない。

「そうはならない」と北川記者が思っているのならば、その根拠を読者に示すべきだ。

両面を見なければ、きちんとした分析にならないことは多い。為替相場や原油相場が経済に与える影響もそうだ。

経済記事を書く上では、そこをしっかり意識してほしい。


※今回取り上げた記事「20年産米、6年ぶり下落も~作付け減でも需給緩和 コロナで外食需要激減
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200702&ng=DGKKZO60871300W0A620C2QM8000


※記事の評価はD(問題あり)。北川開記者への評価も暫定でDとする。

0 件のコメント:

コメントを投稿