日田駅(大分県日田市)※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
企業の借金を返す力が落ちている。今年格付けが下がった企業は世界で約1400社と最多のペースだ。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中央銀行は企業の資金繰りを支援している。資金調達はしやすい状況だが、もともと生き残りが難しい企業まで延命されることで将来の危機が深まる懸念も出ている。
格付けは返済能力を反映する。手元資金を確保するため借入金が膨らむ一方で、新型コロナの収束に時間がかかり、返済原資となる将来の稼ぎの回復は鈍くなっている。
米格付け会社S&Pグローバルが格下げした社債発行企業は6月25日までに世界で1392社と、前年同期の3.4倍に増えた。過去最多だったリーマン・ショック後の2009年とほぼ同じ水準だ。
◎1面トップで取り上げるなら…
「格下げ最多」と1面トップで打ち出しているのに「S&Pグローバルが格下げした社債発行企業」だけを数えているのが引っかかる。ムーディーズやフィッチも含めて「格下げ」の動向を見るべきだ。「S&Pグローバル」に絞る方が好ましいと筆者ら(大西康平記者、宮本岳則記者)が考えるのなら、その理由を示してほしい。
「過去最多だったリーマン・ショック後の2009年とほぼ同じ水準」と出てくるのも気になった。「実は09年を若干下回っているのに『ほぼ同じ水準』と見て『最多のペース』にしたのでは?」と疑いたくはなる。
記事の続きを見ていこう。
【日経の記事】
S&Pはクルーズ船最大手の米カーニバルや、独ルフトハンザ航空、仏ルノーを債務返済能力に不安がある投機的等級に引き下げた。日本では21社が格下げされ、投資適格級だがトヨタ自動車や三菱重工業も下がった。
格付けが下がると、借り換えのコストが高くなる。「返済が優先され、投資に資金が回らなくなる」(大和総研の佐藤光氏)との懸念もある。
米国では19年末時点で全体の57%が投機的等級だ。欧州も約4割に達する。今年の格上げは世界で175社にとどまり、比率はさらに高まる。日本は低格付け債市場がなく、格付けのある企業の大半は投資適格だ。
◎日本の情報が漠然としているが…
上記のくだりでは日本の情報が漠然としているのが引っかかった。「日本では21社が格下げ」とは書いてあるが、増減には触れていない。「最多のペース」かどうかも分からない。
「投機的等級」の比率に関しても「付けのある企業の大半は投資適格だ」と記しているだけで具体的な数字がない。この辺りはもう少し詳しい情報が欲しい。
付け加えると「日本は低格付け債市場がなく」と言い切っているのも引っかかる。
今回の記事では「S&Pグローバル」の格付けだけを切り出している。その「S&Pグローバル」はソフトバンクグループをBB+と「投機的等級」に格付けしている。ムーディーズもやはり「投機的等級」としている。これらを基準にすればソフトバンクグループの社債は「低格付け債」だ。本当に「日本は低格付け債市場がなく」と言えるのか。
「国内の格付け会社から投資適格の格付けを得ているから」との反論はできるが、だったらなぜ記事は「S&Pグローバル」1社の格付け動向だけで作ったのかと聞きたくなる。
※今回取り上げた記事「格下げ最多、世界で1400社~中銀支援で債務拡大」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61179560V00C20A7MM8000/
※記事の評価はC(平均的)。大西康平記者への評価はCで確定とする。宮本岳則記者への評価はCを据え置く。両記者については以下の投稿も参照してほしい。
間違い指摘の無視を続けた日経が2年ぶりの回答
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/03/blog-post_43.html
ちょっと大げさ…日経「新興国 高まる債務リスク」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/05/blog-post_24.html
※宮本記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
日経 宮本岳則記者「野村株、強気の勝算」の看板に偽り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/07/blog-post.html
日経 宮本岳則記者「スクランブル」での不可解な解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_3.html
親子上場ってそんなに問題? 日経「株式公開 緩むルール」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/03/blog-post_19.html
断定して大丈夫? 日経「ウーバー上場手続き 時価総額、米歴代2位」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/2.html
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