2020年7月13日月曜日

「ダイキンの在庫過多経営」に無理がある週刊ダイヤモンド新井美江子記者

週刊ダイヤモンド7月18日号に載った「特別インタビュー~アフターコロナで定石を否定 ダイキンの『在庫過多』経営」という記事には強引さを感じた。まず「『在庫過多』経営」を標榜するという話に無理がある。「過多」であれば、必ず「好ましくない多さ」になる。そこを目指そうとする「経営」があり得るのかという疑問が湧く。
冠水した国道210号線(福岡県久留米市)
          ※写真と本文は無関係です

百歩譲って「『在庫過多』経営」があり得るとして「ダイキン」は本当にそこを目指しているのか。新井美江子記者の問いと、井上礼之ダイキン工業会長の答えを見てみよう。


【ダイヤモンドの記事】

--では、サプライチェーン戦略にさほど変更は必要ない?

SCMの目的は需要と供給のギャップのコントロールやと言いましたが、これは結局、「在庫をできるだけ最適化、最小化して少ない資金で事業を回せるようにする」ということやと思うんですよ。でも、保護主義が進むにつれて、私は在庫を多く持つという方向にサプライチェーンが変わってくる可能性があると思いますね。

いい商品を作って社会貢献しよう、社会的責任を果たそうと言うているのに、保護主義とか自国第一主義になっているからといって、そういう品物を消費者に届けないというのは、ものすごく間違った企業行動やと思うんですね。

資金は余分に要るようになるけれども、在庫を持ってでもお客さんが必要なときに、間違いなしに届けられるサプライチェーンにしていく必要があるかも分からんわけですよ。こういう変化には、トップも含めて柔軟に取り組んでいかないかんと思っています。

--保護主義が進むと物を動かすのにちょっと時間がかかるようになるかもしれないから、在庫過多も許容しなければならないと。

いいものやったら在庫になっていたっていずれ売れるはずなんですね。1~2年たったら売れなくなるようなものを作っているから、在庫を持ったらいかんていう話になっているわけですよ。

--在庫が増えれば利益は上がりにくくなる。それでも勝てる商品を作るということですね。

そうです。挑戦しないとね。コロナという大きな危機のときには、そういう経営が必要なんですよ。


◎「在庫過多」とは言っていないが…

『在庫過多』経営」とインタビュー記事の見出しで打ち出すのならば、取材相手が「在庫過多」という言葉を使っていないと苦しい。今回の記事で「在庫過多」と言っているのは新井記者の方だ。

「今後は在庫過多経営でいくのですか?」「その通りです」というやり取りがあるのならば、まだ分かる。だが井上会長は「在庫過多も許容しなければならない」という考え方に同意はしていない(否定もしていないが…)。

「井上さん、ダイヤモンドの記事見ましたよ。今後は『在庫過多経営』でいくそうですね」と知人に言われたら「在庫過多でいいなんて私は一言も言ってません」と井上会長は答えそうな気がする。

もう1つ気になったのが以下のくだりだ。


【ダイヤモンドの記事】

そうして調達面を強化してもコストが成り立つように経営基盤を見直していく。技術開発によって、コストが高くなる分だけ製品の価格を上げても売れる品質のいい商品を作っていくとか、根本的に戦略を見直していかないと成り立たないなぁと思ってます。

--それで競合にまた一段と差をつけると。

それともう1つね。サプライチェーンマネジメント(SCM)の目的を一口で言うと、需要と供給のギャップのコントロールやと思うんですね。ということは、大事なのはサプライチェーン構築の“起点”となる地域のエンドユーザーの需要動向をいかに迅速につかむかです。



◎ヨイショ色が…

それで競合にまた一段と差をつけると」が質問として機能していない上に、露骨なヨイショに見える。記事の冒頭でも「変革力すさまじい同社」などと書いていたので嫌な予感はしたが…。新井記者が聞き手では、井上会長に厳しく斬り込むのは難しいだろう。

それでいいのか、新井記者はよく考えてほしい。


※今回取り上げた記事「特別インタビュー~アフターコロナで定石を否定 ダイキンの『在庫過多』経営


※記事の評価はD(問題あり)。新井美江子記者への評価はDを維持する。新井記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

記事の手抜きが過ぎる週刊ダイヤモンド新井美江子記者
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/blog-post_8.html

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