道路が冠水した福岡県久留米市内※写真と本文は無関係 |
【日経の記事】
日米欧で起きた「金利消失」の動きが新興国にも広がりつつある。新型コロナウイルスの感染拡大が中南米やアジアでも深刻化し、政策金利の引き下げによる景気下支えを続けているためだ。日米欧の大規模な資金供給で投資マネーは新興国に戻りつつある。だが感染拡大が長引けば、新興国から再びマネーが流出する懸念も拭えない。
「まだ利下げは終わりではない」。BNPパリバ証券はこんなリポートをまとめ、新興国による利下げが今後も止まらないとの見通しを示した。同社が分析した主要新興国25カ国のうち、年内に17カ国が追加利下げに踏み切るという。
実際、6月25日にはメキシコ、7月に入っても7日にマレーシア、16日にはインドネシアが政策金利を相次いで引き下げた。すでに政策金利が消失した日米欧などの先進国だけでなく、新興国でも金利消失に向けた動きが強まっている。
新興国で利下げが相次ぐのはコロナの感染拡大で経済活動が落ち込み、物価も低迷しているからだ。中央銀行が金融政策の目標に置く物価水準を下回る国も少なくない。
◎具体例ゼロでは…
冒頭で「『金利消失』の動きが新興国にも広がりつつある」と宣言し、さらに記事の後半でも「先進国から新興国へと広がる『金利消失』の動きは、先進国の長期停滞を招くと同時に、新興国からの資金流出リスクを高める」と解説している。これを信じれば既に「『金利消失』の動き」は「新興国へと広がる」状況になっているはずだ。しかし記事を最後まで読んでも具体例は出てこない。
「6月25日にはメキシコ、7月に入っても7日にマレーシア、16日にはインドネシアが政策金利を相次いで引き下げた」とは書いている。では、こうした国では「『金利消失』の動き」が起きているのか。
日経の別の記事では「メキシコ銀行(中央銀行)は25日、金融政策決定会合を開き、政策金利を0.5%引き下げて5%にすることを決めた」と伝えている。「5%」であれば「金利消失」には程遠い。マレーシアは1.75%、インドネシアは4%とやはり「金利消失」には至っていない。
「金利消失」と言うからには政策金利がゼロかマイナスでないと厳しい。「ほぼゼロ」ならばまだ分かるが、今回の記事には「ほぼゼロ」の事例すらない。なのに「『金利消失』の動きが新興国にも広がりつつある」との前提で話が進んでいく。
小栗編集委員も「『金利消失』の動きが新興国にも広がりつつある」とは思っていないのだろう。具体例を記事に入れなかったのは、そのためだと推測できる。記事には「新興国でも金利消失に向けた動きが強まっている」とトーンダウンした記述も見られる。
前提に無理があるが、その方が記事にしやすいから、あえて読者を欺く道を選んだとも言える。「記事に『金利消失』の具体例を盛り込むという発想がそもそもなかった」という場合、書き手としての基礎的な能力に疑問符が付く。いずれにしても「編集委員」の肩書を付けて記事を書かせるのは苦しい。
※今回取り上げた記事「ポジション~『金利消失』新興国でも 利下げ止まらず 再び投資マネー流出も」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200723&ng=DGKKZO61853360S0A720C2EN2000
※記事の評価はE(大いに問題あり)。小栗太編集委員への評価もEを据え置く。
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