1日の日本経済新聞朝刊企業面に載った「
経営の視点~コロナ禍で『逆流』する流通 分散時代の一等地探れ」という記事を書いた中村直文編集委員によると「
日本の流通サービス」において「
コロナ不況で力を発揮しているのは米アマゾン・ドット・コムや米マクドナルド、米スターバックスなど。顧客に対する利便性向上を怠らなかった外資系企業ばかり」らしい。この見方が正しいかどうか検証してみる。
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三隈川(筑後川、大分県日田市)※写真と本文は無関係 |
まず気になるのが「
米アマゾン・ドット・コムや米マクドナルド、米スターバックス」と書いている点だ。これだと「
外資系企業」と言うより「
外国企業」だ。「
日本マクドナルド」などとした方が適切ではないか。
今回の記事には以下の記述がある。
【日経の記事】
4~5月と都心部のコンビニエンスストアや百貨店、繁華街の居酒屋などの売り上げは急減。今後もテレワークとそれに伴う生活圏の分散化で需要が完全に回復するのは期待できない。一方で郊外のドラッグストアや家電量販店、商店街の売り上げは軒並み好調。まさに消費の趨勢が逆転しているわけだ。
◎みんな「外資系企業」?
この説明が正しければ「
郊外のドラッグストアや家電量販店、商店街」は「
コロナ不況で力を発揮している」のではないか。そして、これらの分野の担い手はほとんどが国内企業だ。
ネット通販ではどうか。日経電子版の記事(5月13日付)によると「
ネットショッピングモール『楽天市場』やネットスーパーなど含めた4月のショッピング関連の取扱高は前年同期比57.5%増になった」という。「
57.5%増」でも国内企業の楽天は「
コロナ不況で力を発揮している」とは言えないとの判断か。
「
食品スーパー売上高、4月の既存店10.7%増」という電子版の記事(5月21日付)もある。「
食品スーパー」も国内企業が中心だ。「
コロナ不況で力を発揮している」のが「
外資系企業ばかり」という解説はやはり苦しい。
今回の記事で気になったくだりをもう1つ見ておく。
【日経の記事】
1970年代までの個人消費は人の住む商店街が中心だったが、次第に駅前の大型店にシフト。1990年代はショッピングセンターや家電量販店など郊外型店舗が主役になる。
だが地方都市の人口が減ってくると2000年代には再び都心回帰。「駅ナカ」「駅チカ」に攻守交代する。多くの流通サービス企業は東京を中心とした大都市部でスケールメリットを得ようと出店拡大に走ったわけだ。一方、登場してきたばかりのインターネット販売への関心は薄かった。
◎「関心」は高かったような…
「
関心」を明確に計測はできないし「
薄かった」かどうかの基準もない。しかし「
登場してきたばかりのインターネット販売への関心は薄かった」との説明には納得できない。
「
2000年代」の初めにITバブルが崩壊した。バブルが膨れる過程では「ITが世界を大きく変える」との見方が広がり「
インターネット販売」にも高い関心が集まったと記憶している。
そして、実際に「
インターネット販売」は広がっていった。なのになぜ「
インターネット販売への関心は薄かった」と中村編集委員は判断したのか。同じ時代を生きてきたのに、これだけ認識に乖離があると少し怖い。
※今回取り上げた記事「
経営の視点~コロナ禍で『逆流』する流通 分散時代の一等地探れ」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200601&ng=DGKKZO59791660Z20C20A5TJC000
※記事の評価はD(問題あり)。中村直文編集委員への評価はDを維持する。中村編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
無理を重ねすぎ? 日経 中村直文編集委員「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/11/blog-post_93.html
「七顧の礼」と言える? 日経 中村直文編集委員に感じる不安
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_30.html
スタートトゥデイの分析が雑な日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_26.html
「吉野家カフェ」の分析が甘い日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_27.html
日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」が苦しすぎる
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_3.html
「真央ちゃん企業」の括りが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_33.html
キリンの「破壊」が見えない日経 中村直文編集委員「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_31.html
分析力の低さ感じる日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_18.html
「逃げ」が残念な日経 中村直文編集委員「コンビニ、脱24時間の幸運」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/24.html
「ヒットのクスリ」単純ミスへの対応を日経 中村直文編集委員に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_27.html
日経 中村直文編集委員は「絶対破れない靴下」があると信じた?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_18.html
「絶対破れない靴下」と誤解した日経 中村直文編集委員を使うなら…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_21.html
「KPI」は説明不要?日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」の問題点
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/kpi.html
日経 中村直文編集委員「50代のアイコン」の説明が違うような…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/50.html
「セブンの鈴木名誉顧問」への肩入れが残念な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/blog-post_15.html
「江別の蔦屋書店」ヨイショが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_2.html
渋野選手は全英女子まで「無名」? 日経 中村直文編集委員に異議あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_23.html
早くも「東京大氾濫」を持ち出す日経「春秋」の東京目線
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_29.html
日経 中村直文編集委員「業界なんていらない」ならば新聞業界は?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_5.html
「高島屋は地方店を閉める」と誤解した日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_23.html
野球の例えが上手くない日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/blog-post_15.html
「コンビニ 飽和にあらず」に説得力欠く日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/01/blog-post_23.html
平成は「三十数年」続いた? 日経 中村直文編集委員「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/02/deep-insight.html
拙さ目立つ日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ~アネロ、原宿進出のなぜ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/02/blog-post_28.html