津久見港(大分県津久見市) ※写真と本文は無関係です |
【日経への問い合わせ】
日本経済新聞社 金融政策・市場エディター 大塚節雄様
2日の朝刊オピニオン面に載った「Deep Insight~政府・中銀、危機が紡ぐ教訓」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。
「FRBが国民負担につながりかねない巨額の損失リスクを背負うわけではない。社債は直接は買わず、実務は民間が運営する特別目的事業体(SPV)が担う。SPVには米財務省が経済対策の一環で資本を出し、FRBの一角をなすニューヨーク連銀が購入資金を融資する。財政の出資金を『レバレッジ(てこ)』に使って事業規模を出資金の最大10倍にする。連銀は資金の供給役に徹し、SPVが持つ社債を担保にとる。それでも損失が出たら政府が負う。こんな役割分担が確立している」
「FRBが国民負担につながりかねない巨額の損失リスクを背負うわけではない」と言い切っていますが、本当にそうでしょうか。「SPVが持つ社債」が全て債務不履行になった場合を考えてみましょう。「SPV」は「財政の出資金」と「融資」の全額を社債購入に充てていると仮定します。この場合「社債を担保」にしても、社債自体の価値がゼロなので意味はありません。「損失」が「出資金」を上回るのも確実です。「融資」の返済は見込めないでしょう。
日経の別の記事によると「社債購入プログラム」では「発行市場と流通市場で総額7500億ドル分を買い入れる」そうです。小さな金額ではありません。「FRBの一角をなすニューヨーク連銀が購入資金を融資」すれば「FRB」は当然に「巨額の損失リスクを背負う」ことになります。「FRBが国民負担につながりかねない巨額の損失リスクを背負うわけではない」との説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
もう1つ問題点を指摘します。「財政の出資金を『レバレッジ(てこ)』に使って事業規模を出資金の最大10倍にする」と大塚様は説明しています。「レバレッジ」とは「借入金によって投資を行い、借入利子よりも高い利潤を得ようとすること。借入資本利用」(大辞林)です。だとすれば「出資金」を「レバレッジ」に使うのではなく「融資」で得た資金を「レバレッジ」に使うと考えるべきでしょう。
今回の記事で言えば「融資で得た資金を『レバレッジ(てこ)』に使って事業規模を出資金の最大10倍にする」などとすべきでしょう。
問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界最強のビジネスメディア」であろうとする新聞社の一員として責任ある行動を心掛けてください。
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※今回取り上げた記事「Deep Insight~政府・中銀、危機が紡ぐ教訓」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200602&ng=DGKKZO59833010R00C20A6TCR000
※記事の評価はD(問題あり)。大塚節雄記者への評価はB(優れている)からC(平均的)に引き下げる。大塚記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「無事これ名馬」だが…日経 大塚節雄記者に注文
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_15.html
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