2020年6月30日火曜日

1面トップの「本格参入」が苦しい日経「NTT、再生エネ本格参入」

日本経済新聞で「本格参入」という文字を見つけたら要注意だと繰り返し訴えてきた。30日の朝刊では1面トップに「NTT、再生エネ本格参入~1兆円超投資、自前で発送電 電力市場の競争一変」という記事を持ってきている。中身を見ると、やはり「本格参入」が苦しい。
日田駅(大分県日田市)※写真と本文は無関係です

まずは最初の段落を見ていく。

【日経の記事】

NTTが2030年度までに自前の発送電網を整備し、再生可能エネルギー事業に本格参入する。日本の再生エネルギー発電容量の1割にあたる750万キロワットの発電力を確保し、独自の発送電網も使って顧客に直販する。脱炭素の流れが強まるなか、資本力がある再生エネルギー事業者が生まれることで国内電力の競争環境が一変する

◇   ◇   ◇

本格参入」を使ったことで1面トップらしさは出ている。「国内電力の競争環境が一変する」かどうか怪しい感じもするが、意義付けもそれらしくなっている。

しかし、あくまで「本格参入」なので、徐々に厳しくなってくる。記事の続きを見ていこう。

【日経の記事】

16年の電力自由化(総合2面きょうのことば)以来、発送電網を全国で展開できる事業者の参入は初めてだ。NTTは今の発電容量を25倍に増強する。25年まで年間1000億円程度を投資する。30年度までの累計は1兆円を超える可能性がある。容量は四国電力1社分を上回り、19年に6135万キロワットあった日本の再生エネ発電容量(大型水力を除く)の12%を占める規模となる。

エネルギー事業を統括するNTTアノードエナジー(東京・千代田)が中核となり発電事業を拡大する。

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既に「エネルギー事業を統括するNTTアノードエナジー」があって「今の発電容量を25倍に増強する」という。第2段落では「発電事業を拡大する」と書いており、「本格参入」からトーンダウンしたような印象もある。

では「本格参入」と呼ぶのが適切な状況なのだろうか。記事の中にヒントがある。

【日経の記事】

通信ビジネスの成長鈍化に直面するNTTにとって再生エネ事業は次の主力事業の一つだ。同社の現在の再エネ発電容量は30万キロワット。700万キロワット超の再生エネ開発目標は、電力最大手の東京電力ホールディングスが30年代前半までの国内再生エネの開発規模として掲げる200万~300万キロワットを大きく上回る。


◎「30万キロワット」もあるなら…

現在の再エネ発電容量は30万キロワット」らしい。このレベルではまだ「本格参入」ではないと日経は見ているのだろう。

明確な基準はないので「絶対に違う」とは言えない。ただ「電力最大手の東京電力ホールディングスが30年代前半までの国内再生エネの開発規模として掲げる200万~300万キロワット」の約1割の「発電容量」を既に有している。常識的に考えれば「本格参入」していると見るべきだ。

本格参入」を使って話を大きく見せるのは基本的にやめた方がいい。どうしても、ごまかしのテクニックに見えてしまう。


※今回取り上げた記事「NTT、再生エネ本格参入~1兆円超投資、自前で発送電 電力市場の競争一変
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200630&ng=DGKKZO60923240Z20C20A6MM8000


※記事の評価はD(問題あり)

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