大分県日田市の三隈川(筑後川) ※写真と本文は無関係です |
筆者でジャーナリストの後藤逸郎氏は記事の終盤で以下のように記している。
【東洋経済の記事】
新型コロナは死亡率や後遺症の軽重も定かでなく、楽観できる情報は何もない。北半球の国々は感染者が減少してきたが、冬を迎えるブラジルなど、南半球は感染の中心地になりそうだ。北半球で感染流行第2波が懸念される今冬は、世界陸連が各国のオリンピック選考を再開する12月と重なる。
新型コロナ患者が減少した台湾や韓国、ドイツは野球やサッカーなどプロスポーツを再開した。ただ、選手のPCR検査や無観客か人数制限での試合を行い、何より各国は入国制限を解いていない。世界約200カ国から選手や観客が集まる東京大会を台湾や韓国、ドイツと同じ条件で開くことはできない。
唯一、大会開催を可能とするワクチンは、年内開発が実現しても、選手や観客、開催地の日本人すべてに行き渡らせることは絶望的だ。IOCは10月を開催判断の期限にした。東京2020大会中止へ向けて秒読みが始まった。
◎分析に説得力あり
「世界約200カ国から選手や観客が集まる東京大会を台湾や韓国、ドイツと同じ条件で開くことはできない」「唯一、大会開催を可能とするワクチンは、年内開発が実現しても、選手や観客、開催地の日本人すべてに行き渡らせることは絶望的」--。だから「東京2020大会中止へ向けて秒読みが始まった」と見る分析には説得力を感じる。
もちろん見通しが外れる可能性もある。そうなれば振り返って恥ずかしい思いをするかもしれない。それを承知の上で「中止へ向けて秒読みが始まった」と言い切った後藤氏の姿勢は称賛に値する。
ただ、気になる点もあった。記事の半分近くが「スペイン風邪」の歴史に当てられていたのは感心しない。「東京五輪の2021年開催は困難 中止への秒読みが始まった」という見出しに釣られて読んだのに、なかなか本題に入らないので不安になった。記事の過半は「東京五輪の2021年開催」が可能かどうかの分析に充ててほしかった。
もう1つ気になったのが以下のくだりだ。
【東洋経済の記事】
感染症はいともたやすく選手生命を奪う。10年10月、インドで英連邦競技大会(コモンウェルスゲームズ)が開かれた。当時、アジアでデング熱が流行し、WHOが警告していた。蚊が媒介するウイルスにより高熱を出し、死に至ることもある病で、治療薬はない。
インドは当時、20年ぶりの感染者増に見舞われ、大会に参加したカナダの女子平泳ぎ選手、アンナメイ・ピアースが感染した。回復後も調子が戻らず、引退した。09年に200メートル平泳ぎで世界記録を更新した好選手の前途を、感染症が閉ざした。
◎因果関係を断定できる?
「アンナメイ・ピアース」選手が「回復後も調子が戻ら」なかったのは「デング熱」が原因と断定して良いのだろうか。「デング熱」への感染がなければ「調子」が戻っていたかどうか判断はかなり難しそうだ。なのに「好選手の前途を、感染症が閉ざした」と言い切っている。因果関係を単純に考え過ぎている気がする。
※今回取り上げた記事「東京五輪の2021年開催は困難 中止への秒読みが始まった」
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/23800
※記事の評価はC(平均的)。後藤逸郎氏への評価もCとする。
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