別府国際観光港(大分県別府市)の宇和島運輸フェリー ※写真と本文は無関係です |
【東洋経済の記事】
業績は絶好調なのに、なぜなのか──。
モーターや産業用ロボットの大手、安川電機の株価が低迷している。2018年1月には6120円と上場来最高値をつけたが、その後ジリジリと下げが続き、10月には一時3000円を割った。
きっかけは10月中旬に発表した19年2月期決算の下方修正だ。売上高を従来見通しの5100億円から4980億円に、営業利益を655億円から590億円に修正した。変則期決算だった前18年2月期を通期に組み替えた比較では売上高は7.2%増、営業利益は3.3%増と成長が鈍化する見通しで、失望売りを誘った。
◎「3.3%増益」で「絶好調」?
「売上高は7.2%増、営業利益は3.3%増」になる見通しの安川電機を「業績は絶好調」と筆者の森田宗一郎記者は表現している。「営業利益は3.3%増」ならば「好調」と言うのもやや苦しい。「業績は堅調」ぐらいが適切だろう。
「株価半減」の分析も2つの意味で無理がある。まず「業績は絶好調なのに、なぜなのか」と打ち出すのならば、「明確な理由がよく分からないまま株価が下がっている」という状況が要る。でなければ、わざわざ記事であれこれと分析する意味がない。
しかし、記事では「きっかけは10月中旬に発表した19年2月期決算の下方修正だ」と簡単に答えを出してしまう。業績見通しの「下方修正」を「きっかけ」に株価が下げたのならば、当たり前の話だ。わざわざ「業績は絶好調なのに、なぜなのか」と問題提起するまでもない。
さらに言うと「きっかけは10月中旬に発表した19年2月期決算の下方修正だ」という説明にも問題がある。安川電機の「株価半減」は今年1月から10月にかけての話だ。その「きっかけ」が「10月中旬」では辻褄が合わない。
「株価半減」について「なぜなのか」を分析するならば、なぜ「上場来最高値」を1月に付けた後に、下げ基調となったのかを考えてほしい。間違っても「10月中旬」の「下方修正」が「きっかけ」ではないはずだ。
そのヒントは記事の終りの方に出てくる。そのくだりを見てみよう。
【東洋経済の記事】
そもそも市場関係者には、17年の株価上昇は中国のバブルに踊った期待先行だったとの見方が多い。UBS証券の水野晃アナリストも「今年に入って投資家の目が覚めた」と、昨年の安川電機の株価は過大評価だと指摘する。
下方修正後の通期の営業利益は、依然として過去最高更新の見通し。とはいえ、PBR(株価純資産倍率)は約3.5倍でいまだに割高感が漂う。激化する米中貿易摩擦という懸念材料も踏まえると、まだまだ調整局面が続きそうだ。
◎だったらそこを説明しないと…
「期待先行」で「中国のバブルに踊った」結果として株価が上昇し、「今年に入って投資家の目が覚めた」のならば、それこそが「株価半減」の肝だ。なぜ「期待先行」で「バブルに踊った」のか。何が「きっかけ」で「今年に入って投資家の目が覚めた」のか。そこを詳しく説明すべきなのに、できていない。「PBR」が「約3.5倍」だとなぜ「割高感が漂う」のかも説明がない。
今回の記事では、株式市場の分析に関して森田記者の未熟さばかりが目立った。
※今回取り上げた記事「ニュース深掘り 株 up&down~安川電機、株価半減はなぜ?」
https://dcl.toyokeizai.net/ap/registinfo/init/toyo/2018110300
※記事の評価はD(問題あり)。森田宗一郎記者への評価も暫定でDとする。