別府タワー(大分県別府市)※写真と本文は無関係 |
当該部分を見てみよう。
【日経の記事】
論理矛盾は多い。米経済の強さを歴史的な業績と誇りながら、米連邦準備理事会(FRB)の金利引き上げは早すぎると批判する。政治圧力でFRBがインフレ抑止に失敗すると市場が見透かせば、金利はさらに上昇してしまう。イランに圧力をかけて中東の緊張を高めながら、原油高の責任を石油輸出国機構(OPEC)に押しつける。ロシアのプーチン大統領の「鏡をみて批判したら」という皮肉はもっともに聞こえる。
◎どこに「論理矛盾」?
「米経済の強さを歴史的な業績と誇りながら、米連邦準備理事会(FRB)の金利引き上げは早すぎると批判する」ことに矛盾はない。「米経済」が力強く成長しているとしても、どんな「金利引き上げ」にも耐えられる訳ではない。「米経済が力強く成長しているとは言え、今の『金利引き上げは早すぎる』」との批判は成り立つ。
「政治圧力でFRBがインフレ抑止に失敗すると市場が見透かせば、金利はさらに上昇してしまう」とのシナリオはあり得るが、そうなるとは限らない。「政治圧力」を受けてFRBが利上げに消極的になり、結果的に長期金利も含めて金利上昇が抑えられるとのシナリオも考えられる。やはり「論理矛盾」は見当たらない。
原油の話も「責任転嫁」とは言えるかもしれないが「論理矛盾」には見えない。仮にトランプ氏が以下のように主張しているとしたら「矛盾」はあるのか。
「イランへの制裁は必要な措置だ。原油相場の上昇要因になるかもしれないが、影響としては大きくない。今の原油高を生み出している主な原因はOPECにあり、責められるべきはOPECだ」
「いやトランプ氏の主張はそうじゃない。やはり矛盾があるんだ」と菅野氏が思うのならば、「確かに矛盾があるな」と読者を納得させる説明を記事中ですべきだ。
ついでに、上記のくだりに続く結論部分にも注文を付けておきたい。
【日経の記事】
だが、逆風を受けるのは米国の外のほうだ。ドイツのメルケル首相は姉妹政党の退潮に、フランスのマクロン大統領は一段の支持低下に悩む。メイ英首相も欧州連合(EU)離脱に大わらわだ。中国ですら米国の通商や安全保障面の執拗な攻勢で混乱を来している。
敵味方を分断するトランプ流が結局は主流になるのか。米中間選挙の後も世界が抱える悩みだ。
◎独仏英中も「トランプ流」?
文脈的には「ドイツ、フランス、英国、中国でも『敵味方を分断するトランプ流』が広がりつつある」と言いたいのだろう。だが「姉妹政党の退潮」「一段の支持低下」「欧州連合(EU)離脱に大わらわ」「米国の通商や安全保障面の執拗な攻勢で混乱」などと書いてあるだけで、「敵味方を分断するトランプ流」が広がる状況を描いてはいない。
しかし、なぜか「敵味方を分断するトランプ流が結局は主流になるのか。米中間選挙の後も世界が抱える悩みだ」と結んでしまう。こんな説得力に欠ける取って付けたような結論しか導けないのならば、「本社コメンテーター」という肩書で顔写真まで載せてコラムを書く意味はない。
※今回取り上げた記事「Deep Insight~分断を食む大統領の底力」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181024&ng=DGKKZO36821240T21C18A0TCR000
※記事の評価はD(問題あり)。菅野幹雄氏への評価もDを据え置く。菅野氏については以下の投稿も参照してほしい。
「追加緩和ためらうな」?日経 菅野幹雄編集委員への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_20.html
「消費増税の再延期」日経 菅野幹雄編集委員の賛否は?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_2.html
日経 菅野幹雄編集委員に欠けていて加藤出氏にあるもの
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/08/blog-post_8.html
日経「トランプショック」 菅野幹雄編集委員の分析に異議
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_11.html
英EU離脱は「孤立の選択」? 日経 菅野幹雄氏に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/blog-post_30.html
「金融緩和やめられない」はずだが…日経 菅野幹雄氏の矛盾
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_16.html
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