九重"夢"大吊橋(大分県九重町)※写真と本文は無関係です |
「スウィフトの発言は共和党が上下両院で過半を握る議会の構成を変える追い風になるのか。トランプ氏の信任投票の側面がある中間選挙まで20日あまりだ」と吉野記者は記事を締めている。いわゆる「成り行きに注目」型の結びだ。これでは署名入りでコラムを書く意味がない。
記事の全文を見た上で、改めてこの問題を考えたい。
【日経の記事】
米国の人気歌手が国内政治を揺らしている。テイラー・スウィフトが11月の米中間選挙で野党、民主党への支持を明言し、投票を呼びかけた。写真共有アプリ「インスタグラム」にメッセージを掲載してから48時間で新たな有権者登録が24万人と急増。9月の新規登録者19万人を上回った。
民主党支持の理由を「(トランプ氏が大統領に当選してからの)2年間の出来事で違うと感じるようになった」と説明した。
スウィフトは昨年、性被害を訴える「#MeToo」(「私も」の意味)運動の活動家らと米誌タイムの「パーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の人)」に選ばれた。
世界の歌姫と称されるスウィフトはインスタグラムに1億1200万人以上のフォロワーを持つ。2015年7月、ワシントンのナショナルズ・パークで開いたスウィフトのコンサートに行く娘に同伴した。4万人を超える観客のうち小中高生の女子の多さが印象に残った。
スウィフトは米南部が発祥の地とされるカントリー音楽の歌手としてデビューし、ポップのリスナーも開拓した。南部は共和党が強い保守地盤。スウィフトが有権者登録しているテネシー州も南部だ。
ロックやポップミュージシャンは民主党支持者が大半、カントリー音楽は共和党支持者と相性がよいといわれる。スウィフトの民主党支持表明が驚かれたのはこうした通説を裏切ったのも一因だ。トランプ大統領は「彼女の音楽が25%ほど嫌いになった」と語った。
ミュージシャンの政治的な発言は反発も生む。「ブッシュ(大統領)が私たちと同じテキサスなんて恥だわ」。03年、イラク戦争の開戦直前に女性カントリー音楽グループ、ディクシー・チックスが欧州でのコンサートで反戦を主張した。
その直後から同グループの曲を流したラジオ局に抗議が殺到した。「祖国の危機に同じテキサス人が大統領を攻撃するのは許せない」。放送停止に踏み切る局が相次ぎ、CDの売り上げは一気に落ちた。
日本でも人気歌手の発言は注目される。8月に沖縄県知事だった翁長雄志氏の訃報を受け、同県出身の歌手、安室奈美恵さんがホームページでコメントした。「知事のご遺志が受け継がれ、多くの人に愛される沖縄であることを願っております」
自民党には当時「安室さんが9月の沖縄県知事選に積極的に関与するのではないか」と警戒する空気もあった。ポップ音楽と政治は大衆の心をつかまなければならないという点で共通する。
16年大統領選も人気歌手が政治的な立場を明らかにした。ケイティ・ペリーは民主党候補、ヒラリー・クリントン氏を応援した。投票日前日、ペンシルベニア州での集会にはジョン・ボン・ジョヴィに加え、ブルース・スプリングスティーンが登場した。
ノースカロライナ州に移動すると今度はレディー・ガガが駆けつけた。トランプ氏の集会に歌手はいなかった。有権者は人気歌手が寄り添うクリントン氏ではなく、一人で戦うトランプ氏を選んだ。
「13歳の女の子に選挙権が与えられない限り(スウィフトの民主党支持表明は)影響がない」。共和党の大統領候補指名争いの経験がある元アーカンソー州知事のマイク・ハッカビー氏はツイートした。18歳で選挙権が得られることが念頭にある。
スウィフトの発言は共和党が上下両院で過半を握る議会の構成を変える追い風になるのか。トランプ氏の信任投票の側面がある中間選挙まで20日あまりだ。
◎知ってることを書いただけ?
記事の前半は「テイラー・スウィフト」に関するこれまでの流れの説明だ。これは問題ない。
平和公園(長崎市)※写真と本文は無関係です |
さらに「ミュージシャンの政治的な発言は反発も生む」と過去の事例を紹介し、「安室奈美恵さん」の話に移る。さらには「16年大統領選も人気歌手が政治的な立場を明らかにした」という話を教えてくれる。これもいいだろう。そうした問題を踏まえて、吉野記者はどう分析して、何を訴えるのか。そろそろ本題に入らないと残りは20行足らずだ。
しかし「13歳の女の子に選挙権が与えられない限り(スウィフトの民主党支持表明は)影響がない」という「マイク・ハッカビー氏」のツイートを紹介した後に「成り行きに注目」で記事を締めてしまう。これでは困る。
「マイク・ハッカビー氏」の見方が正しいと吉野記者が感じるのならば、それを説得力のある形で示せばいい。記事では「写真共有アプリ『インスタグラム』にメッセージを掲載してから48時間で新たな有権者登録が24万人と急増」などと「テイラー・スウィフト」の影響力の大きさにも言及している。
それらを総合して、今回の「テイラー・スウィフト」の動きを吉野記者がどう見たのかを書くべきだ。それができないのならば、吉野記者は「風見鶏」の筆者から外れた方がいい。
※今回取り上げた記事「風見鶏~歌姫がトランプ氏に『NO』」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181014&ng=DGKKZO36464020T11C18A0EA3000
※記事の評価はD(問題あり)。吉野直也記者への評価はDを維持する。吉野記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
トランプ氏の発言を不正確に伝える日経 吉野直也記者
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_7.html
トランプ大統領「最初の審判」を誤解した日経 吉野直也次長
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/03/blog-post_13.html
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