白池地獄(大分県別府市)※写真と本文は無関係 |
【日経の記事】
積極的に資金を投じる新分野のHRテクノロジーが株式市場でどう評価されているかを、事業部門の価値を積み上げるサム・オブ・ザ・パーツで検証してみる。
リクルートの事業を旅行や美容などの販促部門、新卒採用や転職などの従来型の人材部門、人材派遣、HRテクノロジーの4つに分ける。QUICK・ファクトセットが持つ各事業の20年3月期のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)市場予想平均を使い、アデコやマンパワー、パソナ、ぐるなび、カカクコムといったそれぞれの業界の競合他社のEV(企業価値)/EBITDA倍率の平均から事業価値を導く。
HRテクノロジーを除く3部門の事業価値合計は約3兆円。リクルートの時価総額(5兆6560億円)からネットキャッシュを引いた企業価値は5兆5000億円で、そこから3事業の事業価値を除いた約2兆5000億円がHRテクノロジーの価値とみることができる。
HRテクノロジーの20年3月期のEBITDA予想平均は723億円。EV/EBITDA倍率は35倍となる。GAFAと呼ばれる、グーグルを傘下に持つアルファベット(18倍)、フェイスブック(20倍)を上回り、アマゾン・ドット・コム(38倍)並みだ。現在の株価は市場がリクルートのHRテクノロジーに対して、ネット業界のプラットフォーマーを上回る評価をしていることになる。
◎「HRテクノロジー」だけなぜ例外?
「HRテクノロジー」事業の「事業価値」=「ネットキャッシュを引いた(リクルート全体の)企業価値」-「HRテクノロジーを除く3部門の事業価値合計」。この計算式に文句はない。ただ「3部門の事業価値」の算出方法には問題を感じる。
「それぞれの業界の競合他社のEV(企業価値)/EBITDA倍率の平均から事業価値を導く」という方法は適切なのか。ここから「HRテクノロジー」の「EV/EBITDA倍率は35倍」と導き出している。
この計算方法を用いるならば、なぜ「HRテクノロジー」には業界平均が当てはまらず、他の「3部門」には当てはまるのか説明が必要だ。例えば「人材(従来型)」「派遣」「HRテクノロジー」に業界平均を当てはめて、「販促」の「事業価値」を算出すると、今度は「販促」の「事業価値」が一気に大きくなるのではないか。結局、焦点を当てた事業の「価値」が高くなるのならば、あまりに恣意的だ。
付け加えると「GAFA」と比べるのも賛成しない。記事では「(HRテクノロジー関連の)インディードは求人情報サイトとして世界最大手だが、デジタル技術にたけた新興勢の参入もあり競争は激しい」とも書いている。だったら、まずは競合他社との比較をしてほしい。「競合他社はどこも上場していない」といった事情があるのならば、記事中で明示すべきだ。
ついでに言うと、記事に付けた「HRテクノロジーはGAFA以上の評価をされている」というタイトルの図に「GAFA」の情報が出てこないのが引っかかる。「GAFA」の情報を省いて図を作るのならば、タイトルを考え直した方がいい。
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※今回取り上げた記事「会社研究~リクルートHD、国際化・IT 『求人』変革 市場評価、GAFAに並ぶ」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181018&ng=DGKKZO36578950X11C18A0DTA000
※記事の評価はC(平均的)。田口翔一朗記者への評価は暫定でCとする。
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