筑後川橋と菜の花(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
記事では「コレステロールに動脈硬化のリスクがあるかどうか。これについては、ある」と結論付けている。その上で記事では以下のように書いている。
【ダイヤモンドの記事】
一方、日本脂質栄養学会などをはじめ、「コレステロール値が高いほど長生きし、下げると危険」という主張もある。15年2月に米国の農務省と保健福祉省は「食事でのコレステロール摂取制限は必要ない」と発表した。また日本の厚生労働省も「日本人の食事摂取基準2015年版」でコレステロール摂取の上限値をなくしている。ただこれは、摂取したコレステロールが血液中のコレステロール値に与える影響は個人差が大きく、統一の基準が出せないという理由からだ。
桑島氏は、「コレステロール値が高い方が長生き説」を疑問視する。
同氏によると、日本脂質栄養学会が根拠としているのは「40~50歳以上やもっと高齢の一般集団では、総コレステロール値の高いグループで、がんでの死亡率や総死亡率が低い」というデータだ。「対象には80代、90代の人も含まれ、肝疾患やがんなど、さまざまな疾患の患者も含まれる。特に肝疾患やがん患者では栄養状態が悪くなり、コレステロール値は低くなります。相関関係を因果関係のように取って、死亡率が高いのはコレステロール値が低い人=コレステロール値が低ければ死亡率が高いと、間違った解釈をしている」(桑島氏)。コレステロール値が高い方が長生きできる、低いと危険とは、データからは一概には言えないということである。
ではLDLはどのくらいが適当なのか。日本動脈硬化学会は、17年に動脈硬化性疾患予防ガイドラインを発表し、LDLの値が140mg/dL以上であれば受診基準と定めている。
しかし、これに関して桑島氏は、全ての人が140mg/dLを目標値にするべきではないとも主張する。「疾患や喫煙の有無、女性は更年期前なのか後なのか、年齢などの状況に応じて対処は変えるべきです」。桑島氏は、動脈硬化を引き起こすリスクファクターとして、LDL以外には、高血圧、糖尿病、喫煙、男性では45歳以上、女性では55歳以上、家族に狭心症か心筋梗塞の人がいる、そしてHDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が40mg/dL未満などを挙げる。これらリスクファクターの数が多いほど、リスクは高まるというわけだ。
男女で10歳の年齢差があるのは、女性はエストロゲンという女性ホルモンが血管壁を守る作用があり、閉経後は、エストロゲンの分泌量が減少して危険が増すからだ。
前述のリスクファクターが一つもない人は、特に数値が激変したり、体調変化を感じたりしていなければ、コレステロール値は少しくらい高くてもおおむね問題はない。リスクファクターが一つでもあれば受診し、リスクの高さに応じて下げた方がよい。
結論としては、高ければ下げた方がよいが、その人の状況に応じて、基準値は変わるということである。
◎
「結論としては、高ければ下げた方がよい」と言い切っているが、特に根拠は示していない。「血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール、以下LDL)の数値が高いと動脈硬化を引き起こす可能性が高くなる」としても、「コレステロール値」を薬で下げれば当然に副作用がある。それでも薬を飲むべきなのかが問題だ。
「コレステロール値が高い方が長生きできる、低いと危険とは、データからは一概には言えない」とも書いているが、これもやはり「薬を使ってでも下げるべき」との根拠にはならない。
なのになぜ「結論としては、高ければ下げた方がよい」となるのか。
「リスクファクターが一つでもあれば受診し、リスクの高さに応じて下げた方がよい」という助言にも根拠が見当たらない。「高血圧、糖尿病、喫煙、男性では45歳以上、女性では55歳以上、家族に狭心症か心筋梗塞の人がいる、そしてHDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が40mg/dL未満」が「リスクファクター」だとすると「55歳以上」の人は漏れなく「受診し、リスクの高さに応じて下げた方がよい」となってしまう。
「リスクの高さに応じて下げた方がよい」と言い切るならば「下げた方」が長生きできる可能性が高まるとのエビデンスを示すべきだ。それがないままに安易な結論を読者に届けるのは、健康に関わる問題だけに罪深い。
※今回取り上げた記事「コレステロール~結局下げるべきか上げるべきか “ガチ対立見解”はこう読み解け」
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/29052
※記事の評価はD(問題あり)