2020年3月4日水曜日

近鉄百貨店は「業界2番手」? 日経「銘柄診断」の問題点

百貨店の大手と言えば高島屋、大丸松坂屋百貨店、三越伊勢丹といった名前が思い浮かぶ。しかし4日の日本経済新聞朝刊マーケット総合1面に載った「銘柄診断~近鉄百、一時7%安 回復の遅れ懸念」の記事には「百貨店業界で2番手というイメージ」があるのは「近鉄百貨店」という市場関係者のコメントが出てくる。
筥崎宮(福岡市)※写真と本文は無関係です

記事を最初から見ていこう。

【日経の記事】

3日の東京株式市場で近鉄百貨店株が急落した。一時、前日比179円(7%)安の2436円を付けた。前日の取引終了後に発表した2月の売上高(速報値)が新型コロナウイルスの感染拡大で訪日中国人客を中心に落ち込み、ろうばい売りを誘った。終値は7%安の2445円だった。

近鉄百は訪日客を取り込んで売上高を伸ばしてきた。しかし、1月末に中国政府が海外団体旅行を禁止したことを受け、主力店の「あべのハルカス近鉄本店」(大阪市)は免税売上高が7割減少。店全体の売上高も15%減少した。

2月の売上高は百貨店各社が前日にそろって発表した。近鉄百の減少幅は競合と大差はなかったが、この日の株価は、同じく関西地盤の阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オーリテイリング(1%下落)や三越伊勢丹ホールディングス(2%下落)に比べて下げがきつかった。

市場では「百貨店業界で2番手というイメージがあり、回復が遅れるとみなされた」(auカブコム証券の河合達憲チーフストラテジスト)との声があった。


◎「百貨店業界で6番手」辺りでは?

百貨店業界で2番手というイメージがあり、回復が遅れるとみなされた」と「auカブコム証券の河合達憲チーフストラテジスト」が本当に発言したとしよう。だからと言って記者は免罪とはならない。「近鉄百貨店」が「百貨店業界で2番手」なのかどうかは確認すべきだ。

百貨店業界で2番手というイメージ」とコメントしているので、本当の順位が「3番手」ならばギリギリ許容範囲内かもしれない。しかし「百貨店業界」にいる人で「近鉄百貨店」に「2番手というイメージ」を持っている人は皆無に近いだろうし、「3番手」に広げても結果は同じだと思える。実際は「6番手」辺りのようだ。

推測だが、「河合達憲チーフストラテジスト」は「大手とは差がある第2グループ」といった趣旨で「百貨店業界で2番手」と言ったのではないか。

付け加えると「同じく関西地盤の阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オーリテイリング(1%下落)や三越伊勢丹ホールディングス(2%下落)」と書くと「三越伊勢丹ホールディングス」も「関西地盤」に見える。「同じく関西地盤の阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オーリテイリング(1%下落)や、三越伊勢丹ホールディングス(2%下落)」と読点を打った方が良い。

最後の段落にも問題を感じた。

【日経の記事】

今後も厳しい経営環境が続く。近鉄百は2日から新型コロナ対策で営業時間を短縮した。国内外で外出を控える動きも広がり、3月の売上高はさらに落ちこむ可能性がある。株価は当面、下値を探る展開が続く可能性がある



◎「可能性がある」を使うなら…

まず「3月の売上高はさらに落ちこむ可能性がある」「株価は当面、下値を探る展開が続く可能性がある」と「可能性がある」を繰り返すのが上手くない。

記事全般に言えることだが、市場関連記事では特に「可能性がある」を避けてほしい。「3月の売上高はさらに落ちこむ可能性がある」のも「株価は当面、下値を探る展開が続く可能性がある」のも当たり前の話だ。

例えば「現在2万1000円台の日経平均株価は3月中に1万円を割り込む可能性がある」と書くならば、まだ許せる。市場関係者のほとんどが「1カ月以内に日経平均が半値以下に落ち込む」とは思っていないだろう。そこでは「可能性がある」も意味を持つ。

しかし「2万円を割り込む可能性もある」だと「それはそうでしょうね」となってしまう。この場合は「2万円を割り込む可能性が高い」などとしないと、わざわざ記事に入れる意味がない。

今回の記事ならば「3月の売上高はさらに落ちこむ可能性が高い。株価は当面、下値を探る展開が続きそうだ」ぐらいは書いていい。「3月の売上高」や「株価」について決め付けにはなっていないはずだ。


※今回取り上げた記事「銘柄診断~近鉄百、一時7%安 回復の遅れ懸念
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200304&ng=DGKKZO56334320T00C20A3EN1000


※記事の評価はD(問題あり)

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