2020年3月5日木曜日

自らは知恵を絞らない日経社説「柔軟な政策で世界経済の失速を避けよ」

5日の日本経済新聞朝刊総合面に載った「柔軟な政策で世界経済の失速を避けよ」という社説では「各国が効果的な金融緩和や財政出動などの知恵を絞り、世界経済の下支えに万全を期してほしい」と訴えている。日経が得意とする「とにかく何とか上手くやってね」的な社説だ。「世界経済の下支えに万全を期してほしい」と願うならば、まずは自らが「知恵」を絞るべきだ。

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          ※写真と本文は無関係です
社説の中身を見ていこう。

【日経の社説】

新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済の失速を避けるため、主要7カ国(G7)が必要な政策手段を総動員すると宣言した。その先陣を切る形で、米連邦準備理事会(FRB)が0.5%の緊急利下げに踏み切った。

景気悪化のリスクを封じ込めたいという当局の意図は理解できるが、政策対応の限界を市場に見透かされているのは否めない。各国が効果的な金融緩和や財政出動などの知恵を絞り、世界経済の下支えに万全を期してほしい

G7の財務相と中央銀行総裁が、新型コロナのまん延に警戒感を強めるのは当然だ。リーマン・ショックのような経済・金融危機とは様相が異なるが、実体経済や金融市場に与える悪影響はもはや看過できない状況にある。

FRBが17~18日の定例会合を待たずに先手を打ったのも、やむを得ない決断だろう。G7以外ではオーストラリアやマレーシアなどの中銀が利下げに動いた。

だが一連の行動で世界の不安が払拭されたとはいえない。G7が共同声明で「あらゆる適切な政策手段を用いる」と訴えても、リーマン危機の直後と同じ結束力を期待するのは難しい。もはや金融緩和の余地は乏しく、財政出動の規模にもおのずと限界がある

G7による政策協調やFRBによる利下げの効果に、市場もいったん懐疑的な反応を示した。株価や金利は不安定な状態が続く。



◎効き目が乏しく弾も残り少ないのに…

米連邦準備理事会(FRB)が0.5%の緊急利下げに踏み切った」上に「オーストラリアやマレーシアなどの中銀が利下げに動いた」のに「一連の行動で世界の不安が払拭されたとはいえない」。さらに「もはや金融緩和の余地は乏しく、財政出動の規模にもおのずと限界がある」という。

ミサイルを打ち込んでも効き目が乏しい上に、ミサイルの残りも少なくなってきている状況で、他の武器も頼りにならないといったところか。そこで「各国が効果的な金融緩和や財政出動などの知恵を絞り、世界経済の下支えに万全を期してほしい」と言われてもとは思う。

残りわずかな頼りない武器でどうやって効果的に戦うのか。そんな方法があるのならば教えてほしいところだ。しかし社説では自らの策は披露せず、各国の政府や中央銀行に「知恵」を求めるのみ。「自分たちに知恵はない」と感じているのならば、今回のような社説はなくていい。

社説の続きを見ていこう。

【日経の社説】

G7を中心とする各国の政策当局は、世界経済と金融市場の安定にそろって協力すべきだ。日銀や欧州中央銀行(ECB)の金融緩和がFRBよりも難しいのは確かだが、追加措置が必要ならば機動的に対応してほしい。



◎「追加措置が必要」かどうかを示さないと…

副作用を上回る効果の見込める追加の金融緩和は日本で難しいとの見方が多い。個人的にもそう思うが、日経が「追加措置が必要」と感じるならば、それはそれでいい。その理由を明確に読者に示してもらえば納得できるかもしれない。

しかし今回の社説では「追加措置が必要ならば機動的に対応してほしい」とお願いしているだけだ。現状で「追加措置が必要」なのか。さらに感染が拡大すれば「追加措置が必要」になるのか。日経自身の判断が社説には欲しい。しかし「追加措置が必要ならば~」で逃げている。

それが日経の「限界」ならば、やはり社説は廃止でいい。


※今回取り上げた社説「柔軟な政策で世界経済の失速を避けよ
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200305&ng=DGKKZO56383250U0A300C2EA1000


※社説の評価はD(問題あり)

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