2021年10月15日金曜日

ファストリ「在宅需要で88%増益」と日経 古川慶一記者は言うが…

15日の日本経済新聞朝刊ビジネス1面に古川慶一記者が書いた「ファストリ、前期最終2期ぶり最高益~在宅需要で88%増益 中国、成長鈍化懸念も」という記事には不満が残った。見出しで「在宅需要で88%増益」と打ち出し、最初の段落でも「国内外の根強い巣ごもり需要を取り込んで、2期ぶりに過去最高益となった」と記しているが、最後まで読んでも「巣ごもり需要」に関する具体的な記述がない。「前期最終2期ぶり最高益」が記事の柱なのだから、その要因はしっかり説明してほしかった。

夕暮れ時の筑後川河川敷

当該部分を見ていこう。

【日経の記事】

売上高に相当する売上収益は前の期比6%増の2兆1329億円で、本業のもうけを示す営業利益は同67%増の2490億円。事業別でけん引したのは、海外ユニクロ事業だ。営業利益は2.2倍の1112億円に達し、国内ユニクロ(18%増の1232億円)に比べて勢いの差は歴然。為替差益が膨らんだことや、米ジーンズ子会社の清算益を計上した効果も押し上げた。21年8月期の配当は当初計画通りの年480円を予定する。

コロナ流行で世界各国で店舗を休業した前の期から一転、21年8月期はワクチン接種が進み経済活動が徐々に再開。接種で先行した欧州事業は黒字化し、課題の北米事業も「黒字体質に転換できる所にきた」(岡崎健最高財務責任者、CFO)。

もっとも懸念材料も見え始めた。現地シェア1位の中国事業だ。21年8月期の台湾や香港を含めた中華圏ユニクロの売上収益は前の期比17%増の5322億円。営業利益も53%増の1002億円だが、岡崎CFOは「中華圏は計画を若干下回った」と話す。


◎「巣ごもり需要」はどこへ?

欧州事業」「北米事業」「中国事業」のいずれでも「巣ごもり需要」には触れていない。日本に関しても、記事の終りの方で「もう1つの懸念材料が国内事業だ。ファストリは21年3月に消費税の総額表示への切り替えに合わせて、実質的に約9%の値下げを実施したが、期待ほど客数が伸びていない」と書いているだけで、やはり「巣ごもり需要」が見当たらない。

前期」は2020年9月~21年8月。この時期には、20年上半期に比べれば国内外で外出制限が緩んでいたはずだ。そもそも「ファストリ」が「巣ごもり需要」の恩恵を受けられる企業なのかという疑問もある。「巣ごもり」が広がれば外出のための衣料品を買う必要は薄れてくる。

国内外の根強い巣ごもり需要を取り込んで、2期ぶりに過去最高益となった」という説明が間違いとは言わない。しかし、それを裏付ける材料は欲しい。「ファストリ」がそう言っているからという以外に理由がないのならば、「ファストリ」関係者のコメントを使う手もある。

懸念材料」を掘り下げるなとは言わないが、それは「最高益」の分析をしっかりしてからだ。「21年8月期はワクチン接種が進み経済活動が徐々に再開。接種で先行した欧州事業は黒字化」といった記述を見ると、むしろ「巣ごもり」解消が「最高益」に寄与したとも取れる。

ついでに言うと「為替差益が膨らんだことや、米ジーンズ子会社の清算益を計上した効果も押し上げた」というくだりは舌足らずな印象を受けた。何を「押し上げた」かは入れた方がいい。「為替差益が膨らんだことや、米ジーンズ子会社の清算益を計上した効果も利益を押し上げた」とすれば問題はほぼ解消する。それでも冗長さは残る。

例えば「為替差益の増加や、米ジーンズ子会社の清算益計上も利益を押し上げた」としたらどうか。情報量を減らさずに文を簡潔にできているはずだ。


※今回取り上げた記事「ファストリ、前期最終2期ぶり最高益~在宅需要で88%増益 中国、成長鈍化懸念も

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211015&ng=DGKKZO76649200U1A011C2TB1000


※記事の評価はD(問題あり)。古川慶一記者への評価はDを据え置く。古川記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

悪い意味で無邪気な日経 未来学面「考えるクルマ 街へ空へ」http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/01/blog-post_26.html

「富裕層の2%がビジネスジェット保有」に見える日経の説明不足https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_68.html

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