2021年10月14日木曜日

「日本『ユニコーン待望論』の盲点」を週刊ダイヤモンドで論じた松岡真宏氏に同意

「ユニコーン(企業価値10億ドル以上の非上場企業)の少なさを嘆くのは意味がない」と訴えてきた。優れた企業が育たないのは好ましくないが、優れた「非上場」企業である必要はないからだ。しかし、日本におけるユニコーンの少なさを問題視する記事は後を絶たない。そんな中で週刊ダイヤモンド10月16日号にフロンティア・マネジメント代表取締役の松岡真宏氏が書いた「日本『ユニコーン待望論』の盲点、個人投資家が支持してはいけない理由」という記事は異色だった。

コスモスパーク北野

一部を見ていこう。

【ダイヤモンドの記事】

日本でユニコーンが生まれない理由の1つは、世界で最も上場しやすいといわれてきたマザーズ市場の存在だ。マザーズ市場には時価総額が100億円に満たない企業も少なくない。ユニコーンと呼ばれる時価総額10億ドル(約1100億円)と大きな乖離がある。

マザーズに上場すると、個人投資家も含め多くの投資家が売買に参加できる。マザーズに上場した会社が時価総額を大きくしていく過程で、個人を含めた幅広い投資家が応援し、時には激しく叱咤する。経営者は四半期ごとに評価され、琢磨される。

マザーズ市場に100億円で上場した企業が、ユニコーンと同様の1100億円に時価総額が増加する過程で、投資家がその果実を享受する。創業者やベンチャーキャピタルだけでなく、個人も含めて広く投資家に果実が行き渡るのが、日本におけるマザーズ市場の仕組みだ。

中略)マザーズ上場企業は玉石混交だ。いったん上場したことで創業メンバーの事業欲がそがれ、成長が緩慢になる企業もある。それでもなお、筆者は、企業の成長から得られる果実を幅広く分配するという観点から、ユニコーン待望論よりも、マザーズへの上場に一理あると考える。

マザーズ上場企業の質の向上が必要ならば、質の向上をさせればよい。上場コストが重いのであれば、優遇策を国が考えればよい。マザーズが問題を抱えているから上場を厳しくし、ユニコーンになるまで太らせよう、という考え方は、筋が違っているように思える。


◎ユニコーン待望論者に読んでほしい記事

松岡氏の主張に基本的には賛成だ。「ユニコーンになるまで太らせよう、という考え方は、筋が違っている」と自分も感じる。「ユニコーンになるまで太らせ」た方が上手く育つケースも当然にあるだろう。それは「創業メンバー」の選択に任せればいい。

松岡氏も指摘するように、早期上場という選択には「個人も含めて広く投資家に果実が行き渡る」「経営者は四半期ごとに評価され、琢磨される」というメリットがある。

ユニコーン」という言葉の魔力なのか「多い方がいい。少ないのは問題」と短絡的に考えてしまう向きが多い。「日本でも官民挙げてユニコーンが生まれるエコシステムをつくるべきだという掛け声が強い」と松岡氏も記事で記している。

繰り返すが、大事なのは「優れた企業の育成」だ。「優れた非上場企業の育成」ではない。「日本にはユニコーンが少ない」と嘆く人たちには、松岡氏の記事をぜひ読んでほしい。


※今回取り上げた記事「日本『ユニコーン待望論』の盲点、個人投資家が支持してはいけない理由


※記事の評価はB(優れている)。ユニコーンに関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経 村山恵一氏「Deep Insight~小粒上場の国でいいのか」への答えhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2021/06/deep-insight.html

金融市場での「満点」とは? 日経 武類雅典編集局次長への注文https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_5.html

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