コラムの書き手には「自分にしか書けないことは何か」を考えてほしい。その点で18日の日本経済新聞朝刊ビジネス面に「経営の視点~変わるアジアの通商秩序 日米豪印『枠組み』の真意は」という記事には、独自性を出そうとする太田泰彦編集委員の意欲を感じた。しかし説得力がないのが辛い。
コスモスパーク北野 |
「日米豪印『枠組み』の真意」に関する記述を見ていこう。
【日経の記事】
米国、日本、オーストラリア、インドが組んだ新しい枠組み「Quad(クアッド)」が囲い込もうとしている場所はどこか。中国ではない。東南アジア、そして台湾である。
地図の上で4カ国を線で結んでみよう。ゆがんだひし形の中に、東南アジア諸国連合(ASEAN)と台湾がすっぽりと収まる。
9月にワシントンで開いた首脳会議の共同声明が単刀直入に語っている。新型コロナウイルス禍や気候変動より先にASEANに4回も言及し、インド太平洋の「中心」とまで呼んだ。
中国を刺激しすぎない配慮から台湾の文字は見えないが、ここだけは中国に渡さないという決意表明と読むべきだろう。
◎従来の理解でいいのでは?
「読者の皆さん、クアッドは中国を囲い込むものだと思っていませんか。実は違うんです。ASEANと台湾を囲い込もうとしてるんです」と太田編集委員は伝えたいのだろう。
「囲い込もうとしている場所」が「勢力圏として守ろうとしている場所」という意味ならば「囲い込もうとしている場所」が「中国ではない」のは自明だ。日経も9月19日付の「きょうのことば」で「Quadとは 日米豪印の4カ国で中国対抗」と説明している。この理解を変える必要性は感じられない。
「地図の上で4カ国を線で結んでみよう。ゆがんだひし形の中に、東南アジア諸国連合(ASEAN)と台湾がすっぽりと収まる」という太田編集委員の説明も問題なしとしない。
アラスカも含める形で「4カ国」の領土が中に入るように世界地図(日本が中心にあるもの)を「線で結んで」みると中国の大半が入ってしまう。「地図」から「真意」を読み取るのならば「囲い込もうとしている場所」に「中国」も入るとの解釈もできる。
他の考え方も可能だ。欧州・アフリカが中心にある世界地図だとアフリカ・中東を「囲い込もうとしている」とも取れる。「地図」を見て「囲い込もうとしている場所」を「東南アジア、そして台湾である」と断定するのは、かなり恣意的だ。
「台湾」に関しては「首脳会議の共同声明」でも言及がなかったらしい。だとしたら「地図」だけが頼りだ。「ここだけは中国に渡さない」という意思が「米国、日本、オーストラリア、インド」にあるかもしれないが、それを「地図」から単純に読み取れる訳ではない。
独自性を出そうと腐心した点は評価したい。しかし無理がある。そこに太田編集委員の限界も見える。
※今回取り上げた記事「経営の視点~変わるアジアの通商秩序 日米豪印『枠組み』の真意は」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211018&ng=DGKKZO76720400X11C21A0TB0000
※記事の評価はD(問題あり)。太田泰彦編集委員への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。太田編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
問題多い日経 太田泰彦編集委員の記事「けいざい解読~ASEAN、TPPに冷めた目」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/05/blog-post_21.html
日経 太田泰彦編集委員 F評価の理由
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_94.html
説明不十分な 日経 太田泰彦編集委員のTPP解説記事
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_6.html
日経 太田泰彦編集委員の力不足が目立つ「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_18.html
日経 太田泰彦編集委員のTPP解説記事に見える矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/11/blog-post_12.html
日経 太田泰彦編集委員の辻褄合わない「TPPルール」解説
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/03/tpp.html
「日本では病院のデータ提供不可」と誤解した日経 太田泰彦編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/blog-post_26.html
「イノベーションが止まる」に無理がある日経 太田泰彦編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/blog-post_25.html
「鎖国への誘惑」あり得る? 日経 太田泰彦編集委員「経営の視点」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/04/blog-post.html
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