2021年8月7日土曜日

時間はかかっても間違い指摘に真摯に対応した日経ビジネス

アジアの先進国」に関する間違い指摘に日経ビジネスがきちんと対応できるか不安視していたが、杞憂だった。7月10日の問い合わせ→7月14日の回答→7月27日の再問い合わせ→8月5日の回答…という順番で経緯を見ていきたい。

筑後川と夕陽

【日経ビジネスへの問い合わせ】

日経ビジネス編集部 担当者様

7月12日号に載った「世界の最新経営理論 ウリケ・シェーデの再興THE KAISHA(1)『20ー80現象』から脱却せよ~『日本経済は強い』は正しい」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは「(日本は)アジアの先進国の中では、韓国、台湾を上回り、1人当たりGDPが最も高い」との記述です。

IMFの分類に従うと「アジアの先進国」に該当するのは日本、韓国、台湾、シンガポール、イスラエルの5カ国(ここでは台湾を国と見なします)となります。「OECD加盟国=先進国」との前提も検討しましたが、これだと台湾が漏れてしまうため記事の内容と整合しません。またOECD加盟国の中には一般的に先進国と見なされない国も含まれています。

アジアの先進国」を上記の5カ国とした場合、「1人当たりGDPが最も高い」のはシンガポールではありませんか。2位がイスラエルで日本は3位にとどまるはずです。

2020年8月3日付の「逆・タイムマシン経営論 第3章 遠近歪曲トラップ~『日本はダメ』という言説を疑え! 判断を惑わす罠を回避するには?」という御誌の記事によると、2018年の1人当たりGDPでシンガポールが世界8位となっています。5つの「アジアの先進国」の中で唯一の10位以内です。つまり「アジアの先進国」の中で日本の「1人当たりGDPが最も高い」とは言えません。

今回の記事では2017年のデータを基にしているのかもしれませんが、日本の3位は変わらないはずです。イスラエルに関しては「中東はアジアではない」といった解釈が成り立つ余地はあります。しかしシンガポールを「アジアの先進国」から除くのはかなり難しそうです。「OECD加盟国ではないから」とすると、なぜ「台湾」を「アジアの先進国」に含めたのかという問題が生じます。

「(日本は)アジアの先進国の中では、韓国、台湾を上回り、1人当たりGDPが最も高い」との記述は誤りと見て良いのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いします。


【日経ビジネスの回答】

貴重なご指摘をありがとうございます。調査の上、対応を検討いたします。


【日経ビジネスへの再問い合わせ】

日経BP社 担当者様 

お問い合わせ回答 [No.#210710-000129]についてお尋ねします。

7月10日に問い合わせた件に関して同月14日に以下の回答をいただきました。その後、調査を踏まえた回答が届くのだと理解していましたが、2週間近くが経過しても連絡がありません。

(1)14日の回答が最終回答と考えてよいのでしょうか。

(2)14日の回答が最終回答だとすると、間違い指摘に対して事実上のゼロ回答だと言えます。記事の説明に誤りがあったかどうかをなぜ明らかにできないのでしょうか。

記事中の誤りは、販売している商品の欠陥とも言えます。定期購読者に対する適切な対応をお願いします。


【日経ビジネスの回答】

平素は、日経ビジネスをお読みいただきありがとうございます。

お問い合わせの件につきまして、8月9日号にて、

日経ビジネス7月12日号96ページで「アジアの先進国の中では、韓国、台湾を上回り、1人当たりのGDPが最も高い」とあるのは、「アジアの中では、1人当たりのGDPが韓国、台湾を上回っている」の誤りでした。

との訂正を出させていただきました。

今後とも、日経ビジネスをよろしくお願いします。


◇   ◇   ◇


時間がかかり過ぎているとは思うが、間違い指摘への対応として大筋で問題はない。ミス放置が目立つ日本経済新聞は見習ってほしい。


※今回取り上げた記事「世界の最新経営理論 ウリケ・シェーデの再興THE KAISHA(1)『20ー80現象』から脱却せよ~『日本経済は強い』は正しい」https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00123/00099/


※記事の評価はD(問題あり)

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