6日の日本経済新聞朝刊オピニオン面に載った「エコノミスト360°視点~インフレか スタグフレーションか」という記事には色々と気になる点があった。誤りと思える記述もあったので以下の内容で問い合わせを送っている。
夕暮れ時の筑後川 |
【日経への問い合わせ】
日本経済研究センター理事長 岩田一政様 日本経済新聞社 担当者様
6日の朝刊オピニオン面に岩田様が書いた「エコノミスト360°視点~インフレか スタグフレーションか」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。
「東京などが4回目の緊急事態宣言下にある日本は、2020年度に巨額の補正予算を組んだが、30兆円が次年度に繰り越され、景気過熱とはかけ離れた状況にある。景気の現状は、景気後退下の物価上昇(スタグフレーション)に陥った08年夏ごろまでの時期に似ている。この時、原油価格は140ドルとなり、円安持続もあって物価上昇率は2%に達した。しかし、交易条件悪化により所得が海外に流出したため、収益が圧縮されて景気後退に陥り、インフレ目標達成を喜ぶ声はなかった」
日銀が「2%」の「インフレ目標」を設定したのは2013年です。しかし記事では「08年夏ごろ」に「物価上昇率」が「2%に達した」ことに触れて「インフレ目標達成を喜ぶ声はなかった」と記しています。この書き方だと「08年夏ごろ」には「2%」の「インフレ目標」を導入していたと取れます。
「08年夏ごろ」に「2%」の「インフレ目標」があったと取れる説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
せっかくの機会なので他に気になった点を記しておきます。
まず「インフレか スタグフレーションか」という見出しが引っかかります。記事でも説明しているように「スタグフレーション」は「景気後退下の物価上昇」なので「スタグフレーション」であれば当然に「インフレ」となります。「良いインフレか スタグフレーションか」などとした方が良いでしょう。
さらに言えば、この記事では「(良い)インフレか スタグフレーションか」を論じてはいません。「景気の現状は、景気後退下の物価上昇(スタグフレーション)に陥った08年夏ごろまでの時期に似ている」と述べているだけです。
そもそも「似ている」のかも疑問です。「08年夏ごろ」には「物価上昇率は2%に達した」のに、今年6月の物価上昇率は0.2%でほぼ横ばいです。原油相場は堅調かもしれませんが「スタグフレーション」を心配するような「インフレ」には程遠い状況です。
問い合わせは以上です。「インフレ目標達成を喜ぶ声はなかった」との記述に関しては回答をお願いします。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。
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※今回取り上げた記事
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210806&ng=DGKKZO74534410V00C21A8TCR000
※記事の評価はD(問題あり)
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